アニメになったことでシーンの“色合い”が変わった。『囀る鳥は羽ばたかない』新垣樽助×羽多野 渉インタビュー【インタビュー】 | 超!アニメディア

アニメになったことでシーンの“色合い”が変わった。『囀る鳥は羽ばたかない』新垣樽助×羽多野 渉インタビュー【インタビュー】

劇場アニメ『囀る鳥は羽ばたかない The clouds gather』が2月15日より公開している。原作は、ヨネダコウが手掛ける同名BLコミックで、2013年からはドラマCDシリーズも展開。アウトローな世界で、苦しみな …

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 劇場アニメ『囀る鳥は羽ばたかない The clouds gather』が2月15日より公開している。原作は、ヨネダコウが手掛ける同名BLコミックで、2013年からはドラマCDシリーズも展開。アウトローな世界で、苦しみながらも惹かれ合う男たちの物語を描く本作にて、矢代を演じる新垣樽助と、百目鬼を演じる羽多野渉のインタビューをお届け。アニメディア3月号でもおふたりのインタビューを掲載している。本誌ではよりキャラクターについてのお話をうかがっているので、そちらもチェックしてほしい。


“側”に惑わされないで作品の世界を感じてほしい

――おふたりは、2013年のドラマCDシリーズから本作に参加されています。7年経った今、こうして劇場アニメーションになりました。

新垣 まさかアニメになるとは想像していなかったのでビックリしました。同時に劇場公開されると聞いて、こういったBL作品が世間にも広く受け入れられてきたのかなとも感じましたね。

羽多野 こうして劇場アニメーションが上映できるのも、ファンの皆さんが作品に愛を持って応援してくださったおかげです。それをたくさんの方に見てもらえる可能性が広がるのはうれしいですよね。僕らはBLというジャンルにずっと関わらせてもらっていますが、本当にこういった作品は人間ドラマが魅力的なんです。“側”に惑わされないで作品の世界を感じていただくと、その温かさが伝わるんじゃないかと思います。

新垣 いろんな人の目に触れる順序として、まずは柔らかいものから……というのがありますが、いきなり『囀る鳥は羽ばたかない』なのは振り切ったなと(笑)。アウトローな世界観で、内容も過激ですし、作ろうと思った方々には相当な覚悟が必要だったのではないかと感じます。

――アニメーションとしてのアフレコで感じた気づきはありましたか?

新垣 改めてお芝居は難しいなと思いました。ドラマCDとの一番の違いは、自分たちの間でお芝居をしないこと。あくまで監督さんの演出のもとで“画が芝居をしている”ので、僕らは動く彼らとシンクロしてお芝居をしなくてはいけないんです。口の動きもありますから、「矢代はこういうふうに言葉を発するんだ」「百目鬼が言葉を発したあと、矢代が言葉を発するまでにこれくらいの間があるんだ」という発見は新鮮でした。どうしてもドラマCDでは僕らの間合いになるので、監督さんの感性に触れたことで化学変化を起こして、シーンの色合いが変わるなと。だからこそ難しくもあり、もう一回、矢代を新しく作った感覚がありますね。1シーン1シーンがとても新鮮でした。

羽多野 「新しく作った感覚」とお話が出ましたが、僕も最初からドラマCD第一巻で演じた百目鬼を思い起こしてやろう、とは考えていなかったです。そこは、今の自分だから表現できる“頭(矢代)と出会った百目鬼”にトライしなくてはダメだなと。僕は願わくば原作に追いつくくらい劇場アニメが続けばいいなと思っていて、もしそうなった際に(自分のお芝居で)百目鬼が進化しなくなってしまうのは本当に怖いこと。そのときの(自分の)限界値で演じないと、百目鬼の変化はリアルに伝わらないと思うんです。だからこそ、僕も新鮮な気持ちで百目鬼と向き合って、彼の持っている魅力を再認識しましたし、映像を通してより伝わりやすくなっているんじゃないかと思っています。


――改めて、おふたりが感じた矢代と百目鬼の魅力を教えてください。

新垣 人間関係において、「この人にどこまで近づいていいのか」「どこまで触れていいのか」というのは絶対になくならない怖さや不安だと思います。矢代はある種、“自分を守らなくてもいい人”を探すことを諦めてしまっている人間。だからこそ、どんな人に対しても一定の距離を測る。少し間違えば命を落とすこともあるかもしれない危険な立ち位置に居続けながら、そんな不安や怖さを時折垣間見せる。そこに彼の人間らしさを感じるんですよね。

――若頭として在らねばとわかっていながらも、心の中で渦巻く不安や怖さが見えてしまう場面もある。そういった“見えたり、見えなかったり”という部分はグッとさせられますよね。

新垣 矢代だけに限らず、社会の中で生きるうえで、自分の本当の思いを隠していたりすることはあるじゃないですか。そういう人間同士だからこそ共感できる部分がチラッと見えたときにシンパシーを感じるというか。共感してもらえるところなのかなと思います。

――羽多野さんは、百目鬼の魅力をどう感じられましたか?

