人気アニメ『ジョジョの奇妙な冒険』の主人公・空条徐倫を自身の身体上に描いて“完全再現”した動画がInstagramに投稿され、大きな注目を集めている。
投稿したのは、アニメキャラクターを平面表現のまま三次元に落とし込む「2次元アニメイク」を得意とするアニメイクアーティストのYUIさん。動画では、素顔から徐々に徐倫へと変化していく工程が記録されており、視聴者からは「VTuberの映像かと思った」「生身って分かっても分からん」と驚きの声が寄せられた。
そんなYUIさんにインタビューを敢行。制作について話を伺った。
私は二次元のキャラクターはそのままに存在してほしいという『二次元オタク』
―まずは、アニメイクアーティストとして活動を始めたきっかけについて教えてください。
YUI「せっかく始める新しい趣味を『おばあちゃんになってもずっとやり続けたい』と考えた時に、『どんなにやっても飽きないこと』『成長し続けられること』『自分の好きなこと』の3つに重点を置いてテーマを絞り込みました。そして、この3つの要素を追求した結果、「アニメ」と「メイク」を融合させた『アニメイク』という現在の形にたどり着いたんです。
また、個人的に抵抗があったため、コスプレはやろうとは思いませんでした。私はあくまで二次元の世界が好きで、二次元のキャラクターはそのままに存在してほしいという『二次元オタク』です。コスプレは良くも悪くもその人自身が消えませんし、今さら自分がコスプレしたものを投稿しても、新しい価値を生み出せないと感じて…」
―今回のテーマに空条徐倫を選んだ理由について、教えてください。
YUI 以前に『ジョジョの奇妙な冒険』の他のキャラクターである空条承太郎、ブチャラティ、吉良吉影などを再現していたのですが、『徐倫もやって!』という要望がとても多かったのです。かねてより“いつか再現したい”と考えていたキャラクターであり、数年前に一度挑戦した経験もあったのですが、『今の自分の技術がどれほど成長したか確かめたい』という思いも強くありました。

―動画冒頭では「VTuberかと思った」という視聴者の反応を紹介されていますね。
YUI 私が生身であることは最初の工程から見れば一目瞭然ですが、メイクした状態で喋る動画を投稿すると、たまにフィルターと誤解されることがあります。そうした誤解に対し、生身であることを改めて示す機会としてコメントを紹介しました。
YUIさんは、アニメイクの技術が向上したことによってフィルターだと勘違いされることがあるため「めちゃくちゃアナログな方法で再現しているんだよ!すごいだろ!」と声を大にして言いたい、と話す。

制作準備から大体8時間。特に“キャラクターの眼”は譲れないこだわり
―制作工程について詳しく教えてください。どのくらいの時間がかかるものなのでしょうか?
YUI制作準備からメイク、撮影、メイク落としまで、どの作品も大体8時間ほどかかります。特にメイクには最低3時間は必要です。特に“キャラクターの眼”は譲れないこだわりがあります。少し形が変わるだけで“誰なのか”が崩れてしまうため、最も慎重になる工程です。

―三次元の自分の顔に二次元の平面表現を落とし込む際、どのような工夫をしていますか?
YUI 私自身は立体物なので、完全に平面に見せると逆に違和感が生まれてしまうこともあります。そのため、完全には絵に寄せすぎないようにしています。できるだけリアリスティックな絵柄を参考にし、影の入れ方や光の描写を調整しながら“究極の2.5次元”を目指しています。
一方で、シンプルな絵柄のキャラのほうが技術的には難しい。たとえば『サザエさん』に出てくるキャラクターや『ダンダダン』に出てくるターボババアのようなシンプルな絵柄ほど、立体的な私の顔に寄せると差が埋まりにくく、苦戦します。いつもヒィヒィ言いながらやってます。
―今回挑戦された徐倫の表現で特にこだわった点について教えてください。
YUI やはり特徴的な髪型です。どのキャラも髪型は変身の決め手になります。顔のメイクにいたっては、荒木飛呂彦作品ならではの絵画的線“荒木線”を再現するため、線を描くだけではなく、まず影を描き、その上に線を足すことで絵画っぽく見えるようにしました。


―今後、チャレンジしてみたいキャラクターや作品はありますか?また、アニメイクアーティストとしての目標や夢があれば、お聞かせください。
YUI 最近では、CG作品を再現するという新たな試みをやり始めたので、そちらも今後広めていきたいなと思っています。ゲームのキャラクターとか、CG独自の“ヌルッと感”がメイクで再現できたらおもしろいですよね。
目標としては、いつか声優さんとのコラボを実現したいです。たとえば、私がメイクした状態でパフォーマンスし、声優さんが声を当ててみるとか―。あとは、もっと海外の皆さんにも見てもらいたいですね。漠然とですが、海外のアニメイベントに参加したいという構想もあります。
アニメ表現とメイク技術を融合させ、二次元のキャラクターを“生身”で成立させるYUIさんの挑戦は、今後さらに幅を広げていきそうである。








