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新たな一面も感じられる早見沙織のミニアルバム
――アーティストデビュー5周年記念のCDとしては、今年『シスターシティーズ』をリリースされています。『GARDEN』は、前作と比べるとどういった違いがありますか?
1年のうちに2枚のミニアルバムを出すということで、何かしらの対比は作りたいなと思っていました。『シスターシティーズ』は、旅や自由といった「外」に意識の向いた内容で、『GARDEN』は、庭という自分の「内」に意識を向けたものというテーマを設けました。内容としても、前者はクリエイターの方に楽曲提供していただき、後者は自分の詞曲を中心としています。
――タイトルの『GARDEN』にはどんな意味を込められましたか?
自分自身の居心地のいい、しっくりくる場所。また、自分でも気づかなかった一面を含む、自分の心のなかすべて、という意味も含んでいます。
――収録される4曲の新曲は、すべて早見さんが作詞・作曲を担当。どんなテーマで制作したのでしょうか? まずは「garden」。
ちょうど、世の中が未曾有の事態に揺れ動く前後に曲と歌詞を書き上げた曲です。目まぐるしく環境が変化して、未来もはっきりしないなかで、それでも、自分は自分自身を幸せにする選択をしていっている。その覚悟と意識を持とう、といったイメージを込めました。編曲は冨田ラボの冨田恵一さんにお願いしました。どこまでも抜け感のある楽しげな楽曲に仕上げていただきました。
――続いて「瀬戸際」。
タイトル通り「瀬戸際」で揺れ動く繊細な感情を切り取りたいと思って作りました。自分のなかで定まりきらない心、もどかしくも燻る激情、そんなイメージです。Dメロの「見ないふりした瀬戸際」の部分は、朝目が覚めた瞬間になぜか頭に浮かんで、すぐにメモしたのを覚えています。
――続いて「Akasaka5」。
いろいろあるけれど明日のことは明日にお任せしようという、アルバムのなかでも小休止させてくれるような楽曲です。日常の些細なことをメモした文章に、メロディをつけて小品にいたしました。
――そして「glimmer」。
暗闇のなかで光に手を伸ばす、そんなイメージの曲です。岡部啓一さんのやさしく包み込むようなアレンジによって、より温かい曲になりました。2番が終わったあとの間奏の部分に、これまでに作ったある曲のコーラスを一部入れ込んでいるので、そのあたりにもご注目いただけますとうれしいです。
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日常のおともに
――収録される4曲の新曲のレコーディングでこだわった点は?
それぞれ、ボーカルのテンション感はまったく異なる4曲です。なるべく曲の持つ雰囲気と言葉の意味合いに入り込んで歌いました。「glimmer」という曲は、ボーカルのエコー、リバーブをたくさんかけた状態でレコーディングしたので、より一層曲に寄り添う気持ちが増しました。
――「やさしい希望(Bossa Nova)」と「ワンスモア」はライブで歌われていた曲です。CD化は初となりますが、こちらのレコーディングで意識したことはありますか?
「やさしい希望」はデビュー曲ということもあり、当時の、歌うことにいっぱいいっぱいだった収録との差を感じました。改めて歌詞を読み込むと、新たな気づきや好きな箇所が見つかったりして、新鮮な体験でした。「ワンスモア」は、ステージで歌っていて楽しい気持ちをくれる曲でしたが、レコーディングのひとりのブースでもまた、そのときの景色を思い出しながら楽しく歌いました。
――この2曲も作詞はご自身が担当です。作詞をした当時の思い出を教えてください。
「やさしい希望」に関しては、作詞自体手探りの、スタートのころに書いた詞なので、とにかく何か言葉を生み出さねばと必死でした。書き上げて、曲を流しながら口ずさんでみたときに、思わず涙ぐんだのを覚えています。「ワンスモア」は、なんとなく太陽の出ている明るい時間帯に書きたい、と思って昼間に歌詞を考えました。
――「ワンスモア」は、今の、なかなか会いたい人に会えない状況で聞くとまた違った響き方もしますが、早見さん自身は改めて聴いて何か感じるところはありましたか?
もともとはライブで初披露したものですが、改めて歌い直すと、日常のなかに潜むささやかな希望を感じさせてくれる楽曲だなと感じました。
――ジャケットの注目ポイントは?
CD+Blu-ray盤は、スリーブケース仕様になっています。箱にしまった状態で見ると、人型のシルエットのくり抜きのなかに色とりどりの花々が見えるのですが、箱から取り出すと、ジャケット全体にはどこまでも続くガーデンが広がっています。外から見える人の姿は一部分で、内側にはもっといろいろな要素があり、その人ならではの庭が広がっているのではないだろうか、ということを表現しました。
――制作期間中、いわゆる“おうち時間”もあったかと思いますが、その状況は制作に影響をしましたか?
いつもは隙間時間や深夜帯に詞曲作りに取り組むことが多かったのですが、この期間中は、時間に縛られず余裕を持って制作に向き合うことができた気がします。
――リード曲の「garden」には、「私だけの庭」というワードが出てきます。早見さんにとっての理想の「私だけの庭」とは?
理想の庭……。陽当たりがいいと素敵だなと思います。日差しが心地よくて、緑が美しい場所がいいです。
――では、最後に読者にひと言。
5周年記念のミニアルバムと銘打ちつつ、これからの未来を見据えて作った1枚です。ぜひ、日常のおともに、たくさん聴いていただけますとうれしいです。
取材・文/野下奈生(アイプランニング)
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PROFILE
早見沙織【はやみ・さおり】5月29日生まれ。東京都出身。アイムエンタープライズ所属。2015年にシングル「やさしい希望」でアーティストデビュー。これまでに、シングル5枚(配信シングル1枚)、アルバム2枚、ミニアルバム2枚をリリース。声優としての主な出演作は、10月スタートの『神達に拾われた男』エリーゼ役、『ドラゴンクエスト ダイの大冒険』レオナ役など。
『GARDEN』リリース情報
レーベル:ワーナー・ブラザース ホームエンターテイメント
価格:CD+Blu-ray盤3,545円、通常盤:2,273円