同レポートでは、もうひとつテレビ各局が放送外収入を求めてアニメに力を入れ始めている現状も報じられている。背景には、テレビビジネスの根幹にある視聴率がなかなか望めない状況になってきて、スポンサーから得られる「放送収入」ではなく、それ意外から得られる「放送外収入」を求めるようになった結果、アニメが注目を集めているのである。
そうなるとテレビアニメの言葉に冠された、“テレビ”という流通チャネルは、チャネルのワンオブゼムになっていき、映画館や配信といったさまざまなチャネルで「放送外収入」を稼ぐのがアニメの役割となっていく。放送局の中ではテレビ東京が積極的にこれに取り組んでいる。またテレビと映画を有機的に繋いで盛り上がりを演出している『名探偵コナン』(読売テレビ)も成功例のひとつである。こう考えると、テレビ局の動向は、“テレビアニメ”だけでなく、アニメ映画にも影響してくるのは間違いのないことであるように思う。
最後に海外市場について触れておこう。アニメ産業市場における海外の売上は1兆4592億円で、昨年比111.1%だった。これは産業市場全体の売上のほぼ半分に相当する。
海外のアニメ史上はまだ伸びるのだろうか。まずテレビアニメだけでなく日本のアニメ映画がひところよりもはるかにお客集めるようになっている。作品そのものがこれまで以上に売れるようになれば、それに付随する商品も売れるようになり、今の日本で展開できるようなさまざまな派生ビジネスが広がる可能性がある。同レポートは、国内における作品ビジネスと派生ビジネスの規模がおよそ1:3~1:4であることを踏まえ、海外ではこの派生ビジネスのゾーンが(開拓にはチャレンジが必要ではあるが)残されたフロンティアであることを指摘している。
つまり今は、単に作品を海外で上映するだけにとどまらず、日本のアニメ産業の生態系をいかに海外でも構成するのか、を考える時期に来ているのである。