佐咲紗花がデビュー10周年記念ベストアルバムをリリース!ファンと仲間、そしてアニソンと共に歩んできた10年間【インタビュー】 | 超!アニメディア

佐咲紗花がデビュー10周年記念ベストアルバムをリリース!ファンと仲間、そしてアニソンと共に歩んできた10年間【インタビュー】

佐咲紗花が、デビュー10周年記念ベストアルバム『SAYABEST 2010-2020』を2020年11月11日(水)にリリース。佐咲さんにアニソンシンガーとして、「アニメ」「歌」、そして「ファン」と共に歩んできた10年を振り返っていただいた。

ニュース
注目記事
佐咲紗花
  • 佐咲紗花
  • 『SAYABEST 2010-2020』
 アニソンシンガーの佐咲紗花が、デビュー10周年記念ベストアルバム『SAYABEST 2010-2020』を2020年11月11日(水)にリリース。3枚組全50曲にまとめたこのベストアルバムのDISC1&2には、彼女が歩んだ10年を巡るシングル表題曲とゲームソング、そして、DISC3にはファンによる投票により決まった曲たちが収録される。超!アニメディアでは、佐咲さんにインタビュー。アニソンシンガーとして、「アニメ」「歌」、そして「ファン」と共に歩んできた10年を振り返っていただいた。

「星彩青色補完計画(仮)」


――本作はデビュー10周年記念ベストアルバムです。デビューから10年が経ったいまの率直な気持ちを教えてください。

 アッという間という気持ちと、すごく長かったという気持ちの両方があります。デビューする前は“デビュー”が目的でそこに向かって突き進んでいました。ただ、1stシングルをリリースした後、「おや?デビューしたらその次はこれからどうすればいいんだろう」って急に思っちゃって。だから、デビューしてからの方が、不安な気持ちになることが多かったですね。それでも、山も谷もありながらも長くリリースが途絶えることなく、さらに10年をベストアルバムの発売と一緒に迎えられたのは、本当にありがたいことだなと思っています。

――ありきたりな言葉ですが、デビューがゴールでありスタートであった。

 まさにその通りでした。実際に中に飛びこんでみないと、どれぐらい大変なのかって分からないものなんですよね。ワクワクと不安が常に交互に来る、そんな10年でした。 

――私も佐咲さんがデビューするきっかけとなった「第3回全日本アニソングランプリ」を見ていたので、あれから、もう10年以上経ったんだと驚きつつも、懐かしんでいます。

 周年のタイミングでは色々な方がその話をしてくださるので、嬉しいですね。それくらい、たくさんの方が注目してくださっていたんだなと実感できます。業界の方からも、「実は見ていたよ」と言っていただくことが多いので、自分の思う以上に注目度が高いオーディションだったんだなと、今更ながらに感じます。

――続いて、デビューしてからこれまでの出来事で印象的だったことについて教えてください。

 色々な思い出があり、どれもかけがえのないものですが、デビューしてから2年ほどのフリーランス期間は特に印象深いです。中でもデビューしてから半年後、2010年7月に自主開催したワンマンライブは忘れられません。当時はライブイベントもグッズもすべて自分で企画して、地元の仲間に手伝ってもらって開催していました。当時、私は茅原実里さんのライブによく行っていて、茅原さんのライブでは「純白サンクチュアリィ」をはじめ、会場中のお客さんがサイリウムを一色に染めることがあります。それがすごく感動的な景色で、私も同じように、光の海原のような光景をいつか自分のライブで見られるくらいのアーティストになれたらいいなって思うようになりました。
 その日のワンマンライブのMCでもその話をして、その後にセットリスト通り、デビュー曲の「星彩のRipieno」を歌ったんです。この曲では、最初の静かなイントロで後ろを向いていて、それから演奏が激しくなるタイミングで客席のほうを振り向くという振り付けがあります。当時も、その振り通り、イントロで後ろを向いたのですが、お客さんのいるフロアに背中を向けた瞬間いきなり「バキバキバキ!」という大勢が何かを一斉に折る音が聞こえてきて。何が起きているのかも分からないまま振りむいたら、そこには、青いサイリウムで会場が一面に染まった景色が広がっていました。

――なんと……!

