『斉木楠雄のΨ難 Ψ始動編』のアフレコ現場の様子を監督・桜井弘明と斉木楠雄役・神谷浩史に直撃インタビュー 「今改めて観返すと第1期第1χはすごくゆっくりなんですよ。」【インタビュー】 | 超!アニメディア

『斉木楠雄のΨ難 Ψ始動編』のアフレコ現場の様子を監督・桜井弘明と斉木楠雄役・神谷浩史に直撃インタビュー 「今改めて観返すと第1期第1χはすごくゆっくりなんですよ。」【インタビュー】

2016年から始まり、2018年に「完結編」が放送されたアニメ『斉木楠雄のΨ難』が、NetflixでΨ始動する。今作では主人公・楠雄に降りかかるΨ(災)難も、演じるキャスト陣の負担も、これまで以上にパワーアップしている …

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 2016年から始まり、2018年に「完結編」が放送されたアニメ『斉木楠雄のΨ難』が、NetflixでΨ始動する。今作では主人公・楠雄に降りかかるΨ(災)難も、演じるキャスト陣の負担も、これまで以上にパワーアップしているようだ。そんな本作の監督である桜井弘明と楠雄を演じる神谷浩史に「Ψ始動編」のアフレコの様子を直撃したインタビューが、現在発売中のアニメディア2020年1月号に掲Ψ(載)中。「超!アニメディア」では、本誌に掲載しきれなかった部分を含めたインタビューの長文をご紹介しよう。


■膨大なセリフは監督から役者陣への敬意だった!?

――『斉木楠雄のΨ難』といえば、膨大なセリフ量を早口で尺のなかにピッタリと収めるキャスト陣の技が光る作品として印象的です。今作のアフレコにおける桜井監督からのディレクションで、とくに神谷さんのなかで印象に残っていることは?

桜井 ディレクションなんてほとんどしていないよね。

神谷 そうでもないですよ。でも、ディレクションというより、桜井監督がスタジオでとても楽しそうにしていた印象が強いですね。アフレコの最終話が近づくにつれて、役者がいるブースのほうに桜井監督がやたらと入ってくるんです。TVシリーズのときからそういうことはあったし、コミュニケーションをよくとってくださる監督なのでありがたいんですけど……なかなか出ていかないなと(笑)。「いや~、『斉木楠雄』は楽しいね!」「始まると終わっちゃうね」って言うんですけど、「こっちは必死なんじゃ!」という感じで。「さびしいんでしょ?」って聞いたら「そうだよ!」って言ってましたね。

桜井 さびしいんだよ! 図星だよ(笑)! お芝居の話は、みなさんもう知っているから言うことはないんです。それよりも、また集まれたことがうれしくて。第1期が終わったあと第2期で集まれたこともうれしかったんですが、「完結編」でまた集まれて、そして今回「Ψ始動編」ですから。

神谷 本当に恵まれた作品ですよね。

――桜井監督から見て、神谷さんのお芝居はいかがですか?

桜井 楠雄は淡々としゃべらなきゃいけないんですが、そのなかでセリフによってはちょっと感情が出るときがあるんです。その塩梅は神谷くんに任せていて、僕からは何も言いません。そして、感情を出すか出さないか、出し具合はというのは、そのときに神谷くんのお芝居を聞いて、「あ、こうきたか。はい、いただき」と。それがまた面白いですね。
 僕はもともと役者の方に「こういう芝居をしてほしい」みたいなことはあまり言わないんです。みなさん、アフレコに来る前に考えてきているから。ほかの作品ではそれがもし違ったら「もうちょっとこっち方向で」と直すこともあるんだけど、『斉木楠雄』に関しては本当に「みなさん、よろしくお願いします」ってお任せしていますね。

神谷 役者陣もみんな、自分のなかに課題を作って、そのハードルを越えるために頑張る感じだったと思いますよ。

桜井 みなさん、アフレコ前にそれぞれの家で映像をチェックしてセリフを練習してくるんですが、いつも「(セリフが)入らない!」って言いながらアフレコ現場に来るんです。でも、みんなでやると相乗効果でテンポアップしちゃって、逆に尺を余らせる人まで出て。

神谷 とくに女性陣はポテンシャルが高いですね。(照橋心美役の)茅野愛衣ちゃん、(梨歩田依舞役の)M・A・Oちゃん……。

桜井 (夢原知予役の)田村(ゆかり)さんもね。本当に早口がすごい。

神谷 この3人は尺に入らないってことはなかったですね。


――今作はNetflix独占配信ということでエピソードを作るうえで尺の制限がなくなったかと思いますが、それによってTVシリーズ制作時と変わったところはありましたか?

