『ワールドエンドヒーローズ』キャラクター原案・AKIRAとシナリオディレクター・深澤瑠衣子が語るキャラクター制作秘話 | 超!アニメディア

『ワールドエンドヒーローズ』キャラクター原案・AKIRAとシナリオディレクター・深澤瑠衣子が語るキャラクター制作秘話

キャラクター原案・AKIRAとプランナー・深澤瑠衣子がキャラクターの制作秘話について語る。

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 2018年11月13日より配信がスタートしたシチュエーションスタイルRPG『ワールドエンドヒーローズ』。発売中のアニメディア5月号では、キャラクター原案・AKIRAとシナリオディレクター・深澤瑠衣子がキャラクターの制作秘話について語る対談が掲載中だ。超!アニメディアでは、本誌とは異なるお二人のインタビューを展開!

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キャラクター原案制作秘話


――各キャラクターの原案について、アニメディア5月号に入りきらなかったお話を教えてください。

【三津木 慎】
AKIRA キャラクター原案が決まったあとも、正規のキャラクターデザインが各媒体に沿う形で作られます。たとえばアニメなら、アニメで動かしやすいように……とかですね。三津木くんは、原案の要素を入れつつ、まろさんと杉山さんのイラストでさらに透明感のある素敵な男の子として表現していただきました。そのため、逆にゲームで実装された素敵な部分を私が意識して描こうとするとなんだかうまくいかず、あえて原案版として描くくらいの方が良いかもしれない、それではよくないのかもしれないと葛藤があり……そういう意味では、彼は原案とゲーム内でのギャップが大きいキャラだと思います。

深澤 最初AKIRAさんに依頼したときは、三津木の役割って遠隔武器を使う「回避タンク」でした。どちらかというと今の戸上さんの立ち位置だったんですけど、プロットが上がってからちょっと設定を調整した結果、じわじわと細身になっていきました。

【斎樹 巡】
深澤 最初は瞳の1/4を金色にしようと思っていたんです。でも、ラ・クロワ学苑の3人を並べたバランスを考えたとき、全員が露骨にオッドアイであるよりも、「違うように見えるけど性質は同じ」に見えるようにしたかったので、キャラクターデザインに起こす段階で両眼を金色に変更しました。

AKIRA 原案をデザインしている段階で彼がデザイナーベビーであることは聞いていたのですが、まだメインストーリーが最初から最後まで出来ているわけではない状態でした。ラ・クロワ学苑3人の瞳の色についてなど、ストーリーやキャラクターのポテンシャルが定まってから決まったものも多いですね。

【志藤正義】
AKIRA 体の大きさを盛りすぎると敬遠されてしまうかもしれないので、優しさを足したいと思いました。ただ、「優しそうな色男に見えてガタイはいい」というモテモテ系の要素は御鷹くんに振ったので、いわゆる男の子から評判がいいというか……「あいついいやつなんだ」となるような優しさを加えようと考えました。強面な印象ですが、「私は彼が優しいのを知っているのよ!」と思っていただけるといいな、と。筋肉質なキャラの作中でのポジションについては深澤さんと談義しましたが、盛り上がりすぎてしまい、プロデューサーさんに「盛りすぎないようにセーブしてね」とやんわりと止めていただきました(笑)。

深澤 志藤くんの要素を盛っていくなかで泣きぼくろも足したんですけど、さすがに目元が情報過多になっちゃったので、矢後に泣きぼくろを移動させてもらいました。

【矢後勇成】
AKIRA 矢後は「不良」という設定もあり、どうやって受け入れてもらおうかと苦労した気がします。不良なので縄張り争いとかもあるだろうけれど、やりすぎると「乱暴で好きじゃない」と判断されるな、と。そこで、力を誇示しないダウナー感を髪型や姿勢に取り入れるようにしました。

深澤 矢後は最初のキャラ原案の段階では、ヤンキー的な、体を大きく見せようとする姿勢のいい立ち方と顔つきをしていたんですけど、立ち絵で並べたときに「姿勢がよくて強気な顔立ち」というポイントで武居とイメージが被っちゃって。AKIRAさんと相談し、非戦闘時である普段の立ち絵は、背中を丸めて口を開け、よりダウナー感が出るようにしました。

