演じ手によってキャラクターの見え方が変わるから面白いー劇団「おぼんろ」夏公演に出演する大久保桜子と二ノ宮ゆいが語る舞台・芝居の魅力と夏の思い出 | 超!アニメディア

演じ手によってキャラクターの見え方が変わるから面白いー劇団「おぼんろ」夏公演に出演する大久保桜子と二ノ宮ゆいが語る舞台・芝居の魅力と夏の思い出

劇団「おぼんろ」の舞台公演に出演する大久保桜子・二ノ宮ゆいのふたりにインタビュー。

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 廃工場での公演開催や、参加者が場内を歩きながら分岐していく物語を楽しむ演劇などを展開する劇団「おぼんろ」。まさに神出鬼没、あらゆる場所で物語を紡いできた彼らが届ける舞台公演「瓶詰めの海は寝室でリュズタンの夢をうたった」が、2022年8月18日(木)より開催される。

 本公演は、2021年夏に東京・池袋で一度上演されたものに、新たな演出などを加えたもの。主人公が男女Wキャストなことをはじめ、日毎に組み合わせが変わる役柄固定のミックスキャストシステムで展開されるなど、物語や演劇の持つ新たな可能性に挑戦している。

 今回は、本作でサンゴの姫役を演じる大久保桜子・二ノ宮ゆいのふたりにインタビュー。本作への印象や、物語のテーマでもある「夏休みの思い出」について語ってもらった。

「瓶詰めの海は寝室でリュズタンの夢をうたった」STORY

トノキヨは、ヨボヨボシワクチャで老人だ。夢も希望もないまま、何十年ものあいだ誰とも関わらず独りぼっちで生きてきた。毎晩、次の日の朝が訪れることを心底嫌がり、朝目覚めると、早く夜が訪れ1日など終わればいいと願い続ける毎日を繰り返していた。ある夏の夜、トノキヨのもとに、水色の少年が現れた。少年は自らをクラゲと名乗り、小瓶を掲げて声を弾ませた。

「海を盗んできた!」

覗き込むと、小瓶の中には海が入っていた。戸惑うトノキヨなどおかまいなしで少年が小瓶を床に叩きつけると、中からは海があふれ出し、ベッドは瞬く間に大海原に放り出されたのだった。トノキヨは困ってしまった。なぜならその晩トノキヨは、生きていることが嫌になって眠り薬をたらふく飲んだのだった。

あなたは小学5年生の夏休み、何をしていましたか?大人になりたかったわけではないのに、子供ではいられなくなってしまったすべてのあなたに贈る、風変わりなファンタジック冒険譚。進もう、覚めては始まる夢の先まで。

生きていくうえで大事なことを伝える、重たい物語

――本作に触れたときの感想を教えてください。

大久保 2021年の公演を一度見させていただいたのですが、その場で泣いてしまうくらい心に刺さりました。命や友情の大切さなど、生きていくうえで大事なことを教えてくれる作品で、演じているいまも本当に素敵な物語だなと思い続けています。

二ノ宮 何も知らない状態で脚本を読み進めていくと、まずは楽しい作品だなという気持ちになりました。ただ、中盤ぐらいで「あれ。もう終わりそうだけど、どうなるの?」と、ハラハラしてきて。その後、色々な真相が分かってくるなかで、最終的には重たいテーマを扱っている作品だと感じました。脚本をいただいたときは既にサンゴの姫を演じると分かっていたので、彼女に共感しよう、分かろうと思いながら読んでいたんです。そうしたら、すごく悲しい気持ちになりました。桜子ちゃんが言っていたように、本作は、人が生きていくうえで大事なことを教えてくれる物語です。内容が重たいからこそ、よりそれが伝わるんじゃないかと思っています。

――続いて、Wキャストとしておふたりが演じるサンゴの姫の紹介をお願いします。

大久保 彼女は主人公・トノキヨら一行が小学生の頃の自由研究課題を探すために海の底へ会いに行った、占いの得意なお姫様です。演じていて強い女の子だなと感じました。

二ノ宮 ですよね!

大久保 表面的に見たらちょっと図々しいというか……。自己中心的な子なんですけども、実は愛が深くて愛おしい子なんです。自分が演じるから、ちょっとひいき目に見ちゃっているかもしれません(笑)。

二ノ宮 分かります! 根が優しくて本当は繊細な子だということが想像できるからこそ、彼女の行動すべてを見るのが、辛くなってきちゃって……。演じているからこそ共感して、どんどん悲しくなっちゃいました。でも、心がボロボロになってからの彼女は行動力がすごくて、たくましいんです。色々なことを抱き抱えながら、決意をしていくキャラクターですね。

――本日はおふたり揃って稽古をされたとお聞きしました。お互いにサンゴの姫を演じている姿を見て、どんな気づきがありましたか?

