ホラーマンガの鬼才・伊藤潤二の作品を原作とするアニメの第3期「伊藤潤二『クリムゾン』」が制作されることがわかった。主題歌には、ユーミンこと松任谷由実の書き下ろし楽曲「烏揚羽」(からすあげは)が起用される。発表に伴い「烏揚羽」のMVが公開され、伊藤と松任谷からコメントも届いた。
「マンガ界のアカデミー賞」と言われる「アイズナー賞」を4度も受賞した伊藤潤二は、世界中にファンを持つ、日本が誇るホラーマンガの鬼才として知られる。その独創的な世界観と、圧倒的な画力で描かれる魅力的なキャラクターが創り出す”恐怖の傑作“から、2023年1月には「富江」「双一」「首吊り気球」などの代表作選りすぐりの20タイトルが「伊藤潤二『マニアック』」としてアニメ化され、Netflix で全世界に独占配信された。同作はアジア各国のNetflixでTOP10入りを果たし、2024年にはTOKYO MXでも放送されていた。
このたび制作が決定した「伊藤潤二『クリムゾン』」は、2018年の「伊藤潤二『コレクション』」、2023年の「伊藤潤二『マニアック』」の好評を受けた、それらに続くアニメ第3期となる。「クリムゾン(CRIMSON)」とは深紅や真っ赤な色を指し、今回のコンセプトには”怪物“を掲げる。独特の狂気に満ちた傑作を厳選し、不気味で奇々怪々、それでいて独創的な伊藤の世界にどっぷり浸れる恐怖物語集を届けていく。

本作はフランス・パリで開催中の「Japan EXPO 2025」にて発表となったもので、主題歌には松任谷由実の書き下ろし楽曲「烏揚羽」が起用されることも明らかになった。両者の交流は、松任谷が 2024 年に世田谷文学館で開催された「伊藤潤二展 誘惑」を訪問してその様子をSNSで投稿し、それを以前より松任谷の大ファンであった伊藤が目にしたことがきっかけでスタートしたもの。
その後、伊藤が松任谷のラジオに出演するなどし、このたび松任谷が「伊藤潤二『クリムゾン』」の主題歌を書き下ろすことに繋がった。初対面となったラジオ番組の収録時、松任谷は「伊藤潤二展 誘惑」で購入した、伊藤が描き下ろした『深海の美女』がアレンジされたデザインの浴衣をまとって伊藤を迎えていた。
このたびの楽曲「烏揚羽」の主人公は烏揚羽で、“冥界と現世”の二つの世界をつなぐ役割を担っている。“異なる異空間をミックスする”という点は、そのまま製作中のアルバムのコンセプトに繋がっているという。なお同楽曲は、今秋発売予定の松任谷の40 枚目となるオリジナルアルバムに収録予定。公開されたMUSIC VIDEOに登場する「烏揚羽」は、伊藤描き下ろしのイラストとなるので注目してみたい。伊藤と松任谷はそれぞれコメントも寄せた。
ホラーマンガの鬼才・伊藤潤二の作品を原作とするアニメの第3期「伊藤潤二『クリムゾン』」の続報を楽しみに待ちたい。
<以下、コメント全文掲載>
伊藤潤二
現在、私の原作を基にした「伊藤潤二『クリムゾン』」というアニメが作られています。このタイトルを聞いただけでゾクゾクして期待が高まります。新旧の私の短編の中から、特に血のように深い赤色を存分に生かせる作品を選んでアニメ化していただけると聞いております。
ユーミンこと松任谷由実さんは、世界における最高の作曲家のひとりだと私は思います。今回「クリムゾン」の OP をユーミンさんに担当して頂ける事になりました。これは普通ではありえない事で、本当に夢のようです。最初ユーミンさんのスキャット風のデモを聴かせていただいて、それだけですぐに名曲と感じました。とても情感豊かで、一度聴いたら忘れられないメロディです。最近はこのユーミンさんの新たな名曲が、私の頭の中でエンドレスに流れていて、幸せに浸っております。
TVアニメ「伊藤潤二『クリムゾン』」は、真紅のイメージを想起させるアニメシリーズとなるのは重要なポイントだと思います。さらに加えて、松任谷由実さんがOP を担当してくださる事により、「コレクション」や「マニアック」とはまた違った雰囲気の、特別なアニメ作品になる事でしょう。ファンの皆さんも待ち遠しいと思いますが、是非楽しみにしていてください!
松任谷由実
伊藤潤二作品には、それがどんなにシュールでグロテスクでも、その根底になぜか必ず繊細な“和”の美しさと哀しみが漂っています。むしろ、異形であればあるほど、そこに在るのに決して掴むことのできない何かへの憧憬が炙り出されるのかも知れません。私たち日本のファンも、多くのフランスのファンの方々も潜在的に気づいている共通の美意識。約 200 年かけて醸造された妖しい世界を一緒に旅することが出来るなんて、なんと素敵なことでしょう!
この MUSIC VIDEO は、伊藤潤二『クリムゾン』に先立つ小旅行。案内役は変幻に飛びまわる(烏揚羽)。伊藤潤二さんにお願いして黒い蝶の画を描いていただきました。今回テーマ曲を依頼され、ラビリンスのようなコード進行にのせたメロディと共に私が思い浮かべたのは、冥界と現世を繋ぎ、異次元を彷徨うメッセンジャーの形。偶然、フランス語でも黒い蝶はそんな意味を持つそうですね。私の描いたイメージは間違いではなかったと思えました。本編公開までしばらくのあいだ、ひとりでも多くの方にこの(烏揚羽)のMUSIC VIDEOで『クリムゾン』への期待をふくらませていただけたら幸いです。
伊藤潤二『クリムゾン』
オープニング主題歌:松任谷由実『烏揚羽』