■「引き算の美学」による麻枝准の「原点回帰」
――本作はどんな作品をめざして作られたのですか?
鳥羽:めざしたのは本作の原作・脚本を務めるシナリオライター・麻枝准の「原点回帰」です。僕が考える麻枝さんの「原点像」はもちろんありますが、僕はあえて麻枝さんご自身に「自分の原点とは何か」を考えてほしくて「今回は原点回帰です」としかお伝えしなかったんです。ゲームメーカー・Keyのシナリオライターとして活動してきて、『Angel Beats!』や『Charlotte』といったアニメのシナリオも手掛けた麻枝さんが、今ご自分の原点に立ち返ったらどんな作品が生まれるのか。そんな僕の問いに対して麻枝さんが出してくれたのが、本作なんです。
――麻枝さんが手掛ける作品の魅力とは何だと考えますか?
鳥羽:麻枝さんは複雑な世界設定を背景にした、ファンタジー性の強いスケールの大きなお話というよりも、基本的に主人公とその周囲の人々の関係性を物語の中で積み重ねることで「絆」を描く人なんですよ。世界観設定などの作品の大枠に頼らない、キャラクター同士の深い関係性の丁寧な描写は、麻枝さんにしか書けないものだと思います。
――『Angel Beats!』や『Charlotte』とは異なる『神様になった日』の魅力とは何だと思いますか?
鳥羽:『Angel Beats!』と『Charlotte』はいうなれば「足し算の美学」なんです。「連続アニメ」として視聴者に毎週欠かさず見てもらうため、アドベンチャーゲームでは面白さを伝えにくいアクションシーンやバンド演奏シーンといったアニメ映えするエンタメ要素を意欲的に盛り込んだ作品でした。しかし、やりすぎると情報過多になって見ている方も整理しきれないし、エンタメ要素てんこ盛りのアニメはほかにもたくさんあります。だから本作では「原点回帰」の意味も込めて、「引き算の美学」で作ってみようと。それで作品を通して本当に伝えたいことに集約して、過剰になりがちな設定要素はそぎ落としていったんです。そこが本作とほかの2作品との大きな違いですね。
発売中のメガミマガジン12月号では、『神様になった日』のシナリオが完成するまでの経緯や、各キャラクターに関する“神がかった”魅力、今後の話数の見どころなどについても紹介します。
■プロフィール
とば・ようすけ●アニプレックスのプロデューサー。『Angel Beats!』や『Charlotte』など、麻枝准が手掛けるアニメの制作に携わっている。ほかにも『アイドルマスター』シリーズなどのヒット作も手掛けている。