2016年11月にアーティストデビューした声優・沼倉愛美。これまでにシングル2枚、アルバム1枚をリリースしてきた彼女の3枚目となるシングルは、TVアニメ『かくりよの宿飯』のEDテーマ「彩-color-」を含む全3曲を収録で、2018年6月6日(水)に発売される。「ライブまででひと周りだった」と語る彼女が、ライブを経てこの1枚ではどんなチャレンジをしたのか。約1年半のアーティスト活動での思いの変化も含めて語ってもらった。
言葉のハマりにこだわった「彩-color-」の作詞
――アーティストデビューをしてから、およそ1年半になります。
今その言葉で、まだ1年半しか経っていなかったことに驚愕しています(笑)。
――シングルも今回リリースする『彩-color-』で早くも3枚目になりますし、すごく順調なイメージですね。
そうですね。アルバムと今回のシングルも合わせると、1年半でCDを4枚も出させていただけているのはすごいことですよね。
――ニューシングルの表題曲は『かくりよの宿飯』のEDテーマ。EDっぽいしっとりとした雰囲気がありつつも、サビに向かってパワフルになっていくサウンドが印象的です。
今回作詞をさせていただいたんですが、詞を書く前に候補として2曲いただいたんです。プロデューサーと監督からは「どちらも気に入っているし、歌詞を書くのはあなただから、選んでいいよ」と言われて、私が選ぶことになりました。
――そのうちの1曲が「彩-color-」になったんですね。
そうです。もう1曲はスローバラードでしたね。どちらにしようか迷いましたが、どうせなら今まで自分が歌ってこなかったテイストの曲にしたくて。「彩-color-」になった曲はメリハリが効いているけれど、そのなかにやさしさややわらかさが感じられたところがいいなと思って。この曲の持つ雰囲気に近づけて歌うことができたら、またちょっと違う自分を表現できるかなとも思って選びました。でも、曲がいろいろな顔を持っている分、作詞は大変でした(笑)。
――どういった点が?
私は作詞をするとき、最初に作品のシナリオを読んだり、曲を聴いたりしながら、浮かんだ言葉を箇条書きにして、それがどこかにハマるかなってパズルみたいな作業をするんですね。でも、この曲は、自分で納得のいく言葉が乗せられなかったり、作品の世界観に言葉がしっくりこなかったり……。
――なるほど。タイアップということで作品の持つ世界を表現するのはとても大事だと思いますが、『かくりよの宿飯』のどういった雰囲気を歌詞に組み込みたいと思ったのでしょうか?
“隠世”というところに主人公が行ってしまい、そこでいろいろなあやかしと出会って心を通わせていく物語なので、誰かと関わることで自分の居場所ができて、心が豊かになっていくということを書きたいなと思って。私自身、去年は特にいろいろな人と関わって、助けてもらって、それによって成長したり、ひとりで立てるようになったりしていったので、自分の経験も含めて、心が豊かになっていくのを色に例えてみたんです。
――色に例えるということを考えた時点で、タイトルも決まったのでしょうか?
そうですね。「彩」という言葉は入れようと思っていました。でも、居場所ができるうれしさとか人への感謝・愛情って、人によってどんな色になるかはそれぞれなので限定したくなくて、特定の色にはしなかったんです。「color」という読みは、OPで“隠世”を、EDで“現世”をテーマにしていると聞いたので、現代的な表現でもいいのかなと思って決めました。「さい」でもよかったかなと思うんですが、「color」のほうが音で聞いた瞬間に色だということがわかりやすいし、色という印象をより深めたかったというのもあります。
――歌詞中に使われていた「糸」というワードは、ちょっと不思議な感じに響きました。「人」ではないんだなと。
実はこれ、最初は「人」だったんです。でも、去年は本当に多くの人に支えてもらって、愛されて、私もたくさんの人を愛してできあがったものがたくさんあったので、もっと広い範囲に向けるにはどうしたらいいかなと考えて。それで選んだのが「糸」なんです。「糸」ならたくさんの「縁」というものにもつながるかなと。結果的に、すごくいい歌詞になった気がして、それからひとりに向けていたほかの言葉を、広い印象を持てる言葉にどんどん代えていったら、ラストには「世界」まで出てきました(笑)。
――レコーディングはいかがでしたか?
比較的順調でした。コーラスやハモリなどの繊細な作業もありましたが、プロデューサーと私の歌へのイメージに齟齬があまりなかったので、淡々と歌う感じでした(笑)。ただ、もともとレコーディングはあまり得意ではなくて、ライブで歌うほうが楽しいんですよ。
――カップリングの2曲はライブ感が強い感じがしましたが、そちらのほうが、自分としてはいい感じだった?
