TVアニメ『彼方のアストラ』安藤正臣監督が振り返るアストラ号の軌跡「みんなそれぞれ成長していますよね。」【インタビュー】 | 超!アニメディア

TVアニメ『彼方のアストラ』安藤正臣監督が振り返るアストラ号の軌跡「みんなそれぞれ成長していますよね。」【インタビュー】

2019年10月25日にBlu-ray&DVD BOX上巻が発売するTVアニメ『彼方のアストラ』。現在発売中のアニメディア11月号には、安藤正臣監督のインタビューが掲載中。「超!アニメディア」では、掲載しきれなかった部 …

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 2019年10月25日にBlu-ray&DVD BOX上巻が発売するTVアニメ『彼方のアストラ』。現在発売中のアニメディア11月号には、安藤正臣監督のインタビューが掲載中。「超!アニメディア」では、掲載しきれなかった部分を含めたインタビューの長文をご紹介しよう。


――まずは最終話までの制作を終えた現在の率直なお気持ちをお聞かせください。

 自分としても1クールで初回1時間、最終話1時間というボリュームをやり通すのは初めてだったので、まずは全部やり切れてよかったというひと安心の気持ちです。『彼方のアストラ』は、少年マンガとして内容の仕かけがかなり凝っていて、そこが作品の大きな魅力だと思います。読者が自分のペースで文字を追えるマンガと違いこちらのタイミングで情報を提示するアニメという媒体で、誤解なくストーリーを進めなくてはいけないという点は、自分のなかでハードルでした。「耳でセリフを聞くだけで、あの単語量を理解できるのか?」と葛藤しながら、声優のみなさんの力も借りて作っていた感じですね。

――1話放送前にシリーズ構成の海法(紀光)さんにインタビューさせていただいた際、海法さんは「当初、この全部をアニメ化するなら18話くらいは必要だと思った」とおっしゃっていました。そんな本作を全12話にまとめて描き上げるうえで、大切にされたことを教えてください。

 さすが海法さん、かなり正確な読みだったと思います(笑)。この作品の魅力は、仕かけの面白さというのもあるんですけど、もっと根本的に“少年マンガとしてのまっすぐとした気持ち”みたいなものだと思うんです。未来に対する希望や、フロンティア精神、過去にくじけないで未来を見るポジティブさ。それこそが本作の芯だと感じていて、そこが曇らないように制作するということを考えていました。


 尺の面では苦しみましたが、海法さんに毎回「この話数はここで終わらせる」という目標地を提示してもらえたのが、とてもありがたかったですね。「この話数をここで終わらせるためにはどの情報を入れるべきか」と取捨選択することができたので。各話数の区切りについては、一番引きがいいところというのはもちろん、ポジティブさを伝えるために、毎話「とりあえず謎は残るけど、短期間的な問題解決はしていて、モヤモヤせずに終われる」という、話数ごとの気持ちよさは取り落とさないようにしようとしました。シナリオで描いてもらったうえで映像の編集の段階で落としている部分もかなりの分量がありましたが、そこらへんはヒヤヒヤしながら作っていましたね。

――「未来への希望」と言うと、最終話にてアニメオリジナルで描かれた、ウルガーと彼の「オリジナル」であるゲルトとの対話は、まさに「オリジナル」と決着をつけて前に進む印象的なシーンでしたね。

 そう言っていただけるのはうれしいですね。最終話は尺の関係で難航して、じつを言うとあの対話シーンも各所から「労力を少しでも抑えるために、削れないか?」と言われていたんです(笑)。必死に守り抜きました。

――そんな裏事情があったんですね!?  あのシーンは、どうやって作られたのですか?

