TVアニメ『シンカリオン』の音楽担当・渡辺俊幸が語る音楽のこだわり「日常はアコースティック、戦いはシンフォニーで差をつけました」 | 超!アニメディア

TVアニメ『シンカリオン』の音楽担当・渡辺俊幸が語る音楽のこだわり「日常はアコースティック、戦いはシンフォニーで差をつけました」

TVアニメ『新幹線変形ロボ シンカリオン 』の音楽を手がける渡辺俊幸にインタビュー。バトルシーンや日常シーン、キャラクターのテーマなど、制作の際に、どんなアプローチをしたのかを聞いたインタビューが「アニメディア11月号」 …

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TVアニメ『新幹線変形ロボ シンカリオン 』の音楽を手がける渡辺俊幸にインタビュー。バトルシーンや日常シーン、キャラクターのテーマなど、制作の際に、どんなアプローチをしたのかを聞いたインタビューが「アニメディア11月号」に掲載中。超!アニメディアでは、本誌に掲載できなかった部分も含めたロング版を掲載!アニメならではの音楽作りについてのエピソードは必読だ。


誰のテーマなのかをわかるようにというのは
強く思いながら作っています

――最初に、オファーが来たのはいつぐらいでしたか?
 放送が始まる半年くらい前でした。その段階で、もうおもちゃが発売されていましたし、プロモーション映像もあったので、それを見せていただきました。

――新幹線が変形するロボットだという設定を知ったときの感想はいかがでしたか?
 おいしい設定だなと思いました(笑)。子どもにとっては、列車もロボットも楽しいものですから、両方をひとつの世界観のなかでミックスして提示するというのはなんておいしいんだろうと(笑)。

――音楽を作るにあたって、男児向けであること、ロボットものであることは意識されましたか?
 男の子がワクワクするような戦いのシーンが毎回出てきますから、敵との戦いとのなかでかっこよくて、男の子が登場人物になりきって夢を持てるようなイメージの音楽を作ろうと思いました。ただ、たとえば、ディズニーの音楽って、子ども向けであるようでいて大人が聴いても楽しめるものですよね。ですから、私も子ども向けだから子どもっぽい曲を作るのではなく、大人が聴いても楽しめるものというコンセプトを持ったうえで、子どもが聞いていることを想像しながらワクワクできる音楽を作っていこうと思いました。


――ジャンル的には、どういったアプローチで行こうと考えられたのでしょうか?
 若い子はリズムがしっかりしてないと、音に乗っていけないんです。ですから、ドラムやエレキベースなどを入れつつ、それがシンフォニックな広がりを持つという、アニメの王道にしました。打ち込みもかなり使いましたが、番組全体のスケールを大きく、上質なアニメの雰囲気が出るように、可能な限りシンフォニックな響きを作りました。

――ロボットアニメであるというところで、意識されたことはありますか?
 私は『銀河漂流バイファム』から始まって、これまでいくつかロボットアニメの音楽も担当したんですね。ロボットものというのは、戦いのシーンに燃える、ワクワクする感じを出さないとダメだと思っていますので、盛り上がりと、エキサイトすることをイメージして作りました。それから、これはロボットものだからというわけではないのですが、個人的には最近のハリウッド映画の音楽は、かっこよくはありつつも、メロディーを口ずさめないものが多く、そういう意味では面白くないなと思っているんです(笑)。ですから、メロディーを大事にしながら個性を作って、ハッキリと誰のテーマなのかをわかるようにというのは強く思いながら作っています。


――日常のシーンはポップに、バトルシーンは重厚にという差が大きいところも印象に残ります。
 日常のシーンは、シンフォニックまでいかない、アコースティックで室内楽的な楽器を使用しました。あえてエレキベースを使わずにコントラバスにしたり、弦をピチカートで演奏させたりしたんです。木管楽器も使用しています。一方で、戦いの音楽のコンセプトは、リズムセクションとシンフォニーですから、かなり差があるように聞こえたのだと思います。

――変形シーンの音楽は渡辺さんのご担当ではないんですね。
 そうですね。もともとおもちゃに入っていた曲です。アニメでも使いたいというオーダーがありました。おもちゃのときよりも長くすることも含め、大間々昂さんがアレンジを担当しています。とてもかっこいいものになっていると思います。

――既存の曲があるということで、前後の曲作りに影響があったりはしますか?
 それはそれ、という感じで、とくに影響はされませんでした(笑)。もともとある曲に合わせてしまうと、自分の色がなくなってしまうんです。ですから、それはそれと割り切っています。それから、アニメの作り方的に難しかった部分もありますね。もしこれが実写の映画であれば映像を観ながら音楽を作っていけるので、変形シーンで入る曲に合わせて違和感が少なくなるように作ることはできたと思います。ただ、アニメは絵ができていないことが多くて、メニューをいただいて音楽を作るので、映画のような作り方ができないんです。

