今回は“結束バンド”の4人、後藤ひとり役青山吉能、伊地知虹夏役鈴代紗弓、山田リョウ役水野朔、喜多郁代役長谷川育美にインタビュー! 放送前なのだが、その結束はすでに堅いようだった。
[取材・文・撮影:塚越淳一]
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「本質的に陰な方でお願いします」後藤ひとり役に求められるもの……
――オーディションでの思い出を教えてください。
青山:オーディションは、テープ審査の次にスタジオ審査という流れだったんですけど、昨今コロナ禍によって人が集まることが難しくなり、スタジオオーディションも減ってきている中で、掛け合いでのオーディションだったんです。結束バンド4人での掛け合いができることが嬉しくて、その嬉しさのままお芝居をした記憶があります。
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鈴代:スタジオオーディションを受けさせていただく日の前日に『ぼっち・ざ・ろっく!』のイベント衣装に良さそう!と思ったスカートを見つけて、購入したものがありました。実は今日履いているものがそのスカートです!受からなかったら履かずに捨てようと思っていたのですが、今日履けて良かったです(笑)。自分の中でも、強く熱を持って挑ませていただいた作品でした。
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水野:テープオーディションのときは事務所の方にディレクションをいただくのですが、きらら作品だから「もっとかわいく」と言われていたんです。でも「私の中のリョウちゃんはそんなんじゃない!」という感覚があったので、そのディレクションを聞き入れなかったんですね。スタジオオーディションでも、リョウちゃんはかわいさがまったくないわけではないけど、絶対に声質はこれ!というイメージが決まっていたので、それでやらせていただきました。
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長谷川:私は合否を紗弓から聞いたんです(笑)。LINEでぼっちのキャラのスタンプが送られて来て、「ん?」って。「聞いてないんですか? 忘れてください!」って。「忘れられるかー!」って思ったけど、受かると思っていなかったから、本当に信じていなかったんです。
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鈴代:私がマネージャーさんに合否を聞いてからかなり日にちが経っていたので、さすがに聞いているだろうな、と思って(笑)。
長谷川:紗弓に聞いてからもしばらくの間言われなくて、ようやく「そういえば『ぼっち・ざ・ろっく!』が……」って言われて、あれは本当だったんだ!と。ちょっとみんなとラグが発生していたみたいです(笑)。
テープオーディションのセリフ量も、なかなか見ないくらいすごい分量で、さらに1分くらいのPR動画も提出することになっていたんです。その頃は卑屈になってたから、「かわいい子じゃないと受からないんでしょ!」って思って撮ったら奇跡的にスタジオオーディションに進み、そのときも「記念受験だっ!」と思って受けたのを覚えています。
青山:私、オーディションのとき、「本質的に陰な方でお願いします」って書いてあって、本質的に陰って何だろう?っていう(笑)。
長谷川:事務所が誰を選ぶかというところで、どう見られているのかがわかるよね(笑)。「(陰キャなら)青山だな~」みたいな。
青山:おい、マネージャー!(笑)。でもおかげでこうやって4人が出会えたからね。
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――どんなPR動画を撮ったかは覚えていますか?
