5年間のすべてが詰まったコンセプトベスト―『渕上 舞コンセプトベストアルバム~Dreamy Stories~』リリース記念インタビュー | 超!アニメディア

5年間のすべてが詰まったコンセプトベスト―『渕上 舞コンセプトベストアルバム~Dreamy Stories~』リリース記念インタビュー

アニメやゲームの主題歌、テーマソングなどを歌うアーティストに楽曲について語ってもらう雑誌「メガミマガジン」のインタビュー企画「Megami’sVoice」。2024年3月号には、『渕上 舞コンセプトベストアルバム~Dreamy Stories~』をリリースした渕上舞が登場。

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アニメやゲームの主題歌、テーマソングなどを歌うアーティストに楽曲について語ってもらう雑誌「メガミマガジン」のインタビュー企画「Megami’sVoice」。2024年3月号には、『渕上 舞コンセプトベストアルバム~Dreamy Stories~』をリリースした渕上舞が登場。

声優人生の出会いと歴史が詰まった1枚


――今回のアルバムは、どのように制作がスタートしたのでしょうか?

 以前から、声優・渕上舞を形作ってくれた作品やコンテンツ、作家さんに曲を作ってもらいたい気持ちがありました。今回、ベストアルバムを作る機会をいただけて、私の願望をスタッフさんにお伝えした結果、4曲の新曲を作っていただけることになりました。絵本制作に関しては、バンドメンバーさんやスタッフさんと冗談交じりに、一攫千金を狙うにはどうしたらいいかと雑談をしていたんです。そのときどなたかが「渕上さんはおもしろいイラストを描くから、絵もいいかも」と言ってくださって。「じゃあ絵本を作っちゃおう」となり、ベストアルバムの話が持ち上がった際「前に話していた絵本をアルバムにつけてはどうか」という流れになりました。それもあって既存曲は絵本の物語に沿って選び、新曲も物語とリンクする形で作っていただいています。

――絵本はどんな物語にしたいと考えたのでしょうか?

 スタッフさんと話しながら、自分の音楽活動に携わるまでと携わってからを彷彿とさせるようなお話を考えました。私は多くの人と関わりを持とうとするタイプではありませんが、そんな私でも支えてくれる方がいて、音楽活動を始めて出会った方もたくさんいます。絵本の主人公のお姫様は私を投影しているわけではないのですが、私の経験や皆さんが導いてくださった過程も盛り込み、物語を考えていきました。

――絵本制作はこれまで経験したことがなかったと思いますが、やはり大変でしたか?

 大変でした! 楽曲制作にも関わることなので、物語全部を私ひとりで作ったわけではありませんが、曲と曲の間になる物語は自分で作らなければなりませんでしたし、イラストも自分で考えなければいけなかったので、本当に大変でした。絵本って、突発的に考えついていきなり作るものではないですね(笑)。

――アルバムのタイトルにもなっている『Dreamy Stories』にはどんな思いを込めましたか?

 じつはなかなか決まらず、最終的に私がポロリとこぼした言葉で決まりました(笑)。でも、楽曲ひとつひとつに物語が詰まっていますし、お世話になった方々に新曲を作っていただいたということもあり、私にとっても夢のような1枚になっていて。改めて完成してから見ると、すごくいいタイトルになったなと感じています。

――新曲を中心に、全体の構成についても聞かせてください。まず1曲目の「目眩」について。

 みんなは近くにいるけれど、全員違う方向を向いていて自分はひとりぼっちな気がするという、お姫様のちぐはぐな気持ちを表現したのが「目眩」です。お姫様がお城を抜け出した矢先、不注意で海に落ちるまでを描いているので、未来への期待や希望は込めず、それでも空や海は綺麗だと感じる複雑な感情を描きたい、海に落ちて助からない状態ですと作曲のヒゲドライバーさんに伝えて作っていただきました。ヒゲドライバーさんは、私の初めてに近い音楽活動になったTridentというユニットでご縁があったのですが、『蒼き鋼のアルペジオ』も海が舞台の作品だったので、絶対トップバッターはヒゲさんにお願いしたかったんです。歌ってみると意外と難しくて。音の高さも歌いやすいわけでも高すぎるわけでもないので、どのくらいの音域なら綺麗に聞こえるかを探りながら歌っていきました。

