『涼宮ハルヒの憂鬱』長門有希役、『僕のヒーローアカデミア』現見ケミィ役など、数々の人気アニメ作品に出演してきた茅原実里。彼女はアーティストとしても長く活動しており、「Paradise Lost」「TERMINATED」「境界の彼方」「みちしるべ」など、これまで数々の楽曲でアニメを彩ってきた。ライブも数多く行っており、日本武道館・NHKホールなど国内公演に留まらず、タイ、中国など海外でもその歌声で多くのアニメファンを感動の渦に巻き込んでいる。

そんな彼女が、2025年8月2日(土)・3日(日)に河口湖ステラシアターにて、フルオーケストラでのシンフォニックライブ「billboard classics 茅原実里 Symphonic Concert "Harmony"」を開催。「billboard classics」は、ビルボードジャパンが2012年にスタートした「アーティストの音楽を最高のかたちで届けること」をミッションに行っているコンサートシリーズで、今回は東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団が、茅原の名曲を彼女と共に奏でる。
贅沢な時間になることは間違いないが、オーケストラと聞くと「敷居が高い」「ドレスコードはあるの?」「盛り上がる曲はどうなるの?」と感じてしまう方も中にはいらっしゃるのではないだろうか。そこで、今回は茅原実里のフルオーケストラ公演を楽しむためのコツやポイントを紹介。開催を控えた本人にインタビューを行い、シンフォニックライブへの想いやいま考えているセットリスト、そして、シンフォニックライブに参加するうえで準備したほうがいいことなどをうかがった。
[文=M・TOKU]
予習ノート1ページ目「茅原実里がシンフォニックライブへかける想い」
――4年ぶりとなるシンフォニックライブを開催しようと思ったきっかけを教えてください。
茅原 デビューしてから昨年(2024年)で20周年を迎えました。活動を続けていくなかで、ありがたいことに、若い方から私と同世代の方まで、幅広い方々が私の音楽を聞いてくださるようになったんです。
そんななかで、私自身、バンドメンバーと一緒にやるライブが大好きなのですが、最近はそろそろ私にとっても、お客様にとっても「次のステージが必要かもしれない」という考えを持つようになりました。それで、オーケストラとのコンサートにもこれまで以上に取り組んでいけないかと思って。
――普段のライブスタイルだけでなく、オーケストラとのコンサートも行うことで、いろいろな方が楽しめるようにしたかった。
茅原 そうですね。私のライブに限ったことではないのですが、盛り上がるライブから一度離れると、なんとなく「戻りづらい」と感じることがあるかもしれません。子育て中だったり、仕事が忙しくてなかなかライブに通えなくなった方たちが、ふと余裕ができて「またライブに行きたいな」と思ったときに、帰ってこられる場所を用意できたらなと。今後も従来のバンドスタイルに加えて、こういうスタイルのコンサートも開催できればという想いがあります。

――「billboard classics」というコンサートシリーズへの印象もお聞かせください。
茅原 いま活躍しているアーティストの方々の楽曲をオーケストラで体感できる、素晴らしいコンサートシリーズですよね。私も、尊敬する玉置浩二さんの「billboard classics」公演に行ったことがありますが、まさか同じコンサートシリーズに出演できるなんて。手を伸ばしても届かない遠い場所だと思っていたので、とても光栄です。
――シンフォニックライブの開催会場は、開館30周年を迎える河口湖ステラシアター。今回のコンサートで茅原さんがこのステージに立つのも30回目ということで、とても深い縁があると思います。
茅原 2009年からずっとお世話になっている河口湖ステラシアターは、私にとって第二の故郷であり、ホームとも呼べる特別な場所です。歌手を志していた頃から憧れていた野外ライブを叶えてくれたのもこの場所でしたし、歌手活動の休止と再開、デビュー20周年など、私にとって大切な節目には、河口湖ステラシアターがある富士河口湖町でライブを開催してきました。
ひとりのアーティストとして育てていただいた、かけがえのない場所です。大好きな河口湖ステラシアターの開館30周年を記念した企画として、劇場の特性を活かしたオーケストラとのシンフォニックライブを開催できるのは、とてもありがたいことです。

――何度もステージに立ってきた茅原さんが感じる、河口湖ステラシアターの特徴を教えてください。
茅原 古代ギリシャや古代ローマの劇場をモデルにした、半円形すり鉢状の構造を持つ「河口湖ステラシアター」は、マイクやアンプがなかった時代のように、建築そのもので音を響かせるというコンセプトがあります。ステージに落としたコインの音が、客席のいちばん後ろまで届くんですよ。そんな空間で、生のオーケストラの演奏とともに歌を届けられるなんて、今から楽しみです。
――コンサート構成やセットリストをご自身で考えているとのことですが、ぜひ見どころを教えてください。

茅原 「クラシック」というキーワードを軸にセットリストを構築しています。一般的にクラシックといえば、西洋の芸術音楽を指すことが多いですが、「時代を越えて評価される、優れたもの」「各分野において長く評価の定まったもの」といった意味も含まれています。今回は、そうした言葉の意味を大切にしながら、慎重に選曲しました。
たとえば、今回歌唱予定のTVアニメ『涼宮ハルヒの憂鬱』のエンディング主題歌「ハレ晴レユカイ」は、いわば“アニソンのクラシック”。世代や国境を越えて多くの人に知られている楽曲ですし、まさにアニメの歴史に刻まれるべき一曲だと思います。
実は今も準備中で、アニソンのクラシックとは? 茅原実里のクラシックとは? そんなことをずっと考え続けています。もちろん、音楽ジャンルとしてのクラシックに比べれば、アニソンの歴史はまだ浅いかもしれません。それでも、いつか本当の意味でクラシックになるかもしれない。そんな願いも込めています。時を越えて、たくさんの人に長く愛され続ける曲になってくれたら、これほどうれしいことはありませんよね。
※セットリストの詳細は、予習ノート2ページ目をチェック!
――シンフォニックライブを楽しみにしている方、チケットを買おうか迷っている方に、メッセージをお願いします。
茅原 アニソンはいわゆるサブカルチャーの代名詞とされてきましたが、今では、日本のアーティストが世界で活躍するための重要な鍵のひとつになっていますよね。実際、私自身もたくさんのアニメ主題歌を担当してきたことで、海外でパフォーマンスする機会が増えました。現代のアニソンにおいては、いわゆるメインカルチャーとの境界が曖昧になってきているように感じています。
そんななか、日本を代表するアーティストの方々のコンサートを手掛けられている「billboard classics」さんとご一緒させていただくということは、ある意味で、メインカルチャーとサブカルチャーが交錯する貴重な瞬間になるのかもしれません。
もちろん、私のパフォーマンスでお客様に楽しんでいただくことも大切ですが、あえて大きなことを言わせていただけるなら、アニソンというカルチャーの価値がさらに高まっていく——そんな瞬間を、お客さまと一緒に創り上げられたらと考えています。河口湖ステラシアターで、皆さんとお会いできるのを楽しみにしています!