【武居一孝】
AKIRA 武居自身は望んでいるわけでないのでしょうけど、結果的にツッコミや調整役になっているので、本人の髪型も主張しすぎないものになりました。表情のパターンを描くなかで、照れのパターンを考えたとき、「単に赤面した表情」を出すのか、「彼が照れたときの表情」を出すのかによって全然違ってくるなと考えて。「武居が照れたときは、赤面するんじゃなくてふくれっ面をするとか横を向くとかじゃないか」と提案しました。

深澤 納得したので、キャラクターの性格上は、そんなにしょっちゅう赤面しないのを正としました。ただ、ゲームのシステム上、キャラクターの「照れ」に設定してあるところは顔に赤チークが乗るようになっているんですよね。システムを調整してチークが乗らないようにすることも出来るんですけど、やっぱりこのシステムがあることで照れているっていうのがゲーム的にわかりやすいんです。
 なので、本来は赤面しない子だけどシステムはそのままでいいかとした結果、案外照れているセリフが多くて、赤面が印象的に……(笑)。そこに関してはちょっと申し訳ないですね。

AKIRA キャラクターがどういうふうに照れるのか、どんな動きをするのかを考えるのは楽しかったです。ほかにはたとえば「御鷹(寿史)くんは照れるときに表情そのものはそこまで変わらなくても、真っ赤にするのはいかがでしょう」と提案をさせていただきました。

深澤 首まで赤くなるって提案されたような覚えがあります。ゲーム的には、御鷹は照れると耳まで赤くなるんですよ。

【伊勢崎 敬】
AKIRA デザイン時は小学生男子な中身は知らなかったんですが、設定を踏まえて表情をつけていたらもっと違ったはずなので、逆に良かったです。

深澤 一応カブトムシなど子供っぽいものが好きという設定はあったんですが、それでも初期は今よりクール系のポジションだったんですよね。送られてきた綺麗な面立ちのラフに即OKを出しました。実際シナリオを作っていったら、小学生男子感が全面に出て、キャラ立ちしましたが(笑)。

AKIRA そういう経緯で伊勢崎くんの、外見と行動のギャップや表情とのいびつさが生まれたんですが、そのいびつさも彼の魅力のポイントになるのかなと。「チョウチョだわーい」と追いかけているような男の子の中に潜んでいるもの…・…みたいなギャップが、彼のいい意味での違和感を生んでいるんじゃないかなと思います。

【佐海良輔】
AKIRA 髪の分け目を決めるときに、「こっちの髪型の彼ならすでに芸能事務所に声をかけられているのでは……?」とボツになった案がありました。

深澤 佐海はAKIRAさんがセルフリテイクをされているんですよね。最初はアニバーサリーブックの右下にある可愛い系のデザインで進んでたんですけど、AKIRAさんからの「可愛いってこれちょっと違いますよね!?」っていう話を聞いて「違うかもしれませんね!?」となり、あっという間にあがってきたリテイク版を見て「これだー!」となったのが現在の佐海です。

AKIRA デザインをしていると自分のなかの偏見や思い込みと向き合うことがあって、とくに「可愛い」に関してはいろいろ考えました。可愛い要素って、誰から見ても可愛い客観的なものと、その存在が動いたときに感じる受け手側の感想的なものがあるじゃないですか。前者の、客観的な可愛い要素で彼らを表現してしまうと、女の子っぽいというか男性向けの「可愛い」になってしまうな、と「可愛い系」で発注された佐海くんのデザインを描いているときに気づき、方向性を変えました。

【神ヶ原 衛】
AKIRA ちょっとおふざけで入れた表情もありますし、愛嬌のある表情が多めになっているかと思います。素足にサンダルのスタイルはノリで決めました。

深澤 「ドクターサンダルを履いています」っていう注釈をAKIRAさんにいただいたのでドクターサンダルを調べてみたら、これ基本的に職場とかの室内履きなんですよね。でも彼はこのまま外に普通に出て行っちゃうので、「さすがに雪のときなどで素足はかわいそうだから」と靴下を履かせました(笑)。