 もともと「アニメをやるからには、何か膨らませられる部分があるといいよね」という話は(原作者の)篠原(健太)さんとしていて、具体的にどういうエピソードを追加するかというのはシナリオ打ち合わせで(シリーズ構成の)海法(紀光)さんと相談して決めていった形でした。「『オリジナル』との決着は膨らませられるんじゃないか」という話は早い段階で上がっていたのですが、いざ作るとなると全員分を描けるほどの余裕があるわけではなく、どうするかとなったときに白羽の矢が立ったのがウルガーだったんです。ウルガーがジャーナリストとして動かしやすいという点と、ウルガーの兄のフィンについて原作では描かれなかった部分の補完を一緒に回収にできるんじゃないかなと。
 同時に、1話で描いた「宇宙船に戻ろうとするカナタとアリエスを、みんなで手をつないで救出する」というアニメオリジナル展開とのつながりもありました。あの展開は、シナリオ上で書いてはもらったものの、「あんまり仲よくない雰囲気だったのに、みんなが手をつなぐってどんな心情なんだろう」と、なかなか自分のなかで納得がいく形でコンテに落とし込むことができなかったんです。基本的にはみんないい子だから命の危機ならば協力するだろうという気持ちの盛り上げでコンテを組み立てていたんですけど、ウルガーだけ「この子、そんなに素直な子だったっけ?」と引っかかり始めちゃって。さらにカナタたちを受け止める役でウルガーを使おうと思っていたので、ウルガーを動かすための原動力が必要だと思いました。そこで、「宇宙空間に放り出されたときにウルガーの荷物が遠くに飛ばされてしまう。その荷物のなかにはウルガーが大事にしていたニット帽が入っていた。ウルガーが必死に荷物を探していたところで、カナタが何の気なしに拾ってあげる。その恩があるから、カナタたちの救出にウルガーも力を貸したんだ」というくだりを思いついたんです。
 そのニット帽の件がずっと自分の頭の中にあったので、最終話のあのシーンでもニット帽をうまく使えないかなと思っていて。フィンとおそろいみたいなニット帽だから、そこがうまくリンクするんじゃないかなというひらめきがあったので、海法さんに「こんなイメージがあるんだけど、形にしてもらえませんか」と、今の形にしていただいたんです。クローンで自分の命をつなごうとした自己保身だけのゲルトに対して、兄との関係性のなかで命とは別の意味で“引き継ぐもの”を得たウルガー。面会室の窓越しに対話するふたりはクローンだから表裏一体の存在であるけども、ニット帽一個あるかないかがそこを分けるところだったのかなと。それもこれも、篠原先生が原作の最終話で、ニット帽姿で堂々といるウルガーを描いていたから思い付けたことなんですけどね。

――ニット帽はウルガーと“オリジナル”との対比の象徴だったのですね。さて、安藤監督から見て、この旅の中でとくに成長したなと思うキャラクターはいますか?

 みんなそれぞれ成長していますよね。カナタも最初から変わっていないように見えて、序盤の空回り具合からアリエスの空気の和ませ方みたいな部分を勉強して、リーダーシップを強く、周りに迷惑のならない形で発現できるようになっていきました。
 それも、原作のすごさだと思うんです。連載マンガだと連載を続けるためにキャラクターを定型であまり変化しないように描くことが多いなかで、篠原さんはあのマンガを全5巻にすると事前に決めて連載を始めたそうなので、最初から最後までのキャラクターが変化するドラマを想定して全キャラ分の役割を決めて描かれていたんだろうなと。それはもうアニメの手柄は何もないです(笑)。
 アニメのオリジナルでの成長といったら、ビーゴですかね……「思ったことをアニメキャラのしゃべりで再現する人形(パペット)」でしたけど、後半はけっこう独立していて(笑)。手をつながれて「キャッ」って言っていたり。あれは僕が(ビーゴ役の)龍田直樹さんにかわいく「キャッ」って言ってほしかっただけなんですけど(笑)。

――カナタといえば、最終話でアリエスの手を握るアニメオリジナルのシーンはとてもキュンとしました。

 あれはもう完全に海法さんの仕業です(笑)。先ほども触れた「手つなぎ」というテーマがあったので、入れていただきました。とてもいいシーンですよね。

――そんなカナタとアリエスの関係をはじめ、人間関係の面での成長も、旅の中でていねいに描かれていましたね。人間関係といえば、7年後のウルガーの周辺がとても気になりました……。

 アニメのこぼれ話で言うと、ウルガーの帽子の星を何色にするかは話題になりました。原作は白黒なので、あの星はいったい何色なのかと。キトリーの色だったらひと波乱あって面白いかなとも思ったんですけど(笑)、結果的には、フニの色にしています。フニがキトリーの星をもらっているので、「お姉ちゃんからおさがりをもらったから、おさがりを上げる」ということですね。そのあたりの関係性についてはフワッとさせていますので、みなさんのご想像にお任せします(笑)。

――本作で安藤監督がこだわった点は?