桜井 とくに影響はないです。今回も、これまでどおりのフォーマットでやっているので。

神谷 そういえば、Netflixなら尺は関係ないじゃん! 必要な尺を使えるんだ!

桜井 そうなんだけど、『斉木楠雄』の場合は、尺が増えたらそのぶんセリフが増えるだけなんだよね。

神谷 あのテンポ感は変わらないんですね。

――では、神谷さんとしては、今回、少し楽になったということは?

神谷 ないと思います。でも、たしかに『斉木楠雄』はそもそもそういう作品ではないんですね。4分間をいかに早くどれだけ面白く駆け抜けられるかっていう作品ですから。

桜井 そう。ただ、一方で必要な間というものもあるので、そのバランスを取りながら作っています。卒業式のエピソード(第2期第3χ第5話「卒業おめでとうごΨます!」)なんかは、PK学園の校歌を聴かせるための間を取らなきゃいけないから、それだけセリフを落とさなくちゃいけない。あのエピソードは「セリフをカットしすぎでは」という視聴者の意見もあったんですが、楠雄が「なんだこの校歌」って言うためには一番に校歌をちゃんと聴かせなきゃいけないんです。

神谷 そういうせめぎあいのなかで生まれた4分間だからこそ、価値があるんでしょうね。

――「Ψ始動編」では、鳥海浩輔さん演じる井口工と東山奈央さん演じる鈴宮陽衣が新キャラクターとして加わります。『斉木楠雄』のアフレコに初めて臨まれる鳥海さん&東山さんに対して、おふたりから何かお言葉をかけましたか?

桜井 ……かけた?

神谷 いや、何も。

桜井 僕も。

神谷 こういう作品だと薄々わかって現場に来ているようですし、何も言わずともできるおふたりなので、何も言わなかったです。

桜井 そうそう。忙しい人ばかりだから、どれだけ集まれるかっていうことのほうが心配だった。「神谷浩史くんのスケジュールがここなので、みなさん、アフレコはこの日でよろしくお願いします」ってアフレコの日程を決めて。

――アフレコのスケジュールも、神谷さんを軸にして決められたんですね。

桜井 もともと『斉木楠雄』はスタートから「楠雄は神谷浩史で」というのがあったんです。そのうえで、この役は誰がいいって決めていって。オーディションではなかったんですね。「神谷浩史ありきの作品」といっても過言ではありません。神谷くんにとっては災難だったね(笑)。

神谷 「週刊少年ジャンプ」という一番読まれている週刊少年誌のタイトルの主役を、40歳を過ぎて任せてもらえるってなかなかないことだと思うので、やらせていただけること自体がとてもありがたいなと思いましたよ。ただ、現場がこんなにしんどいとは想像もつかなかったですが。
 「楠雄はすべて別録りで」というところからスタートした第1期第1χの収録は、いまだに忘れられません。このセリフ量をさばくために録り方も手探りで、ほかの人のセリフと被らないように別に録っていたわけです。今改めて観返すと第1期第1χはすごくゆっくりなんですよ。あれでも最初はしんどかったです。ひとりで延々とマイク前でしゃべらされて、「これは過酷な現場だな」と思いました。慣れたら過酷さも緩和するかと思っていたんですが、慣れたら次のハードル、慣れたら次のハードル……って。

桜井 途中で「悪いかな」とも考えたんですよ。でも、緩めるのはかえって失礼だと思ったんです。ちゃんとハードルに挑戦して返してくれる役者の方たちに、タイミングを少し緩めるなんて失礼じゃないか! と(笑)。

――ハードルは桜井監督の敬意の表れだったんですね。さて、今回の「Ψ始動編」でとくに輝いていたと思う人物は誰ですか?

