■旅に出て変化していくふたりの気持ち

――柊は、ツムギの「お母さんを探しにいく」という旅に同行することになりますが、なぜツムギについていこうと思ったのでしょうか?
小野:ツムギが柊のことを特別だと言ってくれた。ほかでもない自分に一緒に旅をしてほしいと頼んでくれたことが、柊を行動させる大きな理由になったと思います。学校の友達は皆「誰でもいい、ただ柊が親切だから」という理由で彼を頼る。でも、ツムギは違った。そこが彼にとって本当にうれしいことだったのではないかと。
――当時、ツムギも柊を特別だと言ったのは本音なのでしょうか?
小野:いや、それはないと思いますね(笑)。口では「柊だけが特別」みたいなことを言いますが、あれはただの演技だと思う。柊はツムギの手のひらで転がされていた感じがしますね。
富田:賢章さんの言う通り、当時のツムギは頼れれば誰でもよかったんだと思います(笑)。ただただ柊が喜ぶ言い回しを選んだだけ。ただ、旅をする中で徐々に柊が特別な存在に変わっていく。そこも本作の面白さだと思うんですよ。
小野:対する柊も、旅の中でツムギを一層特別な存在だと感じるようになる。ツムギに対して「何かしてあげたい」という気持ちを感じられるシーンは多くありました。

――本作はツムギ、柊と親の関係も印象的でした。
小野:柊で言うとお父さんとの関係は印象的でしたね。決して仲が悪いわけではない。ただ、お父さんに過保護な面があり、自分の考える道を子供に歩ませようとしている部分があるんですよ。それに対して柊は「自分が大切にされていない」と感じている。ツムギと共に旅に出たのも、自分の考えを理解してほしいという親への反抗心もあってのことだと思います。
富田:近い想いはツムギも母親に対して感じていたんじゃないかと。お母さんに注目されたいし、もっと心配してもらいたい。そんな想いを抱えているから、母親を嫌っているかのような態度を取るんですよね。にも関わらずお母さんを探して旅をするのは、そこに愛があるからだと思います。

――本作を通して受け取ったメッセージはありますか?
富田:私が感じたのは「親も人間なんだ」ということでした。私自身、反抗期がひどくて。親に対して「こんな家に生まれてこなければよかった!」と言い放ったこともあるんですよ。それを聞いて泣いている親を見て「なんで泣いているんだろう?」と思った。あれから時を経て本作に触れ、当時の親の気持ちを少し理解した気がします。その結果、「あんなこと言われたら泣くよな……」と思うようになりましたから。
小野:言いたいことは我慢せずに言ったほうがいい、それも本作が持つメッセージのひとつだと思いましたね。今作で描かれるのは、言いたいことを溜めすぎた人は鬼になってしまう世界。それは我慢のし過ぎで爆発してしまう人々のメタファーだと感じました。

――最後に、本作を楽しみにしている皆さんにメッセージをお願いしたいです。
小野:ツムギと柊、ふたりの旅路を描くロードムービーのような作品になっていると思います。その中で出会うのも魅力的な人ばかり。その様子を見ていると感化され、視野も広がっていくと思います。多くの人に見てほしい作品です。
富田:新年度が始まってから1ヶ月ちょっとで公開となる本作。タイミング的に新しい人間関係に悩んでいる人も多いと思います。そんな中で、本作が見た人に勇気を与え、悩みを解決する糸口になるとうれしい。ぜひご覧ください。
【作品概要】
映画『好きでも嫌いなあまのじゃく』
配信&公開:5月24日(金)より、Netflixにて世界独占配信&日本劇場公開
出演:小野賢章、富田美憂、浅沼晋太郎、山根 綺、塩田朋子、斎藤志郎、田中美央、ゆきのさつき、佐々木省三、日高(高ははしごだか)のり子、三上哲、京田尚子 他
主題歌「嘘じゃない」/ 挿入歌「Blues in the Closet」 ずっと真夜中でいいのに。(EMI Records)
STAFF
・監督:柴山智隆 ・脚本:柿原優子/柴山智隆
・キャラクターデザイン:横田匡史 ・キャラクターデザイン補佐:近岡 直
・色彩設計:田中美穂 ・美術監督:稲葉邦彦 ・CG ディレクター:さいとうつかさ ・撮影監督:町田 啓 ・編集:木南涼太
・音楽:窪田ミナ ・音響監督:木村絵理子
配給:ツインエンジン・ギグリーボックス
企画・製作:ツインエンジン
制作:スタジオコロリド
(C)コロリド・ツインエンジン