シリーズとしての統一感を意識しつつ、聴く人の背中を押せるような一曲に
――『Free!』シリーズに携わるのは、『映画 ハイ☆スピード!』の主題歌「AchingHorns」以来、約3年ぶりですね。
Ta_2(以下T) お話をいただいたときは、素直にうれしかったです。長い間作品が続いても、継続して主題歌に携われることは多くないので、オファーをいただいて共に走らせていただいているなと改めて感じました。
YORKE.(以下Y) タイアップでCDを出すことに前向きになれたのは『Free!』シリーズのおかげでもあったので、今回のシングルも大きな作品になるだろうなというのは、話をいただいたときから感じていました。作品の主題歌としての連続性はもちろん、僕たちがどう成長してきたのかも意識しながら作りましたね。
――作中では主人公の遙たちが大学生になります。楽曲制作ではキャラクターの年齢が上がることは意識しましたか?
T 年齢というよりも、彼らの競技者としての心構えが変わったことのほうを意識したかな。水泳って体が成熟するのが18~19歳くらいで、そこから選手としての伸びしろを伸ばすべく、追い込みをかけるらしいんです。キャラクターたちがそうやって成長しているのであるならば、僕たちの伸びしろや成長も曲にオーバーラップさせていかなくてはならないなと思いました。アニメを支える曲であることはもちろんですが、自分たちの曲でもあることを大切に、一辺倒にならないように気をつけました。
Y 僕は、物語の中にいる人たちに向けてメッセージを送るような感覚で詞を書いているので、年齢があがった影響も多少はあると思います。今回は、Ta_2から「よりわかりやすい言葉を使いたい」という提案もありもしましたし、タイトルの「Heading to Over」には、略すと「H2O」で水になるというギミックも盛り込んで、4回目になる『Free!』シリーズとの関わりを楽しみながら詞を書くことができました。
――Ta_2さんは、なぜ「わかりやすい言葉で」と提案をしたのでしょうか?
T ちゃんと聴く人の背中を押してあげたいなと思ったんです。今回で4回、『Free!』シリーズに携わらせていただいた自分たちにできることは何かなと思ったときに、僕たちも大人になったので『Free!』を観てくれる人や、曲を聴いてくれる人の背中を押せるくらいになったんだなと思って。だから、パッと聴いただけでも届くような、わかりやすい言葉を選んでもらいました。もちろん、聴く人の背中を押すだけじゃなくて、自分たちはまだまだ前に向かって走っていくつもりですが。
――作曲面では、先ほどお話にあった「一辺倒にならないように」という以外で、どういった工夫をしましたか?
Y 僕は、Ta_2の歌を聴いて、「いつもどおりだな」っていう感想くらいしか持たないんですよ。歌詞を書いて、その後最終的に歌が入るまでの過程も見ているから、ずっと冷静で。オンエアされたり、リリースされたりしてCDを買ってくれた人がどう思うのか、その感想を今は聞きたいです。
――今回、ギターサウンドもすごく印象的でした。
T 今回は楽器の帯域を広くするのではなくて、ミッドよりにして、骨太さを出していきました。アニメの音楽ではあまりないのですが、自分たちのサウンドがミッドやミッドローに強いので、そこを押し出して、自分の声がどう抜けるのかは意識しましたね。
――ミュージックビデオ(MV)の撮影はいかがでしたか?