二ノ宮 桜子ちゃんはとても繊細にサンゴの姫を表現していました。ふいに出る悲しい顔をはじめ、ひとつひとつの反応が「あぁ、サンゴだ」と思わせてくれるんです。生のお芝居のよさってこういうことなんだろうなと感じました。

大久保 ゆいちゃんは優しくておっとりしていて、根っからの性格が良くて、それがサンゴを演じるときにも出ている気がしました。先ほど言ったように、サンゴは自己中心的な考えのキャラクターなのですが、ゆいちゃんが演じると、根はきっといい子なんだろうなと思えてくるんです。あと歌声がとても美しくて、見て、聞いているだけで癒されました。

二ノ宮 ありがとうございます!

大久保 そういえば今日の稽古で、(演出・脚本を担当する劇団代表の) 末原拓馬さんに「ゆいちゃんが演じるサンゴは明るいサンゴ、桜子ちゃんが演じるサンゴは根暗なサンゴ」と言われました。

――同じ役なのに、演じるキャストによって少しキャラクターが違って見える。それは、お芝居ならではの面白さかもしれません。

二ノ宮 私は何度か舞台を経験したことがあるのですが、今回のようなミックスキャストは初めてなんです。同じ役を日によって違うキャストが演じるので、今までの舞台とは違う面白さを感じていますね。

――一方の大久保さんは今回が初舞台となります。ドラマなどでの芝居経験はありますが、そのときと感覚は異なりますか?

大久保 違いますね。映像でのお芝居って、相手にエネルギーを出してキャッチボールし合うという印象が私の中にはあるんです。ただ、舞台でのお芝居となると、相手じゃなくて観客席にもエネルギーを向けないといけないんですよ。常にお客さんから見られる状態なので、どこから見られてもいいように意識する必要があります。また、映像のお仕事とは違って「カット」がないので、気持ちを繋げたままお芝居をしなければなりません。そういう意味で、たった一言でも集中力を使うと感じています。それが楽しさでもありますね。

――二ノ宮さんは声優として声でお芝居するお仕事をされています。声のお芝居と舞台でのお芝居では、意識する点は異なりますか?

二ノ宮 声でお芝居するときって、一つの文節内でたくさんの感情を入れることが多いんです。時には単語ひとつ、ひとつに感情を山盛りの状態にしてやっとアニメーションの絵にのるくらいのときもあります。今回の舞台でも、本読みの段階で声のお芝居をするときの癖が出てしまって、ひとつのセリフ内で「ここの単語で悲しくなって、ここで明るくなる」という感情の動き方をまずは作ってしまいました。自分の体の動きや相手の目線、相手から受け取って返すというのを意識する前に声のトーンだけ作ってしまったことで、違和感が生まれちゃったんですよね。お芝居の難しさを痛感しました。

――声でのお芝居をする際も体を使ったり自然と動いたりすることもあると聞きます。ただ、演じる役者さんの最終的なお芝居の出どころとしては、「声」のみですもんね。体の動きが映像にのる訳ではない。

二ノ宮 そうなんですよね。例えば何かに気づくようなリアクションをするとき、声のお芝居では「ハッ!」と声に出して表現することがあります。ただ、舞台のときは本当に吐息だけとか表情で表現することもあって。そういう違いがあると感じています。

――お芝居の難しさや楽しさを感じているとのことでしたが、そもそも、おふたりがお芝居に興味を持つきっかけは何でしたか?

二ノ宮 小学生の頃にTVアニメ『進撃の巨人』を見て、ミカサの声に一目惚れならぬ、一声惚れしたのがきっかけです。あのとき、アニメのキャラクターに声を当てる仕事があるということを知り、声優という職業ってすごいなとも思うようになりました。ミカサを演じていらっしゃる石川由依さんは、今でも、そしてこれからも私の憧れです。『進撃の巨人』と石川さんがお芝居に興味を持つきっかけでした。

大久保 いま振り返ってみると、興味を持つきっかけになったのはデビュー作でもある『宇宙戦隊キュウレンジャー』かもしれません。テレビシリーズのときは正直、お芝居が楽しいという感覚はあまりありませんでした。毎日撮影が続くので、風邪をひかないようにしなきゃ、明日も早く起きなくちゃ、頑張らなきゃという気持ちが強かったです。ただ、テレビシリーズの後に戦隊Vシネマや映画でも何度かハミィを演じさせていただくなかで、「あれ、お芝居って楽しいな」って思えるようになって。特に戦隊Vシネマは自分のアイデアを芝居に足せる部分も多く、セーブしてきたものをいい意味で解き放ちながらお芝居することができました。

――お芝居が好きになった?