【UNKNOWNS】
AKIRA 深澤さんから、「室媛(安慈)を除く4人の関係は一枚岩ではない」と伺ったので、七見(薔明)以外の3人を全員人外系にしてしまうのではなく、グラデーション的に人外デザインにしようと思いました。色々考えた結果、角来(東伍)くんを一番人間寄りにして、(百片)ユウナギちゃんを一番人外に、巽(一心)さんはふたりの中間ぐらいの人外度かつ、人外の非日常感も一身に背負っていただきました。
 巽は一番人外感が中途半端になりかねなかったので、デザイン的な工夫として、服と皮膚を同化させてみました。そうすることで、人外パーツを増やさずに、人と全く異なる存在であることを見せられたらな、と。地球と人間が彼らにした仕打ち……つまりヒーローの宿命を背負わせておいて結局は放逐した事の現れを、視覚的になんらかの形で持たせたかった。彼らが、ホモ・サピエンスではないというだけの「別の性質を持った人類」に見えてはいけないなと。ただその結果、彼らの生活する姿が想像できない、という問題が……。みんなもう人間ではないので、一般的な人類としての暮らしをしていないのではと思います。
 ちなみに七見くんの見た目は、深澤さん的に入れたかった要素がヒーロー側に入ってしまったそうなので、とっておきにとっておいた、ファンタジックな金髪ロングヘアが採用されました。 金髪ロングヘアはワヒロ世界観の日常に登場すると目立ち過ぎるのですが、七見くんはある意味世界観の外側、非日常の存在ですし、敵の大ボスとして登場するなら大丈夫かなと思いました。

深澤 「金髪キャラはもういるじゃないですか」って言ったら「まだプラチナブロンドがいますよ!」って教えていただき(笑)。杉山に聞いたら、「たしかにブロンドとプラチナブロンドは違う」と言っていたので、金髪キャラの世界は深いな……と思いました。



原案作業でのこだわりと大変だったことを振り返る


――原案作業で大変だったことは何ですか?
AKIRA 普段は「美しさ」をエフェクトやパーツの派手さで表しがちだったので、そういった効果をつけない純粋なキャラのデザインだけでは、ラ・クロワ学苑の3人が本来持っている耽美さが足りないように思えてしまい……。「もっと原案のデザイン段階でも出来る表現があったのではないか」と思ったこともありましたが、実装されたSSRカードでは彼ら3人の美しさのエネルギーが大爆発していたので、「自分の持ち場だけで全部表現できなくてもいいんだ」と安心しました。もう少しコメディーな世界観だったら、「ラ・クロワ学苑は常にキラキラエフェクトをつけてください」と提案していたかもしれません(笑)。

――原案作業で印象的だったことは何ですか?
AKIRA アニバーサリーブックに載っている初期設定の御鷹くんのにんじんのTシャツは初期の設定にあった「かっこいいけど天然」からちょっと遊びすぎてしまったので、通らなくてよかったです(笑)。

――アニバーサリーブック記載の内容についても詳しく教えてください。戦闘服のデザインが何パターンも載っていますね。
AKIRA アニバーサリーブックには、戦闘服が今の形に決まる前段階の、お試し戦闘服衣装案を載せていただきました。実際に採用された軍服風のデザインと比べると、発想が随分変わったなあと思います。

深澤 戦闘服をどういうタイプの服にするかは悩んでいたんですが、世界観はちょっと未来の現代くらいのイメージだったので、軍服風になりました。

――三津木のページで描かれた機械のような戦闘服はコンセプトがあったのですか?
AKIRA 「人体改造」というキーワードを聞いたときに、改造したところが目に見えたほうがかっこいいかなと思ったものの、3Dモデルやカードイラストにしたときに崖縁だけ複雑になりすぎてしまうということで、残念ながらボツになったものですね。ただ、もしその案が通っていたら戸上さんの心臓などはえらいことになっていましたね……。

――ちなみに、風雲児の戦闘服デザインだけブーツがお揃いじゃないのも何か理由が?
AKIRA 「風雲児は、戦闘服のレギュレーションを守らないのでは?」と思い……。でも勝手に彼らだけ着崩したりアレンジしたりするわけにもいかないので、戦闘服の靴だけそれぞれ違うものに変えてもらいました。久森(晃人)の戦闘服が風雲児のスタンダードというわけではないので、風雲児高校にもし新ヒーローが出ることになったら、また違う靴を履いていたり、支給された本来の風雲児高校の靴を履いていたりすると思います。

