超!アニメディア

  • RSS
  • twitter

超!アニメディア

  • RSS
  • twitter

MENU

ニュース

アニメディア6月号コラム「アニメ妖怪よもやま話」全文掲載。妖怪文化研究家・木下昌美が注目する『夏目友人帳』の登場人物は意外なふたり

2017/5/24


 発売中のアニメディア2017年6月号で掲載しているコラム「アニメ妖怪よもやま話」。アニメ・マンガ作品における定番ジャンルでもある「妖怪」のことを、ちょっとだけアカデミックに楽しんでもらう解説コーナーとなっている。今回はその全文を掲載します。語り部は奈良県在住の妖怪文化研究家・木下昌美先生です。

 

%ef%bd%97%ef%bd%85%ef%bd%82%e7%94%a8

 

<はじめに> 
 みなさんは「妖怪」について、どのようなイメージをお持ちでしょうか。一般的には怖い、不気味、得体の知れないもの……といったところではないかと思います。夏に博物館で妖怪系の展示会が開催されたり、各地でイベントなどが実施されたりするのも「怖い思いをして涼しくなりたいな~」という理由からでしょう。もちろん妖怪といえば、そうした側面が強いことは否めません。しかしながら、それだけではないことも事実です。ここでは、そんな妖怪たちの姿について、アニメに登場するモノたちを中心に話をしていこうと思います。

<妖怪アニメの変遷> 
 私が子どものころ、1990年代は学校の怪談ブーム真っただ中でした。そう言うとだいたいの年齢がバレてしまいますが、小学校のトイレの何番目には花子さんが出るだとか、通学路で人面犬を見ただのという話が飛び交っていたことを覚えています。時流に合わせるようにして当時、お茶の間で大人気だったアニメが『地獄先生ぬ~べ~』(アニメ開始1996年~)です。子ども向けにしては、いささか衝撃が強い場面もあったように記憶していますが、ビクビクしつつも毎週楽しみに観ていました。
『ぬ~べ~』に限らず、昨今、妖怪が登場するアニメやマンガはたくさんあります。挙げていけばキリがないほどで「妖怪モノ」がアニメ・マンガの一ジャンルとして確立していると言っても過言ではありません。一体全体、こうした流れはいつごろ生まれたものなのでしょうか。
ハッキリと「ここからスタート!」と区分することは難しいですが、図像化された妖怪ということでいえば、絵巻物にその片鱗を見ることができると思います。絵巻の始まりは奈良時代の『絵因果経(えいんがきょう)』あたりだろうと言われていますが、そうした仏教系の絵巻などに妖怪のもととなる存在を見出すことができます。
時代はぐっと飛びますが、江戸時代に入ると印刷技術の発達にともない、さまざまな書物が出版されるようになりました。浮世絵に妖怪や幽霊が登場したり、大人向けの絵本「黄表紙」にも妖怪がこれでもかというほど登場したりします。鳥山石燕(とりやませきえん)という絵師が描いた『画図百鬼夜行絵巻』という、今で言うところの「妖怪図鑑」が出版されたりもしました。妖怪が「キャラクター」として、人々に親しまれるようになってきたことがわかります。今の妖怪につながる基盤が形成された時代です。明治時代になり、文明開化と共に妖怪のような得体の知れないものがなくなるかと思いきや、そんなことはなく今に至るわけです。
 アニメが本格的に盛んになってきた戦後の妖怪アニメの先駆けといえば、藤子不二雄さんの『オバケのQ太郎』(1965年~)。頭から毛を3本生やした、たらこ唇のQ太郎が主人公です。続いて、現代における妖怪のイメージのもととなるモノたちを生み出したのが御存知、水木しげるさんです。水木さんの代表作『ゲゲゲの鬼太郎』(1968年~)には、数多くの妖怪が登場します。みなさんも頭に妖怪を思い浮かべると、たいていその姿は水木さんが創った妖怪ではないでしょうか。ちなみに水木さんは先述した『画図百鬼夜行』に登場する妖怪の影響を大きく受けています。また、同時代には『妖怪人間ベム』(1968年~)も放送されました。
妖怪アニメ熱が再び燃え上がるのは90年代です。冨樫義博さんの『幽☆遊☆白書』(1992年~)や椎名高志さんの『GS美神 極楽大作戦!!』(1993年~)など、次々と妖怪モノのアニメが世に放たれます。
 60年代のアニメでは比較的、妖怪が人間に敵対するものであったり何やら得体のしれないものだったり、人間と妖怪とを区別して描かれていました。それが90年代に入ると、ときに対立しながらも仲間になっていくことが見て取れます。アニメの歴史をたどることで、妖怪と人間との間にある壁が薄れてきたことがわかるのではないでしょうか。

