諸星すみれが10月30日発売のミニアルバム「smile」でアーティストデビューを果たした。アーティストデビューが決まった心境や、アニメ『本好きの下剋上 司書になるためには手段を選んでいられません』のOPテーマである「真っ白」の制作過程を聞いたインタビューがアニメディア2019年11月号に掲載している。「超!アニメディア」では、本誌には掲載しきれなかった部分を含めたインタビューの全文を紹介。
■今までの役者としての経験も詰まったデビュー作
――アーティストデビューおめでとうございます。最初にデビューの話を聞いたときの感想を教えてください。
小さいときから歌は好きでしたし、お仕事でご一緒させていただいた方のライブを観に行かせていただくことも多かったので、私もいつか……という思いはありました。そんな憧れや夢がかなってうれしかったですし、20歳になって表現者として新しく挑戦できることがありがたく、頑張っていきたいなと思いました。
――ミニアルバムでのデビューというのは、いつ知ったのでしょうか?
最初のレコーディングは「真っ白」だったのですが、それを録り終わったときに教えていただきました。私は、シングルだと思っていたので、驚きました。たくさんの曲が歌えることはうれしかったのですが、ミニアルバムということはシングルよりもお値段が高いですし、私のCDを買ってもらえるかな……と思ってしまって(笑)。でも、リリース前に行ったデビュー記念の特番の配信を見て、楽曲を聴いてくださったみなさんの反応がうれしくて、ようやく安心できました。
――「真っ白」は、TVアニメ『本好きの下剋上 司書になるためには手段を選んでいられません』のOPです。
タイアップがつくということは事前に教えていただいていました。OPということは、それだけみなさんの耳に届く回数も増えますし、私自身、子どものころに聴いたアニメのOPやEDは今でも口ずさめるくらいよく覚えているので、今回そういう形で届けさせていただけるのがすごくうれしくて。物語に入り込みやすいように歌いたいなと思いました。
――最初の段階では、どんなミニアルバムになったらいいなと思っていましたか?
私の好きな音楽や、ふだん聴いている音楽については、最初にスタッフの方にお話しさせていただいたのですが、その段階では自分にどういう歌が歌えるのか、みなさんが私にどういうイメージを持っているのか見当もつかなくて。結局、やってみてから考えていこうと思って、コンセプトなどについてはスタッフの方にお任せしました。
――ちなみに、普段はどんな音楽を聴きますか?
ディズニーのミュージカル曲もバンドも、昭和歌謡も好きです。そのときいいなと思える曲はすべて好きですし、どんな曲でも聴いちゃいます。
――どうしてもこれは歌いたいと訴えたジャンルはなかった?
そうですね。HoneyWorksさんは打ち合わせのときによく聴くアーティストさんとしてあげさせていただいていましたが、それくらいでした。でも、実際にできあがってきた7曲は、アップテンポでかわいい曲も、大人っぽくてしっとりした曲もどれもすてきで。最後にレコーディングをした「青い関係」では弾き語りのように歌ってみようという提案をいただいたんですね。語るように歌うことが新鮮で、この7曲を通じて、たくさんの新しい自分を発見できました。
――諸星さん自身は、歌うときにその歌詞に出てくる主人公をイメージして歌うタイプですか?
いえ、キャラクターを作ったり、人物像を想定したりするのではなく、曲を聴いて、浮かんできた景色や空気感、世界観を、私の声でどう表現するかを考えるほうです。唯一、「初めての主役」だけはすごくポップでしたし、何より歌詞がちょっと幼い中学生のような印象だったので、初々しさをイメージして歌いました。
――確かに、「初めての主役」は7曲のなかでも特に明るくかわいい曲です。
私の名前である「すみれ」を思わせるような歌詞が入っているところがキュンポイントです。ストレートな歌詞も、「好きだ」って3回言っちゃうところもすごくピュアで。聴く方にストレートに歌詞が届くように意識して歌いました。
――感情を隠す気もないところが、大人と違う雰囲気ですよね。
主役になりたいとか彼女になりたいとか、本当にストレートですよね。先ほどの名前を思わせる歌詞もですが、「台本」とか「フィクションじゃない恋」とかそれこそタイトルの「主役」というワードも、HoneyWorksさんが私をイメージして書いてくださったのかなというのが伝わってきて、それだけでキュンキュンするんです。試聴してくださったみなさんも、この曲で歌い方の幅があると感じてくださったみたいで、私にとっても可能性の広がった歌でもあります。
――逆に、素の自分に一番近いと思う曲はどれですか?
