「残された者の視点から歌詞を書いた」『うたわれるもの 二人の白皇』主題歌を担当するSuaraインタビュー | 超!アニメディア

「残された者の視点から歌詞を書いた」『うたわれるもの 二人の白皇』主題歌を担当するSuaraインタビュー

 TVアニメ『うたわれるもの 二人の白皇(ハクオロ)』のOP・EDテーマ曲を担当するアーティスト・Suara。これまでのシリーズでも主題歌や挿入歌を数多く担当してきた彼女が、今回の楽曲に込めた想いとは。リリースを控えた彼女にお話を聞いた。

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 TVアニメ『うたわれるもの 二人の白皇(ハクオロ)』のOP・EDテーマ曲を担当するアーティスト・Suara。これまでのシリーズでも主題歌や挿入歌を数多く担当してきた彼女が、今回の楽曲に込めた想いとは。リリースを控えた彼女にお話を聞いた。

Suaraっぽさを引き出してもらった

――Suaraさんは『うたわれるもの』シリーズのテーマ曲や挿入歌を数多く担当されています。そして今回、TVアニメシリーズ最終章となる『二人の白皇(ハクオロ)』でもOP・EDテーマ曲を担当することになりましたね。

 TVアニメシリーズの前作にあたる『うたわれるもの 偽りの仮面』の放送が終わったのが2016年3月。しかも、「ここで終わるの!?」という幕引きだったので、早くアニメで続きを見たいと心待ちにしていました。まずはシリーズの一ファンとして、アニメ続編が決まったことがとても嬉しかったですね。そのうえで、再び主題歌を任せてもらえたなら力を発揮できるようにと、準備していたんです。実際にお声がけいただけたときは、これ以上の幸せはないなと思いました。今回が最終章ということなので、心して取り組まねばと意気込みましたね。

――OPテーマ曲は「人なんだ」。アップテンポな楽曲ですね。

『偽りの仮面』のOPテーマ曲「不安定な神様」も私のなかではかなりアップテンポだと感じる楽曲でしたが、今回はそれを超えてくるロックな曲でビックリしました。あまりにも私の引き出しにはない楽曲で、最初は自分の声が曲に乗るイメージが湧かなかったです。不安な気持ちのままプリプロ(仮レコーディング)に臨んだのですが、下川(直哉)プロデューサーのディレクションのおかげで方向性が見えてきました。

――実際にどのようなディレクションがありましたか?

 最初に歌った時、私はロックでアップテンポな曲だからと、すべての言葉にアタックを付けていました。ただ、それだとガチガチに力が入ってしまい、シンプルなメロディラインの曲に合わなかったんです。自分でもしっくりこないなと思っていたとき、下川さんが「メロディの長さに合わせて、音符の間もぜんぶ埋まるような感じで歌ってみて」とアドバイスしてくださいました。それで歌ってみたら、Suaraっぽさを感じることができたんです。下川プロデューサーが私のなかにはなかった歌い方を、引き出してくださいました。

――歌詞からは『うたわれるもの』の物語を感じます。

「この部分はあの場面のことを歌っているのかな」など想像していただける歌詞になっていると思います。最終章は初っ端からシリアスな展開が続いていて、これからも切ないシーンが出てきます。「人なんだ」はそういったシリアスな要素と、それでも登場人物たちが力強く歩んでいることを感じられる楽曲に仕上がっているんじゃないかな。

――もしかすると、一話を見たときと最終話を見終えた段階で、楽曲の印象が変わるかもしれないですね。

 そうかもしれません。物語が進んでいくごとに、色々な考察をしながら聞いてみて欲しいですね。

残された者の気持ちを歌詞に

――続けて、EDテーマ曲「百日草(ひゃくにちそう)」についてお聞きします。こちらは、巽明子名義として作詞も担当されていますね。まずは詞に込めた想いについておうかがいできればと思います。

 本作の主人公であるハクを思いながら歌詞を書いています。彼は、友であるオシュトルの意志と仮面を引き継いで生きていくことを決めました。友のために、友から言われた責任を果たすために色々な葛藤がありながらもオシュトルとして生きています。そんな彼の想いを、残された者の視点から詞にしてみました。

――残された者の視点。

 はい。人生のなかで、多くの方が大切な人との別れを経験すると思います。本作においても、ハクの声を担当されていた藤原啓治さん、これまで多くの楽曲を制作されてきた音楽家の衣笠道雄(本名:豆田将)さんという大切なお二人との別れがありました。別れのとき、私はとてつもない喪失感に襲われました。ただ、残された者として、私には作品を繋いでいくためにやることがあると思ったんです。そういった残された者の気持ちを歌詞にしています。

――ハクの気持ちに共感しながら歌詞を書いた。

 そうですね。私、デビュー時から衣笠さんにたくさんの曲を書いていただいたんです。だから、私が歌手活動を続ける限りずっと、衣笠さんが書いた曲を歌っていくのが当たり前のように思っていました。そんな気持ちでいたなかでの、衣笠さんとの別れ。「なんでいなくなっちゃったの」「衣笠さんの新曲を歌えないSuaraはどうしたらいいの」と崩れ落ちました。ハクも作中で「これが残された者の責任かよ」という葛藤を言葉にしたり、「お前だったらこういうとき、どうしていたんだよ」と問いかけたりしています。そういった葛藤や大切な者を失った喪失感は、特に共感できますね。

