アニメディア連載「シンカリオン制作日誌」第4回『新幹線変形ロボ シンカリオン』副監督(1〜64話)・山岸大悟【インタビュー】 | 超!アニメディア

アニメディア連載「シンカリオン制作日誌」第4回『新幹線変形ロボ シンカリオン』副監督(1〜64話)・山岸大悟【インタビュー】

1月から放送2年目へと突入した『新幹線変形ロボ シンカリオン』。最近知ったという人にも作品の魅力をわかりやすくお届けする「新幹線変形ロボ シンカリオン応援連載 全速前進!こちら鉄分給配所」が、「アニメディア」にて連載中 …

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 1月から放送2年目へと突入した『新幹線変形ロボ シンカリオン』。最近知ったという人にも作品の魅力をわかりやすくお届けする「新幹線変形ロボ シンカリオン応援連載 全速前進!こちら鉄分給配所」が、「アニメディア」にて連載中。そのなかで、制作に携わる関係者に話を聞いた「シンカリオン制作日記」が掲載されている。第4回目は副監督(1〜64話)の山岸大悟が登場。「エヴァンゲリオン」とのコラボ回についても語ってくれたので、超!アニメディアでもご紹介する。


――山岸さんの役職について教えてください。 

 (池添隆博)監督のサポートです。本作に関して言うと、2D(セル)と3D(CG)それぞれのパートを別会社が担当しているなど、作品に関わる人が多く、監督がロケハンやシナリオの打ち合わせで飛び回っていることもあり、2Dパートは僕が監督の手が届かないところのチェックを担当させていただきました。作画のリテイク(修正)の指示を出すなど、映像をブラッシュアップしていく感じです。こだわったのは、やはり鉄道に関する部分。別会社で制作した2Dと3Dの映像素材を「撮影」と呼ばれる段階でドッキングさせるのですが、2Dで描かれた駅のホームや線路の背景画に重ねて置いたとき、3Dの新幹線の素材がうまく乗らないとか、素材の位置が少しずれるということが頻発しました。そういう場合はどちらかの素材を調整するのですが、なかなか大変な作業になるんです(笑)。

――シンカリオンと新幹線は3Dの映像ですものね。

 シンカリオンに変形する新幹線は、CGのモデルを使わせてもらいました。シンカリオンにならない新幹線や在来線の電車は手描きです。手描きにも苦労はあって、線の量が多いので、車両のフォルムが崩れることがあるんです。鉄道を扱った作品なので、ドラマでもアニメでも鉄道の描写をしっかりやらないといけません。鉄道ファンに喜んでもらえる作品にすることを念頭に置いて作業していました。

――ちなみに山岸さんは鉄道ファンなのですか?

 それほどでもなかったのですが、一年以上本作に携わって鉄道に詳しくなりました。制作会社の近くに高架があって、ふと見ると新幹線が走っているなど、E5系やE6系は通勤がてらよく見ていました。僕が乗る電車にドクターイエローが併走するのを見たときはうれしかったですね(笑)。

――ところで、本作に携わるきっかけは?

 何度か一緒に仕事をさせていただいた池添隆博監督に声をかけられ、二つ返事で引き受けました。僕は『勇者シリーズ』を観ていた世代なので、熱い題材である「変形ロボットアニメ」をいつかはやりたいと思っていたんです。僕は『勇者王ガオガイガー』(1997年)が好きでしたが、メインロボであるガオガイガーの両肩には500系新幹線タイプの車両(ライナーガオー)が合体するんですよね。変形してロボットになって合体するところは、やはり熱いですよね。とくにE5はやぶさとドクターイエローのクロス合体は、かっこいいです。変形合体時のBGMにオーケストラ曲を使うなど、神々しくてすげぇなあと思いました。

――本作に携わることになって心がけたのは、どんなことですか?