鈴代:私、中学のときにドラマーに憧れていて、スティックだけ買ってもらっていたので、それを持ち出して、とりあえずスティックを持ちながら自分の長所と短所を言って「スティックは持っているけど、出してみただけでーす!」みたいな感じだったと思います(笑)。
水野:私は、楽器ができるならそのことも話してくださいと事務所の方に言われていたので、ギターができるという話をした気がします。
青山:ギターできるの? ざわ…ざわ…。私、ギターを弾く役なんですけど、ギター弾けたほうが強いのかな?と思って、人から借りたギターで、「頑張ります!」って言ってCコードをジャーンと弾いて締めたのは覚えています(笑)。
長谷川:喜多ちゃんは下の名前を呼ばれるのがイヤな子で、彼女は郁代で、私は育美なんですけど、私も名前であだ名を付けられるのがイヤだったので、「下の名前を使ったあだ名で呼ばれるのはイヤです」と、喜多ちゃんに寄った話をした気がします(笑)。
――いつか、どこかでその動画が上がるかもしれないですね(笑)。では、原作の“魅力”を教えてください。
青山:共感しないオタクはこの世にいないのではないか。オタクは確実に共感するとして、陽キャと言われる人も、こういうこと思ったことがあるよねって描写があるんですよ。だから読者に寄り添ってくれる漫画だと思っています。あと、言葉で表してこなかった感情をぼっち(=後藤ひとり)があの手この手で表現してくれるので救われるんです。
そのほかにもいろいろなことが学べたので、人生の教科書だと思いながら読んでほしいです。
鈴代:まず、陰と陽みたいなところが上手く絡み合っているなぁと思いました。色んな個性を持った一人一人が集まり、みんなでバンドをやっていく中で目標も見えてきて。虹夏ちゃんには虹夏ちゃんの夢があって、ぼっちちゃんにはぼっちちゃんなりの考えがある……。それぞれの思う気持ちが重なって、全体がよりよい雰囲気になっていく。爽やかだけど熱い、青春っぽいところもすごくあるなぁと感じます。
ぼっちの陰要素、テンポのいいコミカル具合とスポ根が少し入った青春感がいい塩梅で、原作もすいすい読めてしまいました。あと、いい意味できららっぽくないところも初めての感覚でした。特に主人公であるぼっちちゃんの顔芸がすごいんですよ! 最高です!
水野:イラストがかわいいのと、色合いも鮮やかだったので、ほんわかギャグ漫画なのかと思ったら、主人公のぼっちがすごいんです(笑)。想像していたのと少し違って。私くらいでは陰キャじゃないのかもしれないなと……。
そして、ほかの登場人物が優しいんです。ぼっちに対しての優しさがあって、それこそ青春している気分になれて、こんな青春したかったなぁと思えて、ほっこりしながら落ち着いた気持ちで読めました。
長谷川:4コマって同じサイズのコマで表現するものですけど、しっとりするところはしっとりして、面白いシーンはちゃんと盛り上がって面白くオチを付けてくれている。こんなに飽きずに読み進められるなんて、面白い作品だな~と思いました。
これは人に勧めたいポイントですけど、やっぱりきらら作品とは思えない主人公像がいいんですよね! いい意味で裏切られるんです。かわいい感じかな?と思って入ると、この主人公、様子がおかしいぞ?ってなる。ひとりの奇行に笑わせてももらえるし、ほっこりもさせてもらえるんです。ごくたまにひとりが輝く瞬間もあるんですけど、そのときはたまらなく嬉しくなると思います!
鈴代:あとひとついいですか! 漫画だと扉絵がアーティストさんのMVのオマージュになっているんです! そんな細かいこだわりも、今作の魅力の一つだと思います。
――いろんなバンドのオマージュは、知ってると楽しいポイントですね! では、自身のキャラクターの魅力と、それをどう演じていったのか教えてください。
青山:先程言った通り、本質的な陰ができる方でお願いしますと書いてあったんですけど、きららと本質的な陰が結びつかないんじゃないかと思っていたんです。だから諦めたつもりで、ガチの陰キャっぽくお芝居をしたらご縁が結ばれて……。「きららでもこんなにやってしまっていいんだ!」という感じでした。
現場でも細かくディレクションをいただきながら、陰キャとは?というのを突き詰めていて。普通の人は目を見て話したりするけど、ぼっちはそれができない。彼女からすると、陽キャが普通にしていることがまったくできないから、お芝居でも「会話をしないでください」というディレクションがありました。「床を見る感じでしゃべって」とか(笑)。声優人生でやってこなかった引き出しをガツガツと引き出されている感じがします。
自分の人生も明るかったかと言われるとそうではないので、そういう自分の陽キャへのあこがれ……ネガティブ感情の塊が、「声優としてこういう形で生きるんだ!」って、15の自分を肯定するじゃないですけど、後藤ひとりに人生を掛けているなって思います。「後藤ひとり、人生!!」
