「シティーハンター」最大の敵役・海原神― 原作&「キャッツ・アイ」での活躍をプレイバック! 劇場版での決着はどうなる? | 超!アニメディア

「シティーハンター」最大の敵役・海原神― 原作&「キャッツ・アイ」での活躍をプレイバック! 劇場版での決着はどうなる?

敵キャラにスポットを当てる「敵キャラ列伝 ~彼らの美学はどこにある?」第38弾は、『シティーハンター』より海原神の描写を考えます。

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『劇場版シティーハンター 天使の涙(エンジェルダスト)』場面カット(C)北条司/コアミックス・「2023 劇場版シティーハンター」製作委員会
  • 『劇場版シティーハンター 天使の涙(エンジェルダスト)』場面カット(C)北条司/コアミックス・「2023 劇場版シティーハンター」製作委員会
  • 『劇場版シティーハンター 天使の涙(エンジェルダスト)』(C)北条司/コアミックス・「2023 劇場版シティーハンター」製作委員会
  • 『劇場版シティーハンター 天使の涙(エンジェルダスト)』場面カット(C)北条司/コアミックス・「2023 劇場版シティーハンター」製作委員会
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  • 『劇場版シティーハンター 天使の涙』(C)北条司/コアミックス・「2023 劇場版シティーハンター」製作委員会
  • 『劇場版シティーハンター 天使の涙(エンジェルダスト)』場面カット(C)北条司/コアミックス・「2023 劇場版シティーハンター」製作委員会
  • 『劇場版シティーハンター 天使の涙(エンジェルダスト)』場面カット(C)北条司/コアミックス・「2023 劇場版シティーハンター」製作委員会
    アニメやマンガ作品において、キャラクター人気や話題は、主人公サイドやヒーローに偏りがち。でも、「光」が明るく輝いて見えるのは「影」の存在があってこそ。
    敵キャラにスポットを当てる「敵キャラ列伝 ~彼らの美学はどこにある?」第38弾は、『シティーハンター』より海原神の魅力に迫ります。

『劇場版シティーハンター 天使の涙(エンジェルダスト)』に海原神が登場すると聞いた時、原作ファンはさぞ興奮したことだろう。海原は、物語を通して最後の大ボスと言える存在であり、獠との因縁の深さもあってドラマとしても最高潮の盛り上がりを見せるからだ。

そこで、本連載では今回、海原が原作においてどのような存在として描かれたか、あらためて振り返ってみよう。

『劇場版シティーハンター 天使の涙(エンジェルダスト)』

■槇村殺害に関与したキーパーソン

マンガ『CITY HUNTER』は、新宿を根城にするスイーパー冴羽獠とその相棒・槇村秀幸が様々な依頼を請け負うハードボイルドな物語として始まる。しかし、槇村は物語の序盤で死の麻薬組織と呼ばれるユニオン・テオーペに殺されてしまう。ここから冴羽獠と槇村の妹・香がコンビを組むことになり、よく知られるコンビが出来上がる。

槇村は物語序盤にしか登場しないが、その死はシリーズ全体を通して大きな影響を持っている。そもそも、香は裏社会の人間ではなかったのに獠のパートナーに名乗り出たのは、兄が殺されたことがきっかけだ。ユニオン・テオーペとの抗争は、『CITY HUNTER』の物語の原形を形作ったエピソードなのだ。

そのユニオン・テオーペを束ねる人物が海原神だ。物語序盤では、この人物の全容は描かれず、巨大組織の首領であることのみが言及される。彼らが槇村を殺害したのは、日本進出に邪魔な存在としてシティーハンターの2人をリストアップしていたからであり、自分たちの依頼を受けない場合は殺すつもりだったことが示唆される。獠と香は、日本進出の責任者であるジェネラルを打倒することで、一筋縄ではいかないことを組織にさとらせ、日本への進出を一端は諦めさせることに成功する。

『劇場版シティーハンター 天使の涙(エンジェルダスト)』場面カット

そして、原作の最終盤にユニオン・テオーペと海原は再び登場。今度は全面的に獠たちとの戦いとなり海原の素性も明らかにされる。なんと海原は、孤児で自分の名前もわからなかった獠に「冴羽獠」という名前を与えた人物で、彼の育ての親と言える存在だった。ゲリラとして多くの戦場を渡り歩いていた海原は、獠に戦い方を教えた存在でもあり、父であり師でもあると言える。

