ボカロP「れるりり」デビュー10周年を記念したアルバムをリリース「悩んでいる人がこれを聴いて、少しでも気持ちが楽になってもらえたら」【インタビュー】 | 超!アニメディア

ボカロP「れるりり」デビュー10周年を記念したアルバムをリリース「悩んでいる人がこれを聴いて、少しでも気持ちが楽になってもらえたら」【インタビュー】

デビュー10周年を記念したアルバム『羞恥心に殺される』をリリースした、ボカロP「れるりり」のインタビューが、アニメディア10月号に掲載。超!アニメディアでは、本誌に掲載しきれなかった分を含めた特別版を公開する。

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『羞恥心に殺される』ジャケット
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デビュー10周年を記念したアルバム『羞恥心に殺される』をリリースした、ボカロP「れるりり」のインタビューが、アニメディア10月号に掲載。超!アニメディアでは、本誌に掲載しきれなかった分を含めた特別版を公開。楽曲制作の秘密や、声優や多彩なクリエーターが参加したディスク2収録内容についてなど語る。

ボカロP「れるりり」

プールで泳ぎながら作詞作曲



ーー10周年を迎えたことについて、率直にどんな気持ちですか?
 10年続けられたことが、単純にすごいことだなって思います。逆にこれ以外のことで10年間続けてこられたことは何かあるか考えたら、飯を食うことか寝ることくらいしかなくて(笑)。それくらい、今まで何も続かなかった自分が、唯一これだけは続けられたのが音楽で、自分への自信に繋がりました。「俺もちゃんとやればできるんだ」っていう、自尊心が叶えられたと言うか。

ーー今回のアルバムを作るにあたっては、何かテーマを考えましたか?
 今回のアルバムに限ったことではないんですけど、僕にとってアルバムを作ることは記録みたいなもので。過去のアーカイブと言うか。そういう意味で、コンセプトを立てて作ったことがないんです。そろそろ曲が溜まってきたから、じゃあアルバムにまとめようという形で今までやってきて。だから、ここまでやってきた記録をアルバムという形で残しておくという感覚ですね。

ーー『羞恥心に殺される』というタイトルは、どんなイメージで?
 そういう曲を収録しているんですけど、その曲はフッと出てきました。歌詞に<週1でジム行ったって>と出てくるのも、実際に僕が週1でジムに行ってるので(笑)。そういうリアルのことや、今思っていることをそのまま、裏の意味もなく書いた感じです。でも悩んでいる人がこれを聴いて、少しでも気持ちが楽になってもらえたらうれしいです。人間は、孤独であることが一番辛いと言われていて。同じ気持ちの人がいるとわかるだけでも、何となく孤独じゃなくなるじゃないですか。聴いてくれた人の孤独感が、少しでも癒やされてもらえたら良いなと思います。

ーーれるりりさんの曲と言えば「脳漿炸裂ガール」を筆頭に、言葉のインパクトが強い曲というイメージがありますが、今回の収録曲はラブソングあったり、もっとリアリティのある言葉が多く使われていて新鮮さを感じました。
「脳漿炸裂ガール」なんかは、ある意味で不自然な曲だと思っていて。不自然なもののほうが目立つし面白がってもらえるんです。そういう曲を作るにはすごくエネルギーが必要なんですけど、今作はなるべく自然なものにしたいと思って作りました。たぶん今が、そういう気分なんです。なので、そういう感じの曲が自然と多くなったのかもしれないです。「うさぎのバラッド」なんかは喪失感と言うか、恋人と別れてからっぽになってしまったみたいな気持ちを歌っていますし。自分でも歌詞を読み返してみると、「けっこう素直に書いてるな」と感じます。

ーー歌詞とトラックとどっちが先にできるんですか?
 だいたい同時ですね。僕はプールで泳ぎながら作ることが多いんですけど、毎日1500メートル泳ぐことを自分で決めていて。泳ぎながら頭の中で、バンドサウンドと誰かが歌っている歌が同時に鳴っていて。それを打ち込みで再現するような形です。「生前戦葬」なんかも、プールで思いつきました。

