劇場アニメ『薄墨桜-GARO-』のキャラクターデザイン・桂正和「敵であってもあえて黒色を使わないようにしたのがポイント」【インタビュー】 | 超!アニメディア

劇場アニメ『薄墨桜-GARO-』のキャラクターデザイン・桂正和「敵であってもあえて黒色を使わないようにしたのがポイント」【インタビュー】

これまでTVアニメ、実写ドラマと、さまざまなメディアで展開されてきた『GARO』シリーズ。その最新作となる劇場アニメ『薄墨桜-GARO-』が、10月6日(土)より全国劇場で公開される。今回は、TVアニメ『牙狼-紅蓮ノ月 …

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 これまでTVアニメ、実写ドラマと、さまざまなメディアで展開されてきた『GARO』シリーズ。その最新作となる劇場アニメ『薄墨桜-GARO-』が、10月6日(土)より全国劇場で公開される。今回は、TVアニメ『牙狼-紅蓮ノ月-』に続き、キャラクターデザインを手がけた桂正和に話を聞いた。

桂正和

平安時代の魑魅魍魎や妖怪がいそうな空気感がいい

――今回の映画は、TVアニメ『牙狼-紅蓮ノ月-』の続編となっていますが、『紅蓮ノ月』にメインキャラクターデザイナーとして参加することになった経緯を教えてください。
 僕は、実写の『GARO』が好きで、ずっと応援していたんです。監督の雨宮慶太さんが専門学校時代の先輩ということもあってか、アニメ『牙狼<GARO>-炎の刻印-』でなぜか声優として呼ばれて(笑)。そのときに、第2弾を考えているという話を雨宮さんから聞いたんです。その段階で、平安時代が舞台だとか、設定も少しうかがって、それがすごく面白そうだったんですよね。それで、「ぜひ、オレにやらせてください」ってお願いしたのが参加の経緯ですね。

――TVに登場したキャラクターは、TVシリーズのデザインを使われているんですか
 そうです。劇場版は、新キャラクターだけ描きました。


――新キャラクターをデザインする上で意識されたことは?
 僕の仕事ってスタッフや脚本が決まり切る前にやることがほとんどなんですよ。だから、ふわっとした設定しか決まっていない状態でデザインをするんだけど、その段階では明羅は名前も決まっていなくて、陰陽師だということだけが決まっていたのかな。時丸は盗賊みたいなキャラクターということくらいでしたね。その状態で、まず明羅は星明と真逆にしていこうとイメージしました。そこから脚本ができてきて、だいたいのキャラクターの土台ができて、それを踏まえて敵方であっても、透明感のある白っぽい綺麗な人にしようと思ったんです。静かな目をしていながらも、復讐心があるようなこと、衣装は普通の平安時代の陰陽師服っぽくしようかな、烏帽子は被らせないようにしようって、いろいろ考えました。洋服の模様は、普通なだけじゃつまらないなと思って付け足しました。そこから先の明羅は、ちょっとタレ目でやさしそうにしてみたり、怪しげな目にしたほうがいいかなってツリ目にしてみたり、監督たちと相談しながら作っていきました。
 時丸の衣装は、盗賊なので汚い格好をしているんだろうなと。僕は「平安牙狼」は、全体的に歌舞伎っぽさを見せたいと思っていたので、時丸の髪も最初から長髪で白っぽくしました。アニメではそこまででもないですが、僕の絵だと、雷吼も眉毛や口の形に、浮世絵とか歌舞伎を意識した部分があるんです。そうすることによって和っぽさが出せるかなと。

――時丸の顔の傷に関しては、どういった形で決まったのでしょうか?
 盗賊をしながら生きているんだから、何もないことはないだろうということと、キャラクターの立ち位置的にも傷だらけだろうと思って傷を付けました(笑)。ギリギリのところで生きている感じを出せたらと思いましたね。そんなところも含めて、「平安牙狼」の仕事は、イマジネーションが浮かんできて楽しいですね。

――舞台が現代ではないというのも、イマジネーションを刺激するのでしょうか?
 そうですね。平安時代は魑魅魍魎、妖怪とかがいてもおかしくない匂いがする時代ですし、僕は京都が好きなので、この仕事はやっていて楽しいですね。




自分のマンガでは、キャラクターにこだわらない!?