羽多野 百目鬼はすごくピュアで一途。劇場版では彼の過去も少し描かれますが、過去の出来事がきっかけで「人を好きになること」「人から愛されること」に対して臆病になっているところがあります。そのとき止まってしまった針が、頭と出会ったことで動き出した。彼は裏社会で生きる道を歩むことになりましたが、見方を変えれば、「何があってもついていこう」と思える人に出会えたのは、とても幸せなこと。彼はとても不器用ですが、頭に対しての忠誠や一途な思いを貫いているのは、彼の魅力かなと思います。

新垣 僕も、矢代と百目鬼の出会いは幸せだと思います。でも矢代は、百目鬼に慕われることを喜んでいたかといわれたら、そうじゃないのではないかとも感じるんです。人から好かれるというのは、ある意味自分のテリトリーに近づかれることですから、人と一定の距離を保っていた矢代にとってバランスを取りづらくなるのではないかと。抗う気持ちもあるけれど、抗う術もなく百目鬼に惹かれてしまう。そういうことに対する葛藤や百目鬼に感じているものというのは、矢代を演じるにあたってキモになっているところです。だからこそ、百目鬼との出会いは「つらいだろうな」とも思うんです。

羽多野 劇場版になったことで、そういった矢代や百目鬼の感情の機微もかなりわかりやすく見ていただけると思います。出来事が起こるフリも、それに対するアンサーもわかりやすいですよね。

――改めて『囀る鳥は羽ばたかない』という作品の魅力、劇場版を楽しみにされている方へ見どころをお聞かせください。

新垣 コミックス、ドラマCD、アニメーションと表現の方法は違っても、一貫しているのは人間ドラマを描いていることだと思います。矢代も百目鬼も、影山(声/安元洋貴)も久我(声/小野友樹)も、切なさや苦しさ幸せを感じていて、そこに共感したり、ギュッと心が苦しくなったりするほど、観終わったあとに「おもしろかった」と感じてもらえるはずです。人間ドラマを描くことは一貫しつつ、コミックスやドラマCDとはまた違った、胸が締め付けられるポイントがありますので、じっくり見ていただけたらと思います。

羽多野 劇場版になるまで応援してくださった皆さんの心に、必ず残るものになっていると思います。それに、この作品はどの角度から見ても楽しめますよね。BL好きな方はもちろん、任侠モノ好きの人も。その世界にリアルに存在するキャラクターを表現しているので、劇場版でもぜひ楽しんでほしいです。声だけじゃなくて音楽もすごくこだわっていますし、矢代が吐くタバコの煙の表現はとくに素晴らしかったです。

新垣 細かい部分までこだわってもらっていますよね。僕らも完全版を観たわけではないのですが、本当に細部まで素晴らしくて。

羽多野 僕らも完成したものを見るのが楽しみです!

取材・文/渡邉千智

PROFILE
新垣樽助【しんがき・たるすけ】
6月18日生まれ。沖縄県出身。マウスプロモーション所属。主な出演作は、『夢王国と眠れる100人の王子様』フロスト役、『消滅都市』エイジ役ほか。

羽多野渉【はたの・わたる】
3月13日生まれ。長野県出身。81プロデュース所属。主な出演作は、『アイドリッシュセブン』八乙女楽役、『あんさんぶるスターズ!』乙狩アドニス役ほか。

『囀る鳥は羽ばたかない The clouds gather』作品情報
現在、全国の劇場にて公開中

『囀る鳥は羽ばたかない The clouds gather』公式サイト
https://saezuru.com/

『囀る鳥は羽ばたかない The clouds gather』公式Twitter

https://twitter.com/saezuru_anime

(C)ヨネダコウ・大洋図書/「囀る鳥は羽ばたかない」製作委員会

《超!アニメディア編集部》
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