ーー初音ミクやVOCALOID Fukaseなど、複数のボカロを使い分けていますが、自分の中で使い分けのルールはありますか?
 このボカロが使いたいから曲を作るのではなく、頭の中で鳴っている歌が男性キーか女性キーかで変わりますし、その歌のイメージに近いものを選ぶ感じです。

ーー「愛のかたまり」という曲は、ハッピー感があって明るく前向きで。
 これは、中臣鎌足と「かたまり」という言葉の語呂が似ていて、自分で仮歌を録っていた時にツボっちゃって(笑)。それでそのまま韻を踏むような歌詞にしようと思って作りました。特にサビは音重視みたいな感じで、Aメロ、Bメロも、何か意味を求めるよりもフワッと書いておくかみたいな感じでしたね。

ディスク2が二次創作の感覚


ーーディスク2のボーカルアルバムには、白戸佑輔やTom-H@ckなど多彩なクリエイターが編曲で参加。緒方恵美や高槻かなこなどの声優や、ウォルピスカーターや+α/あるふぁきゅんなどの歌い手、さらにVTuberの樋口楓といった多彩なボーカルが参加しています。
 あくまでも二次創作の感覚で、僕からはまったく口を出さず、自由に作っていただきました。自分がやるべきこととそうじゃないことが、ディスク1と2で明確になっているのかなと思いますね。ディスク1は、自分の表現者としての気持ちを表現したもので、それは自分がやるべきことです。ディスク2は、自分の曲をカバーしてもらうのに、自分がディレクションするのは違うなと思って。むしろ自由に、好き勝手に楽しんでもらえたら良いなと思っていました。

ーー聴いてどうでしたか?
 いろんな人が時間と労力をかけて、僕の曲をカバーしてくれていて。そのことだけで、すごくうれしいです。10周年を祝ってもらえている感があって、「お祝いはこれだけでもう充分です!」と思うくらいのうれしさです。みなさん本当にこだわってくださっていて。どのカバーからも、関わってくださった方の愛情を感じてうれしいですね。やっぱりプロはすごい、ありがたいなって。

ーー緒方恵美さんや高槻かなこさんなど声優さんも参加されています。今後、誰か声優に楽曲提供してみたいとかありますか?
 どなたかが依頼してくださったら、よろこんで作らせていただきますけど、こっちから誰かに歌って欲しいみたいな気持ちは……なくはないですけど、自分から「この人に!」みたいなことを言うのは、少しハードルが高いですね。この人となら絶対に良いものができるという確信が生まれた時は、ぜひお願いしたいです。

ーー『ア二メディア』なので、アニメのお話も聞きたいのですが、好きなアニメはありますか?
『エヴァンゲリオン』が好きで、アニメも劇場版もすべて見て、考察サイトも全部見る勢いでした。今も繰り返し、何度も見ているほどです。一番ハマったアニメだと思います。今は『シン・エヴァンゲリオン』の公開を楽しみに生きているくらいのところがありますけど、でも終わって欲しくない気持ちも同時にありますね。あと、声優の津田健次郎さんがすごく好きなので、津田さんが出ている作品はよく見ます。大塚明夫さんも好きで。渋い声で、個性的な声の人が好きみたいで。

取材・文/榑林史章

プロフィール
れるりり【れるりり】2009年からニコニコ動画を中心にクリエーターとして活動を開始。2012年に「脳漿炸裂ガール」が反響を呼び、史上初となるボカロ楽曲の実写映画『脳漿炸裂ガール』が公開され注目を集める。また「厨病激発ボーイ」は舞台化、アニメ化された。累計総動画再生数は、1億回を突破している。

『羞恥心に殺される』リリース情報
ディスク1には「羞恥心に殺される」を始め、「Q極進化論」「スペシャルガール」「僥倖ダンス」など人気曲のほか新曲を多数収録。ディスク2では緒方恵美が歌った「脳漿炸裂ガール」、高槻かなこが歌う「一触即発☆禅ガール」など至高のカバーを多数収録。
『羞恥心に殺される』ジャケット
発売日:発売中
価格:3,200円(税別)
《中筋啓》
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