<アニメ・マンガ妖怪よもやま話>『ブラッククローバー』の魔法とは意味が違う!?「魔法様」と呼ばれる化け狸にまつわる話 | 超!アニメディア

<アニメ・マンガ妖怪よもやま話>『ブラッククローバー』の魔法とは意味が違う!?「魔法様」と呼ばれる化け狸にまつわる話

   アニメ・マンガ作品における定番ジャンルでもある「妖怪」のことを、ちょっとだけアカデミックに解説する「アニメ妖怪よもやま話」。アニメ雑誌「アニメディア」で連載していた本コーナーが「アニメ・マンガ妖怪よもやま話」として …

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 アニメ・マンガ作品における定番ジャンルでもある「妖怪」のことを、ちょっとだけアカデミックに解説する「アニメ妖怪よもやま話」。アニメ雑誌「アニメディア」で連載していた本コーナーが「アニメ・マンガ妖怪よもやま話」としてWEBで復活。今回は「魔法様」と呼ばれる化け狸にまつわるさまざまな伝承について、奈良県在住の妖怪文化研究家・木下昌美が語る。
 
 
「オレは魔法帝になる…!!!」のセリフでおなじみの『ブラッククローバー』がマンガ、アニメ共に人気を集めています。私も毎週、「週刊少年ジャンプ」でマンガの最新エピソードを読んでいますが、アツい展開に目が離せません。
 
 本作は、魔法が存在する世界で魔力を一切持たないアスタが魔法使いの頂点・魔法帝を目指すストーリー。魔法騎士団に入団して、さまざまな冒険を繰り広げます。
 
 魔法といえば、岡山県では「魔法様」という化け狸の話が聞かれます。別名「キュウモウ狸」とも呼ばれます。なんでも昔、南蛮船で大勢のキリスト教宣教師に紛れてキュウモウという古狸が日本にやってきたそうです。
 
 その狸は日本中を放浪し、とある銅山を棲み処とします。月夜の晩には陽気に「サンヤン、サンヤン」と言って踊ったそうです。人間に化けることがうまく、田植えなどを手伝ったり、盆踊りに交じって踊ったりする程度で特に悪さはしません。
 
 化けた姿は腰から下が短く、口ひげが濃くアゴは細い。そして口が尖っており、正体がバレると「すまんすまん」と言って逃げ出すのだそうです。聞くかぎりでは温厚そうですが、犬を連れて狸狩りをする者を見つけると、怒ってその人の家に火をつけると云われています。
 
 あるとき、村人にこれまで世話になった礼を伝えて「これからは村の牛馬を守り、火難盗難があるときには事前に知らせます」と誓います。そこで村人たちは馬喰山にお宮を建ててキュウモウ狸を祀ることにしたそうです。このお宮は「魔法宮」と呼ばれ、縁日にはお参りする牛馬の列が絶えなかったようです。
  
 この魔法神社は岡山県に実在し、現在は火雷神社として親しまれています。実は、ここで言う「魔法」は『ブラッククローバー』で使われれている意味とは異なります。どうやら摩利支天(まりしてん)の社があることから、その名が来ているようです。ちなみに摩利支天とは、インドの民間に信仰された神で、日本では中世に武士の守護神として崇められました。
 
「魔法」とひと口に言っても、さまざまな形があるのでしょう。『ブラッククローバー』ではアスタをはじめ、登場人物たちは困難に直面しながらも立ち向かい、先へ先へと進んでいます。仲間と協力し合いながらアスタが魔法帝になる日は……きっとやってくることでしょう。今後の展開を楽しみに見守りたいと思います。

 

解説:木下昌美
<プロフィール>
【きのした・まさみ】妖怪文化研究家。福岡県出身、奈良県在住。子どものころ『まんが日本昔ばなし』に熱中して、水木しげるのマンガ『のんのんばあとオレ』を愛読するなど、怪しく不思議な話に興味を持つ。現在、奈良県内のお化け譚を蒐集、記録を進めている。大和政経通信社より『奈良妖怪新聞』発行中。
 
●挿絵/幸餅きなこ 撮影/高旗弘之
《超!アニメディア編集部》
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