深澤 あの靴は久森が自分で選んでたんですね(笑)。学校のなかで浮かないギリギリのラインを選んだのかな……。

――斎樹は髪型のラフ案も多いですが、どうやって今の形に決まったのですか?
AKIRA スクエニさんの有識者による鶴の一声でした(笑)。

深澤 どのキャラも、社内で「こういうタイプのキャラが好き」あるいは「詳しい」という人にヒアリングして回っていました。たとえば私が以前『FINAL FANTASY XIV』の時一緒に仕事をしていた石川夏子(FINAL FANTASY XIVメインシナリオライター)など、弊社はキャラクター表現に関する達人もかなりいたので。また、使わなかった案についても、「このキャラの過去の髪型はこれにしよう」って起用したものもありますね。

――武居の制服案がいくつかありましたが、彼だけほかの学校に所属、なども検討されていたのですか?
AKIRA いえ、そこは単純に白星の制服をどうしようかって考えていたときのものですね。

深澤 確か、全校まずひとり最初に作るようにしていたんでしたっけ。白星のキャラ原案で最初に作られたのが武居だったので、制服案がいくつかあるんでしょうね。ラ・クロワ学苑は霧谷(柊)で、風雲児が久森、崖縁が三津木で、そのあとは作りやすい子から順に作った……って感じでしたっけ。

AKIRA 衣装を考えるにあたって、崖縁や風雲児は最初の印象でパッと案をイメージしやすかったのですが、白星やラ・クロワは校風などのイメージから必要でした。なので途中から、非採用前提で学校の校風に関するダミーメモを作って文字で添えていました。

――AKIRAさまがヒーローたちに着せてみたい衣装などはありますか?
AKIRA 着せたい衣装というか、キラキラして美しいイラストはまろさんや杉山さんたちにすべて頼る形になっていたので、チャレンジするつもりで、キラキラな人たちをキラキラに描いてみたいですね。こう、枷を外したような……。

――AKIRAさまが好きなイベントストーリーはなんですか?
AKIRA それぞれよさがありますが、「新年会!初笑わぬ訓練」を推しておきます。武居くんがすごくいじられていた「エクストリーム!クリスマスアルバイト」も好きです。立ち絵芸がすごいというか。単純に好きなエピソードだと、「夏休み子ども相談室派出所」はオチがぐっと来ました。

ライター:パワフルプロダクション

プロフィール
AKIRA【あきら】イラストレーター。手がけた主な作品は、『漆黒のシャルノス』『紫影のソナーニル』原画・キャラクターデザイン、『刀剣乱舞』キャラクターデザイン(同田貫正国)、『Fate/Grand Order』キャラクターデザイン(エウリュアレ)ほか。

深澤瑠衣子【ふかざわ・るいこ】スクウェア・エニックス所属のプランナー。手がけた主な作品は、『ファイナルファンタジーXIV:新生エオルゼア』シナリオ、『スクールガールストライカーズ』シナリオほか。

ワールドエンドヒーローズ
CAST
戸上宗一郎/日野 聡 浅桐真大/吉野裕行 佐海良輔/内山昂輝 三津木 慎/天﨑滉平
志藤正義/竹内良太 伊勢崎 敬/内田雄馬 武居一孝/石川界人 御鷹寿史/鈴木拡樹
透野光希/緒方恵美 頼城紫暮/梅原裕一郎 斎樹 巡/堀江 瞬 霧谷 柊/小林裕介
矢後勇成/赤羽根健治 久森晃人/島﨑信長 北村倫理/岡本信彦 ほか


現在発売中のアニメディア5月号では『ワールドエンドヒーローズ』を特集!キャラ原案・AKIRA先生の描き下ろしイラストは指揮官必見。キャラ原案秘話や、AKIRA先生×シナリオディレクター・深澤瑠衣子さんのロング対談も掲載しております!

◆『アニメディア5月号』
発売日:2021年4月9日(金)
特別定価:本体973円+税
版型:A4変型判
電子版:あり
発行所(株)イード
発売元:(株)学研プラス
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