2年目に突入した『ゲゲゲの鬼太郎』第6期。1クールを過ぎ、ファンの間では「1年目以上に攻めている!!」との声があがっている。これまで以上に妖怪たちの恐怖感はアップし、ぶっ飛んだギャグも投入するなど、エッジの効いた第6期2年目の展開について、シリーズ構成の大野木寛に話を聞いた。
ーー『鬼太郎』の2年目は1年目よりもさらにパワーアップしたのではないか、という声を聞きます。2年目は1年目とどのように変えていこうと考えられたのですか。
ひとつは「名無し」に代わる新しいキーマンをどうするか、ということでした。2年目についてみんなで話したとき、鬼太郎と対峙する強敵とは違う、どちらかというとライバルみたいな存在がいたら面白いんじゃないか、という話になったんです。そうして生まれたのが石動零です。鬼太郎と似てもつまらないし、今期の鬼太郎はどちらかというとクールですから、それと差別化できるように、めちゃめちゃ熱血漢というわけじゃないけれど、復讐に燃える男ということで固めていきました。登場回は少なくても、ピリっと効くスパイスのような存在、その想定はうまくはまったかなと思っています。
もうひとつは、1年を通してすごくバラエティーに富んだシリーズになったので、それぞれにもっと磨きをかけていきたい、ということでした。怖い話もあれば、笑える話もある。あるいはアクションメインの話、というふうにキチンと分けてやってきてるんですね。新しいライターに入ってもらって、得意のジャンルで存分に書いてもらおうと思いました。そのひとりが長谷川圭一さんです。『鬼太郎』には並々ならぬ愛情を持っている方で、怖い話を書かせたら右に出る者なし。話題の59話「女妖怪・後神との約束」は、長谷川さんの脚本です。シナリオですでにかなり怖かったのに、映像を見たらもっと怖いじゃないの!(笑)。さすがに演出もすごい。しかも、後神役の桑島法子さんが「なんだこれは!」ってくらいのヤンデレっぷり(笑)。その調和が見事でした。こんなの朝っぱらから子どもたちに見せていいのかと思いつつ、これで『鬼太郎』はもっと面白くなるな、と思って見ていました。(笑)。
笑える話を書ける人、お笑い担当として入ってもらったのが市川十億衛門(ギガエモン)くんです。彼の参加もスタッフのいい刺激になってると思います。あの「狒々」の回(55話)を書いたのも彼です。
ーー狒々は、ファンの間で話題沸騰だったので、アニメディア本誌8月号の版権に描いてもらいました。
まあ、版権に狒々を描こうっていうアニメディアさんもおかしいけど、そもそもあの話がおかしいよね。
ーーおかしいですよ! なんで「ハラスメント」話が、よい子に見せる日曜朝に、スタッフ会議で通ってしまったのかがわからない。
そうなんですよ(笑)。「おいおい!」という脚本を書いて、平気な顔をしているんですよね、十億衛門は。
ーーその「おいおい!」という脚本になぜOKが出るのか、と思ったんですが、シナリオ会議で意見は出なかったんですか。
それは出ましたよ。「これはどこまでがハラスメントなんだ」とか、「そもそもハラスメントとは何か」とか。一番、盛り上がったのは狒々の登場シーンのところですよ。「いいか、お前ら!」と、こうして両手を挙げて出てきて、「バーンとやったら、ぎゅるぎゅるぎゅるって回すんだよ!」とか言うところを、会議にいたみんなで実際にやってみたときしたね、みんな熱演でしたね。
ーー十億衛門さんの次の期待作は?
第67話「SNS 中毒 VS 縄文人」(8/4OA)かな。これも相当バカバカしいです。
ーー58話の「半魚人のかまぼこ奇談」話も、なかなかユニークでした。
そう。「かまぼこ」の金月龍之介くんも、おかしい(笑)
ーーかまぼこ板から鬼太郎を、ぺらりとねこ娘がはぎ取るところなんか、ドキドキしました。
ちゃんと包丁の「背」で取るという、ねこ娘のやさしさ!「その緻密すぎる描写はなんだ!」と突っ込みたくなりましたね。あれは、演出家さんの技ですね。
ーー1年目によく聞いたのは、ねこ娘好きな演出家の方たちの“ねこ娘フェチ競演”でした。スタッフのみなさんのこだわり傾向は、ますます強まってきたようです。
そうなんです、慣れてきたところもあるとは思うんですが、我々ライターチームでも、「あ、ここまでやっても大丈夫なんだ」とか。1年間、育ててきたキャラクターだから、2年目はもっとこういうふうにできるんじゃないか、という新しい方向性が見えてきて、新しいこともできるようになってきたんだと思います。そこに長谷川さんや十億衛門が入ってきたことによって、「長谷川さんがあそこまで怖くするんだったら俺も!」とか。「一億衛門さんがあそこまでするんだったら、俺はもっと面白くしてやる」とか。お互い刺激しあっていくうちに、どんどん“濃く”なっていく。今年はシナリオ班もここまでやるぜ、みたいな熱の入れようなんです。
ーー吸血鬼「ラ・セーヌ」の話(57話)は、逆転の構成が面白かったです。恐怖を感じる主体が前半と後半で代わるんですよね。あれは大野木さんのシナリオでした。
前半は、ちゃんちゃんこが痛めつけられ、後半はラ・セーヌが恐怖のちゃんちゃんこにビビリまくる。ラ・セーヌは原作にも登場するキャラクターですが、原作は中年の紳士。同じ吸血鬼の「エリート」の話(56話)もあったので、ラ・セーヌは少年に変えさせてもらいました。
ーー吸血鬼といえば、アニエスが砂かけばばあの砂通信で再登場したときに「バックベアードが復活しそうで、そのために吸血鬼が人間の血を集めている」と言ってました。バックベアードが零や「大逆の四将」との関係で描かれることにもなるのでしょうか?
まあ、名前が出たからといって、あの大物妖怪をすぐにポーンと出すわけにもいかないでしょう。ただ、アニエスがわざわざ教えに来たわけですから、いずれ出てくることにはなると思います。
ーー最後に、この夏の見どころポイントを教えてください。
8月に入ると、長いTVシリーズ名物、夏になると怖い話が増える、的なことになってます。先程から名前の出ている長谷川圭一さん脚本回は、チェックですね。とくに8月末には原作でも有名な、あの怖~い話をやりますので、ぜひ楽しみにしていてください。
取材・文/宮村妙子(アイプランニング)
〈TVアニメ『ゲゲゲの鬼太郎』情報〉
フジテレビほかにて毎週日曜午前9時~9時 30 分放送(一部地域を除く)
■スタッフ
原作:水木しげる
シリーズディレクター:小川孝治
シリーズ構成:大野木寛
キャラクターデザイン・総作画監督:清水空翔
音楽:高梨康治、刃-yaiba-、
制作:フジテレビ・読売広告社・東映アニメーション
■メイン出演者
ゲゲゲの鬼太郎/沢城みゆき
目玉おやじ/野沢雅子
ねずみ男/古川登志夫
ねこ娘/庄司宇芽香
犬山まな/藤井ゆきよ
砂かけばばあ/田中真弓
子泣きじじい&ぬりかべ/島田敏
一反もめん/山口勝平
TVアニメ『ゲゲゲの鬼太郎』公式サイト
http://anime-kitaro.com/
TVアニメ『ゲゲゲの鬼太郎』公式 Twitter
https://twitter.com/kitaroanime50th
©水木プロ・フジテレビ・東映アニメーション