「真っ白」が私らしいかもしれないです。最初にレコーディングをしたということもありますが、等身大だと感じるところも多くて、一番素の自分に近い曲だなとも感じています。不安を持ちつつも、希望にあふれた世界に一歩踏み出していくようなイメージなんですが、ちょうど私の気持ちにもぴったり合っていて。今の自分をぶつけようと思ってレコーディングしたので、私っぽさはとくに強いと思います。
――ほかの曲についても、ぜひ教えてください。「はじまれ」はタイトル通り1曲目にふさわしいまっすぐさがあります。
この曲は、イスに座って歌ったんです。いろいろな歌い方にチャレンジするなかで、座ってみたら重心がおなかにかかる感じがして、歌声が力強くなったんですね。スタッフの方からはいろいろとディレクションをいただいていて、座りながらも身体が前に進んでいくような気持ちで歌いました。朝に聴いたら元気に1日を過ごせそうな、そんな曲になったと思います。
――3曲目の「Beautiful Flower」はアカペラ部分が印象的です。
これはレコーディングのときにアカペラで歌ってみようと提案をいただいてできた曲です。私自身もアカペラ部分でスイッチが入るというか、歌だけに集中できたので、曲に入り込みやすくなりました。イメージとしては、おとぎの国の世界のようなファンタジー。切なさのなかにもあったかさがあって、自然と胸や目頭が熱くなるような曲だなと感じました。
――この曲は、大人びた声にも感じられました。
歌っているときは、今、風が流れているような感覚、とか抽象的な自分の感覚で歌っているのであまり声についてはどうしようとは思っていなかったんです。曲の持つ雰囲気がやわらかいから、私の声も自然とそうなっているのかもしれません。それから、歌詞を見る限り、誰かを思い出して、その思い出に寄りかかっているような感じもしたんですね。それでいて、寄りかかりすぎてはいけないとも思っている。ちゃんと自立をしなきゃいけない、余裕を持たなきゃいけないと思いながら歌ったので、それが声に出ているのかも。
――続いて「アスファルト」。
これは……感情との戦いが大変でした。ちょっと気を抜くと涙が出て歌えなくなっちゃいそうだったんです。この曲は歌の世界に入り込みすぎると崩れちゃうなと思い、あえて少し距離を取ることを心がけました。
――ぽつりぽつりと、ひとり言を言っているような雰囲気もあります。
夜、道を歩きながら口ずさんでいるようなイメージですね。普段はあまり言葉に出せないけれど隠している自分の気持ちが出てきてしまうイメージだったので、力を抜いてまさにひとり言のように歌いました。
――声には少し明るさもありますね。
アスファルトを歩きながら生活しているなかで、張り詰めている何かをふっとゆるめられるような、聴いている人の心のよりどころのような曲になったらいいなと思って、悲しいとかさみしいという感情にならないように心がけたからだと思います。でも、ゆるめすぎると自分が崩れてしまうから、ギリギリのラインを狙いました。アスファルトの上をこれからも歩いて行くんだという前向きな気持ちと、でも夜空を見上げてたまには本音も出していいんだという気持ちを感じていただけたらと思います。
――「足りない音はキミの声」は、かなり淡々とした歌い方に聴こえます。
ほかの曲と違って誰かに届けるというよりは、自分の世界、自分の殻のなかで自問自答するイメージの曲なので、あえて淡々と歌いました。サビも盛り上がりすぎないようにしているので、ヘッドフォンで聴いてほしいですね。ヘッドフォンで聴くと、世界から切り離されて自分の内側に神経がいく感じがして、とても好きです。
――この曲は、声の揺れがすごく印象に残ります。
作曲してくださった宮川弾さんは、私のビブラートがすごく不思議だったみたいで、そのニュアンスをとても大切にしてくださったんです。それもあって、特に揺れが多めに残っているかもしれません。
――そして最後を飾る「青い関係」。
この曲は、海と空について歌っているのか、それとも青春なのか、「青い関係」とは何のことなのか、私にとっても謎なんです。最果タヒさんが書いてくださった歌詞には、印象的名な強いワードが多くて、最初に見たときはどう表現したらいいのかとだいぶ考えました。
――「殺意」というワードは、あまり歌詞では見かけませんよね。
そうなんです。はじめは言葉をきれいに乗せて、聴き終わったときにその人のなかに残ったワードや感情が魅力になるんじゃないかと思っていたんです。でも、レコーディングで作曲のak.hommaさんとお話しさせていただいたときに、きれいにとか人の心に入るようにというよりも、まっすぐに曲と向き合ったほうがいいとなったんです。言葉と向き合って、ワードのひとつひとつが聴く人の耳に残るように歌いました。結果、夜中に寝付けなくて、外に出て自問自答するような、自分がわからないことに向き合うような、そんなイメージの歌になりました。
――全曲完成してみて、どんな1枚になったと感じますか?
