『インフィニット・デンドログラム』のOPテーマ「Unbreakable」をリリースする悠木碧が、インタビュー企画「Megami’sVoice」に登場！【インタビュー】

　アニメやゲームの主題歌、テーマソングなどを歌うアーティストに楽曲について語ってもらうインタビュー企画「Megami’sVoice」。2020年2月号には、『インフィニット・デンドログラム』のOPテーマを歌う悠木碧が登場。「超！アニメディア」では、本誌で紹介できなかった部分も含めた、ロングインタビューをお届けする。

あえてテイクは少なめに
必死さを歌で出したかった

――表題曲「Unbreakable」はテレビアニメ『インフィニット・デンドログラム』のOP。パワフルな歌声が印象的です。

　最初に曲を聞かせていただいたときに、歌うのが私で本当に大丈夫なのかと思ったくらい、かっこいい曲だなと感じました。これまでに明るくてキラキラした曲もたくさん歌わせていただきましたが、スピードとパワーがある曲も大好きなのでうれしかったです。

――レコーディングではどう歌いたいと思いましたか？

　曲の持つパワーを聞く人にも伝えられたらいいなと思い、その表現に特化することを意識しました。私の声はつねに若干ビブラートがかかっているので、強く張る曲には適さないこともあるんです。それでも、この曲では自分にできる精一杯の歌で、勢いを出したいなと思いました。

――実際にレコーディングに入ってテイクは重ねましたか？

　レコーディングでテイクを重ねすぎると、決め打ちっぽくなってしまうので、なるべく重ねないようにしているんです。「Unbreakable」は通して歌うと最後にいくにつれて息が足りなくて必死になるのですが、その必死さが曲の表現したいことにあっていると思うので、あえて通しで歌えるようにお願いしました。とはいっても、表現に走りすぎると今度は技術を欠いてしまうので、そのバランスは意識しながら録っていただきました。

――スタッフの方から指示などはありましたか？

　あんまりなかったです。歌うポイントがはっきりしている曲で、みんなの目指す方向性も一緒だったから、特に指示がなくても制作していけたのかなと思っています。

――とくに気に入っているポイントを教えてください。

　落ちサビで音が静かになる部分が好きです。それから、昨年の10月のオーケストラコンサートで、初めてフルコーラスを披露させていただいたんです。そのときに、コントラバスの方が、曲終わりをノリノリで弾いてくださっていたのを見て、私もすごく楽しくなって。そこもお気に入りのポイントになりました。哲学的なワードがたくさん使われた歌詞もかっこよくて。ストレートすぎないんだけど、言いたいことがストレートに伝わるところが素晴らしいなと思っています。

――ワードがかなり詰まっていますが、言葉はすごく聞き取りやすいですね。

　曲が速いので、言葉をはっきりと言ったほうが、リズムがきれいに聞こえるかなと思ったんですね。声優という職業柄、どうしても母音を立てたいとか、この言葉を立てるためにここは引いたほうがいいかなとか考えてしまうんですが、聞き取りやすいと言っていただけるとうれしいです。

――ミュージックビデオ（MV）では、かなりものを壊しているそうですが。

　一切リップシンクも撮らず、ただひたすらにリサイクルの廃品を壊すというMVになりました。

――好きなだけ壊していいと言われると、スカッとしそうです。

　そう思いますよね？　でも、全然違ったんです。人が壊しているところを見るとスカッとするんですが、自分で壊すと罪悪感がわいてくるんですよ。壊れていても、誰かと一緒にいた時期があって、誰かに大切にされていたことがある。もしかしたら、直したらまだ使えたかもしれない……そんなことを考えると心が痛くなっちゃって。実際、周りのスタッフさんも、壊し始めたら「ざわっ……」ってなって。良識のある大人は、意図的にものが壊されると引くんだなと学びました。私も、心が痛すぎて、親の教育がちゃんとしていたんだなと感じた限りです。

――見ているのと実際に壊すのとでは、そのくらい気持ちが違うんですね。

「Unbreakable」自体はすごく気持ちのいい曲なので、せめて、MVを見てくださった方に、その気持ちの良さ、ものが壊れるスカッと感を味わっていただけたら幸いです。

