■アフレコ現場はバトル!? 熱いCEOが生まれたワケ
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――AIモルカーがキーワードとなる本作。このストーリーができるまでの経緯や、AIモルカーを登場させることにした背景を教えてください。
見里 モルカーは、「車がモルモットになったらどうなるのか?」というところから実験的に作ったコンテンツで。渋滞はイライラするけど、それがモルモットのお尻だったら癒やされるし、車への印象が変わるのではないか、という実験をしてみたかった気持ちがありました。モルカーは生き物である以上、人間が手に負えないときも当然ある。お昼寝しちゃったり、ご飯を食べてうんちをしちゃったり(笑)。
それに対して、人間の思い通りに操縦できるAI自動車が登場したら、果たしてモルカーたちはどうなるのか?というテーマをやれたらすごくおもしろいなと思って。企画の最初の段階で、まんきゅうさんとお互いにアイデアを出し合ったのですが、その時点でAIモルカーというワードはすでに上がっていましたね。
まんきゅう アニメーションチームでもいくつかアイデアを出そうということで、『チャーリーズ・エンジェル』とか『ミッション・インポッシブル』なんかをモチーフにした案もあったんです。でも、正直自分の中でもAIモルカー一択だなと思っていて。そうしたら、見里さんもAIモルカーの案を持ってらっしゃって、「じゃあもうこれしかない」と。
ただ、懸念点としては公開時にAIというテーマが社会問題として、どの程度浸透しているのかだけは読めなくて。そこは今の時代の流れ的にちょっとラッキーでした(笑)。
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――相葉さんは今回のストーリーにどんな印象を抱きましたか?
相葉 どんなに便利なものも、人間がどう使いこなすか、付き合っていくかが大事なんだなということは、すごく考えさせられましたね。ただ闇雲に突き詰めて便利にしていっても、時にはその便利さについて立ち止まって考える寄り道も必要だと思うし。そういう点でも考えさせられる部分が多いストーリーでした。
それでいて、モルカーたちが宇宙に行ったり、竜宮城に行ったり。壮大な大冒険を繰り広げるので、子ども心もくすぐられましたし、すごくストーリー性の高い作品だなと思いました。
――相葉さんは長編アニメーション映画の声優は今回が初挑戦となります。CEO役としてレコーディングの際に準備したことや、レコーディング時の印象的なエピソードを教えてください。
相葉 僕が演じたCEOはすごくまっすぐな人で、「これがいい」と思ったらそこを突き詰めていく一直線タイプなんだっていうことを念頭に置きながら、レコーディングに臨みました。
――そういった人物像はどう作り上げたのでしょう? 収録現場で、まんきゅう監督や音響監督の小沼さんからのディレクションなどもあったのでしょうか。
相葉 今回の役は、大きく分けると2通りの演じ方がありそうだなと思っていて。先ほど述べたような、自分の信念やいいと思ったものを突き詰めていく路線と、もっとビジネスの方向に走っていく路線と。そこは、音響監督の小沼さんとやり取りをしていく中で、まっすぐに走っていくCEO像に引っ張ってもらったので、「わかりました、そっちでいきます!」と演じました。
――監督からディレクションされた部分もあったのでしょうか。
まんきゅう 基本は小沼さんにお任せしていました。相葉くんと小沼さんは顔を突き合わせるような距離感でやってましたよね。
相葉 もうバトルでした(笑)。
一同 (笑)。
まんきゅう それは多分、お芝居的な演出だけでなく、アニメ的な演出もあったと思うんですよね。やっぱりアニメーションのお芝居は舞台やドラマとは違う部分があって。表情や身体のお芝居ができない分、キャラクターを通してお芝居を伝えなきゃいけない。そのうえで、キャラクターを近くに感じられるようにしないといけないというところで、小沼さんが汗びっしょりかきながら、相葉さんにレクチャーされていたんじゃないかなと。
見里 しかも、人間っていってもジオラマ人形でしたしね。
相葉 そうなんですよ(笑)。表情がないので、よりハードでしたね。
まんきゅう 普通のアニメより難しさがあるだろうなと思っていました。
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――相葉さんのお芝居は見里さんから見ていかがでしたか。
見里 脚本の印象では、わりと落ち着いたキャラクターなのかなと思っていたんですが、相葉さんがすごく力強く演じていて。それは、ジオラマ人形で表情がない分、よりオーバーに演じなければいけないという部分もあったんだと思うのですが、その狂気を感じるほどの熱意が、むしろ世界観にしっくりきていて、すごくよかったなと思いました。
――相葉さんは今年はTVアニメや朗読劇と声優としての活躍が続いています。声での芝居のおもしろさ、難しさはどんなところに感じていますか。
相葉 難しさもたくさん感じていますが、それよりも声優さんのすごさをより感じていますね。神業的なことをやってらっしゃるんだなと。とくに今作でも共演している大塚明夫さんとは、朗読劇も一緒にやらせてもらったのですが、その声の表現力に驚きました。声優さんは、キャラクターの性格やそのときの感情などさまざまなものをその声ひとつで見せなくてはならない、ものすごい表現力を求められる世界だなとあらためて感じました。
――見里さんとまんきゅう監督は、相葉さんとお仕事をしてみてどんなことを思いましたか?
見里 モルカーって近所のアパートで少人数で作ったコマ撮りアニメーションだったので、そういった作品でまさか相葉くんに演じていただけるとは……。
本当に、それほどに作品が成長したんだなと、まずすごく感動しました。以前から、『嗚呼!! みんなの動物園』もよく見ていたし、そこでの相葉くんの活躍も拝見していたので、動物との繋がり的な部分でも相葉くんが入ってくれたのはうれしかったです。
相葉 確かに!
まんきゅう それは今気付きました(笑)。
見里 最初、相葉くんに出演をオファーするという話を聞いたとき、「絶対無理でしょ」と。
まんきゅう 皆思ってました。
見里 なので、前向きに考えていただいているとお話を聞いたときは「マジか!」となったのを覚えています。
相葉 いやいや……(笑)。でもそう言っていただけてうれしいですね。
――相葉さんは本作への出演のお話を聞いたときはいかがでしたか?
相葉 びっくりしました。これまでやってきていないことに挑戦するって、どうなるかわからないし、作品に傷をつけることもしたくないので、相当な覚悟を持たないといけない。
いろいろ考えましたが、後悔もしたくなかったので、全力でやらせていただくという選択をしました。
――まんきゅう監督から相葉さんへはどんな印象を抱きました?
まんきゅう 今のお話を聞いても「相葉さんでよかったぁ」って本当に思っているところです。俳優さんのお芝居ってどういう感じでくるのか、現場でやってみるまでわからない部分がある。実際、テストのお芝居を聞かせていただいたときに、裏で皆で「やったね、これはいけるぞ!」と手応えを感じて。あの瞬間はすごくうれしかったですね。