――「ずっと」や「永遠」と信じていても、続かないことってありますよね……。

 この歌詞の冒頭でも、ずっと続いて欲しいという願いがあっても、永遠はないのが定めであるということを綴っています。続いて欲しいと思っていたことを失った時の寂しさって、尋常じゃないんですよね。作品のテーマと合わせて、そういう気持ちに寄り添える曲になればと思いながら作詞しました。

――改めて『うたわれるもの』という作品は、重たいテーマが描かれていると感じました。

 そうですね。だからこそ、ひとつひとつのセリフが胸に刺さるんだと思います。

――本曲のレコーディングはいかがでしたか?

 河井英里さんが歌唱されたTVアニメ第1期『うたわれるもの』のEDテーマ曲「まどろみの輪廻」をリスペクトして歌いました。河井さんはサビの部分で優しくフワッと切るような歌い方をされていたので、私も音に合わせて切るという歌い方を意識しています。レコーディング時にも、「百日草(ひゃくにちそう)」は「まどろみの輪廻」をオマージュして制作しているとスタッフの方がお話されていました。また、曲を聞いた視聴者の方が「まどろみの輪廻」の雰囲気を感じたという感想をSNSなどで呟いてくれていたんですよ! 伝わっていてよかったです。

『うたわれるもの』はライフワーク

――これまでシリーズに関わってきたSuaraさんが感じる『うたわれるもの』の魅力は?

 まずは、敵を含めて登場人物みんなが愛おしいところ。キャラクターの性格やバックボーンがしっかりと掘り下げられているので、各キャラクターに思い入れができます。視点を変えるとそれぞれに色々な考え方や立場があると分かるので、どのキャラクターも魅力的に映るんですよね。あとは重たいテーマのなかにも、ほっこりする日常が描かれている点も好きです。

――では、『うたわれるもの』はSuaraさんにとってどんな存在になっていますか?

 おこがましいですが、ライフワークなのかなと思っています。というのも、先日、ママ友の一人に『うたわれるもの』の主題歌を歌っているから見てねと宣伝したときに「ずっと歌っているんだね。もうライフワークだね」と言われまして。デビュー当時にTVアニメ『うたわれるもの』の主題歌を担当してから16年。シリーズは20周年を迎えましたが、私はその内の16年もの間、作品に関わらせていただいています。『うたわれるもの』を通じて、歌手としても成長してきました。そして、これからも成長していきたい。『うたわれるもの』は私にとって、呼ばれたら必ず期待に応えられる自分でいたいと思わせてくれる「ライフワーク」のひとつですね。

――そんなSuaraさんにとって歌とは? SNSのプロフィール欄には「歌に苦しめられ、また歌に救われ、歌と共に生きております」と書かれていますが……。

 デビュー前のただ純粋に歌が好きだったころ、デビュー当時、仕事として歌うようになってさらに歌と向き合うようになったときと、歌への想いはその時々で少しずつ異なりました。時には、思うように歌えなくて自分へのいら立ちが隠せなかったこと、仕事として歌ってなかったらこんな思いをすることはなかったと感じることもありました。それでも、歌が好きな自分でよかったなと心底思っています。

――歌からちょっと離れたい、歌うのが嫌になったという瞬間はこれまでなかった?

 苦しいと思うときや求められていることができない自分が嫌なときはありましたが、歌が嫌いと思ったことはないですね。生まれ変わっても、またSuaraとして歌いたい。それくらい私にとって歌は大切なものです。

――本日は色々とお話ありがとうございました。最後に今後やりたいことについて教えてください。

 ライブをやりたいです! 2016年に開催された「うたわれるもの SUPER LIVE 2016」では、それまでに生まれた『うたわれるもの』関連の楽曲をすべて披露しました。それからもたくさんの曲が誕生していますので、それらの歌をみなさんに生で届けたいですね。

取材・執筆/M.TOKU

「人なんだ」リリース情報
発売日:2022年7月27日(水)
価格:1,430円(税抜価格1,300円)
収録曲:
1.人なんだ ※TVアニメ『うたわれるもの 二人の白皇』OPテーマ
2.百日草(ひゃくにちそう) ※TVアニメ『うたわれるもの 二人の白皇』EDテーマ
3.The Light
4.人なんだ(Instrumental)
5.百日草(Instrumental)
6.The Light(Instrumental)
※デジタル版はハイレゾ(24bit/96kHz)も配信予定。
※通常ジャケットはキャラクター原案および、原作イラストレーターである甘露樹描き下ろしのイラスト仕様。初回製造分スリーブジャケットはアニメスタッフによる描き下ろしアニメイラスト仕様。


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(C)うたわれるもの二人の白皇製作委員会
《M.TOKU》
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