元々、海原は理知的な人物だったようだが、戦争の狂気に呑まれていくうち、エンジェルダストという麻薬によって兵士を強靭かつ洗脳状態する策を立案、自身の作戦の有用性を示すために一人の若い兵士を騙してエンジェルダストを投与する。その若い兵士がほかならぬ獠だった。獠にとって海原は、誰よりも慕っていた「親父」であり、同時に自分を裏切った男でもあり、かつての相棒・槇村の仇でもあるのだ。

海原は、表向きは紳士的にふるまう人物として描かれる。物腰が穏やかで丁寧な言葉遣いをするが、奥底には底知れない狂気を秘めており、飛行機を爆破するという凶行に及んだ時も拍手しながら「ショー」だと言い放つ。獠の親友ミック・エンジェル(おそらくアニメの劇場版には登場しない)に対しても、獠の殺害という依頼を果たさなかった彼を、瀕死の重傷を負わせた後にエンジェルダストを投与して獠と戦わせるという非道っぷりだ。

かつて放送されたテレビアニメ版においては、槇村を殺害した組織の名前も「赤いペガサス」に変更されていたが、今回の劇場版で赤いペガサスはユニオン・テオーペの下部組織であることが判明し、原作とアニメ版、ともに槇村の殺害に海原が関与していることが決定づけられた。

■同姓同名キャラが『CAT'S EYE』にも登場

『劇場版シティーハンター 天使の涙(エンジェルダスト)』場面カット

この海原神は、実は同姓同名のキャラクターが北条司のもう一つの代表作『CAT'S EYE』にも登場する。

原作者曰く、「作品世界が異なるので同一人物として描いてはいない」そうだが、「同一人物だと思いたい人はいろいろ考えて楽しんで」とも書いている。今回の劇場版では、シティハンターとキャッツ・アイが同じ世界に存在しているので、同一人物だと想像する余地が増えていることもあるので、『CAT'S EYE』でどんな活躍をしたのかも振り返っておこう。

『CAT'S EYE』版の海原は、性格やその謎めいた存在感に巨大組織を率いていることなど、『CITY HUNTER』版といくつか共通点を見出せる。『CAT'S EYE』原作マンガの10巻に登場する海原は東洋財団という組織の総帥で、財宝を運ばせるドライバー探しのために南の孤島でレース開催。その勝者である来生瞳にドライバーとなるよう持ち掛ける。

キャッツ・アイの正体を見抜いており、その情報網と組織力は相当なものなようで、裏社会にも通じている。紳士的だが残忍な部分を持ち合わせている面も『CITY HUNTER』の海原とも共通する。事件後、忽然と姿を消してしまい、謎めいた人物として描かれるので想像力を掻き立てられるキャラクターだった。

ちなみに、海原はテレビアニメ版『キャッツ・アイ』にも登場する。こちらは原作版と設定が異なり、最後には死亡したことがはっきりと描かれる。アニメ版の海原は世界征服をたくらみ、瞳にアメリカ軍の衛星兵器のコントローラーを盗み出すように指示する。戦闘ヘリなどの重火器も所有しており、かなりの危険人物として描かれている。ちなみに、戦闘ヘリで瞳たちを追い詰めるシーンでは、名作戦争映画『地獄の黙示録』のパロディ演出が観られる。

『劇場版シティーハンター 天使の涙(エンジェルダスト)』場面カット

■劇場版はどう決着する?

原作版『CITY HUNTER』と『CAT'S EYE』の描写両方を合わせると、相当に巨大な組織を束ねていることになる海原だが、その原点には戦争体験がある。数々の国で革命を成功させたこともあるという彼には、正義のために戦っていた部分もあったはずだが、戦場の狂気に蝕まれていくことでエンジェルダストという「禁断の果実」に手を出してしまった。そして、その狂気を抱えたまま、ユニオン・テオーペという巨大シンジゲートを築くに至ったのだ。

海原は獠のことを「息子」と呼ぶ。それは皮肉で言っているわけではなく、実際に親子の情を持っているからだ。そういう情を抱いているからこそ、狂気の奥底に秘められた良心も獠には見えている。2人の戦いは愛と憎しみが交錯する、非常に奥深いドラマを生み出していた。

劇場版において、2人の決着はどのように描かれるのだろうか。原作以上にエモーショナルな展開を期待したい。



(C)北条司/コアミックス・「2023 劇場版シティーハンター」製作委員会
《杉本穂高》
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