声優・田中あいみがサウンドから言葉まで音楽的趣味を前面に出して作り上げたデビューミニアルバム『コバルト』【インタビュー】 | 超!アニメディア

声優・田中あいみがサウンドから言葉まで音楽的趣味を前面に出して作り上げたデビューミニアルバム『コバルト』【インタビュー】

声優・田中あいみが、5月8日にミニアルバム『コバルト』でアーティストデビュー。そのタイトル通り“青”を連想させる爽やかなロックサウンドを中心とした、コンセプチュアルな作品に仕上がっている。そこで今回は、デビューにあたっ …

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 声優・田中あいみが、5月8日にミニアルバム『コバルト』でアーティストデビュー。そのタイトル通り“青”を連想させる爽やかなロックサウンドを中心とした、コンセプチュアルな作品に仕上がっている。そこで今回は、デビューにあたって田中へのインタビューを敢行。普段からロック色の強いアーティストの楽曲を聴くことが多いという彼女が、本作に込めた想いやねらいについて聞いた。


リード曲「サウダージブルー」には、一目惚れでした

――田中さんには元々、歌の活動をしたいというお気持ちはあったんでしょうか?

 声優という活動のなかでは、特に意識したことはありませんでした。中学生から高校生の頃にはバンド活動をしていて、プロダクションにオーディションを受けに行ったりもしていたんですけど、「声優になりたい!」と思ってからはずっとお芝居のほうに目標が向いていたので、音楽をお仕事としてやっていくことは全然考えていませんでしたね。

――となると、今回のデビューのきっかけは?

 レーベルのプロデューサーの方から事務所にお話をいただいたのが最初で、私はそれをマネージャーづてに聞いたんです。それが2016年の頭で、そのあと何度かプロデューサーさんとお話をする場を設けていただいて、「こういう曲だったら、私は歌ってみたいです」とか、「こういうことはちょっと苦手です」みたいにいろんなお話をしていきました。


――それから今まで、だいぶ期間がありますね。

 そうなんですよ。それから半年弱ぐらい経って、私が「やってみたい」となってから曲を集めていただいて、作詞の期間もあったりして。それに楽曲も今回収録されなかったものも含めて、もうちょっと数があったので、その中から今回収録するのにふさわしい曲を集めて……といろいろなことをやっていたら、2年ほど経っていました(笑)。

――ということは今回の収録曲は、存在している曲の中からコンセプト的に統一性のあるものを集めた?

 そうですね。私が「爽やかな、ロック色の強い曲を歌いたいです」というお話をしていたので、そんな感じの曲を集めていただきまして。特に前向きで明るくて、でもアニソンやキャラソンよりもガッツリロックな感じも欲しいというお願いに当てはまって、声色にも統一性のあった4曲を選びました。

――では続いて、各楽曲についてお聞かせください。まずリード曲「サウダージブルー」は、サウンドを聴かれて最初にどんな印象を持たれました?

 いくつか候補曲をいただいたんですけど、そのなかでダントツでメロディーが好きで。すごく爽やかな印象もあったし、疾走感も透明感もあったりとイメージがいちばん私の歌いたい楽曲に合っていたので、「絶対に歌いたい!」と思って選びました。

――それに歌詞をつけていくにあたって、どんな風景や世界が浮かびましたか?

 わりと前向きなメロディーなんですけど、なんとなくイントロの始まりとかにちょっと寂しそうなイメージがあったので、前向きだけど前向きすぎない感じというか、ちょっとけだるげな雰囲気は欲しいなと思いました。そのなかでもサビって印象的な部分だと思うので、「君のいない世界を知っ“た”」「叫んでい“た”」みたいに、語尾が聴く側の耳に残るように、“た”で終わるようにしたんですよ。

――ちなみに、田中さんは今まで作詞をされたことは?

 全然。初めてでした。

――そうなんですか!? ミニアルバム1枚を通して、すごく言葉の使い方がオシャレだなと思いました。

 本当ですか!? でもプライベートで、ただ単に好きで物語や絵本を書いたりはしていたので、言葉を書くこと自体は好きなんですよ。だから素直に自分の気持ちを言葉にできたのかもしれないな、と思っていて。それに、昔使われていた美しい日本語みたいなものを見るのも好きなので、その影響もあったのかもしれないですね。

――では、この曲のレコーディングのなかで、特に印象深かったことを挙げるなら?