――4曲目の「Journey」から少しテイストが変わっていきますね。

「Journey」以降は、巨大な鳥に捕まったけれど、エサじゃないと気づいて吐き出されてしまってからの物語です。彷徨っていたところを見知らぬ人に助けられ、人々の温かさに触れたお姫様の足取りが軽くなっていくまでを描いています。新曲の「Dreamy Stories」は、『アイドルマスター シンデレラガールズ』でお世話になっている滝澤俊輔さんに「次の曲から明るくなっていくので、この曲は幸せ感満載にせず、かつ明るくしすぎないでください」という難しい注文をしてしまいました。歌詞はいろんな方から与えられて、思い出やエピソードが歩くたびに増えていく様子をメインに書きました。「Dreamy Stories」は、すごく気持ちよく歌えましたね。ただ、ハモリがとにかく難しい上に、このハモリには意味があるのだろうかと思ってしまうようなものだったので、戸惑った記憶がありました。でも、完成した曲を聞くと、すごく意味が感じられて心地いいし、シンプルにいい曲だと思えるんですね。今までの嫌な思い出が上書きされていく様子や、誰かに言われてためになったこと、衣装さんが作ってくれた素敵な衣装などを思い出しながら歌うことができました。

――「無敵アップデート!」は、かなりテンションの高い曲ですね。

 もともと歌が好きだったお姫様が、放浪の音楽隊と出会い、再び歌ってみたらすごく楽しくて、その歌声に惹かれて人が集まり、いまはこの景色が最高だという思いを表現したいと思って曲を作っていただきました。河合泰志さんは『音楽少女』という作品で私が演じた竜王更紗というキャラクターの楽曲を担当していらしたのですが、どの曲もかわいかったり不思議だったりして、すごく好きなんです。それもあって、物語のなかで一番楽しいポイントをお願いしました。レコーディングは……じつは私のミスでコーラスをすっかり見失っていたんです。スタジオで「コーラスを取りましょう」と言われて「コーラスなんてあったっけ?」とすごく戸惑ってしまい、一度はなくす相談もしました。でも、私の不注意であったものがなくなるのは心苦しかったですし、自分は自分の道を行けという歌でもあるので、なんとか言葉を紡ぎました。できあがってみると、曲にピッタリ合った言葉が選べたので、なくさなくてよかったなと思います。

――13曲目に新曲「ON STAGE」が登場します。

 歌の評判を聞きつけてきたお城の兵隊から、お姫様がいなくなってお城は悲しみに暮れていると聞かされる。ひとりぼっちだと思っていたのは自分だけだと気づき、お城に戻るけれど、音楽隊と歌うのは楽しいから、歌いながら生活をしていきましたという部分を表現したくて、これまで渕上舞バンドで支えてくださった谷島シュンさんに曲をお願いしました。大団円をイメージしつつ、ライブでお客さんと一緒に盛り上がれるフレーズを入れたくて作っていただいたのですが、ライブでステージに立ったり、アンコールに向けて高まったりする気持ちをリアルタイムで表したような楽曲になりました。

私もステージでの思いを詰め込んで歌詞を書いたので、いろんなライブに立たせてもらった思い出が蘇る楽曲になりました。この曲は、バンドメンバーさんに実際に演奏もしていただきましたし、ライブでやっているイメージを強めたくて、ハモリも入れなかったので、シンプルな楽曲なりました。

――14曲目にデビュー曲の「Fly High Myway!」が入っていますよね。

 私は「ON STAGE」で終わりでもいいんじゃないかと思ったのですが、ボーナストラック的に入れるのに相応しい楽曲じゃないかとアイデアをいただいて入れることになりました。実際に聞いてみると、私は14曲目からループしていくように感じられたので、きっと聞き手によっていろんなストーリーが描かれる1枚になったなと感じています。

――4曲の作詞を担当してみた感想は?

