連続テレビ小説『なつぞら』のアニメ制作を担当する舘野仁美と刈谷仁美にとっての“アニメーションにしかできないこと”とは?劇中に登場するアニメのポスターも公開!【インタビュー】 | 超!アニメディア

連続テレビ小説『なつぞら』のアニメ制作を担当する舘野仁美と刈谷仁美にとっての“アニメーションにしかできないこと”とは?劇中に登場するアニメのポスターも公開!【インタビュー】

NHK朝の連続テレビ小『なつぞら』の劇中に登場するアニメは、日本アニメ史に歴史が残る作品をモチーフにしており、本物のアニメーターが実際に制作している。制作を担当する舘野仁美と刈谷仁美に、劇中アニメの作り方など、舞台裏を …

ニュース
注目記事
hyoshi025_20190622
  • hyoshi025_20190622
  • 連続テレビ小説『なつぞら』のアニメ制作を担当する舘野仁美と刈谷仁美にとっての“アニメーションにしかできないこと”とは?劇中に登場するアニメのポスターも公開!【インタビュー】
  • 連続テレビ小説『なつぞら』のアニメ制作を担当する舘野仁美と刈谷仁美にとっての“アニメーションにしかできないこと”とは?劇中に登場するアニメのポスターも公開!【インタビュー】
  • 連続テレビ小説『なつぞら』のアニメ制作を担当する舘野仁美と刈谷仁美にとっての“アニメーションにしかできないこと”とは?劇中に登場するアニメのポスターも公開!【インタビュー】
  • 連続テレビ小説『なつぞら』のアニメ制作を担当する舘野仁美と刈谷仁美にとっての“アニメーションにしかできないこと”とは?劇中に登場するアニメのポスターも公開!【インタビュー】
  • 連続テレビ小説『なつぞら』のアニメ制作を担当する舘野仁美と刈谷仁美にとっての“アニメーションにしかできないこと”とは?劇中に登場するアニメのポスターも公開!【インタビュー】
  • 連続テレビ小説『なつぞら』のアニメ制作を担当する舘野仁美と刈谷仁美にとっての“アニメーションにしかできないこと”とは?劇中に登場するアニメのポスターも公開!【インタビュー】
  • 連続テレビ小説『なつぞら』のアニメ制作を担当する舘野仁美と刈谷仁美にとっての“アニメーションにしかできないこと”とは?劇中に登場するアニメのポスターも公開!【インタビュー】

 NHK朝の連続テレビ小『なつぞら』の劇中に登場するアニメは、日本アニメ史に歴史が残る作品をモチーフにしており、本物のアニメーターが実際に制作している。制作を担当する舘野仁美と刈谷仁美に、劇中アニメの作り方など、舞台裏を語ってもらったインタビューを現在発売中のアニメディア10月号にて掲載中。「超!アニメディア」では、本誌記事内ではお届けしきれなかった部分も含めたインタビュー全文をご紹介する。また、劇中アニメのポスタービジュアルを公開する。


――舘野さんが担当されているアニメーション監修とは、どんな仕事ですか?

舘野 今回に関しては、タイトルバック(OP映像)や劇中アニメーションの制作を担当します。また、劇中に登場する原画や動画などの小道具も作成しています。それとは別に、アニメーター役の俳優の方には、アニメーターとはどんな作業をするのか、動画の束のめくり方や前後の絵を見比べる“指パラ”と呼ばれる仕事の初歩的な所作、道具の扱い方などを一通りお教えしています。また、撮影に立ち会い、練習していない所作が必要な場合は、その場で指導と撮影後の確認も担当しています。

――劇中でアニメ作品が描写される際に見られる設定画や色見本は、どのくらい準備されているのですか?

舘野 キャラクター表は、キャラクターが絞られた作品であれば、一本のアニメをきちんと作れるくらいの人数は用意しています。主要メンバーだけでなく、少ししか出てこないキャラクターの設定画も作ってあります。

――劇中アニメの設定画などは、どのような段取りで準備されるのですか?

舘野 演出家・助監督 の「○話に登場する劇中アニメの制作シーンには、このキャラクター表(設定画)や原画・動画などの小道具が必要だろう」という発注を受けて用意することが多いです。タイトルバックに関しては、刈谷さんが自分でこれぐらい必要だろうと思う量を用意したので、かなりたくさん、いろんなポーズのキャラクター表が用意されました。


――所作指導を受けて、役者のみなさんは、どのようにアニメーターとしての演技に取り組んでいましたか?