<『夏目友人帳』と昔話の共通項> 
 そして近年、大人気な妖怪モノのアニメといえば、なんと言っても『夏目友人帳』です。作品に登場する、主人公・夏目貴志の用心棒(自称)であるニャンコ先生こと斑(まだら)が愛嬌たっぷりで多くの人を虜にしています。先月号の本誌でも特集が組まれていました。
 ストーリーの軸は、夏目貴志が祖母・夏目レイコと妖怪たちが勝負してレイコが勝つと代償として奪った “名前 “を返していくというもの。幼くして両親と死別し、父方の親戚間をたらい回しにされてきた夏目貴志ですが、子どもを持たない心やさしい夫婦・藤原滋、塔子に引き取られ、おだやかに暮らしています。
 同作品に登場する妖怪の代表格といえばニャンコ先生ですが、先生は招き猫を依代として長い間封印されていました。夏目が封印のために張られていた縄を引きちぎってしまったために封印が解かれ、動けるようになったのです。普段は猫の姿で、変化すると狼のような姿になりますが一体全体、ニャンコ先生の正体はなんなのでしょうか。「北国奇談巡杖記」(『日本随筆大成』所収)という随筆には“斑狐” という狐が登場します。人に化ける狐なのですが、ニャンコ先生と同じ名前ですね。もしかすると、ニャンコ先生の正体も狐なのかもしれません……。
 私は本作において、夏目貴志を引き取ってくれた藤原夫妻に注目しています。話がそれるようですが、まずは昔話の『桃太郎』や『一寸法師』の話を思い出してみてください。「昔むかし、あるところにお爺さんとお婆さんが住んでいました」で始まる、あの昔話です。
 桃太郎や一寸法師では、その語り出しどおり、爺と婆が登場します。この夫婦はなぜか子どもを持っておらず、ほかの家族も見当たりません。そんなところに、ひょいと桃太郎や一寸法師が登場するのです。桃太郎や一寸法師は桃から生まれたり、とてつもなく小さな体をしていたりと不思議な背景を持っています。そして子を持たない夫婦に幸福をもたらすのです。一説に体の小さな主人公は「小さ子」と呼ばれ、神の子どもとして認識され
ています。
 アニメ『夏目友人帳』の第五期十話「塔子と滋」では、藤原夫妻が夏目を引き取るに至った経緯が描かれています。それを観ていると先述した昔話は、夏目と藤原夫妻の関係にどことなく似ていることにお気付きでしょうか。妖怪が見えるという特殊な能力を持った夏目が、子を持たない藤原夫妻に引き取られたことは定められた運命であったように思えます。とはいえ、昔話の場合は不可抗力で子どもを授かりますが、藤原夫妻の場合は進んで夏目を進んで迎え入れようとしている点が大きく違っています。
 幼いころから妖怪が見えることで周りの人たちに気味悪がられ、結果的に自分も人間不信になってしまった夏目。そんな閉ざされた夏目の心を藤原夫妻が次第に開いていきます。昔話では授かった子どもが夫婦に富をもたらすのがセオリーですが、今後『夏目友人帳』はどのように展開していくのでしょうか。もしかしたら、夏目が藤原夫妻にさらなる愛情を受けるだけでなく、桃太郎や一寸法師のように夏目が夫妻に幸福をもたらす存在になるのかもしれません。アニメの今後にも注目です。

 

解説:木下昌美
%e3%82%a2%e3%83%bc%e3%83%86%e3%82%a3%e3%82%b9%e3%83%88%e5%86%99%e7%9c%9fweb
<プロフィール>
妖怪文化研究家。福岡県出身、奈良県在住。子どものころ『まんが日本昔ばなし』に熱中して、水木しげるのマンガ『のんのんばあとオレ』を愛読するなど、怪しく不思議な話に興味を持つ。現在、奈良県内のお化け譚を蒐集、記録を進めている。大和政経通信社より『奈良妖怪新聞』発行中。

 

●挿絵/幸餅きなこ

 



PAGETOP