2017年1月21日、東京・新宿バルト9で、この日に公開された劇場版『黒執事 Book of the Atlantic』の初日舞台挨拶が開催され、小野大輔さん(セバスチャン・ミカエリス役)、坂本真綾さん(シエル・ファントムハイヴ役)、諏訪部順一さん(葬儀屋[アンダーテイカー])が登壇した。司会はニッポン放送アナウンサーの吉田尚記さん。
枢やな原作による漫画『黒執事』は、19世紀のイギリスを舞台に、すべてが完璧の「あくまで」執事なセバスチャンが、彼の主で名門貴族・ファントムハイヴ伯爵家当主・シエルとともに、「女王の番犬」としてさまざまな事件に関わっていく物語。今回の劇場版では、まことしやかにささやかれる「死者蘇生」の噂を調査するため、豪華客船『カンパニア号』へと乗りこみ、そこで待ち受ける「真実」と対峙するストーリーだ。
本作全体の魅力について、「ゴシックやロリータといったものを表現しつつ、アクションやコメディ要素もあり、今回の劇場版はホラー、OVAではサスペンスが描かれています。いろんなエンタメを集めたおもちゃ箱、玉手箱みたいな作品です」と小野さんが話すと、横から「宝石箱! 宝石箱!!」とささやくのは諏訪部さん。その言葉を受けた小野さんは「まるで宝石箱や! みたいな作品です」と、付け加えると会場からは笑いが。
坂本さんは「キャラクターがかっこいい、かわいいだけではなく、それぞれ信念を持っていて。目的達成のために何でもやる強さを持っているところがいいです」、諏訪部さんは「ビジュアルはもちろん、人間の業や情念みたいなものが描かれているところ。心のなかにあるエグみをあぶりだすストーリーもあるし、きれいなだけではなく、精神的な深みがあるストーリーも多いところが魅力です」と語った。
およそ10年、付きあってきたキャラクターについて聞かれた小野さんは、「セバスチャンは役者としての視野を広げさせてくれて、人としても成長させてくれたキャラクターです。30歳になったときにかかわり、座長として作品を背負って、一人で立たなければならないときがあるので思いつめることもありましたが、みんなで手を取りあって作品作りをするすばらしさを感じました」と話し、「彼は自分の感情を出さないし、セリフに熱量を乗せない。熱いものを持ちながら秘めるのがかっこいいキャラクターですね」とコメント。
坂本さんはシエルという少年を演じたことについて、「少年役はあまりやったことがなかったし、原作が人気作でプレッシャーもありました。しかも男性ばかりの現場だったので、男子校に紛れ込んだ感じで、周りと会話をする余裕がありませんでした」と苦労を語り、そんななか小野さんが現場の空気をやわらかくしてくれたことに感謝しながら、「小野さんが一声、発するだけで、現場に『黒執事』の世界が広がるようなカリスマ性(笑)がにじみ出ていました」と話した。
謎めいたキャラクター・葬儀屋を演じる諏訪部さんは「時々登場しては爪あとを残すキャラクターなので、効果的な一手をどう打っていけるかを考えながら演じました。最初のアフレコではどうやって演じるか悩みましたが、思うがままやったら、それでOKとなったので、役作りのうえで悩みはしませんでした。今回の劇場版では葬儀屋が活躍するのでうれしいです」。
また、劇場版をやると聞いたとき小野さんは「コミックスを読んでいて、『これを映像としてやりたい』と思っていたので、劇場版でこのエピソードをやると聞いたときは納得しました。ただ、熱量を乗せられないセバスチャンを演じるうれしさ半分、苦しさ半分で……。今回は熱量を乗せていいと言われたので、存分にやらせていただきました」と満足げに語ると、坂本さんは「第1期のときは苦悩しましたが、やればやるほど楽しさと、シエルへのいろいろなアプローチを試みる機会をいただいたので、またチャンスをいただける喜びがありました。ただ、正式なお話の前に、小野さんから雑談で聞いたので、最初は本当かな? と思いました(笑)」と小野さんによって「ネタバレ」したことを暴露した。
諏訪部さんは「このエピソードが収録された単行本が発売されるときに、CMをやらせてもらった記憶があるのですが、葬儀屋を意味深な感じでやったので、それをアニメーションでやれる機会がくるとは思わず、感無量です」と話してくれた。
最後に、「全身でこの作品を楽しんでいただけるとさいわいです」(諏訪部さん)、「劇場ならではの臨場感で、一緒に船に乗っているかのような体験をしていただけると思います。シエルはいつも以上に表情豊かで、アクシデントに立ち向かう姿が情熱的に描かれているので、ぜひ楽しんでください」(坂本さん)とメッセージが送られ、小野さんからは「『黒執事』の集大成とも言えるような劇場版になっていると思います。原作は連載10周年を迎えましたので、次の10周年に進んでいってほしいなと思います。極上のエンタテイメントが詰まっています。……みなさんを楽しませることができなくてどうします? ありがとうございました!」と、セバスチャンのセリフにちなんだメッセージで舞台挨拶をしめくくった。
劇場版『黒執事 Book of the Atlantic』は現在公開中。
劇場版『黒執事 Book of the Atlantic』公式サイト
http://www.kuroshitsuji-movie.com/