アニメやゲームの主題歌、テーマソングなどを歌うアーティストに楽曲について語ってもらうインタビュー企画「Megami’sVoice」。2020年1月号には、『ソードアート・オンライン アリシゼーション War of Underworld』のOPテーマを歌う戸松遥が登場。「超!アニメディア」では、本誌で紹介できなかった部分も含めた、ロングインタビューをお届けする。
アスナとしても戸松遥としても両方の気持ちが歌えた1曲
――テレビアニメやゲームでの『ソードアート・オンライン』(以下『SAO』)シリーズとの主題歌タイアップは、これが3度目になりますね。
テレビアニメとしては5年ぶりのオープニングタイアップなので、「courage」(『SAOII』キャリバー編&マザーズ・ロザリオ編のオープニング)よりもパワーアップした歌声をお届けできたらと考えていました。
――最初に「Resolution」の曲を聞いた感想を教えてください。
イントロですでに『SAO』が始まったという感覚があって、鳥肌が立ちました。同時に歌詞も見せていただいたのですが、アスナの気持ちを代弁してくれているような内容で、これまでの『SAO』シリーズのタイアップで、一番キャラクターの心情に近いものだなと感じました。
――歌うときはどのくらいアスナの気持ちを込めましたか?
戸松遥半分、アスナ半分くらいでしたね。アスナの気持ちを表現したかっこいい曲ではあるけれど、戸松遥として表現しないとキャラクターソングになってしまうので、自分としてどう表現するかを考えて。自分としては、アスナと一緒に歌わせてもらったというのがしっくりきます。
――「Resolution」は誰が聞いてもかっこいいと思えるようなロックチューンです。
じつは、かっこいいロックを私が歌ってもいいのかな、みたいな自信のなさみたいなものがあったんです。私はリズム感がすごく優れているというわけでもないし、このかっこよさをきちんと表現できるのかなと思ってしまって。でも、アスナの気持ちも歌に乗せるという思いが強かったからか、感じたことをそのまま届けたいという気持ちでレコーディングに臨んだら、思っていたよりもしっくりきました。自分としては、セリフをしゃべっているのに近いような、そんな不思議な感覚でのレコーディングになりました。
――サビの部分などは、アタックが強くてとても印象に残ります。
私は全部強調したがるタイプなのですが(笑)、全部を強く歌うとメリハリがなくなってしまうので、ディレクターの方と相談しつつ、滑舌をよくしたほうがいいところ、アタックを強くしたほうがいいところを探りながら歌っていきました。
――レコーディングは、テイクを重ねたほうですか?
リズムが身体になじんでからは早かったですが、コーラスやハモリは時間がかかりました。一生終わらないんじゃないかと思ったくらい(笑)。でも、できあがったものを聞いたときにはすごく厚みのあるものに仕上がっていて。やってよかった、迫力のあるものになってよかったと感じました。
――お気に入りのポイントは?
歌詞の中に「傷ついても踏み出す」というワードが出てくるのですが、そこがお気に入りです。私も目標や夢、欲しいものが見つかったときは、絶対に手に入れるんだという執念がすごいんです。傷ついてもかまわないから絶対に手に入れるという思いで動くので、共感できたポイントでもあります。
――ミュージックビデオ(MV)は剣士のようなスタイルで、ファンタジー風なできあがりですね。
これまではMVと作品は切り離して作っていたのですが、今回はアスナの気持ちに近い歌詞ということもあり、『SAO』から少し世界観をお借りして。武器をアスナの使うような細身の剣にしてみたり、ラストにキリトっぽい黒い服の人物が現れたりするような雰囲気にしていただきました。ただ、やり過ぎると二次元っぽくなってしまうので、作品を見ている人がちょっとだけ『SAO』っぽいなと感じてもらうラインを狙いました。
――アクションシーンの撮影はどうでしたか?