 難しかったです。絵本とのリンクを考えるのも、短期間でプロではない人間が4曲作詞をするのも大変で。このフレーズは別の曲にも使ったとか、どうしても似通ってしまうんですね。でも、全部を違った雰囲気にしたいわけでもなく、新曲同士でリンクした部分も欲しくて、それを考えるのが大変でした。でも、レコーディングが終わったら自分は天才なんじゃないかと思えるくらい満足感があったので(笑)、皆さんにもそう思っていただけたらうれしいです。

――Blu-rayには、1stから3rdまでのライブ映像が入ります。

 私は次に進みたい気持ちが強いのと、あとシンプルに恥ずかしさもあって、基本的に過去の映像はほとんど見なかったので、映像チェックの際はすごく新鮮でした。改めて見ると、全部かわいいんですよ(笑)。1stなら5年分若いし、慣れていない感じもあるけれど、頑張れって応援したくなる。チェックと言うよりも一視聴者として楽しむような気持ちで見ていました。どのライブも楽しそうではあるんですが、3rdになるとステージを自由に使えているし、リラックスしている感じがありましたね。

――1stと2ndライブは、オーディオコメンタリーもあるそうですね。

 正直、どんなことを話したのかは詳しく覚えていないのですが、これまで支えてくださったバンドメンバーさんやスタッフさんたちと形に残るおしゃべりができたことが新鮮でしたし、すごくうれしかったです。

――アルバムが完成しての感想は?

 たくさんのステージ、たくさんの楽曲に恵まれた5年間が詰まった、タイトルどおり夢のようなストーリーで構成された1枚になりました。ずっと応援してくれている方は、楽曲やライブ、それぞれに思い出があると思うので、皆さんにとっても夢のような物語として出来事を思い起こしながら聞いたり見たりしてもらえたらうれしいです。

――2024年最初のリリースということで、2023年の振り返りと、2024年の目標を聞かせてください。

 2023年はイベントやライブが徐々に解禁され、声出しも解禁されて、コロナ禍でお休みになっていたものの反動のように多忙でした。準備して本番、準備して本番のくり返しで本当に大変でした。絵本制作もさせていただき、私は何屋さんなんだろうと思うこともありましたが(笑)、いろいろなお仕事をさせていただけて、充実した1年でしたね。それを踏まえて2024年はのんびりしたいんですが……。コロナ禍で会えなかった人たちとはたくさん会える機会を作りたいし、先日『ガールズ&パンツァー』のイベントで韓国に行かせていただいてから、海外のお仕事も増えていくといいなという希望も出てきたので……全然のんびりじゃないですね(笑)。

――アーティストとしての今後の目標や希望はありますか?

 コロナ禍に『まいのうた♪』という配信ライブをやっていたんです。自分の曲やほかのアーティストさんの曲、キャラソンなどを季節や気分でまとめてスタジオで歌う様子をお届けし、皆さんからのコメントを楽しむというものだったのですが、そろそろリアル『まいのうた♪』をやりたいです。お世話になっているキーボードのパスタさんにピアノを弾いていただいて、ピアノと歌だけのライブもいいなと思っているので、実現したいです。

――最後に読者にメッセージを!

『Dreamy Stories』は大ボリュームな1枚になりました。私のいまに至るまでの声優人生と歴史を詰め込んだので、皆さんも自分の歴史を思い出しながら聞いてもらいたいです。最近私のことを知って応援してくださっている方は、渕上舞に欠かせない楽曲がギュッと詰まっているので、おすすめの1枚です。ぜひ手に取ってくれたらうれしいです。

■Profile
ふちがみ・まい/5月28日生まれ。福岡県出身。m&i所属。
これまでにシングル8枚、アルバム2枚、ミニアルバム2枚をリリース。声優としての主な出演作は『ガールズ&パンツァー』西住みほ役など。

■『渕上 舞コンセプトベストアルバム~Dreamy Stories~』
発売中
バンダイナムコミュージックライブ
15400円(税込)

 新曲4曲を含む全14曲入りのコンセプトベストアルバム。同梱される2枚組のBlu-rayには1stから3rdまでのライブ映像を収録するほか、1st、2ndライブは録りおろしのオーディオコメンタリーも収録。さらに、渕上本人がストーリー考案と作画を担当した28ページの絵本とブックレットを同梱。


《超!アニメディア編集部》
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