「サウダージブルー」って、歌うのが結構難しい曲なんですよ。サビの音が割と高いんですけど、張り上げすぎてしまうとこの曲の持つ寂しさや繊細さがなくなってしまうんです。それで半音下げようかという話も出て、実際に半音下げたバージョンを録って聴き比べたりもしたんですけど、そうすると今度はさわやかさや疾走感みたいなものが半減してしまうように感じたので、原キーで歌っていきました。

――やっぱりキャラソンとご自身の名義で歌うことって、感覚は違いましたか?

 全然違いましたね。キャラソンをずっと歌ってきたので、どうしても私、“演じる”みたいなところにクセがついてしまっていたんですよ。でも演じるということと、私というものがしっかりありながらニュアンスをつけるということは、全然違う作業だなと思いました。

――それを実感する場面も、やはりありましたか?

 ありました。曲ごとだったり、曲の中でも場所ごとに急にキャラが変わってしまうというご指摘があって、それが直るまでにすごく時間がかかっちゃったんですよ。だから、レコーディング中には「本当の私の声ってなんだろう?」みたいなことも考えましたし、まわりの方々とも相談しながら「まずは“田中あいみ”の軸を作ろう」みたいなところから始まって。それを決めてから、アルバムが仕上がっていったんです。

――この曲ではMVも撮影されましたが、どんなコンセプトで制作されたのでしょう?

 撮影してくださるカメラマンさんとの打ち合わせのときに「写真を撮って思い出を残しているようなイメージと、歌詞に出てくる空とか海の景色は入れたいです」というお話をしました。私からお伝えしたのはそれぐらいだったんですけど、撮影前に資料をいただいたときも「完璧です」と思ったぐらいに、自分のなかのイメージに合っていたんですよ。

――実際撮影に入られて、いかがでしたか?

 実は撮影日の朝は雨が降っていて、本当はあるはずだった海のシーンがなくなってしまったんです。でもそのシーンがなくてもすごく私のなかのイメージにピッタリな、“青”も感じられるような仕上がりになっているんですよ。あと、フィルムで撮ったような質感のシーンもちょっと仄暗い感じになっていて、より寂しさを醸し出しているのもよかったですね。

自分の趣味を前面に出した作品だからこその緊張感を感じている

――続いて、その他の楽曲についてもお教えください。「はくちゅうむ」は歌声も含めてかわいらしさが少し加わった楽曲になっていますね。

「ピアノがちょっと切ない楽曲が欲しいです」みたいな話から作っていただいた曲なので、イントロのピアノのメロディーにちょっと切なさを感じるんですけど、この曲がいちばん華やかかなと思うんですよね。でも実は、最初はサビの頭の音数はもっと少なくて、一音をすごく伸ばすような感じだったんです。ただ、それだとテンポが急にスローになってしまうように感じたので、「もっと走ってるようなテンポ感で、音数を増やしてください」というお願いをして、完成版の形になりました。

――この曲は、どんなイメージで歌詞を書かれたのでしょう?

 たとえば「自分に好きな人がいたとしたら、こんなふうに想えたらいいな」とか、「こんなに人を好きになれたらいいな」という願望みたいなものを、ひと夏の恋のようなイメージで書いていきました。

――サビの「なまえっ呼んでる」の“っ”にかわいらしさが出ているなど、歌詞も読むと、より主人公像が浮かびます。

 うれしいです。やっぱり私が歌っているんですけど、ちゃんと主人公は見えてほしかったんですよ。私の本業は声優で、その声優の歌ならではのお芝居的な感じも残したかったので、そういうイメージがしっかり浮かぶといいなと思って言葉も選びました。

――そして3曲目の「Hey My Kitty」では、デジタルの要素も加わったりと、少々サウンドの方向性が変わります。

 この曲もいくつかの候補の中から選んだものなんですけど、途中で入っているクラップ音が、すごくかわいくて。しかもそのイメージが、私が実家で飼っている猫を呼ぶときに「おいでー」みたいにパチパチ手を叩く姿と結びついたので、歌詞のテーマを猫にしようと決めたんです。あと、たとえば自分がライブとかで歌ったときに、みんながやってくれたらいいな……とも思って。なのでこの曲がいちばん作詞もレコーディングも、時間がかかりませんでした。