 最初は、右も左もわからないオリジナル作品なので、僕やメインアニメーターの永作友克さんで、キャラクター性を固めるなどの指針を作っていくことになりました。とくに気をつけたのは、ハヤトの「まっすぐですごくいい子」という性格の表現がブレないようにすること。たとえば作画の設計図となる絵コンテで、ハヤトの感情の高ぶりを示すために眉毛を逆「ハ」の字型に描くと、作画スタッフは熱血系のポーズや表情に描いてしまいがちです。そうはならないように、「オラオラ」はツラヌキで「クール」はアキタなど、作画の部分で現れるキャラクター性をチェックしていました。また、ハヤトに惹かれた相手が巻き込まれていくスタイルなので、ハヤトの包容力が感じられることを大切にしていました。その一方で、鉄道の話をするハヤトのノリノリな様子は、普段の彼から外した感じを出すようにしていました。


――絵コンテや演出で注意した点は?

 ドラマ重視の作品なので、ハヤトたちの日常を描くは楽しい感じで描ければいいと思っていました。でも、その合間でシリアスな回があるので、締めるところはしっかり締めるようにドラマを作っていった感じはあります。たとえば、最初にブラックシンカリオンと戦った19話。ハヤトとリュウジの距離が近づく話でもあったので、そこをドラマチックに見せられるようにリュウジの登場のさせ方にこだわりました。また、本作ならではの演出として、路線図などの説明カットはわりと苦労しました。鉄道に詳しいスタッフにチェックしてもらって、駅の距離感などのバランスを取って、できるだけリアルになっています。

――印象に残っている回を教えてください。

 僕はキャラクターの感情が出る話が好きなので、意外だなと思ったのは、23話のハヤトの妹・ハルカ。ふだんは眠そうな顔で「……なわけで」と斜に構えている彼女が単身赴任中の父・ホクトの不倫を疑って感情を爆発させるところは好きでした。あとは、セイリュウ関連の話ですね。ハヤトたちもそれぞれ成長していますが、キトラルザスのセイリュウたちのほうが大きく変化している気がします。彼らは、戦う相手として登場したものの、少しずつ人間の考え方を理解しようとして歩み寄ってきました。表情もしゃべりかたも変わらないけれど、考えは全然変わってしまった。ゲンブなどは別人ですものね。だから、僕が演出を担当した44話でゲンブを石化させるのは悲しかったです。みんなでケーキ食べていたのに、そのあとに凄まじいシリアスな展開が待っている。あの話を観た子どもたちのなかにショッキングな形で残ってしまうのではないかなと。

――ご自身が担当されたエピソードなどで、これを観てというのは?

 やはりセイリュウとの戦いに関連するエピソード(18・19話、25〜27話、45〜47話)は見どころではないでしょうか。三度の戦いでぶつかり合いながら歩み寄り、最後は「ロボットアニメならではの精神世界」で歩み寄るという(笑)。あとはゲンブ関連。みんなで遊園地へ行った43話などのコミカルなところも面白かったですね。また、シリーズ構成の下山健人さんの引き出し(知識の幅)はすごい広範囲に渡っているので、シナリオに詰め込むネタが豊富。それを映像化するにはいろんな表現方法を考えなくてはならないので大変ですが、鉄道・ご飯・歴史と、いろんな要素が詰まっていて、観返してもらうと勉強になると思います。

――コラボ企画でもご苦労されたのでは?

 まさか『初音ミク』と『新世紀エヴァンゲリオン』が登場するとは思いませんでした。初音ミクは、作っている段階では「音声を加工するキャラクター性が視聴者にどう見えるのか」という点が怖かったです。でも、受け入れてもらえたようなのでよかったですね。また、31話の『エヴァンゲリオン』とのコラボ回は、僕が2D部分の絵コンテを担当しました。子どものころに観ていた『エヴァ』らしさを表現することに苦労したかな。3Dパートを担当された大畑晃一さんは戦闘シーンを『エヴァ』のオマージュとしていたようです。僕も2Dパートの画面つくりのため『エヴァ』を見返して、第三新東京市の見せ方などの参考にしました。ストーリーを引っ張っていくのはハヤトですから、基本的には『シンカリオン』ありきの『エヴァ』という感じで描けたので、楽しくできました。最初「シンカリオン 500 TYPE EVA」の運転士・碇シンジはラストカットまで顔を見せないことになっており、絵コンテではシンジを口元だけの映像で描いていました。ところが、直前になってやはり顔を見せることになりました。シンジも顔を見せて表現できたのでよかったです。今となっては、登場時から顔を見せるのもありだったかな。でも、シンジの「チェンジ!シンカリオン!」は面白かったです。絵コンテを描きながらニヤニヤして、アドリブで「今よシンジくん」というシンジの上司・葛城ミサトのセリフを入れちゃいました。ファンの方にも喜んでいただけたようですし、やってよかったなと思います。

――「キトラルザス決着編」のクライマックスの部分を振り返っての感想は?

