植田千尋と林原めぐみが語るTVアニメ『からくりサーカス』最終回「泥くさい“昭和感”が詰まった戦いの結末を見届けてほしい」【インタビュー】 | 超!アニメディア

植田千尋と林原めぐみが語るTVアニメ『からくりサーカス』最終回「泥くさい“昭和感”が詰まった戦いの結末を見届けてほしい」【インタビュー】

フェイスレスとの最終決戦に突入し、いよいよ物語がクライマックスを迎える『からくりサーカス』。3クールにわたる濃い物語で主役の才賀勝役を演じた植田千尋と、彼をそばで支え続けたしろがねを演じた林原めぐみの対談が、ここに実現 …

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 フェイスレスとの最終決戦に突入し、いよいよ物語がクライマックスを迎える『からくりサーカス』。3クールにわたる濃い物語で主役の才賀勝役を演じた植田千尋と、彼をそばで支え続けたしろがねを演じた林原めぐみの対談が、ここに実現。新人にして主役という大役に臨んだ植田と、作中で幾人もの役柄を演じ分けた林原、ふたりの視点から本作にかける思いについて語ってもらったインタビューが「アニメディア7月号」に掲載中。超!アニメディアでは、本誌に掲載しきれなかった部分を含めたロング版をご紹介する。


――『からくりサーカス』は植田さんにとって、初めてのアニメ主演作となりました。1話のアフレコに臨んだときの印象はいかがだったでしょうか?

植田 声のお仕事はゲーム『白猫プロジェクト』や、バラエティー番組のボイスオーバーくらいしか携わっておらず、アニメのアフレコは『からくりサーカス』が初めてだったんです。ほかの役者の方にお会いすること自体初めてでしたし、周りは相当なキャリアを積んだ大先輩ばかり。そんななかで、一番の若輩者である私が、大人気マンガの主人公という大役を演じなければならない。ものすごいプレッシャーで、その場から逃げ出したいくらい緊張してしまって。「誰か助けて!」と、物語当初の勝と同じ気持ちでスタジオに入ったんです。そこで初めてお会いした林原さんにご挨拶したところ、「あなたがお坊ちゃま! お守りしますね」と、しろがねらしいセリフでお声がけしてくださいました。「ああ、林原さんがいてくださるなら大丈夫だ」と、とても心強く感じました。

林原 初めての現場で、ベテランに囲まれながら主役を演じるんだから、緊張するなっていうほうが無理な話ですよね。だから、少しでもリラックスして収録に臨めるように、しろがねっぽく声をかけたんです。私はふだんから、そのときに演じる役柄に合わせてスタジオで座る位置を変えているんです。本作と同じく、藤田和日郎先生が原作を手掛けているTVアニメ『うしおととら』で、私は敵の首魁である白面の者を演じたんですが、その時は全員の様子が見えるようにスタジオの一番うしろに座っていました。それで今回は、勝お坊ちゃまを収録時も支えて差し上げようと(笑)、千尋ちゃんの隣の席に座ることにしているんですよ。

植田 本当に、しろがねには役柄だけでなく、私自身もすごく助けられていると思います。それに、現場では「見て学ぶ」ということが多かったと思います。一応、基礎的な部分は養成所で学んではきたんですけど、実践ではそれ以上のものが、のしかかってきます。生での掛け合いでは、ちゃんと相手のお芝居を受け取らないと、自分が伝えたいことも伝わらない。そういったことは、本番に臨んで初めて理解できたことでした。

林原 私が新人だったころも、ベテランのなかに新人が入っていって、先輩方がやっていることを見て学んでいました。そこは、養成所なんて比べ物にならないくらい多くのことを学べる場でした。『からくりサーカス』の現場も、主役の新人をまわりのベテラン勢が支えるという、千尋ちゃんにとっては理想的な環境だったと思いますよ。



――林原さんから見て、植田さんの演技はいかがだったでしょうか?

林原 とにかく「色」に染まっておらず、まっすぐにキャラクターの感情を表現しようとするお芝居には好感が持てました。1話の収録は、千尋ちゃん自身の緊張とおびえから生まれるお芝居が、まだ小心者だった勝と違和感なくリンクしていましたね。たしかに千尋ちゃんは未熟で、セリフがうまく出てこないこともあるけど、勝の心情の解釈が難しい場面だったり、気持ちは勝と同化しているのに、その気持ちをどうしても声で表現することができなかったりするだけ。きちんとキャラクターの気持ちに寄り添い、「お芝居」をしようと必死に頑張っている。今どき、貴重な人材だと思いますよ。

植田 うわー、ほんとですか! ありがとうございます!! 林原さんにおいしいものをご馳走しなきゃ!