そうですね。「Checkmate」は今までで一番上手に歌えました。
ちょっと“遊んでみた”カップリング曲
――カップリングの「RELOAD」も「Checkmate」も、玄人受けしそうなジャンルに振ったなという印象でした。
「彩-color-」が勢いもやさしさも明るさもやわらかさも、さらに言えば艶っぽさもある、1曲で全方位的に完成している曲だったので、カップリングはちょっと遊んでもいいのかなと思ったんですね。それで、私からR&Bやスカの曲が歌いたいとお願いして作ってもらいました。
――R&Bやスカはふだんから聴くほうですか?
すごくたくさん聴くわけではないですが、ハマったらずっと聴いちゃいます。R&Bはかっこいい曲も入っていたらいいかなと思ったし、スカはラッパが好きで、ラッパの入っている曲を作りたいと思ってお願いしました。
――カップリングのレコーディングはスムーズでしたか?
「RELOAD」は低いところから高いところまで、かなり高低差が激しいので難しかったです。あと、最初に上がってきたデモのキーがめちゃくちゃ高くて。作曲者さんは私を何でも歌いこなせる超人だと思っていたんじゃないかと疑うくらいだったんですよ(笑)。仮歌は男性が歌っていて、自分で声に出してみるまでわからなかったんですが、実際に歌ってみると「この高さは絶対に出ないぞ」って。なので、キーを下げてもらったこともあって、自分のものにするに少し時間がかかりましたね。でも、Aメロの話し言葉に近い雰囲気とか、三連符が入るようなノリは好きですし、本線とは別にわいわい言っている私の声も楽しめると思います。
――「Checkmate」については?
これは、歌い方を決めずにフリースタイルで臨みました。私は歌い方も“決めたがり”なところがあるんですが、曲に合わせて表情豊かに、音が外れてもまぁいいか、みたいな気持ちで歌えたのですごく楽しかったです。この曲はサウンドがおしゃれでありながら、歌もかなり主張しているので歌い甲斐があります。
――3曲を通して聴くと、アルバムを経て歌にまた新しい魅力が加わったなと感じられます。
去年リリースしたシングルやアルバムは、ライブで歌うことを前提にしていたんです。でも「ライブでひと周りした」という気持ちがあるので、今回はライブを前提にするのをやめて作ったこともあって、より遊べた気がしますね。
――でも、沼倉さんのライブで普通に歌われていても何らおかしくない曲たちだなと思いますよ。
ありがとうございます。そう感じていただけるのであれば、ここまで遊んでも大丈夫なんだなってなおさら強く思えるかも知れないです。
ビジュアルは“雰囲気重視”
MVは基本全部お任せで、これまでのCDの初回限定盤についていたMVメイキング映像を撮ってくれた方にお願いしました。すごくきれいに撮っていただけましたね。スタジオもバンドメンバーもいつものメンバーですし、3月のロケで寒かったくらいで特に問題はなかったです(笑)。
――浜辺を走っているときの笑顔が、ものすごく楽しそうでした。
最初は走る予定じゃなかったんですよ。でも、気がついたら走りたくなっちゃって。勝手に走り出したせいで、カメラを持っていた監督から「速いわ!」って言われました(笑)。
――衣装が真っ白なのも目を引きますね。
何ものにも染まっていないという意味で、衣装はこの色にしました。ジャケットも映像を投射しているので、ポーズも背景も表情も同じものは2枚と撮れないんです。プロデューサー的にはもっと表情が見えるものをジャケットに使いたかったみたいですが、私は色も背景もちゃんと写っているものにしたかったので、ここはわがままを言って引きのカットにしてもらいました。雰囲気を重視したので、実は薄目になっているカットもあるんですよ(笑)。
ライブをやって見えた、自分に求められているもの
――インタビューの冒頭で、「(アーティストデビューしてから)1年半しか経っていないことに驚愕している」と言っていましたが、この1年半の活動で自分自身に変化はありましたか?
ライブをやるまでは見えないことが多くてすごく怖かったんですが、ライブをやってみて応援してくださる方たちが私に何を求めてイベントに来てくれているかが、なんとなくつかめた気はしています。
――ファンの方たちの空気が見えるようになったのは、4月に行われたファンクラブでのイベントも大きかったですか?
