劇場アニメ『ベルサイユのばら』監督・脚本・キャラクターデザインが語る原作愛―「オスカルやアントワネットが生きた当時のベルサイユを再現できた」【インタビュー】 2ページ目 | 超!アニメディア

劇場アニメ『ベルサイユのばら』監督・脚本・キャラクターデザインが語る原作愛―「オスカルやアントワネットが生きた当時のベルサイユを再現できた」【インタビュー】

池田理代子の不朽の名作『ベルサイユのばら』が令和に劇場アニメとして蘇る。果たして、この不朽の名作にどう挑んだのか? 吉村愛監督、脚本の金春智子氏、キャラクターデザインの岡真里子氏にインタビューを敢行。

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劇場アニメ『ベルサイユのばら』(C)池田理代子プロダクション/ベルサイユのばら製作委員会
  • 劇場アニメ『ベルサイユのばら』(C)池田理代子プロダクション/ベルサイユのばら製作委員会
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■テレビアニメ版は「あえて見直さなかった」

――『ベルばら』を2025年に発表するにあたり、全体的にどういうアプローチでいこうと考えたのですか?

吉村:今の時代になぜ『ベルばら』をやるのかを企画当初に話し合いました。2人の女性が自立していく姿は、連載当時もすごく共感された部分だと思うし、それは今の社会でもきっと同じだと思うんです。でも、そうしたテーマ的なことより、今の技術で『ベルばら』を表現したい、そこにあらためてやる価値があるんじゃないかと考えていました。

金春:この前試写で見て、あらためて女性の生き方の描き方が先進的な作品だなと思いました。それは、この作品がそれだけ普遍的なものを描いていたからだと思います。本当に池田先生がこれを50年以上前に、20代前半のときに描かれたというのが信じられないですね。

――昔のテレビアニメ版はどの程度意識されたのですか。

吉村:今回の制作にあたっては、あえて見ないようにしました。やはり、名作ですし、見てしまうと確実に引っぱられてしまうので。自分たちなりの『ベルばら』を表現したいという思いもありましたし、かつてのテレビアニメ版とは別ものだと思って挑んでいます。でも、ある程度制作が進行した段階で、昔のテレビアニメ版を見たらやっぱり「絵画的で超かっけー!」と思いましたね。絵コンテを描いてるときにこれを見ていたら、絶対に引っぱられていたと思います。

金春:私は昔、放送時に見ていました。あのテレビアニメ版を作った方たちはすごい人ばかりで私も大好きな作り手の方たちです。でも、今回はテレビアニメ版のリメイクではなく、原作から新たに劇場アニメを作るという方向性です。昔のテレビアニメ版には一部、男性目線な部分もあります。今回は純粋に少女マンガの劇場アニメ化を目指しました。

吉村:自分も原作が大好きなので、その原作の魅力を表現したいというのが基本的な姿勢でした。我々も少女の時代があって、大概少女マンガ読んで成長しているんですよね。そういう意味では、プロデューサーも含めて主要スタッフに女性が揃ったので、意思の疎通はしやすかったです。言わずとも「ここがキュンとするんだよね」とわかってくれるので。向いている方向が同じだなと感じていました。

■歌唱力を重視―オスカルは満場一致で配役

――本作が劇中歌や登場人物たちによる歌唱も含めて、楽曲がふんだんに使用されています。

吉村:最初のシナリオ段階では、どこに曲を入れるかは決めていなかったんです。楽曲のシーンは強調表現なので、どのキャラクターの感情を際立たせるかを割り振って選出しています。

金春:前半のアントワネットの生活描写などは脚本で描写を積み重ねると尺が足りないので、そこを歌唱と映像で見せるというかたちでも使っています。そのほか、脚本を改稿しながら監督と打ち合わせをして、何ヶ所か脚本に場所の指定を入れたりしています。私は元々ミュージカルが好きなので、違和感なく書けました。

――楽曲をふんだんに使う作品という点で吉村監督と金春さんが監督と脚本を手掛けた『Dance with Deviles』とも共通点がありますが、その経験も生きているんですか。

吉村:そうですね。あれをさらにゴ―ジャスにしたような感じですね。テレビ作品の予算と尺あでは、ディズニー作品のように完全にリップシンク(口パク)させるのは大変すぎるので、一部ミュージッククリップ調にしていました。それを踏襲して、クリップ調のシーンと劇中歌のようなシーン、そしてザ・ミュージカルといった感じでリップシンクしてキャラクターが歌うシーンも挑んでいます。音楽を使った表現を全部やれたお得感が自分の中でありますね。

――キャスティングについてですが、歌要素もある中でどのように決めていったのですか。

吉村:オーディションには、原作の池田理代子プロダクションの方にも立ち会っていただき、オスカル役は満場一致で沢城みゆきさんでした。アントワネット役の平野綾さんは、池田プロから「王族としての気品を大切にしている」というお話があり、1番その気品が感じ取れた平野さんにお願いしました。歌唱力も必要になる作品なので、歌える方というのを前提にオーディションに来ていただき、歌唱も決める際に参考にしています。

――最後にこれから本作を見るファンに向けてメッセージをお願いします。

吉村:昔のアニメーションでは描き切れなった部分も、今の技術で見せられるようになり、オスカルやアントワネットたちが生きた当時のベルサイユを再現できたと思うので、彼女たちの生きている世界を感じてもらえるとうれしいです。

金春:大好きな『ベルばら』の素晴らしさを全力で映像にする仕事ができて本当に光栄です。「自由なのは心のみにあらず」というセリフがあるのですが、SNSの分断状況などを見ると、もしかすると自由や平等が失われつつあるかもしれない。そんな時代にも呼応する作品だと思います。でも、何よりまずは楽しんでいただけたら幸いです。

:『ベルばら』という物語はとにかくおもしろいので、原作を読んだことのない人にもこの作品が届くとうれしいです。


劇場アニメ『ベルサイユのばら』
1月31日(金)全国ロードショー

原作:池田理代子
監督:吉村 愛
脚本:金春智子
キャラクターデザイン:岡 真里子
音楽プロデューサー:澤野弘之
音楽:澤野弘之、KOHTA YAMAMOTO
アニメーション制作:MAPPA
製作:劇場アニメベルサイユのばら製作委員会
配給:TOHO NEXT、エイベックス・ピクチャーズ
後援:在日フランス大使館/アンスティチュ・フランセ

オスカル・フランソワ・ド・ジャルジェ:沢城みゆき
マリー・アントワネット:平野 綾
アンドレ・グランディエ:豊永利行
ハンス・アクセル・フォン・フェルゼン:加藤和樹 ほか
ナレーション:黒木 瞳
主題歌:絢香『Versailles - ベルサイユ - 』

(C)池田理代子プロダクション/ベルサイユのばら製作委員会


《杉本穂高》
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