 アニメオリジナルでいったら、漂流中にメンバーで撮った写真を増やしたことですかね。もともと原作でもカバー下の本体表紙に写真があって、それらはすべて過去の写真だったので、今旅をしている彼らのオンタイムの思い出、記憶として写真を有効に使えるんじゃないかと積極的に入れていきました。尺がないなかなので、ED映像などでもぐりこませてることで、作中のフォローもできるんじゃないかという目論見もありました。後半、「(歴史改ざんという)作られた歴史」と「これからそれをどう捉えていくか」という歴史観の話に突入していったときに、偽りの歴史に対比して、「自らが直に経験した紛れもない本当の記憶、思い出」が浮き立つといいなと考えていて、それが最終話のメールを送るシーンに結実したかなと思います。
 あのシーンでは写真がバーッと出るなかで、それまでのED映像で使われていたものだけじゃなく、じつは新規の写真が何枚か紛れ込んでいるんですよ。新規の写真があることで、「アニメとして映像になっていないところでも、豊かな時間があったんじゃないか」って想像してもらえたらと思って。
 それから、映画のような画角になるように画面の上下に黒帯を敷いていたのですが、それも自分のなかではいくつも理由があって。あの帯は最終話のCパートの途中からなくなっていているんです。それ以前はアストラ星に帰るまでの旅の記憶、要は映像記憶かもしれないということで、本人たちがアストラに帰ってきたあとのインタビュー映像が映像サイトに一覧で上がっていたのにも、サムネイルに全部帯が付いています。でも最終話Cパート以降は、カナタたちの未来に向かっての時間。その対比を画角で表現したわけですね。
 ただ、じつは最終話Dパートにも一瞬だけ帯が戻るシーンがあるんです。それは新たな旅に出発しようとしてアストラ号に乗り込んだカナタが振り返って、先生の姿を見るシーン。あの一瞬だけ「先生は過去の時間に止まっているかもしれないけど、これからもカナタを見守っている」という意味で帯を戻しました。

――あの黒帯にはそんな意味が込められていたのですね。

 当初の理由としては、「カナタたちの旅は、本人たちはポジティブに乗りきろうとしているけど、本当は一瞬先には死が待っているかもしれない、抑圧された息苦しい時間だ」ということを表現するために、画面を息苦しくしたかったというのもあるんです。「忘れるなよ、死にかけているんだぞ」というのを緊張感としておきたかったといいますか。そういうストーリー上の重しでもあるし、一方で「いつもと違う画角を扱うことで、少し緊張感を持って仕事をしてほしい」という制作現場に対する重しでもありました。

――挑戦的な演出だったんじゃないでしょうか。

 そうですね、各話の演出さんに「どういうときに黒帯を敷いて、どういうときは敷かないという理屈なんだ」と言われても、僕のなかでしか理屈がないので(笑)。最初から最終話では黒帯を外すと考えていたんですが、「最終話でこういうことをしたいんです」って言っても、各話担当の方にはなかなか伝わりにくい。どう面白くなるのかというのはピンと来ないでしょうし。出来上がってみないとわかってもらえないのかなと。

――監督として本作を手がけられて、収穫になったなと思うことはありましたか?

 “勢い”でしょうか。『彼方のアストラ』は「ジャンプ+」で連載された、まさに少年マンガの王道の作品です。僕はそういう作品を初めてやらせてもらったので、変に穿ったことをせず、ストレートパンチを突き出す勇気、勢いが、今回の収穫ですね。躊躇せずに泣いて笑って、躊躇せずに正論をたたきつけるみたいな。「えいや」と目をつぶってぶん投げる勇気が必要だと、非常に勉強させていただきました。

――今回の旅で、カナタたちは強い絆で結ばれました。彼らの心をひとつにしたものは、安藤監督はなんだと思いますか?

 “距離感”ですね。今ってSNSやインターネットでつながっているようでいて、物理的な距離感は遠いんじゃないかなと思っていて。それをカナタたちは、本人たちが望む・望まないにかかわらず、一緒のところに集まって直接ぶつかってひとつの場所を共有することで、「B5班」という独特の空気感を作り上げていきました。それがそのまま絆につながったんじゃないかなと感じています。その具体的な表現が、作中のさまざまなシーンで象徴的に入れていた「手つなぎ」だったんじゃないかなと。怖くても、恥ずかしくても、直接手をつないでみせる。そういう意味では、1話で結論は出ていたんですね。あそこは初心表明で、やり通せるかなというところで頑張ってきた12話だったんじゃないでしょうか。

――ありがとうございます。最後に、読者に向けて、メッセージを。

 いろいろ語りましたが、すべては原作としてある篠原さんの作品の魅力を、アニメという限られた時間、限られた表現のなかで、翻訳して伝えるために頑張ったことでした。アニメとしてわかりやすく、爽快感的に見やすいものを意図して作ったものなので、繰り返し観てもらうことで全12話の作品として楽しんでもらえると自分としてはうれしいです。そのうえで、アニメでは描き切れなかった豊かな表現がある原作自体も、ぜひ読んでもらいたいと思います。

取材・文/後藤悠里奈

<プロフィール>
【あんどう・まさおみ】手がけた作品は『クズの本懐』(監督)、『ハクメイとミコチ』(監督)ほか多数。

TVアニメ『彼方のアストラ』公式サイト
http://astra-anime.com/

TVアニメ『彼方のアストラ』公式Twitter
@astra_anime

©篠原健太/集英社・彼方のアストラ製作委員会

《超!アニメディア編集部》

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