少年達のピアノにかける青春を、繊細なタッチで描くTVアニメ『ピアノの森』。主人公・一ノ瀬海(カイ)の親友でライバルでもあるエリートピアニスト・雨宮修平を演じる花江夏樹に、作品への想いを語ってもらった。
−−台本や原作を読まれての感想をお聞かせください。
オーディションのときに原作を読ませていただいて、最初は修平の該当箇所だけ探して読んでいましたが、読んでいくうちにすごく面白くなってしまって。結局、最初から全部読んじゃったんですよね(笑)。音楽やピアノに対する情熱が伝わってきて、それぞれの演奏者たちがすごく個性的で。それぞれ考えていることは違うけれど、共感できることがあって。ピアノに命を懸けている人の想いが伝わってくる作品だなと思いました。
−−青年期の修平はどういうキャラクターですか？
スランプではないのですが、カイに対するコンプレックスなのか憧れなのかわからない感情や、カイを超えたいという想いが彼の中にあって、自分のピアノを好きになれていない状態から始まるんです。カイを超えたい気持ちが先行してしまい、自分を見失ったような感じで…。だけど、子どものころからあんなに練習していたのに、心に響くピアノでカイに超えられたと感じて。他人と自分を比べて自信をなくしてしまうというのは、誰にでもあると思うんですよ。だからイライラしている気持ちが理解できるし、自分と似ているところや共感できる部分が多くて、最初はあまり好きになれなかったんですよね(笑)。じつは、カイと修平のどちらもオーディションを受けたんですが、最初はカイを演じたいなと思っていたんです。でもカイを演じたときに、少し違和感があって。その後、修平のセリフを言ったら自分が修平とシンクロしているなと思ったんです。オーディションが終わると、反省することが多いんですけど、修平の時は〝降りてきているな“って思ったので、「あれ、修平…」って(笑)。今では修平のことが好きですし、結果的にやりたいお芝居ができるのも修平だと思います。
−−修平は幼いころからピアノの英才教育を受けていましたが、花江さんは何か幼いころ習っていたものはありますか？また、英才教育を受けたかったものはありますか？
小さいころはピアノを習っていました。小学校1年生か幼稚園のころなので、男の子からするとピアノは女の子が弾くものみたいな感じがあって。家であまり練習もしなかったし、1回泣きながら逃げ出したこともありました(笑)。あとは肺活量を上げるため水泳を習っていました。自分からやりたいと言ったわけじゃないんですけど、楽しかった記憶はあります。体操も習っていたし、小学生の頃はテニスをやってましたが、今に生かされてはないですね(笑)。今思うと、英語を習っておけばよかったなって、すごく感じていて。趣味で海外のゲームをプレイするので、海外のプレーヤーさんとオンラインで会話するときに、コミュニケーションが取れたらいいなぁと。
−−原作、アニメの両方を見た上で、「ピアノの森」の魅力とは？
中心にあるのはピアノや音楽ですが、音楽を介して登場人物たちの生き方や心の動き、人同士のつながりが描かれていくんです。修平はとくに嫉妬したりイライラしたり、みんなが抱える心の深い部分が描かれているので、そこは修平を演じる上で見ていただきたいところだと思いますね。あと、小学生時代のエピソードで、泣いていた誉子がコンクールの舞台で弾き切った後の高揚感にブルっときました。人って気持ち次第でこんなに変われるんだなという部分が丁寧に描かれていて、そういうところが「ピアノの森」の良いところだなと思います。
−−修平を演じるうえで気を付けていることは？
修平は、日本ではすごいスターで、有名ピアニストのお父さんがいるんですが、根本はすごく真面目で礼儀正しい子なんです。上品さも意識して出そうとしていますね。あと、「ピアノの森」は繊細な作品なので、お芝居も呼吸をするようにできたらと思っていて。どちらかというと実写に近いような感覚でアフレコもやりたいなと。その方が修平の魅力も出ると思うし、修平の揺れ動く感情が出せるんじゃないかなと思っています。例えば、他のアニメの感情の起伏を５段階に分けてやるとしたら、「ピアノの森」は10段階や20段階とか伝わるかわからない微妙な感覚でやらないと、と思っています。あと、僕はカイを倒すつもりで、超えたいと思って演じているので、（カイ役の）斉藤壮馬には負けないぞと(笑)。