これまでの私のお芝居を観て、聴いてくださっていた方は、元気とか明るいとか天真爛漫、少し幼いイメージがあるかもしれませんが、いい意味でそのイメージは少し変わるような、役者だからこその表現ができた、そんな1枚になったと思います。役者、表現者としての諸星すみれが詰まったミニアルバムになっています。
――タイトルの「smile」はどのように決まったのでしょうか?
これは「笑顔がステキな諸星さんの最初の作品、名刺がわりになる作品の初めてのタイトルに。」ということでスタッフさんたちが付けてくれました。もともと母のお友達から「smileって『すみれ』とも読めるね」と言われて以来、「smile」というワードは気に入っていたので、今回それがタイトルになってすごくうれしかったです。
――「真っ白」はMV(ミュージックビデオ)も撮影されていますね。
MV撮影自体初めてだったので、どうなるのかと思っていました。しかも、今回、真っ白なペーパークラフトの世界に入りこんで表現するシーンもあったので、撮影の際に、何もない場所で撮影する形だったので、全体像がつかめなくてドキドキしました。リップシンクなど、はちょっとぎこちないところもあったかなと思いますが、すごくがんばって作ったので、出来上がりを見たときは感動しました。
――ジャケットも素敵です。
ワンピースの透け感がすごく素敵なんです。外での撮影もあったのですが、風でスカートが動いたときの形がすごくきれいなんです。またどこかで着てみたいですね。
――では、最後に読者にメッセージをお願いします。
今回、ミニアルバムをリリースさせていただくことになりました。アーティストとしてはスタートですが、これまでの私の経験があっての1枚になったと思います。私にしかできない表現ができているのではないかと思いますので、ぜひ全7曲、たくさん楽しんでいただけたらと思います。
取材・文/野下奈生(アイプランニング)
PROFILE
諸星すみれ【もろほし・すみれ】4月23日生まれ。劇団ひまわり所属。3歳で劇団ひまわりに入団後、女優、声優として活動。声優としての主な出演作は、『アイカツ!』 シリーズ星宮いちご役、『約束のネバーランド』エマ役、『文豪ストレイドッグス』泉 鏡花役など。
リリース情報
「smile」
フライングドッグより10月30日発売
初回限定盤:3,960円
通常盤:2,970円
諸星すみれのアーティストデビューミニアルバム。全7曲収録。「真っ白」は現在放送中のTVアニメ『本好きの下剋上 司書になるためには手段を選んでいられません』のOPで、伸びやかな歌声がすがすがしく響く1曲。初回限定盤に同梱のBlu-rayには、同曲のMVを収録。また、初回限定盤、通常盤とも、11月開催のリリースイベント参加券を封入。
諸星すみれ アーティスト公式サイト
https://www.jvcmusic.co.jp/flyingdog/-/Artist/A026544.html
諸星すみれ 公式Twitter
https://twitter.com/smileysuu