アニメやゲームの主題歌、テーマソングなどを歌うアーティストに楽曲について語ってもらう雑誌「メガミマガジン」のインタビュー企画「Megami’sVoice」。2022年7月号には、「四角運命」をリリースする、ボーカリスト・みあによる音楽ユニット“三月のパンタシア”が登場。本稿では、本誌で紹介できなかった部分も含めたロングインタビューをお届けする。
――今回のシングルで三月のパンタシア(三パシ)を知った方に向けて、三パシがどんなアーティストか教えてください。
青春時代を必死に生きる少女たちの物語を軸に楽曲制作をしています。そのなかで生まれた思春期特有の甘やかな憂鬱や、言いたくても言えない切なさを歌い上げているアーティストです。
――「四角運命」はテレビアニメ『カッコウの許嫁』のエンディングテーマです。作品を読んで、どんなところがおもしろいなと感じましたか?
テンポ感がよくて、会話劇にとても惹かれました。キャラクターのやりとりが、すごく現代の高校生らしいところもおもしろいです。それから、私はヒロインたちが驚いたときに「え?」でも「は?」でもなくて「はむぅ!?」と叫ぶところが好きなんです。その独自性に引き込まれました。
――楽曲制作はどのように進めましたか?
まず、アニメの制作サイドに「四角運命」のもとになった曲と、やさしくてやわらかめの曲の2曲を候補として送りました。そのうち「四角運命」のほうが選ばれたので、こういうエッジの効いた曲が求められているんだなと思ったんです。なので、歌詞を書くときには、ヒロインたちの表面には表れないような、心の内の焦りを歌詞にできたらと思いました。
――アニメの制作サイドから、歌詞に関してオーダーがありましたか?
メインヒロインにあたる天野エリカの心情が歌詞になるとうれしいですというお話がありました。でも、原作を読み進めると、エリカはもちろん、瀬川ひろや海野幸も、それぞれ主人公の海野凪への想いに三者三様の葛藤を持っていて、その違いがとても魅力的だったんですね。それもあって、3人のヒロイン全員に当てはまるような歌詞にしていきました。
――タイトルの「四角運命」は、原作の説明に登場する「四角関係」というワードから生まれたのですか?
そうです。その恋の形がとてもおもしろいなと思ったんです。『カッコウの許嫁』は、みんな凪のことが好きだけど、女の子同士もお互いに好感を持っていて、出し抜いてやろうとは思っていない。むしろいい関係だからこそ、どこまで踏み込んでいいのか、どうしたらいいのかわからないと悩んでしまうんです。そういう気持ちにすごく共感ができたので、それを歌詞にもしていきました。
――とくにお気に入りの歌詞は?
サビに、で女の子の気持ちはまっすぐなのに、想えば想うほどひねくれていってしまう葛藤を言葉にしたのですが、恋心の複雑さを我ながらよく書けたなと気に入っています。
――レコーディングでのこだわりは?
ロック調の旋律のなかに言葉を吐き捨てるような鋭さがある曲なので、普段よりもクールに歌うことを意識しました。言葉数が多いのは三月のパンタシアの特徴ですが、その詰まり方で切羽詰まったヒロインの心情や、言いたくても言えない気持ちがあふれていく様子を歌えているかなと思います。
――アニメのエンディング映像は、スタイリッシュでダークな雰囲気がありますね。
本編では見られないヒロインたちの大人びた表情や挑戦的な仕草が見られましたね。原作を読んでいる身としては、ドキッとする姿も描かれていて、すごく特別感がありました。
――ちなみに、みあさんのお気に入りのヒロインは誰ですか?
みんな好きなんですが……幸です。今まで一緒に暮らしていたお兄ちゃんと血が繋がっていないことが発覚し、これまでと違う気持ちがわいてきてしまってドギマギする姿がすごくかわいいんです。ヒロイン3人のなかでは唯一年下なのに、甘えられるという特権をフル活用せずに葛藤しているところもいいんですよ。この先、凪が誰を選ぶのかは想像できませんが、幸ルートもあるのかなと一ファンとしても楽しみにしています。
――両A面の「アイビーダンス」は、3月のワンマンライブが初披露でした。
「アイビーダンス」は、3月という特別な季節にファンのみんなと一緒に遊べる楽しい楽曲を作りたいという思いからの制作でした。私のなかで遊べる場所というとライブなのですが、お客さんの発声が難しいなかでどうしたら一緒に楽しめるかなと考えて、めいっぱい踊り明かせるダンスチューンにしようと思ったんですね。そこで踊れる曲として思い浮かんだのがロックバンドのフレデリックさんだったので、お声がけをして曲をお願いしました。最初から最後までフリがついているので、ライブではみんなと息を合わせて踊ることができました。会場が一体になるという光景は本当に特別で気持ちも高まりましたし、今後のライブでどんどん育てていきたい曲ですね。
――「アイビーダンス」の歌詞のテーマは?