舘野 みなさん真剣に練習してくださっています。十分な練習時間がなくてはじめは所作がぎこちない方も、何度か撮影を重ねると上手になっているので、陰で努力されているのだと思います。天才アニメーター・猿渡竜男役の新名基浩さんは、主人公の坂場なつに「こう描けばいいんだよ。」と、サラサラっと絵を描いて教える一瞬のシーンの練習に苦労されていました。こちらがびっくりするくらい紙いっぱいに同じ絵を描かれていましたが、納得できず、後日もう一度練習したいとの申し出をされたほどです。でも本番ではすんなり描けたので、猿渡竜男が優秀だという雰囲気を表現できたと思います。

――なつ役の広瀬すずさんは?

舘野 広瀬さんは、教えると、自分なりに努力・工夫して会得しようとするタイプ。原画と原画の間の絵(動画)を描くアニメーターの練習も楽しそうにしていました。やり始めるとのめり込む感じなので、集中力がすごい方だと思いました。アニメーターに向いているのかはわかりませんが、あの集中力があれば、どんなことでもこなせるのではないでしょうか。

――話は変わって、舘野さんがタイトルバックに刈谷さんを抜擢した理由は?

舘野 すごく乱暴な言い方になりますが、直感です(笑)。台本を読むと、刈谷さんが浮かびました。「ヒロインが描く絵を描くのは刈谷さんがいいだろう」と、最初から彼女以外は考えませんでした。刈谷さんが描く絵も魅力的ですが、刈谷さん自身の人となりも魅力的です。絵には、それを描いた本人の素養が出るものです。本人が素敵だったら絵も素敵、絵が素敵だったら本人も素敵。それは私の勝手な思い込みかもしれませんけど(笑)。でも、刈谷さんは本当に素直に育っていて、真っ直ぐで、他人の悪口を言わない。難しい作業も挫けずにやりますし。

――まさになつのような感じですね。

舘野 ヒロインに年格好が近い女性アニメーターが描くことで、本当にそのヒロインが描いたように見えたなら、より素敵かなと思ったのは事実です。

――本作への参加が決まった際の刈谷さんの気持ちや、作業で苦労される点は?

刈谷 アニメーターを主人公にした朝ドラが始まることは聞いていましたが、自分が関わるとは夢にも思っていなかったので、舘野さんから話をいただいたときには、まずびっくりしました。ドラマの劇中のアニメを作る機会は今後もあるかもしれません。でも、アニメーターを主人公にしたドラマで、主人公が手がけるアニメを実際に制作することは滅多にない機会だと思い、これも何かの縁だと思ってお引き受けしました。苦労したのは、制作年代によって変化するアニメの絵柄の壁です。昭和30年代など、当時の絵にどう自分が寄り添っていくか。描いていると今風の絵になることもあります。絵柄を物語の時代に合わせたかったので、その折り合いで苦労しました。

――絵を時代に合わせるために、工夫をしたポイントはどんなところでしょう?

刈谷 当時活躍されていたアニメーターの方々の画集を見ると、絵の独特の品のよさというか、柔らかくてシンプルだけど、すごく立体感がある。そういう絵の魅力や印象を強く感じます。洗練されているというか、たくさんの描線のなかから見つけ出された1本の線なのでしょう。当時のアニメーターの方々の画集を見て、絵を真似して描くことで雰囲気などをつかもうとできるかぎり練習しました。まだ全然つかめてはいないのですが、線の情報量を減らすなかで、表情の魅力や立体感を出すことを意識しています。

――それを学んだことで、どんなことを得られましたか?

刈谷 当時の方の絵を取り入れることによって私自身の絵が多少はうまくなればいいのですが……。当時の方々の絵は再現できないくらい偉大なので、私がちょっと練習したからといって真似できるものではありません。これからも吸収していきたいところです。

――アニメーターとして、なつに共感する部分や似ている部分は?

刈谷 なつは、色を塗るところ(仕上げ)から入社しましたが、私は最初からアニメーターの仕事を始めました。むしろ、昔の制作作業を観ることで、当時のアニメの作り方を学ぶことが多いです。でも、なっちゃん(なつ)がゴミ箱から拾ったうまい先輩の絵を自宅に持ち帰って模写をするエピソードは、ちょっと自分と重なるところがありました。私はゴミ箱から絵を持ち帰ったことはありませんが、会社の人の画集を真似て絵の練習をすることはあります。同じことをやっている新人アニメーターは多いと思います。

――刈谷さんがアニメーターを目指すきっかけや影響を受けた作品は?

