誰にも言えない“裏アカ恋愛”がバレたとき、少女たちの愛が壊れ始める――SNS時代の百合マンガ『今日はカノジョがいないから』【おすすめマンガ手帖】 | 超!アニメディア

誰にも言えない“裏アカ恋愛”がバレたとき、少女たちの愛が壊れ始める――SNS時代の百合マンガ『今日はカノジョがいないから』【おすすめマンガ手帖】

秘密の恋愛を裏垢で発信していた少女ゆにの行動がバレたことで、恋人の七瀬と新たに現れた風羽子との三角関係に陥る。登場人物それぞれの事情や正当性を描き、単純な裏切りではない複雑な愛憎関係を緻密に表現したSNS時代のリアルな百合ドラマ。

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(C)岩見樹代子/一迅社
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アニメ・マンガに目がない「アニメ!アニメ!」編集部が、まだアニメ化されてはいないけれどぜひ読んでほしいおすすめマンガを紹介する連載<おすすめマンガ手帖>。今回は、コミック百合姫にて連載中の『今日はカノジョがいないから』を紹介する。

隠れて付き合っている七瀬とゆに。ゆにはバレー部で忙しい彼女のことを理解はしている。ただ大人しく、でも寂しく過ごすしかない放課後。そんな誰にも言えない恋愛と、持て余した時間を裏垢に投稿し続けていた。自撮りや愚痴、ほんの少しの惚気。誰でもいい。ささやかな発信。それが学校でバレてしまったとき、ゆには七瀬だけの彼女でいられなくなっていき──。

本作の作者・岩見樹代子は、代表作に『ルミナス=ブルー』『透明な薄い水色に』(百合姫/一迅社刊)がある、実力派百合作家である。

※以下の本文には“ネタバレ”に触れる記述を含みます。読み進める際はご注意ください。

「浮気」では説明できない、すれ違いの心理

4巻 第16話 (C)岩見樹代子/一迅社

七瀬とゆには恋人同士であるものの、その事実を周囲には明かしていない。部活動に打ち込む七瀬は多忙で、放課後や休日も思うように時間を共有できない状況にあった。ゆにはその事情を理解しようとしながらも、誰にも打ち明けられない関係性と、すれ違いの多い日常のなかで、次第に孤独感を深めてゆく。

その感情の捌け口となるのが、ゆにが使っている匿名のSNSアカウント、いわゆる裏垢である。現実では言葉にできない思いや満たされない気持ちを発信することで、ゆにはなんとか自分を保とうとする。しかし、そこにあるのは誰かに受け入れてもらいたいという切実な欲望であり、同時に不安定さをはらんだ危うい行為でもある。

しかし、そのアカウントの存在がクラスメイトの風羽子に知られたことで、物語は大きく動き出す。記念日すら祝ってくれない七瀬に対して、風羽子はゆにの涙を拭い、「私は二番目でいいけど…ゆにちゃんは私の一番なんだよ」「世界でいちばんだいすきだよ」と言って抱き締める。愛してくれる人が現れた安心感と、弱みを握られていることへの緊張が並行して存在するなかで、ゆには風羽子との関係に反発しながらも引き寄せられる。

2巻 第6話 (C)岩見樹代子/一迅社

三人の少女、それぞれの正しさ

本作のおもしろさは、この状況を単純な裏切りとして描かないところにある。ゆにの感情は常に七瀬に向けられており、風羽子に鞍替えするわけではない。それでもなお、恋人ではない相手に心が傾いてしまうのはなぜか――。恋愛関係のなかでの満たされなさや、他者とのつながりを求める気持ちが生み出す、一筋縄ではいかない愛憎が緻密に描かれているのが『今日カノ』なのだ。

4巻 第18話 (C)岩見樹代子/一迅社

また、登場人物それぞれの視点から物語を描いている点も本作のおもしろさのひとつである。七瀬は、ゆにを大切に思っているからこそ関係性を公表できず、部活動に明け暮れるが、ゆにはいまいち彼女の部活の話には興味がない。そして風羽子にもまた、過去の恋のトラウマがあった。それぞれに事情があり、誰か一人を断罪できない構造が、本作に現実的な手触りを与えている。

ゆには七瀬がどうしていれば、この縺れた三角関係に足を踏み入れずに済んだのか。どこで踏みとどまるべきだったのか、あるいは避けられなかったのか。『今日カノ』は読む人によって、抱く感想の幅が広くある作品でもあるだろう。誰に共感するか(あるいは誰にも共感できないか)は読者の価値観をそのまま映し出す、いわば鏡のようなマンガである。

誰も悪者じゃない恋の痛み――リアルな百合ドラマとしての魅力

『今日はカノジョがいないから』は、人と人との関係がどのように変化し、揺らいでいくのかを丁寧に描いた作品である。特定の感情を肯定も否定もせず、その過程を淡々とすくい上げていく語り口によって、人間関係の複雑さを考えさせる深みのある本作を、ぜひ体感してみてほしい。



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(C)岩見樹代子/一迅社

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