林原 ほんとほんと(笑)。若手の方のなかには「気持ちを入れたつもりで、一生懸命読んでいる方」が見受けられます。「ありがとう」というセリフはしっかり発音できるけど、誰に対するどんな気持ちの「ありがとう」なのかまでは心が高まっていない。距離感もとれない。ご本人はとても努力して勉強されているのは確かなんだけど。なにかと急ぐ現場でお仕事をしなければならない環境のせいで、悪いクセがついてしまったのかな。

――悪いクセがついてしまう環境とは?

林原 最近、流行りのゲームアプリなどで声の収録をする場合、台本に「ありがとう(大)(中)(小)」みたいなことが書かれていることがありまして。要はさまざまなパターンの「ありがとう」を録っておいて、制作サイドがそれを状況に合わせて使うんです。つまり、「お芝居」よりも「素材としての音源」を必要とされるんですね。そういう現場でたくさんお仕事をこなしていると、上手に台本は読めるようにはなるけど、「お芝居」ができなくなってしまう。本来「ありがとう」にパターンなんてないから。「お芝居」というものは、セリフを読むのではなく、キャラクターの心に寄り添い、掛け合う相手とのセリフのやりとりによって生まれるからね。その点、千尋ちゃんは声優としての経験はあまりないけど、ヘンなクセがついていないのがよかったんだと思う。逆にキャラクターに入りすぎて、ボロボロに泣きすぎちゃうこともあるよね。

植田 私の場合、泣いている演技ではなく、本当にボロボロ泣いちゃってますからね。あとは、勝の強い気持ちや勢いに自分の気持ちが負けてしまいそうになることもありました。一時期は、どう演じればいいのかわからず、NGを出し続けてしまって……。すごくしんどかったんですけど、放送を楽しみにしてくれているファンのため、そして周りで支えてくださっている先輩方のためにも、ここで負けちゃいけないと思って、ふんばり通したんです。

――その姿勢、まさに勝そのものですね。植田さんはラジオ「からくりサーカスRADIO 仲町サーカス団員募集中!」にも出演されています。初めてのラジオパーソナリティーというお仕事の感触はいかがでしょうか?

植田 いやー、いまだに慣れないですね。私は自分の思いを自分の言葉で表現するのがすごく苦手なんです。ゲストの方がいらっしゃるときはいいんですけど、独り語りしなければいけないときは、もうグダグダで……。ほかのラジオを参考に聴いているんですが、見よう見まねでやってみてもなかなかうまくいかず、反省の繰り返しです。

林原 でも、幸せなことだよ。日ごろは挨拶を交わすだけの共演者とも、ゲストとしてお招きできれば交流できるっていうのは、とても貴重なご褒美だと思う。


――現在(取材時)、15回まで配信されていますが、何か見えてきたものはありますか?

植田 回を重ねるごとに、なんとなく流れがわかってきました。最初はゲストの方のお話を聞いて「ふんふん、そうですね」って相づちを打つだけで精一杯でしたが、最近は「ここではこの話題を振ればお話が引き出せそう」という流れが見えてきて、ようやく「会話」になってきましたね。そこは少しは成長しているのかなって実感しています。

――ラジオパーソナリティーの大先輩として、林原さんから何かアドバイスはあるでしょうか?

林原 ひとつ言えるとしたら、『からくりサーカス』のラジオなわけだから、無理して面白い話をしようとするのではなく、『からくりサーカス』のことをお話すればいいと思う。ゲストをお招きしたときは、リスナー代表みたいな気持ちで臨んで、「リスナーはこの人にどんなことを聞きたいのか」を考えながら話す。「自由にやる」というよりは、「少し楽な気持ちでやる」感じでいいんじゃないかな。

植田 なるほど……。ありがとうございます。とてもためになりました!