刈谷 アニメーターを目指そうと思ったのは、TV放送された『魔女の宅急便』を観たこと。私は、以前からイラストを描くのがとても好きでした。最初にアニメーションに興味を持ったのは、イラストが動き出すのが不思議に思えたからかもしれません。もっとも、アニメーションの絵を動かすことに特別興味を持ったわけではなく、色味とか、イラストチックなところに惹かれました。すごく上品な鮮やかさというか、ジブリ作品の不思議な色づかいが独特に感じられたんです。色味で言うと、今ではパソコンで色を着けますが、『なつぞら』の時代でも使われている絵の具で塗ったセル画の独特な画面の雰囲気とか、そういうものに興味を惹かれたんですよね。そこから、昔観ていたアニメを観返すようになり、絵を動かすことにも興味が出てきた感じです。アニメーションをいろいろ観たなかで、自分が好きなものは、観ていて楽しい作品。高橋留美子さんの作品は、個人的な好みの部分で通じるところがあります。

舘野 『らんま1/2』が一番好きなの?

刈谷 そうですね。『うる星やつら』とか、個性の強いキャラクターがテンポのいいアニメーションのなかでワチャワチャ動き出すのが観ていて楽しいです。

――刈谷さんの初の個展(かりや展/東京・西荻窪のササユリカフェで5月30日〜8月26 日に開催)には、新人アニメーターを題材にした絵が展示されていましたね。

刈谷 私は、半年ぐらい前まで「アニメーター寮」という寮に住んでいました。そこは、1人暮らしではとても食べていけない低収入の新人アニメーターを支援する寮です。私も最初に入った会社は出来高で給料が支払われる契約だったので、しばらくお世話になりました。新人アニメーターを題材にした絵は、アニメーター寮のアピールであったり、支援してくださっている人へのお礼の意味合いも込めたものです。

――“朝ドラ”という国民的な番組で、アニメーターの女性が主人公になる作品が作られていることへの思いをお聞かせください。

刈谷 アニメーターの女性が主役となるドラマは今まで聞いたことがないので、『なつぞら』が放送されることによりアニメーター志望の人が増えるとか、アニメーターに興味を持ってくれるのは、すごくうれしいです。でも、今のアニメ業界は、新人が低収入で食べていけないという問題が色濃くあり、待遇改善をしていかなくてはいけないと思っています。

――舘野さんはいかがですか?

舘野 アニメーターが主人公のドラマなんて、もう二度と無いであろうと思います(笑)。その理由のひとつは、地味な作業であるアニメーターの仕事をドラマチックに描くのは難しすぎるから。基本的に、ずっと机に座っているので、面白いことは滅多に起きません。どうやったら魅力的に見えるのかがわからないんです。また、うまい原画とうまくない原画の差の表現も難しいです。私たちアニメ業界の人間が「そんなに上手じゃないな」と思っている絵も、ふだん絵を描かない視聴者が見たら、素敵な絵に見えるでしょう。それでもドラマにしていただいたことで『極端に描けば表現できる』ということがずいぶんわかってきました。『なつぞら』が放送されたことで、なっちゃんみたいになりたいと、アニメーターを目指す子が増えると思います。でも、刈谷さんが言うように、アニメーターの待遇は本当によくないです。これは昔からです。私も、名前が知られた会社に入っていた時期もありましたが、新人のころは家賃を払うと生活費がなくなるギリギリの生活でした。みんな苦しんでいた時期はあります。今活躍している有名な方も、若いときは極貧で、苦しい時期を乗り越えて現在があるというほうが多いと思います。待遇改善は、この業界の永遠のテーマです。アニメーターがヒロインのドラマが生まれて、アニメーターに憧れる人がたくさん出てきたら、今回こそ業界にとって、アニメーターの待遇改善を考えるきっかけになってくれないかなと願っています。

――アニメーションの同業者からはどんな反響がありましたか?

舘野 驚いたという感想が多かったようです。初回に関しては、私も驚いています。いきなり3種類のアニメ(「東京大空襲」、「丘を駆けあがる2人」、「タイトルバック」)が入っていて、アニメが始まったと誤解されるような感じでした。同業者からもっと反発されるかと思ったのですが、みなさん好意的に受け止めてくれた気がします。『アニメーターを日の当たるところに持ってきてくれてありがとう』って言ってくださった方もいます。

刈谷 あまり同業者の声を聞いていません。同世代の人は、仲間ではありますが、みんなライバルなので、ニコニコしながら寄ってくる感じでもなくて、ひっそり裏で観ている感じです。

舘野 どんなものか見定めようという気持ちでいるのかもしれません。手放しではなかなか褒めてもらえない。

刈谷 そうですね。私もそういうフシはあるので(笑)。

――舘野さんは、ご自身のツイッター(『動画検査のための備忘録@』)で ジャンルを問わず、いろんなことに興味を持つのは大切。とつぶやかれていますね?