桜井 輝きといったら照橋さんですよ。照橋さんが出ていない話は、神谷くんが「あ~、やる気がなくなってきた」って言うんです。僕もその気持ちはわかる(笑)。で、なるべく照橋さんが出ていない回でも出番を入れたりして。

神谷 桜井監督の作品やキャラクターに対する愛情だと思うんですけど、『斉木楠雄』は原作でキャラクターに出番がない回でもアニメーションにするときにオリジナルでたしてくれたりするんですよ。顕著なのは、これまでのシリーズの最終話。登場していないキャラクターもひと言でもいいからしゃべらせようとする。本来、画面の中にモブみたいな形でキャラクターが一斉に出てくるところって、そのキャラクターの声が音としてなかったとしても成立するんです。それでも、キャストをアフレコに呼びますからね。すごいなと思います。たったひと言でもいてくれると僕としてもありがたいし、キャストとしても呼ばれるとうれしいんですよね。

桜井 みなさん、本当にうれしそうに来てくれるからね。

神谷 この作品はそういう作品だったと思うんですよ。キャストとしてはたったひと言で呼ばれることに申し訳ないなって気持ちになるところもあると思うんですけど、『斉木楠雄』に関してはみんな喜んで来て収録して帰っていく印象ですね。……僕以外は。

桜井 そうだね(笑)。ま、世の中、楽な仕事なんてないですから。

神谷 本当にそうですね(笑)。

――では、おふたりが超能力を使ってお正月イベントを楽しむとしたら、どんな超能力を使って何をしたいですか?

桜井 僕は瞬間移動で初日の出を見まくりたい。世界各地の初日の出ベストポイントに次々とテレポートしていって。

神谷 それはいいですね。僕は寒いのが嫌いなんですが、死ぬまでに一度、オーロラが見たいと思っているんです。なので、寒さを遮断してオーロラを見たいですね。

桜井 パイロキネシスで薄く熱の膜を張って。寒くなる回(第2期第3χ第1話「真冬のΨ難」)を思い出すね。

――ありがとうございます。では最後に、ファンに向けてメッセージを。

神谷 第1期、第2期、そして「完結編」を経て、今回「Ψ始動編」として、アニメーションでは描いていなかったエピソードが映像化されます。こんなに原作の最後の最後までアニメーション化される作品は、たぶんほとんどないと思うんですよ。なぜこの作品が特殊なのかの理由は観ているうちに気づけるでしょうし、それも忘れるほどに楽しい時間を提供できるシーンが存分にあるので、ぜひだまされたと思って観ていただければと思います。

桜井 日常生活で疲れることもあると思いますけど、このアニメを観てさらに疲れるかもしれません(笑)。そんなに真剣に観なくても楽しめると思うので、自由な見方で何度でも楽しんでいただければうれしいです。よろしくお願いします。

神谷 いやいや、そんなこと言う監督いないですよ(笑)。

取材・文/後藤悠里奈

<プロフィール>
【さくらい・ひろあき】手がけた主な作品は『ピアシェ〜私のイタリアン〜』監督、『まちカドまぞく』監督ほか。

【かみや・ひろし】1月28日生まれ。千葉県出身。青二プロダクション所属。主な出演作は『ワンピース』トラファルガー・ロー役、『進撃の巨人』リヴァイ役ほか。

■Netflixオリジナルアニメシリーズ『斉木楠雄のΨ難 Ψ始動編』作品情報
やれやれ、ついにΨ始動だ。爆笑! 超能力(*サイキック)コメディ!!
高校生・斉木楠雄は超能力者である。テレパシー、サイコキネシス、透視、予知、瞬間移動、千里眼など、何でもかんでも自由自在。誰もがうらやむ最強の能力は、実は本人にとっては災難を呼ぶ不幸の元凶。それ故、人前では超能力を封印し、目立たず人と関わらずをモットーにひっそり暮らしていた。しかし何故だか彼の周りには、いつも個性的な人間(生き物)が集まって、次から次へと嵐のように災難が降りかかるのであった!

【キャスト】
斉木 楠雄:神谷 浩史 燃堂 力:小野 大輔 海藤 瞬:島﨑 信長 灰呂 杵志:日野 聡 鳥束 零太:花江 夏樹
照橋 心美:茅野 愛衣 窪谷須亜蓮:細谷佳正 井口工:鳥海 浩輔 鈴宮陽衣:東山 奈央 他

【原作】
麻生 周一「斉木楠雄のΨ難」(集英社ジャンプ コミックス刊)

【スタッフ】
監督:桜井弘明 キャラクターデザイン:音地正行 音楽:斉木ックラバー
アニメーション制作:EGG FIRM×J.C.STAFF 制作:小学館集英社プロダクション 製作:PK学園R

【作品公式Ψ(サイ)ト】
https://www.saikikusuo.com/ 

【作品公式Twitter】
@saikikusuo_PR

【配信】
2019年12月30日(月)全世界独占配信  
netflix.com/saiki-reawakened

(C)麻生周一/集英社・PK学園R

《超!アニメディア編集部》
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