−−カイ役の斉藤さんですが、花江さんから見て「カイっぽい」ところはありますか？
どちらかというと、壮馬くんは性格的には修平に近いと思っていたんですよね。なので、最初「カイ役は斉藤壮馬」って聞いたとき、意外だなと。でも、カイの自由奔放な感じというか、つかみどころのない感じっていうのが、お芝居に出ているなと思うので、なんかちょっと悔しいですよね(笑)。僕も最初はカイがやりたかったので(笑)。
−−本作をきっかけにピアノを始められたそうですね。
この作品もですが、「四月は君の嘘」や「ハルチカ」など、音楽に関する役が今までも多かったので、今回ついにチャレンジしてみました。まだ２、３回しかレッスンに行ってないんですけど、めちゃくちゃ難しいです(笑)。最初体験レッスンに行ったときに、ベートーヴェンの「喜びの歌」を弾くことになって。片手ずつ練習して、左手は２音くらいしか鳴らさないから「簡単じゃん」って思ったのに、両手合わせたらむちゃくちゃ難しくて…。これの何百倍大変なのを修平たちは演奏しているんだと思ったら、改めてすごいなと感じましたね。この領域にたどり着くには、どれだけの時間が必要なんだろうと。修平が毎日練習している凄さが分かりました。でもすごく楽しかったので、好きな曲を弾けるまで頑張ろうと思っています。もともと音楽は好きですが、クラシックには触れてこなかったので、これをきっかけに色々聴けたらとも思いました。あとは、ピアノのコンサートにも行ってみたいですね。
−−修平の登場シーンでおすすめのシーンや、グっと来たシーンは？
修平に関しては、心のざわざわが見て取れるような悩んでいるシーンばかりなので、見ていてつらくなることもあると思うんです。それをどう乗り越えていけるか、カイを超えて自分のピアノを弾けるのかに注目していただければ。あとはカイと再会するシーンがあるんですけど、けっこうグっとくるのでぜひ注目していただきたいです。終盤での修平の感情が揺れ動くシーンもあり、修平から何か感じていただけたら嬉しいです。優しく接してくれる友達を傷つけてしまうことも、実際にあると思うんです。そういうやりとりが、カイと修平には結構あるので、応援したくなりますね。
−−最後に、視聴者へメッセージをお願いします。
修平は人間らしくて共感できるキャラクターですし、応援してあげたい気持ちと好きになれない気持ちが混在しています(笑)。音楽は人の心を動かす力があると思うので、何かを感じていただけたら嬉しいですし、これからショパン・コンクールが丁寧に描かれていくと思いますので、原作を知っている方もアニメから観る方も楽しみにしていただければと思います。
(プロフィール)
花江夏樹【はなえ・なつき】６月26日生まれ。アクロス エンタテインメント所属。主な出演作は『東京喰種トーキョーグール:re』など。
＜TVアニメ『ピアノの森』情報＞
NHK総合テレビにて毎週（日）24時10分より放送中
※関西地方は同日24時50分からとなります
※放送日時は変更になる場合があります
見逃し配信はNetflix（ネットフリックス）にて独占配信中
◆スタッフ
原作：一色まこと（講談社『モーニング』所載）
監督：中谷 学
シリーズディレクター：鈴木龍太郎
シリーズ構成：伊丹あき・あべ美佳
キャラクターデザイン・総作画監督：木野下澄江
美術監督：栫ヒロツグ
音楽：富貴晴美
アニメーション制作：ガイナックススタジオ
製作：ピアノの森アニメパートナーズ
◆エンディングテーマ
悠木 碧 「帰る場所があるということ」
◆キャスト
一ノ瀬 海：斉藤壮馬
阿字野壮介:諏訪部順一
雨宮修平:花江夏樹
パン・ウェイ：中村悠一
レフ・シマノフスキ:KENN
丸山誉子:悠木 碧
ソフィ・オルメッソン:伊瀬茉莉也
カロル・アダムスキ:小西克幸
平田光生:豊永利行
一ノ瀬怜子:坂本真綾
雨宮洋一郎:田中秀幸
J=J・セロー:島田 敏
◆メインピアニスト
反田恭平（阿字野壮介）
髙木竜馬（雨宮修平）
牛牛 （パン・ウェイ）
シモン・ネーリング （レフ・シマノフスキ）
ジュリエット・ジュルノー （ソフィ・オルメッソン）
小学生時代（一ノ瀬 海、雨宮修平、丸山誉子）
上原心音
大山桃暖
佐原 冠
馬場彩乃
公式サイト
http://piano-anime.jp/
©一色まこと・講談社／ピアノの森アニメパートナーズ