大久保 はい。好きになりました。

二ノ宮 私もお芝居は好きだなと思うことはあるのですが、声のお仕事でも舞台でも、言われたことに対してちゃんと返さなきゃ、って気持ちが強くって……。今はまだ「好きになれる努力をしている段階」かもしれません。


大久保桜子【画像クリックでフォトギャラリーへ】

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それぞれの夏休み

――「瓶詰めの海は寝室でリュズタンの夢をうたった」は「小学5年生の夏休み」がキーワードの作品です。おふたりは小学生の頃、どんな夏休みを過ごしていましたか?

二ノ宮 私、小学4年生の頃に転校をしたんです。その転校先の小学校には、いわゆるアニメオタクの子が多くって。そこで、私もインターネット文化やアニメに触れるようになりました。転校してからの夏休みはオタク友達と色々と情報交換しながら、漫画を読んだり、動画を見たりしていました。特に鬼のようにハマっていたのはボーカロイド(ボカロ)。小学5、6年生の頃は、ボカロ曲の元になった小説などを読んでいましたね。

大久保 私、小学生の頃は週7日のうち、6日は習い事をしていたんです。

二ノ宮 えぇー!?

大久保 だから、実は夏休みに遊んだ記憶があんまりなくって。家庭教師の授業、塾、そろばん、水泳……。1日にふたつの習い事が重なる日もありました。そもそも私の通っていた学校は半分以上の子が色々な地方から集まってきた寮生で、夏休みだから近所で遊ぼうという感じでもなかったんです。海外を含めて遠くへ帰省する子も多かったので、友達もあまりいませんでした(笑)。

二ノ宮 桜子ちゃんが稽古場で「学生時代は友達がいなかった」と言っていたから「またまたぁ!」と思っていたけど……。そういう背景があったのか。

大久保 実は……。ただ、忙しかったというのもあるんですけど、人見知りもあって馴染めなくって。

――そういう経験をして今の「楽しい」がある。

大久保 本当に、そう思いながら生きています(笑)。

――では、大人になってからの夏の過ごし方はいかがですか?

大久保 学生の頃はあまり友達がいなかったのですが、芸能の仕事をはじめてからは気の合う人が増えたんです。業界の人って、いい意味で変わった人が多いこともあって、無理に周りに合わせなくていいんですよね。その環境が私には合っていたのかもしれません。気が楽になって、仲良くなれそうと思う方がどんどん増えていきました。今では共演者の方や芸能関係の友達と夏にバーベキューすることもあります。友達の作り方を芸能界が教えてくれました(笑)。

二ノ宮 この業界は特にそうなのですが、お仕事をしていると学生のような長期の休みを取れることがあんまりなくって。それでも、遊べるときに遊んどけ! 色々な経験を積む時間だ!と思って、学生時代から仲の良い友達などと、のびのび夏を楽しんでいます。

舞台は観客が参加している気持ちになれる

――せっかくのお二人揃ってのインタビューなので、お互いに聞きたいことがあればこの機会にぜひ!

大久保 はい! はじめましてのときに思ったのですが、声優さんを目指す前から、素敵な声だったんですか?

二ノ宮 えぇ!?

大久保 声優さんって、素敵な声質だったり、スッと耳に入ってくる喋り方をされていらっしゃったりするので、すごいなと思っていて。それが日々のトレーニングによる賜物なのか、元々そうだったのか気になっていて。

二ノ宮 私は自分の声がすごくコンプレックスだったので、聞きやすいと思っていただけているなら、本当に嬉しいです!

大久保 えっ、そうなんですか!?

二ノ宮 はい。自分の声を聞くのが嫌で嫌で……。アニメに適した声でもないし、声優には向いてない声質だろうと思っていました。

大久保 でも私、ゆいちゃんにはじめて会って声を聞いた瞬間、心を持っていかれましたよ。

二ノ宮 そうやって「いい声だね」と言ってもらえるように頑張ってきたので、いま一つのゴールを迎えた感があります(笑)。嬉しいな。私は声優になりたいという一心で声のトレーニングをしたタイプです。もともと声が武器という方もいらっしゃるから、桜子ちゃんの質問に対する答えは「人による」かな?

大久保 なるほど!

二ノ宮 私からは……質問じゃないですが、初めてお会いした時から親近感が湧いていました! 最近の私のモットーが「元気に生きる」なのでハキハキ喋るようにしていますが、元々は声は小さいし、常に下を向いている感じで……。

大久保 あれ、これっていい意味として捉えていいやつですか(笑)?