 これは「星彩青色補完計画(仮)」と言って、ファンの子たちが私のためにサプライズで企画してくれたものだったんです。どうやら、ライブ前に「この曲がきたら、サイリウムを折って会場を青一色にしてください」という説明の紙と一緒に来場者全員に配ってくれていたみたいで。感動のまま本編を終えて、まだ持ち曲がほとんどない時期なのでアンコールでもう一度この曲を歌ったのですが、ビックリなことに2回歌う想定までしてサイリウムも2本ずつ配布してくれていたそうで、その時にもみんなが青一色にしてくれて……。もう、号泣してほとんど歌えない状態だったので、みんなが大合唱してくれました(笑)。
 今回のアルバムには、「ダイアログ」というみんなへの感謝を込めた新曲が収録されていますが、その中でもこの思い出について綴っています。『駆け抜けたこの日々に 泣き笑い願った景色(読み:キセキ)は』『ふり向けば目の前で一面に広がった』『唯一無二の光が未来(読み:あす)を照らす』と。もう10年経ちましたが、今でも色褪せることのない、忘れられない景色です。

――その景色は絶対に忘れられないと思います。

 私、実はサプライズを受けるのって、そんなに好きじゃないんです(笑)。例えば、よくライブで誕生日が近いとスタッフさんがサプライズ演出でケーキを持ってきてくれたりしますよね?でも、私はそれが入ってない状態でライブ一本の演出や流れを考えてセットリストを組み立てていたのに、そこで予定外のサプライズ演出が差し込むことで和む場面ができるというか、緊張感がほどけてしまうのが、正直あまり好きではなくって、普段は近しいスタッフさんに「流れを止めるサプライズはなくていいですからね!」と強くお願いしてしまっているのですが……。
 でも、あのときファンのみんながやってくれたサプライズは、そういう流れを止めたり邪魔したりすることのない、むしろ一緒に素敵な景色を作ってくれるものでした。本当に嬉しかったです。

――とても素敵な思い出ですね。

 今はより激しいパフォーマンスをするようになったので、密着度の高いライブハウスでは周りとトラブルにならないようになるべくサイリウムを沢山持たずに拳のみでおいで!と伝えていますが、何年経っても忘れられないですね。

『SAYABEST 2010-2020』

ドッキリの仕掛け人みたい


――そんな経験なども経ての10年。自分の中で変わったと思う部分は?

 たくさんあるなぁ。でも、年齢的にも、精神的にも大人になったというは大きな変化だと思います。私、27歳でデビューしたんですが、年齢だけ見たらだいぶ大人になっていたはずなのに、すごくわがままだったと言いますか……視野と考え方が狭すぎたんですよね。
 ライブの行動ひとつをとっても、それが先のことを考えると後々どういう意味を持つのか、どう見られるのかを考えられていませんでした。それゆえに、プロデューサーとはよく喧嘩しましたね。当時はいちいち「私はこうしたいのに……」とぶつかってしまったことも、今なら理解できます。それが変わったところかな。

――徐々に理解できるようになっていった。

 例えばライブの度に演出や選曲でプロデューサーとリハーサル中にぶつかり、バンドメンバーが仲裁に入ってくれたりして。メンバーは大人なので「紗花ちゃんの言うことも分かるけど、プロデューサーの意見もなるほどって思うけどな。それなら、ここだけこうしたらどうかな?」って折衷案を提案してくれて。
 そういう風に大好きなメンバーを板挟みにしまっているのが申し訳ないなって、少しずつ思うようになりました。そういうことがあって、自分の意見を押し通すのではなく、「じゃあこれならどうですか?」「これは難しいですか?」と聞けるようになったんです。

――いい仲間に恵まれたんですね。

 それは、本当に! 私は人に恵まれているんです。シンガーの先輩たちにもたくさん面倒を見ていただきました。「佐咲は危なっかしくて、見ていられない」ってよく言われていて(笑)。でも、そんな私を見捨てずに守って助言して導いて下さって……。何かあって泣きそうになっている度にわざわざ時間を作って「不器用なんだから……もうちょっと上手く立ち回れるようになるんだよ」と教えてくださった先輩たちのおかげで、今があります。

――逆に変わっていないと感じる部分は?