――音楽がどういう使われ方をしているのか、オンエアされるまでご存じないということも多いんですよね。実際に、オンエアを観てみた感想をお聞かせください。
 メニューは音響監督の三間(雅文)さんが作られて、それに合わせて作曲していくんですが、その段階ですと、私が頭のなかで「このキャラクターはこう動くだろう」「このロボットはこうだろう」と想像して作るしかないんです。それを三間さんがアニメのシーンに合うように編集したり実際の楽曲よりも編成を減らすなど様々工夫して使用してくださるのですが、そのために音源は大まかに楽器別にチャンネルが分かれた状態のものをお渡しするんです。そして、三間さんのほうで、たとえばベースの音だけを抜くといった作業をしてくださる。違和感なくつなげてくださっていますから、オンエアを見せていただいて、やはり三間さんは優秀で、音の使い方がうまいなと思いました。


――メニューに関しても教えてください。最初の段階でシンカリオンのテーマに関しては、どのくらい作られましたか?
 ハヤト、アキタ、ツラヌキの3人の乗るシンカリオンのテーマを作りました。それから、この3人のシンカリオンが合体するイメージで1曲。それがアルバムに収録されている、「シンカリオン三位一体」という曲です。これは、合体シーンが出る前に予告編で使われていましたね。

――シンカリオンのテーマは、どういうオーダーがありましたか?
 ハヤト、アキタ、ツラヌキが運転するので、それぞれのキャラクターに合わせてということでメニューをいただきました。ハヤトは主人公なので、オーダーも多かったですね。シンカリオンに乗ったときは正義感が強く、真面目であるという説明も書かれていました。

――それでは、アキタとツラヌキについてはいかがでしょうか?
 アキタはエレキギター、ノリのよさ、リズミックというワードがありました。スナイパーなので、早いテンポのマーチ的なものでもよいかも、とも。ツラヌキは熱血派ということで、ロック的な情熱昂ぶるアクションというオーダーで、跳ねるリズムを加えました。『シンカリオン』には、新幹線という日本国内で一番早い列車が登場しますから、全体的にスピード感にこだわりました。一番遅いのがハヤトのテーマで、1分間に四分音符を170回刻むスピードで、少し落ち着いていて、そこでハヤトらしさを出そうと考えました。アキタが208回で、ツラヌキは210回。三位一体は200回になっています。200回を越えると、人間がドラムを叩くのに無理が出てくるので、今回ドラムとエレキベースは全部打ち込みになっています。ほかの楽器に関してもテンポが早いと正確に演奏するのが難しくなりますから、特に難しい部分は1小節ずつ録るなどして、かなり時間をかけました。

――とくに意識して使用した楽器はありましたか?
 シンフォニックという意味と、壮大感を出すという意味では、ブラスセクションは欠かせないだろうと思い、さらにトランペット、トロンボーンだけでなく、ホルンを入れて広がりが出るようにしました。ホルンが入ることで、ある種の勇姿も感じられるようになるので、どうしても入れたかったんですね。


――先ほど、テンポが早いと正確な演奏が難しくなるというお話がありました。そういう意味では、打ち込みには打ち込みのメリットもありますね。
 もちろんです。ドラムスは正確無比に、どんな早いフレーズでも叩くことができます。大きなホールなどで録音したティンパニをサンプリングした音源を使用すれば、スタジオで叩くよりも壮大な響きが出せます。それから、まだ放送されていませんが、後半戦で出てくる音には、SE的な音源をあえて入れこんでいます。生だったらサスペンドシンバルでやるしかないような音を、作り込んで加工したもので出しているんです。

――音楽のなかに効果音を入れるメリットはどんなところにあるのでしょうか?
 たとえば、敵もレベルアップしていきますよね。どんどん強くなっていくわけですから、そういう存在は相当恐ろしくしなければいけない。そこでうなるようなSEを入れこむと、より恐ろしさが出るようになるんですね。それから、単純に作曲家がイメージする音に近しいものを使うことができるということもあります。技術が今ほどではなかったころでしたら、打楽器で作るか、ハリウッド映画のように新しい打楽器をわざわざ作らせるしかなかったのが、今であればソフト音源を使って、イメージにぴったりの音色を探し出せるというのも大きなメリットです。

 それから、(映画『パイレーツ・オブ・カリビアン』などの音楽を手がけた)ハンス・ジマーという人が出てきて以降、打ち込み音源で作った上に、生のオーケストラを乗せていくという手法も確立されたんです。日本だとコントラバスってふたりぐらいが限界なんですが、そういうときに音を足して太くすることができる。さらに、そこにシンセの作り込んだ音を足せば、存在しないコントラバスの音になる。また、グラン・カッサで叩くよりも、もっと迫力がある音を作ることもできる。現実の楽器には存在しないような音も『シンカリオン』のような作品には合うんです。

――『シンカリオン』のような、完全にフィクションの世界だと、作り込んだ音も合うんですね。
 そうですね。日本が舞台であっても、見た目が日本人に見えないですから(笑)、音楽も、リアル日本じゃない分、色々と冒険出来ます。そこは、とても面白くやりがいのある部分でもあります。