私からアクションに挑戦してみたいとお願いをしたのですが、これまで1回もアクションをやったことがなかったので、不安もありました。でも、当日はアクション指導の先生も来てくださり、敵役の方とも一緒に練習をさせていただけて。実際に動いてみると、ちょっとした体重のかけ方やシンプルな動きでもかっこよく見えるので、すごく奥が深いなと感じました。気持ちとしてはダンスに近いんですね。型みたいなものが決まっていて、動き方もルールがある。それを暗記してきちんと動いていけば、キレイに見える。たくさんの発見があったので、また機会があったらやってみたいです。
――MVはラストで表情をゆるめるのも印象的です。
女の顔になるところですね(笑)。凛々しく戦っていたのが、最後に人間らしさが見えるというギャップを表現しているので、ぜひ曲が終わっても最後まで見ていただきたいです。
――カップリングの「ラスタート」では加藤有加利さんとの共作で作詞もしています。
このシングルが20代最後のリリースになると聞いていたので、ならばいましか歌えない、いまだからこそ歌えるものにしたいと思ったんです。それで、20代を振り返る歌を作りました。当初は作詞をする予定はなかったんですが、違う方に書いていただいても、「私の20代とは違う!」とか言い出してしまいそうで(笑)。であれば、原案を考えて、意見をうかがいながら進めていこうということになったんです。加藤さんは、私のわかりづらい説明をすくい取って、見事に形にしてくださって。感謝の気持ちでいっぱいです。
――20代の振り返りということで、どんな歌詞にしたいと思ったのでしょうか?
20代の10年間は楽しかったし、30代になるのも楽しみだという気持ちや、この10年よりもさらにいい10年にするぞという気持ちを込めました。1番で20代前半、2番で20代後半を振り返り、そしてDメロで30代に向けての想いを表現しています。ただ、全部私のエピソードにするとただの自己満足ソングになりそうだったので、同年代の友達を見て感じたことなど、多くの情報も盛り込んだつもりです。同年代の方は共感してもらえたらと思いますし、すでに過ぎている方には自分もそうだったなと感じていただけるんじゃないかな。これから30歳になる方には、その年齢になったときにまた聞いてもらえたらと思います。
――タイトルの「ラスタート」は、戸松さんが考えられたのですか?
そうです。終わりと始まりをうまくひと言で表せるワードがないかと思っていろいろ探してて、ふと「ラスト」と「スタート」を混ぜることを思いついて。しかも、「スタート」に重きを置いているので、単語としてフルで入っているところが気に入ってこれに決めました。
――レコーディングの思い出は?
いままでにも自分をモデルにしたり、自分のエピソードを入れたりして作っていただいた曲があるんですが、それは全部仕事に臨む私としての歌だったんですね。でも、「ラスタート」はひとりの人間としての歌だったので、日記を読んでいるみたいでレコーディングが恥ずかしかったです(笑)。一度、レコーディングでOKもいただいたんですが、どうもしっくりしていなくて、録り直しをさせていただいたんです。いま考えると、たぶん最初のテイクがしっくりこなかったのは、そこに恥ずかしさがあったからなんじゃないかな。「思うように歌っていい」と言っていただいて歌ったら、自分的にもスタッフの方にもすごく好評なテイクが録れて。最終的には、一番ありのままの、素の戸松遥で歌った曲になりました。
――最後に読者へメッセージを。
「Resolution」はアスナの気持ちに寄せて歌い、「ラスタート」は素の自分として歌ったので、気持ちの面でも両極端な2曲になりました。ぜひ、その違いを感じてもらいたいです。そして、『SAO』で「Resolution」を知ってくださった方は、カップリングまで聞いていただけたらうれしいです。
取材・文/野下奈生(アイプランニング)
Profile
とまつ・はるか/2月4日生まれ。ミュージックレイン所属。2008年に「naissance」でソロデビュー。これまでにシングル19枚、アルバム4枚、ベストアルバム2枚をリリース。声優としての主な出演作は、『俺を好きなのはお前だけかよ』パンジー(三色院菫子)役など。
商品情報
『Resolution』
ミュージックレインより発売中
初回生産限定盤:1,925円(税込)
アニメ盤:1,925円(税込)
通常盤:1,397円(税込)
戸松遥の20枚目となるシングル。表題曲は、自身がアスナ役で出演中のテレビアニメ『ソードアート・オンライン アリシゼーション War of Underworld』のオープニングテーマ。ロックなメロディと熱い歌声が印象的な1曲。カップリングは、自身が共作で作詞を手がけた「ラスタート」。
戸松遥 公式サイト
https://www.tomatsuharuka.com/