Y まぁたしかに、ペイントはその場で答えを作らなきゃいけないから、相変わらず大変だったね。でも、今回は曲の制作が早くて、体に曲が入った状態で撮影できたから、すんなり進んだほうじゃないかな。撮影の内容は、Ta_2と監督が話してくれるから、僕は現場で資料を見て、「出番がいっぱいあるなー」って思うくらい(笑)。
T 今回は、シチュエーションを多く使ったMVにはしたくないって監督と話したんですよ。シンプルだけど画が目に残るものにしたいと。OLDCODEXの持ち味って、絵描きがいることだから、YORKE.の手元を映したり、絵を書く様をちゃんと入れたりしてほしいとお願いしました。バンドの演奏シーンなどは少なくてもいいって言いましたね。
Y そのぶん、俺のシーンは多くなるよね(笑)。でも、今回は台本資料に終わる時間が書いてあったし、外での撮影だったので日が暮れたら撮れないというのがわかっていたから、逆にすごく集中できましたね。数年前はむやみやたらに頑張りすぎて、映像でカットされることもあったんだけど、今は切り取らせないぞみたいに無駄のない動きができるようになったかな。
――アニメ盤のジャケットでは、今回もキャラクターとコラボレーションしていますよね。
T ラッシュガードは、キャラクターたちが着るのもいいなって思ったし、何より普通にほしくなりました。
Y これまでも実際に物も作ってきたけど、今回のアイテムも盛り上がってくれたらうれしいですね。
T キャスト陣にはめちゃくちゃ好評だったよ。せっかく水に濡れても平気なアイテムなんだから、海の家で売ってほしいくらいだな。
――カップリングは、アニメ盤だけ異なる1曲が入るんですね。全3曲ともすべて作曲者が別だったのが、新しい試みなのかなと感じました。
T OP曲は作品のテーマをもって、ひとつの曲として完結しているし、アルバムだとテーマ性が重要になってくるので、遊び心の入ったものが入れづらいんです。でも、シングルのカップリングなら遊べるし、いろいろなカラーを出していきたくて、全部別の方にお願いしました。サウンド面や全体のまとまりについては打ち合わせをしましたが、それ以外は基本お任せで。3曲ともスッキリした、大人っぽいシングルになりましたね。
Y 全部曲のカラーが違うので、すごくカラフルなテイストの曲になりましたね。キャッチーな曲が多かったから、作詞はしやすかったです。アニメ盤に入る「Clean out」は、「深海」などのあまり使わない単語を歌詞に使ったのが自分でも印象的だったかな。
――アニメ盤だったので、あえて「水」にちなんだ単語を入れたのかと思いました。
Y 『Free!』に関しては、「Heading to Over」で出し切っているから、カップリングでも作品に近づけようとは意識しなかったんですよ。ただ、同じ時期に制作するから、似たような雰囲気になっちゃうのかな。
――8月から来年の1月にかけてのツアーも決まっています。
Y 全部で17公演、同じクオリティーで最後まで走り抜けることが目標です。海外公演も2か所あるので、日本の熱をどう伝えるのかも課題かな。今回は、ツアーファイナルが年明けの1月5日なので、いい感じで「あけましておめでとう!」ができたらいいですね。
――では、最後に読者にメッセージをお願いします。
Y アニメの制作に時間を費やしている人たちから、OLDCODEXでよかったと言ってもらえるような曲ができたと思っています。オーディエンスのみんなには、いいか悪いかでいいので感想を教えてほしいですね。そして、いいなと思ってくれたらライブにも遊びに来て、一緒に生の体験をしてください。ライブハウスで会いましょう。
【オルドコデックス】2009年結成。メンバーは、ボーカル・Ta_2とペインター・YORKE.。ラウドやダンス、パンクなどを取り入れたサウンドと、そのサウンドにインスパイアされて生み出されるペインティングで、人々の五感を刺激している。
〈CD情報〉
Heading to Over/OLDCODEX
7月25日発売
バンダイナムコアーツ
初回限定盤、通常盤、アニメ盤の全3形態でリリース。アートワークはすべてYORKE.が担当。初回限定盤と通常盤には、表題曲のほか「Bang」「another point」を、アニメ盤には表題曲と「Clean out」を収録。初回限定盤に同梱されるDVDには、表題曲のMVとメイキング映像を収録する。
初回限定盤:1,944円
通常盤:1,404円
アニメ盤:1,296円(各税込)
取材・文/野下奈生(アイプランニング)