――ご自身で描かれるマンガと、キャラクターデザインとでは、取り組み方は違いますか?
 明らかに違います。自分で物語まで考えるときは、物語を考えることのほうを重要視しているので、デザインにはこだわりません。最初にスケッチブックにデザインを描いたりしないし、描きやすいように描きますから、描くたびに変わるんです(笑)。デザインの仕事のときは、そっちに集中するのでいろいろなことを考えながらデザインしますね。ですから、今回明羅に烏帽子を被せなかったのも、時丸の顔に傷を付けたのも、自分の作品ではないからこそのこだわりなんです。
 鳥山明さんなんかは、スケッチをいっぱい描いてマイワールドのなかでデザインを詰めていくタイプだと思うんですけど、僕は自分の作品のほうが適当な部分も多いんですよ。『ウイングマン』は学生時代から考えていたので、デザインの密度はありましたが、その後の作品はノリで描いた部分も大きかったし、『ZETMAN』はライブ感を重視していました。

 じつは『TIGER & BUNNY』の仕事を受けるまでは、デザインをやめていたんです。僕よりももっとできる人がいるし、僕が頑張っても仕方がないかなと思って。でも、その時期に『TIGER & BUNNY』の仕事が来たので、どうしよう、どこから取りかかったらいいかと思ったのは今でも覚えていますね。でも、『TIGER & BUNNY』をやったから、何がどうしてこういう形になるかっていうデザインを考えるという思考が自分のなかで生まれたので、あの仕事は大きかったですね。

――先ほども、キャラクターデザインをする際には脚本が決まる前だとおっしゃっていましたが、その場合は自分のなかでキャラクターのエピソードを作るのでしょうか?
 妄想します(笑)。こいつはこういう生き方をしているというドラマが、自分のなかでできるんです。だから、こういう顔だろうとか、こういうスタイルだろうとか、デザインの形が出てくるんです。もちろん、これは僕の妄想ですから、デザインが作品のなかに入って浮いていなければ、ストーリーのなかに盛り込まれていなくても全然問題はないですね。

――『紅蓮ノ月』から『薄墨桜』までで、デザインに対するスタッフからのオーダーで印象に残っているものはありますか?
 スタッフの皆さんは、星明の顔にとてもこだわっていた印象があります。僕はちょっと幼い、かわいい子が安倍晴明であるほうがギャップが出て面白いなと思っていたんですけど、美形という形におさまったという感じでした。最初は抵抗して、かわいい目にしたんですけど、すでにスタッフのなかでイメージが強く固まっていたみたいで、今の形に落ち着きました。クライアントの言うことを聞くのもデザイナーの仕事ですからね(笑)。僕のイメージと違うとはいっても、最終的には納得がいかないものにはしないので、落ち着くところには落とします。

――キービジュアルのデザインについても教えてください。
 最初に明羅が目立って、そこに星明たちがシルエットで小さくいるというイメージがわいたんです。『GARO』シリーズのビジュアルって黒っぽいイメージなんですけど、桜が舞った白っぽいイメージが浮かび、淡い、明るい、どこか悲しげにしたいという気持ちもわいたので、それを盛り込みました。幽霊のように時丸がいるのは、時丸も入れてほしいっていう指示があったからですね(笑)。『GARO』の持つ硬質な、黒・金・ドーン! みたいなイメージとはちょっと違った、異質でやわらかい感じになりましたね。


 「平成牙狼」で、またTVシリーズを観てみたい

――映画を観てみて、印象的だったキャラクターはいますか?
 TVシリーズからのキャラクターも、劇場版の新キャラクターも、どちらもいい雰囲気を出しているなと思いました。ただ、時丸はもうちょっと活躍するのかなと思ったんだけど、思ったより活躍が短かったので、個人的にはもっと活躍してほしいと思いましたね(笑)。

