学研メガミマガジンにおいて、アニメやゲームの主題歌、テーマソングなどを歌うアーティストに楽曲について語ってもらうインタビュー企画「Megami’sVoice」。2019年4月号には、『魔法少女特殊戦あすか』のOP「KODO」を歌うnonocが登場。「超!アニメディア」では、本誌では紹介しきれなかった部分も含めたロングインタビューをお届けする。
――nonocさんは、OVA『Re:ゼロから始める異世界生活 Memory Snow』(以下『Re:ゼロ』)のイメージソング&挿入歌がデビューになりますね。
はい。もともと歌が好きで、スマートフォンのアプリを使って、インターネットに歌をアップしていたんです。それをたまたま今の事務所の方に見つけていただき、お話がつながって『Re:ゼロ』の歌を担当させていただくことになりました。
――最初に、アニメの歌を歌えると聞いたときの感想は?
驚きましたし、私は本当に運がいいんだなと思いました。それから、いまの時代はどこで誰が見てくださっているのかわからないなと。だからこそ、何か行動を起こせば、大きなきっかけになるのかもしれないと感じました。
――今回、『魔法少女特殊戦あすか』のOPでシングルをリリースすることになりました。
作品の顔になる部分をいきなり任せていただけるとは……と、とにかくビックリしました。私もアニメが好きで、いろんな作品を見てきたので、自分の歌が作品の頭に流れるのかと思うと、すごくうれしくもありました。
――OP「KODO」を初めて聞いたときの感想は?
作詞の川田まみさんと作曲の中沢伴行さんがすごく作品を読み込んでいて、世界観がしっかりとできあがった状態だったんです。とにかく中沢さんの曲がすごくかっこよく、しかも仮歌を川田さんが歌っていらして。もうその時点で完成しているような気がしていたくらいです。
――川田さん自身も歌手活動をしていましたから、かなり完成度の高い仮歌だったんでしょうね。
レコーディング前に自分でも練習をしていたのですが、川田さんの歌い方にかなり引っ張られました。完成したものを聞いても、ちょっと影響を受けているなと自分でも感じるところがあって、いいエッセンスを吸収させていただけたのではと思っています。
――実際、自分で歌うにあたっては、どんなアプローチをしましたか?
まず歌詞を読み込みました。私と同世代の女の子が戦場で戦いつつ、日常も描かれる作品ですから、きっと女の子たちはつねにその差に葛藤しているんじゃないかと思ったんです。だから、Aメロ、Bメロでは迷いや苦しみ、つらさを出し、サビではそれでもゆるがない思いをストレートに伝えたほうがいいのかなと思い、そんな気持ちでレコーディングに臨みました。
――レコーディングでは、どんな指示がありましたか?
中沢さんがレコーディングに立ち会ってくださったのですが、「熱く」というのと、英語詞の部分を「噛みしめながら自分に問いかけるように」という指示をいただいたのが印象的でした。川田さんはスタジオではご一緒できなかったのですが、作詞のポイントメモをいただいて。主人公であるあすかの心情や歌い方についての希望を教えていただきました。
――レコーディングで大変だったことはありますか?
サビの最後のキーがかなり高いんですね。中沢さんから「心の叫びだから、熱く叫んで」という指示もいただいたのですが、そこが大変で。でも、ちゃんと歌えたらめちゃくちゃカッコよくなるのはわかっていたので、必死でがんばりました。あすかの正義感や心の揺れもきちんと表現された、バランスのいい1曲になったと思っています。
――実際にアニメのオンエアを見た感想は?
やっぱりドキドキしました。でも、映像もすごくかっこよく、何より聞いてくださった方が好意的に受け止めてくださっていて。私をご存知ない方が多いと思うんですが、「歌がいい」と言っていただけてうれしかったです。やっぱり川田さんと中沢さんといえば、アニメファンのみなさんはご存知の方も多いので、そのお力がとても強かったんだなと思います。
――nonocさんの歌声も、とても素敵でしたよ。
ありがとうございます。でも私、声にコンプレックスがあったんです。ちょっと高めの声質なこともあって、雑踏だと紛れてしまうんですね。だから芯のない声なんだなと思っていて。それをみなさんから褒めていただけたのが、本当にうれしくて。練習をたくさんして、力強い歌も届けられるようになってよかったなと思っています。
――自分のお気に入りポイントは?
