映画「ヒプノシスマイク」の新たなるアプローチ 応援上映や4DX、その先の新体験とは?【藤津亮太のアニメの門V 116回】 | 超!アニメディア

映画「ヒプノシスマイク」の新たなるアプローチ 応援上映や4DX、その先の新体験とは?【藤津亮太のアニメの門V 116回】

映画『ヒプノシスマイク -Division Rap Battle-』は、ラップバトルの勝敗が、観客の投票によって決まる劇場映画として日本“初”の「インタラクティブ映画」。上映中の観客の投票により展開が全48ルート、7つのエンディングの中から決まる、という趣向の作品だ。

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映画『ヒプノシスマイク -Division Rap Battle-』は、今の日本の映画館がどのような場所になりつつあるかをクリアに示した作品だった。同作は「ラップバトルの勝敗が、観客の投票によって決まる」劇場映画として日本“初”の「インタラクティブ映画」(公式サイトより)であり、上映中の観客の投票により展開が全48ルート、7つのエンディングの中から決まる、という趣向の作品だ。  

あらためて説明すると、同作は2017年に始まった音楽原作メディアミックスプロジェクトの映画。過去にTVアニメ2シリーズが制作されている。「イケブクロ・ディビジョン」「ヨコハマ・ディビジョン」「シブヤ・ディビジョン」「シンジュク・ディビジョン」「オオサカ・ディビジョン」「ナゴヤ・ディビジョン」という各地域のメンバーで構成された6チームがラップバトルを繰り広げる内容で、優勝チームが、政権を握る「言の葉党」とファイナルバトルに挑むことになる。つまり本作は楽曲の連なりで構成されていて、その本質は劇映画ではなく、『劇場版アイドリッシュセブン LIVE 4bit BEYOND THE PERiOD』と同じフィルムライブ(フィルムコンサート)である。  

これまでも「展開を観客に委ねる」という趣向の作品はあった。2002年に放送された『仮面ライダー龍騎』スペシャル番組では、視聴者の電話投票などによって2種類のラストシーンのどちらを放送するかを決定する試みがあった。ただしこれはラストシーンについてのみの分岐である。  

一方「インタラクティブ映画」あるいは「マルチエンディングムービー」といった名前を掲げた作品も、以前から存在している。ただこれらはゲームのプラットフォームやPCなどで楽しむものが中心だった。これは「インタラクティブ」の仕組みをどう用意するかが難しいということと、「インタラクティブ映画」が実質的に動画を使ったアドベンチャーゲームであるということから考えれば自然なことだ。ただしこの場合、観客の多数決ではなく、プレイヤー個人(=あなた)の選択が大きな意味を持ち、「個人ごとに異なるエンターテインメント体験を与える」ところに力点が置かれている。  

このようなインタラクティブシネマの歴史を振り返ると、映画『ヒプノシスマイク』の「映画館で」「その場にいる人たちの多数決」が展開を左右する、というシステムがいかに画期的なことかよくわかる(例外的な存在として1995年に『Mr. Payback: An Interactive Movie』という20分ほどの映画があり、これはCAV収録のレーザーディスクを使ったシステムで、客席に備え付けられたジョイスティックにより、観客が投票する仕組みであった)。  


《藤津亮太》
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