 58話以降はカイレンとの最終決戦なのでシリアスな場面が多くなります。そのシリアスな感じが崩れないようにキャラクターのチェックをしていました。慣れていないスタッフの作画は、ニュートラルな顔になりがちです。眉毛の形は感情に合ってはいるけれど、緊張感が伝わってこないとか。ただのキャラクターの絵になってしまうところを「血を通わせる」や「ドラマが伝わるように」という修正を出させてもらいました。顔の表情ひとつで伝わるものが違ってしまうので、3Dのメカがかっこいい分、2Dの作画も頑張らないといけませんからね。

――「これがないとシンカリオンではない」という作品の柱“鉄分”はなんでしょう?

 本作は、多くの人々が関わっているように思います。そしてそんな人たちの熱量というか、本気度合いを感じます。映像制作スタッフはもちろんですが、イベントも多いので、宣伝スタッフも熱い。多くの作品は「現場で作って放送して終わり」という感覚ですが、本作は、それだけでは終わらず、広がっていく感じがあります。多くのファンに本作を楽しく観ていただくために、各分野の担当者が自分にできる最大限のアプローチをしています。“鉄分”とは、そんな大人たちの熱意のようなものでしょうか。『シンカリオン』をいい方向へ持って行くために、みんなで盛り上げているのを感じます。

――新シリーズで期待されていることは?

 個人的に期待したいのは、ビャッコやゲンブの復活ですね。ふたりとも僕が演出か絵コンテを担当した回で劇的な最期を遂げさせたので、ぜひ蘇ってハヤトたちの味方になって一緒に戦ってほしいと思います。人数が増えるとバトルが大変になりますけどね(笑)。

――読者にメッセージをお願いします。

 すごく広がってきたコンテンツで、観てくださる方が増えてきてうれしいことです。まだまだ『シンカリオン』は続くので、これからもファンでい続けていただき、視聴を楽しんでいただければなと思います。

取材・文/草刈勤

<TVアニメ『新幹線変形ロボ シンカリオン』情報> 
TBS系全国28局ネットで毎週土曜あさ7時~7時30分放送中!

◆ストーリー 
鉄道博物館、京都鉄道博物館、リニア・鉄道館の地下深くに存在する特務機関「新幹線超進化研究所」は、“漆黒の新幹線”が生み出す巨大怪物体から日本の未来を守るため「新幹線変形ロボ シンカリオン」を開発した。「シンカリオン」とは、実在する新幹線から変形する巨大ロボット! その「シンカリオン」と高い適合率を持つ速杉ハヤトら子どもたちが運転士となり、研究所員ら大人たちと力を合わせて強大な敵に立ち向かう! 果たして“漆黒の新幹線”の目的は・・・!? 子どもたちは日本の未来を守れるのか・・・!? チェンジ! シンカリオン!

◆スタッフ 
監督 池添隆博 
シリーズ構成 下山健人 
キャラクターデザイン あおのゆか 
メカニックデザイン 服部恵大 
音楽 渡辺俊幸 
音響監督 三間雅文 
アニメーション制作 OLM 
アニメーション制作協力 亜細亜堂 
CGアニメーション制作 SMDE 
制作 小学館集英社プロダクション 

◆声の出演 
速杉ハヤト 佐倉綾音 
男鹿アキタ 沼倉愛美 
大門山ツラヌキ 村川梨衣 
シャショット うえだゆうじ 
上田アズサ 竹達彩奈 
速杉ホクト 杉田智和 
三原フタバ 雨宮 天 
出水シンペイ 緑川 光

公式サイト 
http://www.shinkalion.com/ 

公式Twitter 
@shinkalion 

シンカリオンTV 
http://www.shinkalion.com/movie/

©プロジェクト シンカリオン・JR-HECWK/超進化研究所・TBS

《超!アニメディア編集部》
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