――それでは、アニメの方にお話を戻しまして。ご自身が演じているキャラクターの印象や、演じる際に心がけたことについて教えてください。

植田 勝は物語序盤では、小心者で泣き虫な男の子でした。それが、鳴海との出会いと別れを経て、強く生きること、そしてしろがねを守ることを意識しながら、ひとりの「男」として成長を始めたんです。その後、小学5年生の男の子にとっては過酷すぎる道のりを歩みながら、みんなに守られる存在から、みんなを守る存在へと変わりました。強くなったというよりも、強くならなければならなかったんです。これまで厳しい戦いや、つらい別れをたくさん乗り越えてきました。普通の人間には耐えられない過酷な運命でしたが、それでも彼が立っていられるのは、周りの人たちが支えてくれているから。身体は少年ですが、出会ってきた人たちの思いを背負った「重さ」が芝居から伝わるように心がけました。

林原 「勝は一日にして成らず」というか。さまざまな出会いを経て現在の勝へと成長していったわけですが、一番のターニングポイントは鳴海との出会いと別れなんですよね。勝は最初は臆病で泣き虫だったけど、それでも根幹にあるピュアさや正義感を手放すようなことはしなかった。そんな勝だからこそ、しろがねや鳴海は命を懸けて守ろうとするんでしょうね。勝の根幹にある強さは、守るだけ、守られるだけの一方通行じゃないんです。しろがねにしても、お坊ちゃまを全力でお守りする一方で、時として守られる方に回ることも多々ありました。勝と仲間たちは、お互いに支え合う絆で結ばれているんです。

植田 本当に、少年マンガの主人公として最高のキャラクターだと思います。

――それでは、林原さんがしろがねを演じることになった際、どんな思いを抱かれたでしょうか?

林原 最初、藤田先生からの直々のオファーだとお聞きしまして。しろがねとはどんなキャラクターなのか拝見したところ、なんとセーラー服姿の女の子でした。今さら私なんかがセーラー服のヒロインを演じていいのだろうか、若手の人気のある方のほうがふさわしいのでは、などと思ったんですが、とりあえずコミックス全巻を読んで内容を把握しようと考えたんです。その結果、「なるほど。これは私の声優としての全キャリアをもって挑むのにふさわしい役だ」と思い直しました。しろがね自身、5年に1歳しか歳を取らないので、セーラー服を着てはいますが、実際は90歳ですからね。サーカスや戦闘、人生に関するさまざまな経験値、そして胸に秘めた揺らぎなき強さは、歳相応の深さを備えています。その一方で心のどこかの時が止まっているのか、ほとんど経験してこなかった色恋沙汰などに関しては、極端な少女性を示したりもする。単なるクールビューティーなキャラクターではなく、ひと筋縄ではいかない奥深いキャラクターなんです。

――しかも林原さんは、しろがねだけでなく、彼女の母親であるアンジェリーナや、すべての運命の発端となったフランシーヌなど、運命に連なる女性たちすべてを演じ分けていますから、これは大変に難しい役どころだと思います。演じてみていかがでしたでしょうか。

林原 アンジェリーナがエレオノール(しろがね)を産んだシーンで、実際に娘を産んだ経験がとても支えになりました。それは子を産む痛みを知っている、という話ではありません。私が子を産んだのは、私の母が私を産んでくれたから。そして、私の母にも母がいて、その母にも母がいて……と、ずっと昔からの「命の連鎖」のなかに自分がいることを実感したんです。この作品も同じく、しろがねの記憶をたどっていくと、最初の記憶の根源であるフランシーヌまでつながっていきますから、「命の連鎖」を身をもって知り、そのうえでしろがねたちを演じられたのは大きなアドバンテージになったと思います。

植田 フランシーヌから始まって、フランシーヌ人形、偽フランシーヌ人形、アンジェリーナ、そしてエレオノール。彼女たちの人生や背負ってきたもの、そして「命の連鎖」まで踏まえてそれぞれを演じ分ける……。こんな役どころを演じ切ることができるのは、林原さん以外にはいないのではないのでしょうか。

林原 同時期にすべての役柄が登場したときは、さすがに頭痛がしたけどね(笑)。

植田 「これはアンジェリーナで、これはフランシーヌ……だっけ? あれ?」って混乱されていましたよね。それでも、それぞれをちゃんと違うキャラクターとして完璧に演じていらっしゃって、さすがだと思いました。

林原 それこそ、長くキャリアを積んできたおかげですよ。そのなかで得た持論が、「キャラクターを演じ分けるのに大切なのは、声色を変えることではなく、魂を変えること」ということです。もし私がもっと若かったら、キャラクターの区別をつけるために、声に高低差をつけたりして「小手先で違いを作ること」に気を取られていたかもしれません。でも、そうじゃない。声色の違いなんでどうでもいいんです。大切なのは、それぞれのキャラクターが見ている世界や心が違うことに集中すれば、お芝居はおのずと変わってくるものなんです。そうした揺らがぬ持論があったからこそ、しろがねをはじめとするキャラクターを演じることに挑戦できたんです。

植田 「魂を変える」ですか……。これは声優としてものすごく大切なことを教わった気がします。実際、収録現場で役柄が変わるたびに、林原さんが別人のようになる光景はものすごかったですから。

林原 ちょっとしたかくし芸みたいだったでしょ(笑)。

――では、これまで放送されたなかで、とくに印象に残っているシーンは?