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鈴代:虹夏はちょっと特殊で、陰と陽に当てはまらない気がしているんです。陰の人たちとも楽しく居られるけど、本質的なところは陽というか。でも陽キャでもない気がするから、陰陽師なのかな?って(笑)。どっちも統べる者。そういう意味ではある種、一般的でしっかりしている子だと思います。
彼女のバックボーンとなる家族のことに関しては、一番重たいと感じているのですが、聞く側が構えるようなセリフを言うときも、変に構えさせずに話すことができる女の子のイメージなんですよね。それって虹夏の持っているおおらかさとか、根のポジティブさから来るものなのかなって。言葉にするのはなかなか難しいんですけど、そういう雰囲気を言葉の端々だったり声に乗せていきたいなと、アフレコのときに思いました。
アフレコを通して、虹夏のイメージも少し変わった気がします。ディレクションを受けていく中で、より虹夏が好きになりました。
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水野:リョウはクールでダウナーな子なのかなと思っていて、実際そういう要素が根本的にあるんですけど、変人なんですよね……。私自身、何やってるんだこの子は?って思うところが結構あるんです。草を食べたりもそうですね。
ディレクションでは、感情に起伏がないしゃべり方なので「声を掛けすぎないで」と言われることが多かったです。そこはいろいろ指摘していただく中でわかるようになっていったのですが、ぶっ飛んでいる部分をどこまでやっていいかわからなくて。
でもそれも物語が進むにつれて、もっとやっていいということに気づいて、そこから一気に殻を破ることができました。今まで以上にリョウちゃんをわかったので、アニメ後半になるにつれて、よりリョウちゃんらしさが出せているんじゃないかなと思っています。
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長谷川:喜多ちゃんは、このメンバーで言ったら一番わかりやすくて、完全に陽キャなんです。ディレクションでも、ひとりとの掛け合いで私が真剣に返してしまったとき、「もっと全然明るい感じで、何も気にしていないお花畑で大丈夫だよ」って言われたんです。そのとき、この子は常にハッピーで、わりと天然でマイペースなんだろうなぁと思いました。
魅力としては、作中で喜多ちゃんがひとりと何故バンドを始めたのかという話があるんですけど、その理由を聞いたとき、この子は自分の気持ちに正直に、そして真っすぐ動ける子なんだなと思いました。それっていわゆるリア充と言われるところにもつながるんですけど、あれやりたい、これやりたいを「楽しそう!」で行動できる。大人になると変に理由をつけてやめてしまうことが増えてくるので、喜多ちゃんを演じながら、そうやって自分の心に正直に、プラスの気持ちで動けるのってすごく魅力的だなと思いました。
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何をやっても一緒なら楽しい!! この4人で、今後やりたいことは?
――ぼっちが陰キャという話も出たので、ぼっちエピソードを持っている方がいたらお願いします。
青山:私は熊本県出身で上京してきたんですけど、地元であまり東京まで来る人がいなかったので、中学・高校時代の友だちと会う機会はなかったんです。でも正月になったら必ず会う中学時代に仲が良かった子たちのLINEグループがあるんですけど、そこで衝撃的だったのが「だいたいは同窓会で会えるからいっか」って文言で。「同窓会?」ってなりました。私は声を掛けられたこともなかったので。
――あるあるですね(笑)。東京にいるのがわかっているからだと思います。
水野:皆さん、友達と一泊二日で旅行とか行ったことがあると思うんですけど、私、ありません!
青山:あははは(笑)。いいね~!
鈴代:私、人に話しかけるのが好きなタイプなんですけど、話しかけられたくない人もいるんです。たまたま同じ空間にいた人がそっちのタイプの方が多くて、話しかけた結果、ものすごく気まずい空気が流れたことはあります。
青山:それは悲しい!
長谷川:私は、高1のとき、冬までずっと卒業したかった……。
鈴代:何があった!?
長谷川:高校に入った瞬間から何も楽しくなくて! 友達はいたけど、何だろうこの時間? 私の人生にいらない気がするみたいな。
青山:達観してるな~。
――ちょっと中二感がありますね。
青山:それで、秋に何があったの?
長谷川:秋に、クラスでイケてるグループにいた子と掃除の班が一緒になって仲良くなったの! その子はギャルというわけでなく、明るいノリのいい子で「長谷川と話しているほうが楽しい」って、こっちに来てくれて。そこから学校楽しい~! 気の合うヤツがいる――ってなった。
鈴代:結局そこなんですよね! 気の合う人と一緒にいられるかどうか!