三月のパンタシアは、タイアップ曲以外は私が書き下ろした小説をもとに曲を作っているのですが、「アイビーダンス」は、私とファンの「君」との一対一の関係性や、コロナ禍でリアルライブができなかった時期を踏まえて、退屈なトンネルを抜けてやっと会えたねという思いを歌詞にしたかったので、あえて小説にはせずにその思いを軸にしていきました。ライブハウスに足を運ぶことが大変なご時世であるなかで、会場まで会いに来てくれるというつながりは奇跡的なので、そのつながりを大事にしたいという思いを込めました。
――もう1曲収録される「ユアソング」は、とても爽やかな楽曲です。
新しい環境で、新生活が始まる4月の季節をイメージしました。4月って学生が社会人になるような大きな変化はもちろんですが、クラス替えがあるだけでも緊張しますし、不安と期待が入り交じる月だと思うんです。そんななかで、この歌が背中を押すことができれば、この歌がお守りになればという気持ちで制作を始めました。楽曲は、立ち止まって悩んだりしながらも、たとえ強がりでもいいから一心に走り抜けていくイメージにしたくて、爽やかな風が吹き抜けるような楽曲を制作していきました。全体としては新しい場所に一歩踏み込んで、背伸びをしてもいいから自分らしさを探して旅立っていこうというメッセージを込めました。3曲のなかでは、一番やさしさを意識して歌った曲です。
――「四角運命」では、リリックビデオが制作されますね。
ダイスケリチャードさんにイラストを描いていただき、キューブ状の箱のなかにおさまる女の子や、不思議な空間にイラストのみあがいる情景を描いていただきました。実写の風景とイラストのコラージュだったり、アニメのエンディング映像をオマージュしたような動画にもなっているので、そこにも注目してもらえたらと思います。
――このシングルは、みあさんにとってどんな1枚になりましたか?
今年の3月にアルバムをリリースしたのですが、そこからさらにもう一歩踏み込んだ、新しい三月のパンタシアをお聞かせできるシングルですね。名刺代わりの1枚が早くも更新された気持ちです。「四角運命」と「アイビーダンス」は、サウンド面でもミュージックビデオなどのビジュアル面でも新しいチャレンジをしていますし、「ユアソング」は、これまで三月のパンタシアが描いてきた、甘酸っぱくて爽やかな構成になっています。三パシお得セットみたいな1枚になりました。私自身も『カッコウの許嫁』を原作、アニメ共に楽しんでいます。ぜひ、アニメとともに楽曲も楽しんでいただき、皆さんに愛してもらえる曲になったらうれしいです。
取材・文/野下奈生(アイプランニング)
「三月のパンタシア」Profile
「終わりと始まりの物語を空想する」というコンセプトにした、ボーカリスト・みあによる音楽ユニット。2016年6月にテレビアニメ『キズナイーバー』のEDテーマ「はじまりの速度」でメジャーデビュー。これまでにシングル7枚、アルバム4枚をリリースしている。
「四角運命/アイビーダンス」
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発売日:6月22日発売
SACRA MUSIC
初回生産限定盤2200円(税込)
初回仕様通常盤1430円(税込)
期間生産限定盤1980円(税込)
「四角運命」はテレビアニメ『カッコウの許嫁』のEDテーマで、主人公の海野凪に想いを寄せるヒロイン3人の複雑な気持ちを、スピード感のあふれるロックナンバーに載せて歌う。そのほか「アイビーダンス」と東京・銀座にある商業施設「GINZA SIX」のWEB CMソングである「ユアソング」の全3曲収録。初回生産限定盤には「四角運命」「アイビーダンス」のMVを、期間生産限定盤には『カッコウの許嫁』のノンクレジットエンディング映像を収録したDVDが付く。
(C)吉河美希・講談社/カッコウの許嫁製作委員会