アニメやゲームの主題歌、テーマソングなどを歌うアーティストに楽曲について語ってもらう雑誌「メガミマガジン」のインタビュー企画「Megami’sVoice」。2025年6月号には、『履いてください、鷹峰さん』のOPテーマ『Baby Baby Baby』をリリースした奥井雅美が登場。
乙女な鷹峰さんを表現したリード曲
――リード曲の「Baby Baby Baby」は、ボンジュール鈴木さんとのデュエットですね。
バンダイナムコミュージックライブさんからお話をいただいたときに求められた音楽が、自分があまり作ったことのないタイプの曲になりそうだったんです。ボンちゃん(ボンジュール鈴木)とは同じ事務所で、彼女の曲ならおもしろいものができそうだと思ったので、それをバンダイナムコミュージックライブさんにお伝えして、ボンちゃんと一緒に作ることになりました。
――どんな曲を求められたのですか?
いわゆる王道のアニソンと違った、オシャレな楽曲でしたね。制作さんからは参考曲をいただいて、それをボンちゃんに渡し、『履いてください、鷹峰さん』のOPであることも伝えて、あとは自由に作ってもらいました。実際にできあがった曲はデモの段階からカッコよくて、いままで歌ったことのないタイプの曲だなと感じました。
――作詞は奥井さんの担当ですが、どのように作っていきましたか?
作詞をする時点で発売されていた原作を読み、ヒロインである鷹峰さんのイメージを広げていきました。ちょっとエッチなところに目がいきがちな作品ですが、私は鷹峰さんにすごく純粋で乙女な部分を感じ、この先、白田孝志くんのことを好きになるんじゃないかと思ったんです。そこを膨らませつつ、ボンちゃんのサウンドと2人で歌うことをイメージして書いていきました。
――歌詞の雰囲気はひとりで歌うときとは変わりましたか?
ひとりだったとしても、方向性は変わらなかったと思います。ただ、ボンちゃんがいるから、言葉づかいは考えました。女性2人ということもあって、ちょっと甘めな感じになるというか。甘くてちょっと酸っぱいニュアンスを入れたくて「ストロベリー」というワードも入れ、さらに鷹峰さんの乙女で可憐な部分を感じられるような歌詞にしたいと思いました。また、ボンちゃんはフランス語が得意で、デモの段階ではフランス語の歌詞も入っていたんですね。全体を通して日本語だけだと曲に合わない感じがしたのでそのままフランス語を少しと、あと英語を入れていきました。
――タイトルの「Baby Baby Baby」にはどんな意味を込めましたか?
鷹峰さんは白田くんのことをダーリンだと思っているけれど、思わずいじってしまうような、ベイビーとして接している部分もあると感じたんですね。それから白田くんにも鷹峰さんのことをベイビーと思ってもらいたいこともあって、「Baby Baby Baby」と付けました。あとはシンプルに、曲全体が「Baby Baby Baby」という感じがしたからです(笑)。テロップが出たときにタイトル映えしそう、という思惑もあって決めました。

――レコーディングはどのような形で進めたのですか?
パート割りを私が決めてまず自分が歌い、あとでボンちゃんが歌ってくれました。ボンちゃんのレコーディングには立ち会えなかったのですが、私の歌にとらわれず自由に歌ってと伝えたんです。そうしたら、あえてセリフっぽい歌い方をしたりもしてくれました。
――ボンジュールさんの声が入った曲を聞いての感想は?
『鷹峰さん』の映像にも合っていて、とても素敵な仕上がりになりました。ぜひ、映像とも合わせて聞いてほしいです。コーラスやセリフなども作り込んだので、まずはCD、もしくは配信で、音源から聞いてもらえたらと思います。
――奥井さん的な「Baby Baby Baby」の推しポイントと言われたら?
もちろん全部です。それから、私はタイアップなどのないソロ曲だとメッセージを込めることが多いのですが、今回は作品ありきということで、重すぎずにサラッと聞ける曲になったと思います。そのぶん、何度聞いても飽きが来ない曲になりましたね。
――カップリング曲の「D~螺旋~」は、R・O・Nさんが作曲、奥井さんが作詞ですね。
音楽チームの担当者さんが、ロックっぽい曲を聞きたいと言ってくださって。テーマ性を持たせたロックにしたくて、R・O・Nさんには「現代っぽいロックで、ライブでみんなが声を出せる部分があるような曲を」とお願いしました。イントロからとにかくカッコよく、世界観がしっかりしているので、歌詞も書きやすかったです。
――歌詞のテーマを教えてください。
個人的に、最近の日本はちょっとダメなところがあるなと感じていたんです。そこで、いい意味での武士道みたいなものを思い出していこうよ!という思いを込め、歌詞には「SAMURAI」というワードも入れました。
――タイトルの「D~螺旋~」にはどんな意味を込めましたか?
Dは「Dragon」のDで、螺旋は遺伝子という意味です。ドラゴンの遺伝子を持つ人々、という意味で付けました。
――こちらの曲のレコーディングはどうでしたか?
楽しかったです。もともと私はレコーディングが好きで、生きた歌を歌いたくてなるべく修正せず、あまりテイクも重ねないので、短時間で終わることが多いんですね。意外と、最初のテイクが一番良かったりすることも多いので、今回もスムーズに終わりました。
――ジャケット撮影の思い出は?
JAM Projectとは差別化してほしいとお願いしました(笑)。グループのときは、男性メンバーが多いこともあって、暗めのライティングで撮ることが多いので、そのぶんソロのときは明るめにしたい気持ちもあって。あとは、女性らしさがちゃんと出たらいいなと思って、ブラウンを入れてほしいとお願いして、ピンク寄りのブラウンを入れてもらいました。
――どんな1枚になったなと感じていますか?
シングルのリリースは約8年ぶりだったんですが、タイアップをいただいて歌うこと自体が本当に奇跡だなと感じています。素晴らしい機会をいただけてとてもうれしいです。
――最後に、読者へメッセージを!
もともと「女神」というワードが好きなので、「メガミマガジン」さんに取材をしていただけてうれしいです。JAM Projectとはまた違った音楽をボンちゃんと一緒に作って歌いました。「グループではない奥井はこんな感じになる」という曲になったので、ぜひアニメと一緒に音楽も楽しんでいただけたらと思います。

Profile
おくい・まさみ/3月13日生まれ。兵庫県出身。松任谷由実らのバックコーラスを経て、1993年8月にアーティストデビュー。
以後、数々のアニメ主題歌を手がけ、2003年からはJAM Projectに加入。ソロとしてもグループとしても、精力的に活動中。
Information
「Baby Baby Baby」
発売中
バンダイナムコミュージックライブ
初回限定盤2200円(税込)
通常盤1650円(税込)
奥井雅美の約8年ぶりとなるニューシングル。表題曲はテレビアニメ『履いてください、鷹峰さん』のOPテーマで、ボンジュール鈴木とのデュエットナンバーとなっている。初回限定盤は、昔懐かしい8cmシングル仕様でのリリースだ。