長谷川:出会えるかどうか。だからその子にすごく感謝しています。
――ぼっちもみんなと出会えて良かったなと思います。では、この4人で今後やりたいことは?
鈴代:いっぱいある。まず江ノ島に行きたい!
青山:何かしらをやりたい!
長谷川:何をやってもこの4人なら楽しそうだから、何でもいいです。
青山:そうだね。やりたくないことがない。
長谷川:だいぶ前のアフレコ終わりに話していたのが「草食べたい」だったから(笑)。食べられる草をいっぱい食べる企画とかどうですか?
青山:とりあえず草を取ってきて、行ける草だったらムシャ、みたいな。
鈴代:サバイバルとかはしてみたいかも……。
――ちょっと違う作品になりそうですね(笑)。
長谷川:いろんなバンドさんのジャケ写の構図で写真撮影!
青山:それ超いいアイデア!
水野:バンジージャンプをしたくないですか?
青山:あ~、むしろそれを超えていこう! スカイダイビングにしよう。
鈴代:バンジーはいいぞ~! 私は飛んだことがあるので。
青山:私もスカイダイビングはやった。
長谷川:私、絶叫とかダメなんだよな~。
水野:私も高所は苦手です。
長谷川:それで、よく言ったね(笑)。
青山:チャレンジャーしかおらん(笑)。リョウさんと同じだね。
――では最後に、楽しみにしているファンへメッセージをお願いします。
青山:本当に楽しみにしていた作品ですし、皆様にどのように受け取っていただけるか、楽しみと不安が五分五分です! 「後藤ひとりの声、こんなんじゃないんだが……」って叩かれることを想像している自分と、キャスト陣、そしてスタッフ陣がめちゃめちゃ魂を込めて作っているので、「これを認められないのはおかしいだろう!」という強気な自分とが毎日戦っています。
アニメというのは作った人が偉いとか、見ている人が偉いとかではないので、作品を共に愛していくという道を、皆さんと共に歩めたらいいなと思っています。ぜひ、TVアニメ『ぼっち・ざ・ろっく!』を楽しみにしていてください。
鈴代:原作時から面白い作品であることはもちろんですが、アニメになったときにアニメならではの表現がある中で、座長のよっぴーさんが最初にギアを上げてくださり、初回から非常に良い空気感で収録することが出来ました。制作に携わる全てのスタッフの皆さんとキャストの熱量、とてもすごいです。ぜひ、肩の力を抜いてご覧ください!お楽しみいただけたら嬉しいです。宜しくお願いします!!
水野:たくさんの方が魂を込めて作っているのをひしひしと感じていて。キャスト4人ももちろん魂を込めているんですけど、よっぴーさんの演技を近くで見ていて、それこそ魂を込めているのを感じていたんですよね。だから、「それが面白くないわけがない!」と私は思っているんです。
青山:そんなに上げるな! ハードルをっ!!
水野:アフレコの時点で、もう笑いを堪えるのに必死なんです!
青山:あ――、この子は止まらない(笑)。酷い女だ……。
水野:本当に面白いんです! ぜひ、お腹が痛くなる覚悟を皆様にしていただければと思います(笑)。楽しみにしていてください。
長谷川:本当に毎話毎話、Vチェックをしていても笑って、アフレコでみんなの芝居を見ても笑って。特によっぴーですかね!? 青山吉能が抱腹絶倒、抱腹絶倒です! こんなに引き出しいっぱい持っているんだ!って。映像もお芝居もいろんな表現が見られるんです。
毎回録る直前に音響監督さんが「楽しんでやっていきましょう」って声を掛けてくださるんですけど、私たちもただただ楽しんでアフレコをしていました。スタッフ陣がすごく面白い作品を作ろうと思って制作してくださっていることが毎週伝わってきて、私もその気合いに応えていかねば!という気持ちでやっています。それと『ぼっち・ざ・ろっく!』はバンドものなので、原作ファンは音楽面でもどうなるのか気になっている方は多いと思うんですけど、音楽面もめちゃめちゃ気合いが入っているので、そこも心配せず期待していただければと思います!
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(C)はまじあき/芳文社・アニプレックス