矢沢あいによるマンガ『NANA』が再びブームになりつつある。本作は2000年に「Cookie」にて連載を開始し発行部数は5000部を突破した人気コミック。アニメ化、ゲーム化、実写映画化とメディアミックスも多数展開された。
物語は、彼氏を追いかけ上京する小松奈々と、ミュージシャンを目指し上京する大崎ナナが、新幹線で出会うことから始まる。同じ名前、同じ20歳ということで会話が弾んだ2人は、その後も偶然が重なりルームシェアをすることに。この2人を中心に、ナナのバンドメンバーなどとの交流が描かれていく。
マンガは2009年より休載、実写映画やアニメ作品も2005年~2007年ごろに展開していたが、令和になった最近、再び話題に。2025年の7月には映画『NANA』の公開20周年を記念し、リバイバル上映も行われた。
連載当時の読者であった50~30代の女性を狙った施策かと思われたが、劇場には若いファン層もちらほら。『NANA』に登場するハチやナナをイメージしたような、2010年代のラブリー系統、はたまたチェック柄のパンキッシュな服装を着こなしたファンも目に付いた。ポスターやグッズと記念撮影をするなど、昨今の“推し活”を楽しむ様子もあった。
なぜ、『NANA』連載当時には“幼少時代”を過ごしていた若年層が、この作品に出会ったのか? そしてハマる理由とは?
今回、実際に映画館に足を運んだという20代の編集部員に話を聞いてみた。
原作連載開始時にはまだ生まれていない…そんなことは関係なく刺さる!「社会人になって購入した名刺入れは、『NANA』に影響されてヴィヴィアン・ウエストウッドでした」
――『NANA』との出会いを教えてください。
ネットで偶然見かけた金髪の少年キャラがシンちゃんで、その後すぐに調べて『NANA』にたどり着きました! なので2001年生まれの私にとって『NANA』は、懐かしい作品でも世代の象徴でもなく、たまたま見つけたキャラクター起点でハマった作品です。
最初に読んだのは13歳のときなので2014年ごろかと思います。
――映画『NANA』を映画館で見ることができて、いかがでしたか?
原作は定期的に読み直しているのですが、リバイバル上映で実写映画を見たらまた違う感想が湧きました。スクリーンで見るとバンドの音楽が全身に響いたり、ライブの熱気や各シーンの情景がリアルに伝わってきました。ナナとハチが住む“707号室”がリアルに再現されていたのも感動しました! 実際行ってみたいって思うくらい、原作で憧れていた空間が実写映像として見れたのもよかったです。
とくに驚いたのがキャストの豪華さです。中島美嘉さんや宮崎あおいさんの存在感はもちろんですが、「えっ、松山ケンイチさんも出てたんだ!」とあらためて気付くこともあり、少しびっくりしました。今では大ベテランの俳優さんたちの若い頃の姿を一気に見られるのも、リバイバル上映ならではの楽しみだと思います。
売店で販売されていたコラボドリンクもかわいくて、カップを持ち帰りたくなりました。作中、ルームシェアを始めた2人がお揃いで買った「いちごのコップ」がモチーフになっているファンにはたまらないデザインで、ほとんどの観客が購入してましたね。

――観客は、自分と同世代の方が多かったですか?
自分と同じ20代前半か、少し上の女性が多かったです。皆さんめちゃくちゃ服がかわいかった印象もあります。ヴィヴィアン・ウエストウッドのでっかいネックレス(シンちゃんがつけてたライターになってるもの)を身に着けている女性もいました。皆さん、ポスターや記念品などの撮影をしていて、すごい好きなんだなと感じました。隣の席の女性2人組は映画終盤で泣いていて、何回見ても感動できるストーリーなんだと再確認しました。
鑑賞後、パルコのヴィヴィアン・ウエストウッド店舗を見たくなって寄ったら、同じく映画を見たあとの人たちが結構いたので、皆さん同じ気持ちなんだなと思いました。
――同世代にも『NANA』のファンはいますか?
結構います。中学生の頃はひとりで読んでいたのですが、大学に入ってから周りに『NANA』が好きな同世代の女の子が増えて、家でアニメ鑑賞会などもしました。『NANA』からほかの矢沢あい作品にも興味を持って、『パラキス(Paradise Kiss)』とか『ご近所物語』も読み始める子も多かったので、よくマンガの話で盛り上がっていました。カラオケでは絶対に「GLAMOROUS SKY」を一緒に歌います。
――『NANA』の魅力を語ってください。
『NANA』の最大の魅力は、キャラクターの生々しさだと思います。ナナもハチも完璧ではなく、嫉妬や依存、間違った選択ばっかりしていて、読んでいると「それはダメでしょ!」とイライラツッコミたくなる瞬間もあるのですが、同時に強く共感してしまう場面もあって。いざその立場になったら、自分もそういう感じになっちゃうかもと考えてしまう、リアルに感じる悩みが描かれています。
恋人同士の依存やすれ違いなど、普通の恋愛マンガでは読めない場面が多くて、中学生ながらショックもたくさん受けました。心が締め付けられる痛いシーンも多いですが、単純な恋愛・青春がテーマではないストーリーに惹かれました。
あとは服がかわいい! キャラたちの服装はどれも個性的でかわいいし、キャラクターの性格や気分を表現しているモチーフでもあって。そこもキャラの存在をリアルに感じるポイントかもしれません。
映画館を見て、あらためてナナやハチのコーディネートを真似したくなるファンも多いんだろうなと感じました。私も社会人になって購入した名刺入れは、『NANA』に影響されてヴィヴィアン・ウエストウッドでしたから。
時代を超えて、幅広い世代から愛される『NANA』。その魅力はまだまだ語りきることはできない。まだ作品に触れたことがない方も、一時読んでいたのに離れた方も、この機会に触れてみてはいかがだろうか。
今後もリバイバル上映や、新たなグッズの販売、そしてイベント開催などを期待して待ちたい。