 作品のために歌いたい、作品を表現する・寄り添う曲を歌いたいって点は変わっていません。だから作詞する際も、作品のことではなく、自分のことを表現するときのほうが悩んでしまいます。別に自分の中を明かしたくない、という訳ではないのですが、そもそも作品に寄り添う曲を作ることが私の希望というか音楽表現のメインなので、作品が関わらないオリジナル曲を作る時はコンセプトを決めるまでがいつも大変です。

――自身にとっての目的が作品のためになる歌を歌うことだから、逆にノンタイアップのほうが苦戦する。

 そうですね。ライブやファンのみんなのための曲はいくらでも作れるのですが、そうすると同じテーマばっかりになっちゃうし(笑)。曲のバリエーションを増やすために恋愛の曲を作ることになっても実体験よりは想像でその曲のイメージのシナリオ的なものを作って、それに対するテーマソングみたいな作り方をすることが多いですね。

――それだけアニメへの想いが強い佐咲さん。10年の間でアニメソングやアニメへの想いは強くなりましたか?

 なりました。物語の終着点まで整合性がとれるよう願って必死に考えて作詞した曲が、フィナーレを迎えた時にちゃんと作品とリンクしているなと感じたときが、本当に嬉しくって。また、シリーズものでもう一度お声がけいただけたときは、家族関係が続いていく感じがしてさらに幸せな気持ちになります。

――佐咲さんは作品によって様々な歌い方をされているので、作品に寄り添っていらっしゃるということがよく分かります。

 曲を出す度に、「おぉ、佐咲紗花、何年ぶりだ?」という反応をいただくのですが、恐らくその方が聞いたことのある私の歌声と、新しくリリースした曲の私の歌声が一致しなかったりもしてるんじゃないかなって(笑)。TVシリーズの『ガールズ&パンツァー』の挿入歌で「あんこう音頭」を歌っているのですが、未だにTwitterなどで「えっ?佐咲紗花だったの??」と驚く方が多くって。8年経ってもファンではない人にはまだ浸透しきってないという……(笑)。

――そんなエピソードが(笑)。

 あります(笑)。でも、最初の頃は、曲ごとに歌声が違うことをマイナスだと捉えていました。「これが佐咲紗花だ!」という強い個性がないんじゃないかと悩んだこともありますが、今では、それぐらい曲ごとに化けられるのが、むしろプラスだと思っています。色々な引き出しがあるのが、私の歌の個性なのかなって。
 こうやって10周年ベストを出したときに、「これは一人のアーティストが歌っているアルバムでしょうか」っていう、ビックリ箱みたいな中身になるのは、武器でもあると思います。だから今回「ダイアログ」でも『だから僕は透明でいられるんだ』という言葉を書きました。ファンのみんながどんな私の歌声もちゃんと見つけてくれるから、色がないことを自分なりの自信にすることができたんです。

――お話を聞いていて、ふと、佐咲さんはこれまでアニメのオープン・エンド曲だけでなく、劇中歌もたくさん歌われてきているなと思いました。

 私、いわゆる“イロモノ挿入歌”というか、ちょっと遊びが混じったような作品曲が大好きで! そういう曲が必要になったときに、「こういうのは佐咲紗花の十八番だよね」って思っていただけるのがすごく嬉しくて、誇りでもあります。今では、聞いてくださる方が「えー?!あの曲も歌っていたんだ!」と驚いてくれるのを楽しみにしている節もあります。なんだか、ドッキリの仕掛け人みたいな(笑)。

――サプライズをされるのはちょっと苦手だけども、するのは好き?

 そうですね!

佐咲紗花

「好きだよ」に込められたファンへの想い


――そんな10年の想いが詰まった今回のアルバム。DISC3に収録される曲は、ファンの方々の投票で決まりました。投票結果を見た時はいかがでしたか?

 普段いただく反応だったりライブの時の歓声の大きさを考えたりしても、「Atlantico Blue」は絶対に1位だと思っていました! また、CD未収録楽曲がいくつかあったので、それを音源回収したいという声も多かったですね。
 あと、今回の投票では週ごとに投票結果を出していたのですが、前の週の結果を受けて「あぁ、この子(曲)を上げなきゃ」とか「この子(曲)にもいっぱいつぎ込まなきゃ」と一喜一憂しているのがハッキリと目に見えて分かって。それが嬉しくもあり、みんな可愛いなとも思いました(笑)。

――そんなDISC3には、先ほどもお話ありましたが、新曲の「ダイアログ」が収録されます。こちらの詞には、どのような想いを込めていますか?