――MV撮影の思い出は？

　バールや金属バット、ハンマーといろいろな道具を使ったんですが、割るならバール、飛ばすならバット、潰すならハンマーと、対応すべき用途があるんだと学びました（笑）。ちなみに、私のオススメはバールです。パワーがなくても距離を取って対象物を壊せるので、ゾンビが現れたりした際にはバールを武器に選ぼうと思います。あと、ケーキは壊すのがきつかったです。ケーキは私にとって幸せの象徴なんですね。ケーキが壊れることは、幸せが壊れることにつながるので、自分でケーキも入れたいと言っておきながら結局壊せなくて。ケーキのあるところにものを投げてもらうことで解決しました。最終的には自然にやさしく、ケーキはスタッフがおいしくいただきましたので、ご安心ください。

――リップシンクがないMVも比較的珍しいですよね。

　最近はなるべくありきたりではない、新しい、面白いことをやりたいと思うようになってきているので、今回はリップシンクはなしにしてもらいました。

――カップリングの「BreakDown」についても教えてください。

『インフィニット・デンドログラム』の「ゲームのNPCが意思を持つ」という設定から、hisakuniさんがイメージを膨らませて作ってくださいました。ゲームの絶対的に決められた結末にあらがえないことのジレンマを歌っています。私としては、この曲が先にあって、それから「Unbreakable」があるみたいに、物語の繋がりを感じた曲でもあります。「あなたが住んでいるところはリアルの世界ですか？　現実世界ですか？」というフレーズがあるんですが、そこがダークな雰囲気でとくに好きです。「Unbreakable」が正統派ヒーローだとすると、ダークヒーローなのが「BreakDown」なのかな。陶酔感があって、とても歌いやすかったです。

――この曲はどんな経緯でカップリングに決まったのでしょうか？

　いくつか候補を聞かせていただき、その中から選ばせていただきました。表題曲がタイアップ曲の場合、カップリングはだいたい音楽チームが考えた作品のテーマソングみたいなテイストになることが多いのですが、この曲はすごく異質な雰囲気があって、最初に聞いたときからこれがいいなと思って。hisakuniさんも楽しく作っていたとうかがったので、きっとその楽しさが私にも伝わってきたんだと思います。

――ジャケットやアーティストビジュアルは、硬質な雰囲気です。

　衣装が軍服っぽいですよね。でも私、かつて軍服を着てフェスに出たこともあるので、ちょっと違ったテーマになったほうがいいかなと思って、サイバー感やゲーム感の強いものにしていただきました。前回のシングルは『ピアノの森』の主題歌ということもあって黒と白の衣装だったのですが、今回はそれよりも冷たい印象のある黒と、銀をベースにしてもらっています。

――MVでいろいろ壊してきた悠木さんですが、今何か打ち壊したいものはありますか？

　……昼夜逆転している生活？　もともと超夜型で、どんなに早く寝ても朝起きる時間が早いと、1日が憂鬱になるし、具合もイマイチなんです。でも、お昼過ぎに起きていい日はめちゃくちゃ元気でハッピーで。ただ、それがいいことではないのがわかっているので、なるべくなら打ち壊したいですね。

――最後に読者へメッセージをお願いします。

「Unbreakable」は不屈という意味の英語ですが、負けない心を持った主人公がみなさんに勇気を与えてくれる歌になったんじゃないかと思っています。「BreakDown」は、自分はもしかしたらNPCかもしれないと思わせるような曲で、この曲を聞いてからMVを見ていただくと、ひとつの世界のまとまりを感じていただけると思います。ぜひ1枚で世界観を楽しんでいただけたらうれしいです。

取材・文／野下奈生（アイプランニング）

Profile
ゆうき・あおい／3月27日生まれ。プロ・フィット所属。2019年6月にアルバム『ボイスサンプル』を発売。声優としての主な出演作は、『七つの大罪神々の逆鱗』ディアンヌ役、『異世界かるてっと』ターニャ役など。

商品情報
『Unbreakable』
日本コロムビアより1月15日（水）発売
　悠木碧のニューシングルは、自身がリリアーナ・グランドリア役で出演するテレビアニメ『インフィニット・デンドログラム』のOP。疾走感のあるロックチューンで、悠木のキレのあるボーカルが美しく響く1曲。初回限定盤には、同曲のミュージックビデオを収録したDVDが同梱される。
初回限定盤1,980円（税込）

通常盤1,320円（税込）