舘野 脚本の内容を精査しなくてはいけないときなど、いろんな知識が役に立つんです。時代考証的なことも、他人任せや教わるままではダメ。一緒に考えるには、昔の作品、歴史、地理など、ある程度知ってないといけません。アニメーターのなかには、絵だけ描ければ幸せみたいな気持ちの人もいて、絵だけを練習する人もいます。でも、やはり幅広い知識を持っていないといけません。私が憧れていた先輩方は、大変物知りでした。もちろん、絵が上手な人はアニメーターのヒエラルキーの高みに行けます。でも、そこに知性がプラスされたら、もっとすばらしい仕事ができます。そこで、若い人は絵だけ上手になる勉強をしないでほしいと思い、そういうツイートをしています。

――『なつぞら』番組公式サイトの特集ページ タイトルバックのウラ話。で 題字をカリグラフィ(飾り文字)にすることを舘野さんが提案し、刈谷さんがまとめた。と紹介されています。それについて解説していただけますか。

舘野 私、オタクなんです。いろんなもの、きれいなものが好きなんですね。カリグラフィもそのひとつ。ディズニーの名作『ピノキオ』『シンデレラ』『白雪姫』などは、カリグラフィの題字が登場します。今回、題字を描くことになったとき、カリグラフィが一番素敵な字だと思いました。当たり前にレタリングするよりも、絶対に素敵なものになるし、アニメーションという題材にぴったり合うはず。刈谷さんにもそういう説明はしていましたが、現代と昔からのすばらしい芸術であるカリグラフィに刈谷さんらしさもプラスされて、素敵な題字を作ってくれたと思っています。

――刈谷さんはカリグラフィを勉強されたそうですね?

刈谷 最初に描いた字は、普通の明朝体のフォント(書体)の周りに装飾したようなもの。それを見せた舘野さんには『なつぞら』だけのフォントにしてほしいと言われました。

舘野 みんなが驚くような『刈谷フォント』と呼ばれるようなものを目指してねと(笑)。

刈谷 それで、すでにある字の周りを装飾する形は捨てて、ディズニーの要素を吸収するなどしながら、何度かやり直した末に、今の『なつぞら』のカリグラフィの題字ができました。また、それをタイトルバックで動かすことも、なんとなく予想していました。

舘野 お互い同時に「これ、字が動いたほうがいいよね」って(笑)。

刈谷 CGでフワッと出てくるものではなくて、作画のアニメーションで動かす演出になるだろうと想像していたので、あまり派手にしすぎず、素朴にもなりすぎず、ということを注意しました。

――劇中でなつは、夫で演出家の坂場一久と“アニメーションにしかできない表現”について、討論をしていました。ふたりが思う“アニメーションにしかできない表現”とは、どんなものでしょうか?

舘野 いくつかあると思うんですけど、ひとつは、頭に思い描いた理想のキャラクターを動かすことではないかと思います。たとえば、ディズニーの名作アニメの『白雪姫』や『シンデレラ』は、キャラクターのなかに名優が入っているかのような、品のある動きをしています。実写作品は、主役を演じられる俳優が見つからないかもしれないし、容姿はぴったりでも中身が不相応かもしれません。でも、絵なら描けます。絵を動かすアニメーションならば、理想の完璧なキャラクターを描くことが可能なんですよ。

刈谷 “アニメーションにしかできない表現”は私もまだ研究中ですが、『なつぞら』でも描かれた『残像の表現』もそのひとつだと思います。手を振るカットの場合、アニメーションならではの表現として、1枚の絵のなかに手を何本も描くこともあります。そういうものは、絵だからこその面白さなのかなと思います。

舘野 アニメーションでは、キャラクターが伸びたり縮んだりするのは自在ですものね。『なつぞら』のタイトルバックにある、絵から飛び出したクマやなっちゃんが地面に落ちてペチャッとなる描写も素敵なアニメーション的な表現です。

刈谷 アニメーションにしかできない表現とは、実写では撮れない映像じゃないですか。

舘野 野生生物と一緒に遊ぶのも……。

刈谷 アニメーションだからこそかもしれませんね。

舘野 みんなが心に描いた「やってみたいな」ということを実現できるのもアニメーションの醍醐味 ですね。

取材/アニメディア編集部 文/草刈勤

☆劇中アニメのポスタービジュアルを公開!
劇中アニメのポスタービジュアルをご特別公開する。時代を感じられるえのタッチに注目だ。

漫画映画のポスターはこちら。クリックすると拡大します。

 

テレビ漫画のポスターはこちら。クリックすると拡大します。

 

『なつぞら』公式サイト
https://www.nhk.or.jp/natsuzora/

(C)ササユリ・NHK

《超!アニメディア編集部》
【注目の記事】[PR]

編集部おすすめのニュース

特集