宮森あおいの言葉でアニメ関連媒体の編集者になった人間が『SHIROBAKO』の魅力を自身の経験と併せて語る | 超!アニメディア

宮森あおいの言葉でアニメ関連媒体の編集者になった人間が『SHIROBAKO』の魅力を自身の経験と併せて語る

アニメ業界にスポットを当て、日々起こるトラブルや、クリエイティブな仕事ゆえに起こる葛藤や挫折、集団で作るからこそ起きる結束や衝突といった、アニメ業界の日常を描いた群像劇作品『SHIROBAKO』。2020年2月29日に …

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 アニメ業界にスポットを当て、日々起こるトラブルや、クリエイティブな仕事ゆえに起こる葛藤や挫折、集団で作るからこそ起きる結束や衝突といった、アニメ業界の日常を描いた群像劇作品『SHIROBAKO』。2020年2月29日に劇場版が公開されるなど、本作は多くの人に愛され続けている。かく言う筆者・M.TOKUもその内のひとり。しかし、「好き」というだけでなく、少し特別な感情も混じっている。それは、宮森あおいの言葉・行動に触発されて、アニメ関連媒体の編集者になる決意をしたからだ。

宮森あおい

夢、破れる

 兄の影響もあり、小さい頃からたくさんのアニメ、ゲーム、マンガに触れてきた筆者。気が付くと、そのすべてに夢中になって、作品から多くのことを学び、影響されるようにもなった。擦り切れるほどにビデオを繰り返し観た『機動戦艦ナデシコ』と、何回観ても泣いてしまう作品になった『とらドラ!』、何度もクリアした『ときめきメモリアル2』『九龍妖魔學園紀』……。好きな作品を挙げていくとキリがない。そして、これらの作品が、自身の人格を形成してきたと言っても、過言ではない。この「好き」という気持ちをいつしか、「自分以外の人にも伝えたい」と思うようになる。そして、自分では到底思いつかなかった作品を生み出し、感動させてくれた方々の努力を多くの人に伝えるような仕事をしたい、と考えるようになっていった。

 夢の実現に向けて臨んだ就職活動では、作品やクリエイターたちのことを紹介する「編集」という仕事、ジャンルとしては、アニメ・ゲーム系の出版社を中心に当たっていく。どの企業に入っても、楽しい未来が待っている……と思っていたが、現実は軒並み「お祈り申し上げます」状態。夢破れた筆者は、一年間、地元企業に就職する。それでも、「アニメ・ゲーム業界」「編集」という仕事への憧れが捨てきれなかったため、一念発起して、東京へ。「どこでもいい、なんでもやります」という気持ちで、片っ端から編集プロダクション(編プロ)を受けたところ、やる気が認められてか、何とか、最新スポットやイベント情報などを紹介する雑誌を中心に、たまーにアニメ雑誌の編集業務も行う編プロに拾ってもらえた。

 その編プロで約4年働くも、取材先の選定、取材先へのアポ取り、入稿、校正と、毎日働いても、終わりが見えない作業に正直、嫌気がさしてきていた。そもそも自分がやりたかったことはこういうことだったのか、何のために仕事をしているのか、自問自答する日々が続く。そんなときに出会ったのが、『SHIROBAKO』という作品だった。


「アニメ」が好きなんです

 正直に言って、私は『SHIROBAKO』をリアルタイムで観たのが18話からと、実に中途半端であった。それも、兄が観ていたのをたまたま横目で観ただけというただの偶然。当時は、日々の業務に疲れ果て、大好きだったアニメを観ることすら億劫になっていた。その話で描かれていたのは、様々な問題を抱えながらも奮闘するデスクの宮森の姿と、彼女のピンチに駆けつける矢野(エリカ)さんの姿。前後の話を知らなかったが、キャラクターの魅力、声優さんの演技、演出、そして、「矢野さんのような先輩がいたらなぁ」という希望を抱いたことで、作品に興味が湧き、視聴を続けることにした。

矢野エリカ

 このように、出会った頃は、さほど思い入れのある作品でもなかった『SHIROBAKO』。その想いが一気に変わったのが、TVシリーズ最終話にあたる24話「遠すぎた納品」での宮森、ひいてはロロの「これからどうしたいか決まった?」「目先のことばかり考えている時期はもう終わりだよ」「そろそろ少し高いところから遠くを見るときが来たんだよ」という言葉だった。この心の葛藤の問いに対して、宮森は、「アニメを作ることが好きだし、アニメを作る人が好きだから……私、これからもずっとアニメを作り続けたい!」と答える。

 その言葉に思わず、ハッとしてしまった。「編集」という仕事を目指し始めた当初は、恐れ多くも、私も宮森と似通った気持ちのはずだったからだ。私の人格を形成し、支えてくれたアニメやゲームの素晴らしさ、そして、それを作っている方々の努力を多くの人に知ってもらいたい。そんな想いから業界を目指していたはずなのに、忙しさにかまけて、いつの間にか、その想いすら忘れてしまっていた。

 宮森の言葉と『SHIROBAKO』という作品に影響された私は、その後、お世話になった編プロを退職。WEBの総合ニュースサイトでの編集経験を経て、今は、さまざまなアニメ関連媒体で記事の執筆や編集作業をしている。


夢から覚めていない

 約7年の年月を経て、ようやく自分が目指していた業界で働くようになったが、やりたいことばかりをして生活ができているわけではない。『SHIROBAKO』の世界でも起きている、“クリエイターたちが絶対に起きて欲しくない出来事”と似たようなことに直面したこともあった。自分のふがいなさに、落ち込む日もあった。インタビュー原稿を半日で上げてくれとお願いされた日もあった。苦しい、つらいという日も少なくない。