疾走感のあるサビは、生きることについて考えさせられる歌詞だなとも思いました。それから、「鳴り響くの」というワードが2回出てくるのですが、テレビサイズでは聞けないラスト部分の「響くの」の「の」が好きで(笑)。テレビサイズとどう変えて歌っているのかをチェックしてほしいです。
――「KODO」ではミュージックビオで(MV)も撮影されています。
今回、自分が見てきたMVの監督をたくさん担当していた篠田利隆さんが監督ということで、ドキドキもありましたが、すごく楽しく撮影ができました。同じフレーズを、いくつもパターンを変えて撮影したので、場面の切り替えや背景など、細かい部分にも注目していただきたいです。
――カップリングの「Lucid Dream」の歌詞は、fumio yasudaさんとの共作です。
ベースは私が書かせていただいているのですが、作詞経験も多いわけではないので、yasudaさんに相談させていただきながら作りました。
じつは、最初のコンセプトを決めるのに、まず時間がかかって。テーマをどうしようかと頭を悩ませた結果、曲から想像してめまぐるしさや中二病的な感じをイメージし、ゲームやアニメの世界のような音楽を作れたらと思いました。それから、作詞をしていたとき、ちょうど『STEINS;GATE』にハマっていたんですね。その影響もあり、夢だとわかっているのにさめない、運命が変えられないなかでもがいている人の歌にしようと考え、「明晰夢」という意味のある「Lucid Dream」をタイトルにしたんです。歌詞には、今の自分の悩みを入れこんだりして、試行錯誤した結果、自分でもかっこいい歌詞が書けたと思っています。でも、まだまだ作詞は勉強中です。
――「Lucid Dream」のレコーディングはどうでしたか?
この曲は、ほぼセルフディレクションで、歌っては聞き、聞いては歌い……という感じで進めていきました。とにかくワード数が多いので、イメージがごちゃごちゃしすぎないように、歌うときも言葉が流れすぎてしまわないように、はっきり歌うことを心がけました。動けない自分に対して、もうひとりの自分が命令をするようなワードをサビで歌っているので、そこはあえて感情を露わにしてみたり、ダメ人間で終わるのではなく、とにかく立ち上がるべきだという思いを込めてみたりしたのがポイントです。
――ジャケットは、花があるのにダークな雰囲気ですよね。
撮影のときは、お花があまりにもかわいくて、自撮りをしまくるほどテンションが上がっていました(笑)。そのときは、「お花がかわいい」くらいだったのが、実際に完成したジャケットを見ると、すごくアーティスティックで素敵に仕上げていただけたなと。花に操られているというか、花に寄生されている人みたいなイメージですね。ツノは、現実にいそうでいないような雰囲気を出したくて、ずっと付けています。
――すでにリリース記念のイベントも開催されています。
直接お客さんと触れあう機会は初めてなので、かなりドキドキです。でも、来てくださった方を公開させたくないので、とにかくいいイベントにしたいですね。来てよかったと思っていただけるようにがんばりますので、ぜひ会いにきてください。
――今後の活動も楽しみです。
「KODO」も「Lucid Dream」も、これから大切に歌っていきたい歌です。いろいろな場所で、いろいろな方に聞いていただけたらと思っていますし、これからもっともっとたくさんの作品を届けたいので、ぜひ応援よろしくお願いします。
(プロフィール)
ののっく/7月12日生まれ。北海道出身。オフィスキュー所属。2018年にOVA『Re:ゼロから始める異世界生活 Memory Snow』のイメージソング&EDでメジャーデビュー。個人名義でのCDリリースは「KODO」が初となる。
『KODO』
KADOKAWA 発売中 1296円(税込)
取材・文/野下奈生