――作っていて、大変だった曲はありましたか?
 個人的には、怖い曲は大変です。仮想現実とはいえ、恐ろしい音楽というのは、作るときに自分をそういう精神世界に追い込んでいくんですよ。さらに、もっと怖くできないかと音を探して、どんどん怖い世界に入っていってしまう。自分が納得できるということは、よっぽど怖い曲ということですから、何時間も聞いては書き、書いては聞いてをやっているとくたびれます。それから、時間がかかるという意味でも大変です。バトルシーンで使用するドラムに関しても、スネアひとつとってもその音色を選ぶためふだけにかなり時間をかけますから、なかなか大変です。

――つまり、生演奏だけで作るほうが早く、楽であると。
 もちろんです(笑)。

――でも、うかがっていると、打ち込みだからこそ、フィクションに合った音楽ができるというところもありそうですね。
 もちろんです。コントラバスにシンセを足すことでアタックを強くすることも可能ですし、シンセサイザー等の音色を加える事で非現実的な世界観を強烈に描くことも出来ます。それは打ち込みだからこそです。でも、具体的に使っている楽器やツールがわからなくても、何かすごいって思ってもらえたらいいなと思いながら作っています。そのために、今までになく熱い音がするようにと、いつも考えています。

――改めまして、渡辺さんが感じられている『シンカリオン』という作品の魅力は?
 現実にはあり得ない設定ではありますが、子どもしか運転できない乗り物を運転して、子どもたちが正義のために活躍できるところが、一番大きいポイントかなと感じています。私が子どもだったら、どれだけワクワクしただろうかと思いますし、きっと小さいお子さんは、ハヤトたちになりきったつもりでワクワクしながら観られる、そんな作品なんだろうなと。子ども同士が協力し合うことがテーマになっていて、個性があってバラバラになるかと思えば、きちんとまとまって乗り越えていくところもいいですし、親子愛や友情も描かれ、バトルシーンと日常シーンの緩急がついた、いいアニメなんだろうと思っています。イラストも親しみの持てる絵柄であるところも素敵です。

構成/野下奈生


【PROFILE】
渡辺俊幸【わたなべ・としゆき】
映画、テレビドラマ、アニメなどから純音楽まで、作曲活動は多岐に渡る。代表作にNHK大河ドラマ「利家とまつ」、「毛利元就」、NH Kドラマ「大地の子」、NHK 連続テレビ小説「おひさま」、「どんど晴れ」、テレビアニメ「宇宙兄弟」、「銀河機攻隊マジェスティックプリンス」、 映画「平成モスラシリーズ」、「マジンガーZ/INFINTY」ほか。平原綾香「おひさま~大切なあなたへ」で第53回日本レコード大賞編曲賞を受賞。洗足学園音楽大学教授。
http://www.toshiyuki-watanabe.com/

TVアニメ「新幹線変形ロボ シンカリオン」オリジナル・サウンドトラック


『新幹線変形ロボ シンカリオン』のオリジナル・サウンドトラックが、9月26日にリリースされた。これまでNHK大河ドラマやNHK連続テレビ小説のほか、アニメなどの音楽を手がけた渡辺俊幸による、壮大かつ疾走感のある曲を全35曲収録。ワクワクしたりドキドキしたり、時には不安になったりもする運転士たちの心情にそった曲も綴られており、聴くだけで胸の高鳴りを抑えられなくなるはずだ。

発売中
販売元/日音

<TVアニメ『新幹線変形ロボ シンカリオン』情報> 
TBS系全国28局ネットで毎週土曜あさ7時~7時30分放送中!

◆ストーリー 
鉄道博物館、京都鉄道博物館、リニア・鉄道館の地下深くに存在する特務機関「新幹線超進化研究所」は、“漆黒の新幹線”が生み出す巨大怪物体から日本の未来を守るため「新幹線変形ロボ シンカリオン」を開発した。「シンカリオン」とは、実在する新幹線から変形する巨大ロボット! その「シンカリオン」と高い適合率を持つ速杉ハヤトら子どもたちが運転士となり、研究所員ら大人たちと力を合わせて強大な敵に立ち向かう! 果たして“漆黒の新幹線”の目的は・・・!? 子どもたちは日本の未来を守れるのか・・・!? チェンジ! シンカリオン!

◆スタッフ 
監督 池添隆博 
シリーズ構成 下山健人 
キャラクターデザイン あおのゆか 
メカニックデザイン 服部恵大 
音楽 渡辺俊幸 
音響監督 三間雅文 
アニメーション制作 OLM 
アニメーション制作協力 亜細亜堂 
CGアニメーション制作 SMDE 
制作 小学館集英社プロダクション 

◆声の出演 
速杉ハヤト 佐倉綾音 
男鹿アキタ 沼倉愛美 
大門山ツラヌキ 村川梨衣 
シャショット うえだゆうじ 
上田アズサ 竹達彩奈 
速杉ホクト 杉田智和 
三原フタバ 雨宮 天 
出水シンペイ 緑川 光

公式サイト 
http://www.shinkalion.com/ 

公式Twitter 
@shinkalion 

シンカリオンTV 
http://www.shinkalion.com/movie/

©プロジェクト シンカリオン・JR-HECWK/超進化研究所・TBS

《超!アニメディア編集部》
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