あのイベントはかなりホーム感が強かったですからね。
――グッズもまさかのキャラクター推しでしたし。
“にゅさん”ですね。ファンクラブのキャラクターなんだからいいだろうって、めちゃくちゃ推して、推しすぎて沼倉要素がまるでないグッズばかりになったんですが(笑)、みなさん、それも許容してくれましたね。そういう私のゆるさとか、甘えとかも受け入れてくれるってわかってきたから、余計な力みが抜けてきたのかな。あと、誕生日当日のイベントに来るぐらいだから、「みんな私のこと好きでしょ」みたいな変な自信は生まれました(笑)。
――いい信頼関係ができていますね。
そうですね。私はやるからにはちゃんとやりたいんですが、外から見えるほどきびきびした人間ではなくて、できればゆるんでいたいんです。そういうゆるんだ自分を人に見せることがちょっとだけ怖くなくなってきたので、人間として大きくなれているのかもしれません。
こうと決めずにいろいろなことをやってみたい
――沼倉さんは1stシングル「叫べ」のときに、別のインタビューで「自分の色はあまり決めたくない」とおっしゃっていましたよね。
言いましたね。自分のイメージカラーも決めないし、ペンライトなどを振るときでも好きな色を振っていいよというスタンスは今も変わっていません。
――それは、自分の活動の幅を決めてしまいたくないということにも通じるのでしょうか?
う~ん……私は自分にあまり自信があるタイプじゃないので、常に「あなたはこれでいいんですか」って自分に問いかけちゃうんです。例えば成功したやり方があったとして、次も同じでいいのかなと思っちゃう。だから決めきれないのかな、とも思います。ただ、今回の1枚も前までと違う形にしてみようと考えてできたし、最近はこういうことやってみようかなとか、次はこういうことができるかもって思いつくことが楽しいので、何かを決めずにまだまだいろいろなことを模索していきたいですね。
――気が早いですが、その模索しているものが見つかったときには、自分の色を決める可能性はありそう?
それは……難しいですね。やり尽くしたって思ったら一番気に入った方向で進むかもしれないし、そんなに頑張らなくてもいいんじゃないって思ったら、一番楽しくてラクな方向になるかもしれないです。ただ、いろいろなコンテンツに関わらせてもらっていると、うれしい驚きというのは代えがたい喜びだなとも感じるし……。
――決めきると、その驚きが減ってしまうと。
そうですね。まぁ、本当はラクしたいんですけど(笑)。
――でも、沼倉さんは「ラクしていいよ」って言われてラクをすると……
あぁ、ラクしちゃった……って結局ヘコむかもしれない(笑)。損だなぁ(笑)。
――今後もいい意味での驚きを感じさせてくれる活動を期待しています。では最後に、このCDはどんな1枚になりましたか?
3曲並べて聴いてすごくバランスがよく、去年の経験を踏まえたものになっていると思えたし、女っぽい1枚になったかなとも感じています。勢いやかっこよさよりも、やわらかさとか艶っぽさみたいなものが備わっていて、新しい表現が見せられているかなと思いました。すごく気に入っています。
<PROFILE>
沼倉愛美【ぬまくら・まなみ】
4月15日生まれ。神奈川県出身。アーツビジョン所属。2016年11月にシングル『叫べ』でソロ活動を開始。これまでにシングル2枚、アルバム1枚をリリース。声優としての主な出演作は『新幹線変形ロボ シンカリオン』(男鹿アキタ)、『ガンダムビルドダイバーズ』(アヤメ)など。
<リリース情報>
シングル『彩-color-』
フライングドッグより6月6日発売
■初回限定盤:1,944円
■通常盤:1,404円
<イベント情報>
『彩-color-』発売記念イベントを下記日程で開催
6月10日(日)15:30 東京・東京ドームシティラクーアガーデンステージ
6月16日(土)14:00 愛知・アスナル金山 明日なる!広場
6月17日(日)14:00 大阪・もりのみやキューズモールBASE 1F BASEパーク
※イベント参加券はCDの初回限定盤、通常盤に封入
沼倉愛美公式サイト
http://numakuramanami.com/
●沼倉愛美さんのサイン色紙をプレゼント●
今回のインタビューを記念して、沼倉愛美さんのサイン色紙を1名様にプレゼント致します。
■応募期間:2018年6月5日から2018年6月15日23時59分まで
■内容:沼倉愛美サイン色紙
■当選人数:1名様
■応募方法
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2.応募ツイートをリツイート
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取材・文/野下奈生(アイプランニング)