 それでも、もっと多くの人にアニメやゲームが、人生を変えるきっかけにもなるということを伝えたいし、業界で活躍するクリエイターの方々の努力を伝えていきたいと思っている。それは、やっぱり「アニメ」「ゲーム」が好きで、この業界の方々も、好きだから。理不尽だと思うようなことがあっても、納得いかないことがあっても、自分が思い描いていたものと現実のギャップがあったとしても、「少し高いところから遠くを見る」と決めたときから、この気持ちは揺るいでいない。今でも、夢から覚めていない。

 もう何周したかも覚えられないくらいに観るようになった『SHIROBAKO』。1話から最終話までを観返しては、「物事を考える前に、まずは状況を整理すること」「クリエイターさんに仕事をお願いする前に考えないといけないこと」「一人で仕事をしているわけではないこと」など、多くの教訓を得ている。また、登場人物たちの葛藤に共感し、心の機微に触れては涙もする。逆に、自分とは違う考え方、理解できない人物もいるが、それさえも面白い。色々な人がいて色々な考え方がある、それがぶつかり合うこともあれば、尊重し合ってまとまることもある。『SHIROBAKO』を観て、改めて学ぶことができた。こういった教訓や学びはきっと、アニメ業界や編集以外の仕事でも、通ずるところがあるだろう。

『SHIROBAKO』には、共感できる部分や「ハッ」と気づかされる言葉が数多く出てくる。「何で働いているんだっけ」「何でこの仕事なんだっけ」、もしくは、「将来、何をしたいか分からない」「今、居場所がない気がする」と悩んでいる方はぜひ一度、『SHIROBAKO』をご覧いただきたい。少なくとも、一人の人間の人生を変えることとなった作品。何かを変える、変わるきっかけとなる発見や言葉が、ここで見つかるかもしれない。

文/M.TOKU


劇場版『SHIROBAKO』作品情報
公開日:2020年2月29日(土)
概要:
シロバコとは映像業界で使われる白い箱に入ったビデオテープの事であり、ひとつの作品が完成した際に制作者が最初に手にする事ができる成果物である。
清濁あわせのむアニメーション業界の日常、実情、実態を時に柔らかく時に厳しく、赤裸々に描いたテレビアニメーション作品 『SHIROBAKO』。
クリエイティブな仕事ゆえに起こる葛藤や挫折、集団で作るからこそ起こる結束や衝突。生み出す苦しみ、万策尽きたスケジュール、その先にある何ものにも代え難い解放と充足、からの突きつけられる理想と現実のギャップに傷ついたり、絶望したり。しかし自分たちの想い描く夢を実現するため、そして昨日の自分よりも少しでも前に進むために、アニメーション制作に真正面から向き合う魅力的なキャラクターたちの姿、そしてそのキャラクターたちが織り成す群像劇は、老若男女、世代を超えて多くの人たちの共感を呼び話題となった。変な話、業界内でも。そしてついに、続編を望む多くの声に応え舞台をスクリーンに移して、待望の新作・劇場版『SHIROBAKO』の幕があがる!

《あらすじ》
いつか必ず何としてでもアニメーション作品を一緒に作ろうと、ひょうたん屋のドーナツで誓いを立てた上山アニメーション同好会の5人。卒業後それぞれがそれぞれの場所でアニメーション制作に携わっていく。宮森あおいは「えくそだすっ!」「第三飛行少女隊」の制作を経て、少しずつ夢へ近づきつつ、徐々に自分の本当にやりたいことを考え始めていた。
あれから、4年。日々の仕事に葛藤しながら過ごしていたあおいは朝礼後、渡辺に呼ばれ新企画の劇場用アニメーションを任されることになる。しかし、この企画には思わぬ落とし穴があった。今の会社の状況で劇場用アニメーションを進行できるのか? 不安がよぎるあおい…
新たな仲間・宮井楓やムサニメンバーと協力し、完成に向けて動き出す。
果たして、劇場用の納品は間に合うのか――!?

スタッフ

原作:武蔵野アニメーション
監督:水島努
シリーズ構成:横手美智子
キャラクター原案:ぽんかん⑧
キャラクターデザイン・総作画監督:関口可奈味
美術監督:竹田悠介、垣堺司
色彩設計:井上佳津枝
3D監督:市川元成
撮影監督:梶原幸代
特殊効果:加藤千恵
編集:髙橋歩
音楽:浜口史郎
音楽制作:イマジン
主題歌:fhána「星をあつめて」(ランティス)
プロデュース:インフィニット
アニメーション制作:P.A.WORKS
配給:ショウゲート
製作:劇場版「SHIROBAKO」製作委員会

キャスト
宮森あおい:木村珠莉
安原絵麻:佳村はるか
坂木しずか:千菅春香
藤堂美沙:髙野麻美
今井みどり:大和田仁美
宮井楓:佐倉綾音
矢野エリカ:山岡ゆり
安藤つばき:葉山いくみ
佐藤沙羅:米澤円
久乃木愛:井澤詩織
高橋球児:田丸篤志
渡辺隼:松風雅也
興津由佳:中原麻衣
高梨太郎:吉野裕行
平岡大輔:小林裕介
木下誠一:檜山修之
葛城剛太郎:こぶしのぶゆき

劇場版『SHIROBAKO』公式サイト

http://shirobako-movie.com/

『SHIROBAKO』公式Twitter
@shirobako_anime

(C)「SHIROBAKO」製作委員会
(C)2020 劇場版「SHIROBAKO」製作委員会

《超!アニメディア編集部》
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