 10年分の感謝と、「これからもよろしくね」という想いを曲にしたくて書きました。私、デビューして数年は“ファン”という言葉が使えなくって。自分にとってのその言葉の対象は、物凄く愛情を持っているアーティストや作家さんや作品なので、それに値するくらいの気持ちをみんなが私みたいな人間に持ってくれるだろうか。良くてもちょっと好き、興味ある、くらいじゃないだろうか……なんて思っていて。だいぶネガティブですよね(笑)。だから、「ファン」という言葉を使う自信がなかなか湧かなかったんです。

――そんな想いをしていたことがあったとは……。

 なのでデビューしてしばらくは、「応援してくださる方」という言い方をしていました。少しずつ使うようになってからも、毎回一瞬迷うというか、えい!って気合を入れないとなかなか自然には言えなくて……。みんなからは「大好きです」と言ってもらえるのに、重く考えすぎて「私もだよ」とさらりと返すこともできませんでした。
 そんなとき、あるイベントの質問コーナーで、女の子から「私たちは佐咲さんのことすごく大好きなんですけど、佐咲さんは私たちのこと好きでいてくれていますか?」っていう質問をされて。その時、「そういう気持ちにさせてごめんね、大好きだよ」って、ちょっと笑いながらも伝えたんです。それから、自信をもって「大好き」を言葉にして伝えられるようになりましたし、「ファン」という言葉も堂々と使えるようになりました。だから、この曲でも絶対に「好きだよ」って言葉は使いたくって。音楽がないブレイクのところであえて入れています。

――温かいファンの方たちと一緒に10年を歩んできたんですね。

 そうなんです。

――「ダイアログ」のレコーディングはいかがでしたか?

 2サビの前に「大声で叫ぼう」っていうパートがあるのですが、ここはライブでみんなにも叫んで欲しくって作った部分なんです。音源の収録ではバンドメンバー、そして作曲してくださった園田健太郎さんと私で叫びました。それが何だかチームっぽいなって思えて。すごく楽しかったです。あとは、作曲してくださった園田さんと私の見えている景色がほぼ一緒だったのも印象的でした。
 園田さんと知り合ったのは、ここ1、2年くらいのはずだったので、私の10年間を見ていないはずなんですけど、すごくリンクしていたんです。そしたら、園田さんが「そう言ってもらえてよかった!自分だけの感覚かと思ってたけど、頭の中をリンクできるシンガーさんと作ると、こういうシンパシーがたまにあるんだよ」って言ってくださって。すごく気持ちのよい曲作り、歌入れができました。

――「ダイアログ」は発売に合わせて、MVのフルサイズが公開されています。

 いつもお世話になっている監督さんに今回も撮っていただきました。過去のMVをオマージュしているシーンもあります。このチームの人たちが私に向けてくださる愛情を反映した映像になっているので、ぜひ細かいところまで見ていただけると嬉しいですね。

――最後に、これからチャレンジしたいことを教えてください。

 作詞だけでなく、ちょこちょこ作曲もしていますが、必要となる前にもっとたくさんストックしておけるようになりたいです。また、この10年で色々な国に歌いに行かせていただくなかで、「もっと語学能力が上がるといいな」と思うようになりました。語学留学もしたいのですが、スケジュール的になかなか難しいので、今できる範囲での勉強をもっともっと頑張って、色々な国に行ったときにも、細かいニュアンスまで言葉で伝えられるようになりたいですね。尊敬する影山ヒロノブさんの言葉をお借りすると、「国境のない、ノーボーダーなアニソンを愛する人たちの気持ち」に、言葉でも心でも寄り添っていきたいです。



取材・執筆=M.TOKU

プロフィール
佐咲紗花【ささき・さやか】2010年『戦う司書 The Book of Bantorra』OP主題歌「星彩のRipieno」でデビュー。代表曲は『日常』ED主題歌「Zzz」、『閃乱カグラ』OP主題歌「Break your world」、『ばくおん!!』OP主題歌「FEEL×ALIVE」、『ガールズ&パンツァー 最終章』第1~3話OP主題歌「Grand symphony」、『ウルトラマンタイガ』ED主題歌「ヒトツボシ」等、これまでに数多くの主題歌や挿入歌を担当。2021年1月にスタートする新アニメ『怪物事変』のED主題歌を担当することが発表されており、NEWシングル「-標-」は2021年2月3日(水)にリリース予定。

「SAYABEST 2010-2020」リリース情報
発売日:2020年11月11日(水)
価格:4,500円(税別)
商品仕様:3枚組全50曲収録
《M.TOKU》
【注目の記事】[PR]

編集部おすすめのニュース

特集