――本作のお気に入りのポイントは?
 平安時代の感じがすごく出ていますし、竹林で雷吼たちと明羅が出会うところは、静かでとても印象深いシーンでしたね。普段の平安感がよく出ていて、すごく好きでした。

――『GARO』シリーズは、和のものは珍しい立ち位置になりますよね。
 でも僕は、雨宮さんは和もの好きの人だと思っているんですよ。OVA『未来忍者 慶雲機忍外伝』は雨宮さんと寺田克也さんのデザインの、和とSFのバランスが素晴らしく、すごく影響を受けたんです。それ以来、雨宮さんとはずっと仕事をしたいと思っていたくらい。平安も京都も、僕の大好きな要素だったので、すごく楽しかったし、平安ものは渡したくないですね(笑)。

――改めて、桂さんが感じられている『GARO』シリーズの魅力を教えてください。
 ちょっと複雑でわかりづらい設定のように見えていて、とても王道でわかりやすい勧善懲悪なんです。雨宮さんってマニアックな人かと思ったら、ストレートな話が作れるんだなと思って、1作目『牙狼〈GARO〉』からファンでした。だから関われて本当に「やったー!」という感じでした。1作目は、ダークヒーロー然とした冴島とヒロイン・カオルのコントラストもいいし、『魔戒ノ花』は魔導具のマユリの立ち位置がとても好きです。いろいろな話し合いのなかで決まっていくんでしょうけど、人間配置がいいんですよ。僕は因果とかはどうでもよくて(笑)、キャラクターたちがどう生きて、何を感じているのかを描けているところが『GARO』シリーズの魅力だと思っています。

――ご自身が関わられた『GARO』が劇場版になってみての感想は?
 雷吼、金時、星明のキャラクターが、より明確になり、世界観もしっかり確定したなと感じていますね。映画の映像はすごくきれいで、いいものができたと思いました。ただ、できればあの深みのあるテーマを、TVシリーズで観たい。映画って、どうしても時間に制限があるんですよ。せっかく深みのある物語なので、もう一度長い時間をかけて描けるメディアで作ってもらいたいと思いました。平安を舞台にした『GARO』をこのまま終わらせるのは、もったいないですよ。

――では最後に、公開を待つファンの皆さんにメッセージをお願いします。
 とても美しい日本を感じられる作品になっています。TVシリーズのSF感のある平安とは違い、リアルな平安時代にこういうことがあったのかもと思わせるような作品です。映像もとても美しく、キャラクターもそれぞれさらに深みを増しているので、そこも見どころです。

桂正和

取材・文/野下奈生(アイプランニング)

<PROFILE>
【かつら・まさかず】12月10日生まれ。福井県出身。マンガ家。主な作品は、『ウイングマン』『電影少女』『I’’S』など。TVアニメ『TIGER & BUNNY』『DOUBLE DECKER! ダグ&キリル』のキャラクターデザインも手がける。

〈映画『薄墨桜-GARO-』情報〉
10月6日(土)より全国劇場で公開
http://garo-usuzumizakura.com/

スタッフ:原作/雨宮慶太 監督/西村聡 脚本/小林靖子 メインキャラクターデザイン/桂正和 アニメーションキャラクターデザイン/横山愛、海老原雅夫 美術監督/橋本和幸 撮影監督/魚山真志 色彩設計/堀川佳典 CG監督/高橋将人 編集/神宮司由美 音楽/高田龍一、MONACA 音響監督/久保宗一郎 制作/スタジオM2、スタジオVOLN 製作/東北新社

キャスト:雷吼/中山麻聖 星明/朴璐美 金時/矢島晶子 明羅/田中敦子 時丸/東啓介 藤原道長/堀内賢雄 藤原保輔/浪川大輔 源頼信/野村勝人 稲荷/鵜殿麻由 天狐/中田譲治 梟師(たける)/関智一 ほか


『薄墨桜 -GARO-』公式サイト
garo-usuzumizakura.com

©2018「薄墨桜」雨宮慶太/東北新社

《超!アニメディア編集部》
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