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アニメディア12月号コラム「アニメ妖怪よもやま話」全文掲載。妖怪文化研究家・木下昌美が語る「怪獣」と「妖怪」の深い関係とは?

2017/11/24


 発売中のアニメディア2017年12月号で掲載しているコラム「アニメ妖怪よもやま話」。アニメ・マンガ作品における定番ジャンルでもある「妖怪」のことを、ときに楽しく、ときにちょっとだけアカデミックに解説するコーナーとなっている。今回はその全文を掲載します。語り部は奈良県在住の妖怪文化研究家・木下昌美先生です。

 

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<歴史の深い怪獣―古代中国地理書にも登場> 
 

 今回は11月17日公開の劇場アニメ『GODZILLA 怪獣惑星』にちなんで、「怪獣」について考えてみたいと思います。妖怪コラムで「なぜ怪獣なのか?」と不思議に思う方もいるかもしれません。しかしながら、じつは妖怪と怪獣には深い関係があるのです。

『ゴジラ』は1954年に第1作目が公開されてから、半世紀以上にわたり愛されている特撮怪獣映画シリーズです。『ゴジラ』を観て育ったという人も少なくないでしょう。大きな体で街を壊していく姿は、子どもたちに言い知れぬ高揚感を与えてくれました。

 昨年は庵野秀明さんが総監督を務めた『シン・ゴジラ』が、社会現象を巻き起こすほどの大ヒットとなりました。また『ゴジラ』は国内のみならず海外での人気も高く、2014年にハリウッド版2作目が公開。さらに2019年には続編『Godzilla:King of Monsters(原題)』の全米公開が予定されています。

 そんななか初の長編アニメ映画となる『GODZILLA 怪獣惑星』は、「これまでのどんなゴジラとも一線を画す」と銘打たれており、2万年の間、地球に君臨し続けていたゴジラと人間が対峙する物語となっているようです。

 さて、いまや怪獣の代表格とも言えるゴジラ。多くの人が怪獣と聞けば、ゴジラのように巨大で、建物や街を破壊してまわる生物を想像すると思います。そのためか、どことなく怪獣という概念も特撮映画の隆盛に伴い生まれた、新しいもののように感じられる方も多いのではないでしょうか。

 しかし意外なことに、怪獣の歴史は古いのです。古代中国の地理書『山海経(せんがいきょう)』(紀元前4世紀~3世紀)で、すでに「怪獣」という言葉が使用されています。同書には「東三百八十里曰猨翼之山其中多怪獣水多怪魚多白玉多蝮虫多怪木不可以上」という一文があります。ざっくりと翻訳すると「猨翼の山と言うところには怪獣が多く、水には怪しい魚が多く、マムシが多く、怪しいヘビが多く、怪しい木が多く、山に登ることができない」と述べているのですが、そこで怪獣という単語の登場が確認できます。

 同文では、「怪」という単語が魚やヘビ、木にまで充てられていて、同じように獣(けもの)にも充てられています。おそらく「不思議な」という意味で使われているのでしょう。現在のように「怪獣」という一単語に意味があるのでなく、二つの文字が組み合わさっているに過ぎない表現であると思われます。

 

<非常に密接した関係の妖怪と怪獣> 
 

 中国古代からの使用例がある「怪獣」という言葉。日本でも古くから使われていたと考えられていますが、今のところ近世よりさかのぼることは難しいようです。

「怪獣」という言葉が見て取れる具体例として、天明2年(1782年)7月に起こった事件を記録した瓦版「奥州会津怪獣の絵巻(おうしゅうあいづかいじゅうのえまき)」が有名です。この瓦版にはなんと、ギラっと見開いた目に長い鼻、全身をおおうような真っ黒髪、そしてトゲトゲした肌と、一度見たら忘れられない不気味な獣の姿が描かれています。

 瓦版の詞書(ことばがき)によると、現在の福島県の会津市に出たというこの怪しい獣が退治された事件を伝える内容のようです。獣は多くの子どもを食べるなどしたようで、結果的に鉄砲により退治されたようです。ちなみに獣の大きさは、4尺8寸(約1.5メートル)あったとも書かれています。

 実際にそのような獣が出現したというよりは、注意喚起の意味も含め描かれたと考えたほうが現実的でしょう。とはいえ瓦版の例にしてもそうですが、怪獣が登場するのには何かしらの理由があることが推察されます。

 これは妖怪にも共通します。つまり妖怪にしても怪獣にしても、それが発生するのには原因となる事柄があるのです。先の奥州会津の怪獣には子どもたちを取り巻く環境の不安がありました。妖怪の場合ですと、例えば川岸に出る河童(かっぱ)は、水害に対する恐れが背景にありました。原因となる存在が、より獣らしいものを怪獣として区別をしてはいたのでしょうが、おそらく妖怪も怪獣も、はじめは大きな差はなかったと考えられます。

 近代に入り、アニメやマンガの影響もあって次第に一般的となった妖怪と、特撮などの方面に存在の活路を見出した怪獣。妖怪はノスタルジックなイメージが付加され、土地の文化や風習を色濃く反映する存在となりました。一方で怪獣は、初代『ゴジラ』の煽り文句が「核の落とし子」であったように、より近代的な背景を背負うものとしてイメージ像ができあがったのだと思われます。また、怪獣は近代に「恐竜」という要素を取り込み、意味が膨張したとする説もあります。(勉誠出版刊『モノと図像から探る妖怪・怪獣の誕生』所収・齊藤純著『「怪獣」の足跡―怪しい獣から怪獣まで』より)

 いずれにしても妖怪と怪獣は密接した存在でありながら、背負っているものがわずかながら違うことがおわかりいただけたかと思います。さてさてアニメ『GODZILLA 怪獣惑星』では、どのような怪獣が描かれるのでしょうか。とても楽しみです。

 

 

解説:木下昌美
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<プロフィール>
妖怪文化研究家。福岡県出身、奈良県在住。子どものころ『まんが日本昔ばなし』に熱中して、水木しげるのマンガ『のんのんばあとオレ』を愛読するなど、怪しく不思議な話に興味を持つ。現在、奈良県内のお化け譚を蒐集、記録を進めている。大和政経通信社より『奈良妖怪新聞』発行中。

 

●挿絵/幸餅きなこ

 



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