植田 一番印象深いのは、28話で描かれた勝と少女の姿をした自動人形・コロンビーヌのお話ですね。勝はコロンビーヌのことを、ゾナハ病をばらまいた敵だと思っているのに、コロンビーヌは人間の恋愛に興味津々で「しろがねのことが好きなんでしょ?」とか言って絡んでくるんです。血も涙もない人類の敵だと思っていた自動人形が、意外にも人間味あふれるやつだったので、勝は面食らってしまって。そこで、勝は自動人形に対する認識が大きく変わったと思います。そのあと、コロンビーヌは敵の攻撃から勝をかばって破壊されるんですが、勝に抱きしめられながら「人間って、こんなに温かいんだね」と言いながら最期を迎えたシーンで、コロンビーヌ役の悠木碧さんと一緒にボロボロに泣いちゃって。そしてアフレコが終わったあと、悠木さんが「すごくいいお芝居をありがとうございました」って言ってくださったのを聞いて、またボロ泣きです。とにかく泣けて泣けてしょうがなかったのと、自動人形と心を交わすことができたのもあって、強く印象に残っています。

林原 私は『からくりサーカス』をアニメ化したことの意義を考えると、1話で懸糸傀儡(マリオネット)のあるるかんが登場したシーンを挙げたいですね。しろがねが糸を繰ってあるるかんを動かす様子を見て、「なるほど。こういうふうに操ってたのか」と改めて思いまして。懸糸傀儡がどのように駆動するのかが描かれただけでも、『からくりサーカス』をアニメ化する意義はあったなと。あとは、子守唄をそれぞれのキャラクターが歌うんですけど、これもマンガを読んだだけでは、どんなメロディーなのかはわかりません。かつてのフランシーヌが歌ったり、アンジェリーナやフランシーヌ人形が生まれたばかりのエレオノールに歌ってあげたり。それぞれ歌う時の気持ちは違うけど、ずっと歌い継がれてきたものを作中で描けたことも、大きな意義があることだったのではないでしょうか。

――それでは最後に、読者に向けてメッセージをお願いします。

植田 とても重たい作品ではありますが、きっと希望をもらえる作品だと思うんです。つらいことがあったとしても、『からくりサーカス』を観たら、勇気をもらえるはずです。最終話が目の前に迫っていますが、勝とフェイスレスがどんな戦いを繰り広げ、どんなラストを迎えるのか。最後まで見届けてください。

林原 本作には、今では絶滅危惧種になってしまったド根性や熱血といった、泥くさい“昭和感”が詰まっています。元号が「令和」に変わった現在、昔に比べて人と人とのつながり方も大きく変わりしました。スマートフォンを通じて人と簡単につながれるようになったし、面倒になったら簡単に切って。何もかもがお手軽になったけど、みんな絶対にどこかでさびしさ、物たりなさを感じているはずです。そんな人たちにこそ、「本当はこういうのほしいんでしょ?」って、『からくりサーカス』を観せてあげたい。暑苦しくて泥くさく感じるかもしれないけど、さびしくなったら『からくりサーカス』を感じとってみてほしいです。


〈TVアニメ『からくりサーカス』放送情報〉
TOKYO MXにて毎週木曜22:30から放送中。
BS11にて毎週木曜24:00から放送中。
アニメシアターX(AT-X)にて毎週金曜 20:00から放送中
北海道テレビにて毎週月曜25:25から放送中。

配信サービス
Amazon Prime Videoにて日本・海外独占配信。


原作: 藤⽥ 和⽇郎 (⼩学館 少年サンデーコミックス刊)
監督:⻄村 聡
シリーズ構成:井上 敏樹 / 藤⽥ 和⽇郎
キャラクターデザイン/ 総作画監督:吉松 孝博
⾳楽:林 ゆうき
アニメーション制作:スタジオヴォルン
製作:ツインエンジン


才賀 勝:植⽥ 千尋
加藤 鳴海:⼩⼭ ⼒也
才賀 しろがね:林原 めぐみ
阿紫花 英良:櫻井 孝宏
ギイ・クリストフ・レッシュ:佐々⽊ 望

公式サイト
https://karakuri-anime.com/

公式 Twitter
@karakuri_anime

©藤⽥和⽇郎・⼩学館/ツインエンジン

《超!アニメディア編集部》
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