――いろんな意味でイメージが湧いて、アウトプットもすんなりといった。

 そうですね。ただこの曲の主人公を男の子にしたことで、レコーディングでは男の子っぽくなりすぎてしまっていて。音もほかの曲に比べて低めだったのもあって、そこでちょっと苦戦はしたんですけど。

――「Kitty」というのは、“男の子から見た女の子”のようにも受け取れたのですが。

 そうです。どっちにも取れるような、アルバムの中でいちばんかわいい曲にしたくって。「自分が男の子だったら、こんな子がいたらきっとかわいいって思ってしまうに違いない」という妄想を書いたような感じなんですよ。だから歌詞を書くのも速かったのかもしれないんですけど(笑)。

――そしてアルバムのラストを飾るのが、切なさも漂うナンバー「心恋-uragoi-」です。

 “恋心”を逆さまに書いて“うらごい”って読むんですけど、これは実際に昔使われていた言葉で、日本人のよさがすごく出ているように思うんです。奥ゆかしさというか……恋をしてはいけないけど、密かに想い焦がれているような姿がよく表れていてめちゃめちゃ好きだなと思ったので、それをテーマにしました。それに、すごく音数が多くて「文字をしたためている」みたいなイメージもあったので、なんとなく文学少女っぽい雰囲気にしたくて。古風すぎないけど日本語としてのよさの表れている単語を集めて、「どうしても忘れられない恋をしている女の子」を主人公にして書いていきました。

――この曲ではカタカナをわざと使っているなど、日本語を大事にされるのと同時に作詞の技術面の高さも感じました。

 カタカナ・ひらがな・漢字というものを全部使って表現できるのが、日本語のよさだと思うんです。だから、日本語で歌うのであれば、それはしっかり使ったほうがいいかなと思って。印象づけたいところだけカタカナにしたり、聞いたことはあるけど一瞬意味がわからないような言葉を選んだりしました。

――実際にこの曲を歌ってみて、いかがでしたか?

「つながりみたいなものを意識しよう」というディレクションをいただいたのもあって、ほかの曲と違ってフルでツルッと全部録っていったんです。それを8テイクくらい録って、そこから一部だけ差し替えていくという感じで、なるべく気持ちがつながるような録り方に挑戦しました。

――では最後に、田中さんが今後アーティストとして実現させたいことや挑戦したいことをお教えいただけますか?

 まだ具体的なビジョンがあるわけではないんですけど、(アーティスト活動を)続けていけたらいいなと思っていて。そのなかで、歌う曲のジャンルもあまり限定したくないんですよ。もっとノリノリになれる曲も歌いたいし、バラードにも挑戦したいし。ゆくゆくは弾き語りもできる曲も作って、それを生演奏でみなさんにお披露目もしてみたいし……とりあえずいろんなことをやってみて、それでみなさんの反応も見つつ(笑)、はしゃぎすぎない程度にいろいろやっていけたらと思っています。あと、リリースされたらみんなに聞きたいなと思っていることがあるんですけど……。

――なんでしょうか?

 それは「今回の4曲、どれがいちばん好き?」っていうことで。私のことを知ってくださっている方ってキャラクターから入っている方が多いと思うので、イメージが全然違うのかなと思うんです。だから「みんなはどんな曲を私が歌ったら『いいな』と思ってくれるんだろう?」というのが、結構疑問なんですよ。自分の趣味をすごく前面に出して作っていただいた楽曲であり映像なので、受け入れてもらえたらすごくうれしいけど、こんなにさらけ出していると感想を聞くのがより怖いというか……そこが、アーティスト活動をするうえでの緊張感なのかなと、今は思っています。

取材・文/須永兼次

PROFILE
【たなか・あいみ】4月28日生まれ。東京都出身。81プロデュース所属。声優としての主な出演作は、『干物妹!うまるちゃん』土間うまる役、『上野さんは不器用』田中役、『わしも WASIMO』ひより役など。これまで多くのアニメ作品のキャラクターソングを担当している。

「コバルト」
WAVE MASTER
発売中
2,000円(税別)


(C)WAVE MASTER

《超!アニメディア編集部》
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