二ノ宮 いい意味です! 年齢差を感じさせないくらい物腰が柔らかで、助かっています。

大久保 おかしいなぁ。現場に入る度に根暗と思われないようにしないと!って、意識しているはずなのに(笑)。もしかしたら、根底で通ずる部分があるのかな? でも親近感が湧くという言葉は嬉しいです。

二ノ宮 私の方が年下なので、イイ感じに雑に扱ってください!

大久保 雑に(笑)。でも、私は姉御肌なタイプじゃないし、ゆいちゃんはすごく落ち着いていてしっかりしているので、同い年くらいの気持ちで接することができます。いい子。

二ノ宮 ありがとうございます!

――今回のインタビューは、アニメ媒体「超!アニメディア」に掲載されます。ぜひ、アニメは見るけど舞台はまだあまり興味がないという方々に、おふたりが思う舞台の魅力を伝えていただければと思います。

大久保 私、もともとは舞台を見る習慣がなかったんです。お芝居をするのは映像のなかというイメージが強くありました。ただ、芸能の仕事をはじめてから舞台を見に行くようになって、演じている人たちのお芝居に生で触れられるということのよさを知りました。ひとつ、ひとつのカット割りもないのでぜんぶ繋がっていて、自分も物語に入っているような、参加している気持ちになれるんですよね。それが舞台の魅力かなと思います。

二ノ宮 劇団「おぼんろ」さんの公演は、照明をふんだんに使ったり、セットが動いたりと、演出効果も凝っているものが多いんです。視覚的に楽しめる要素もたくさんあるので、アニメ好きの方もきっとワクワクしながら見られると思います。ダークなストーリーのアニメが好きな方には、本作の物語は特に刺さるんじゃないかな。

――最後に、本公演の推しポイントを教えてください。

大久保 今回の公演は演出がオシャレでカッコいいので、私も本番が楽しみなんです。見ている人が圧倒されるような公演にしようとみんなで頑張っています。個人的には、5人のキャスト全員がリアカーに乗りながら歌うシーンに注目して欲しいですね。各キャラクターの闇の部分が垣間見えるなかで、歌っているときだけは本当に幸せそうなんですよ。それが演じている身としても、グッとくるんです。生きていると大変なことや嫌なこと、苦しいことってあると思います。それでもこの舞台を観れば、ちょっと勇気をもらえる。そんな作品になればいいなと思いながら稽古を頑張っていますので、ぜひ劇場に足を運んでください。

二ノ宮 今回はミックスキャストという、日によって座組が変わる不思議な舞台です。特に主人公は、性別まで変わっちゃうんですよ。性別が変わると、色々なキャラクターとの関係性や距離感にも変化が生じます。物語の雰囲気が日によって変わるので、一度と言わず、ぜひ何度も味わってもらえたら嬉しいですね!

取材・執筆/M.TOKU

プロフィール
大久保桜子(おおくぼ・さくらこ)7月20日生まれ。神奈川県出身。HI RANK INDUSTRIES所属。2017年に『宇宙戦隊キュウレンジャー』のハミィ/カメレオングリーン役を担当。以降、テレビドラマやCM・グラビアなど、活躍の場は多岐にわたる。2021年に自身の公式YouTubeチャンネルを開設した。

二ノ宮ゆい(にのみや・ゆい)9月6日生まれ。神奈川県出身。ホリプロインターナショナル所属。2017年の次世代声優ミラクルオーディションで特別賞を受賞。2018年にテレビアニメ『アイカツフレンズ!』の日向エマ役で声優デビューを果たす。声優としての活動のほか、「ニノミヤユイ」名義でアーティストとしても活動中。

劇団おぼんろ 第21回本公演「瓶詰めの海は寝室でリュズタンの夢をうたった」公演情報
【日程】2022年8月18日(木)~8月28日(日)全19ステージ
【場所】Mixalive TOKYO Theater Mixa
【チケット価格】
一般チケット:7,800円
2階席チケット:4,600円
※その他、特別付チケットあり

●オンライン生配信について
【配信日】
8月24日(水) 13時の回<出演者:さひがし、末原、日向野、瀬戸、大久保>
8月24日(水) 19時の回<わかばやし、橋本、高橋、塩崎、二ノ宮>
【配信プラットフォーム】
uP!!!、TELASA
【配信チケット料金】
配信限定特典付きプレミアムチケット:5000円(税込)
一般チケット:3500円(税込)

※その他、各キャストの出演日、チケット情報の詳細などは「おぼんろ」公式サイトをチェック。

《M.TOKU》
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