原作『地獄楽』はマンガ誌アプリ「少年ジャンプ+」にて連載された、賀来ゆうじによる江戸時代末期を舞台にした忍術浪漫活劇。抜け忍として囚われてしまった最強の忍・画眉丸が無罪放免となるべく、打ち首執行人・山田浅ェ門佐切とともに“極楽浄土と噂の地”へと足を踏み入れ、「不老不死の仙薬」を入手し生還することを目指す姿を描いています。原作はシリーズ累計発行部数が400万部を突破しており、連載終了後もなお「少年ジャンプ+」でのランキングを維持し続けています。
この度、主人公の画眉丸役・小林千晃さん、佐切役・花守ゆみりさんにインタビュー。残酷ながらも美しい世界観が広がる原作の印象、その中で懸命に生きるキャラクターを演じる上で意識したこと、またお互いが演じたキャラクターの印象も語っていただきました。
[取材・文:米田果織 撮影:吉野庫之介]
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残酷だけど見たくなる…アンビバレントな世界観に魅了
――原作を読んで受けた印象は? 時代や世界観が現代とかけ離れている作品ですが、惹かれた部分はありますか?
小林:残酷で死に抗いようのない世界でありながらも、そこに存在する花や生き物が美しくも見えて、その独創的な部分が怖いけど見たくなる、とても惹かれる世界観だと思いました。男尊女卑や忍の在り方があり、生き死にが当たり前の時代というのが僕には想像がつかないながらも、この時代に生きている人たちはそれが当たり前のことなんだなと、非日常観を楽しめつつ「こういう時代もあったんだな」とフィクションとノンフィクションの混ざりあいも楽しめると思いました。
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花守:千晃くんの言った通り。私たちの生きる世界とは比べ物にならないほど、生と死が身近にある世界観。美しいけれど気持ち悪い、怖いけどキレイと思ってしまうアンビバレントさが余計に生死を際立たせていると感じました。キレイな景色の中で無残に死んでいく死に様というのが、残酷なくらい短い尺で描かれているので、賀来先生はこの“刹那”を表現するために筆を握っているんだろうなと思いましたね。
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――キャラクター設定も特殊。画眉丸、佐切をどんな人物だと捉え、どのように作り込んでいったのでしょうか。
小林:画眉丸は、まさに“妻命”。それが生命線であり、画眉丸の精神を司っているものです。仲間意識を持つのも妻のおかげだし、そもそも島に行くのも生き残りたいと思うのも、薬を持ち帰るのも全部妻のため。行動原理がすべて「妻のため」というのがあるので、それがベースにあるというのを崩さないまま演じました。
花守:行動原理がしっかりしている画眉丸に対して、佐切は執行人として働く一方で、すごく葛藤が多いんです。たとえ罪を犯したという理由があっても、人の生を奪うことに悩んでいる。さらに、女だから父の跡を継げないという男尊女卑の概念が当たり前にある中で、彼女は彼女なりに「どうすれば自分として生きられるんだろう」ともがき考えている。はたから見るとしっかりしている女の子ですけど、経験したことのない未知の世界に入った時、自分の心が揺らめいた時に見せる少女らしい部分をどう“彼女として”表現できるか。強さと弱さのバランスをつねに考えながら演じました。
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――小林さんから見た佐切、花守さんから見た画眉丸の印象も教えてください。
小林:佐切は、登場キャラクターの中で一番読者に近い感じがしました。それゆえにこの世界観の中で演じるのが難しいと思いましたが、花守さんが演じたからこそ、女性だから男性だからではない、譲らないところは譲らないという頑固さがにじみ出ていて、すごく魅力的なキャラクターだと感じました。花守さんの気質なんでしょうね。
花守:頑固なところがバレている(笑)。
小林:すごく素敵だと思いましたよ!
花守:千晃くんが演じる画眉丸は常に芯が通っていて、迷いがない。「佐切として彼をどう引っ張っていけばいいのかな」と不安になっていたのですが、1話から一言話しただけで「画眉丸だ」と作品にスッと1本線を引いてくれたので、「そこに乗っかっていっぱい迷っちゃお!」と思えたくらい。それには本当に感謝しています。
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――佐切のように、「迷いがない」のは小林さんの気質がにじんだからなのでしょうか…。
花守:そうだと思いますよ! 千晃くんは緊張しないし、良い意味でずっと変わらない。話している時も、取材の時も、イベントの時も、アフレコの時も、ずっとこのままなんです。
小林:いやいや(笑)! 緊張する時もありますよ!
花守:そんなことないと思います(笑)。千晃くんのその気質がにじむからこそ、気持ちが昂るシーンがあっても「考えがあってこうなっている」と理解できる。熱い中に冷静さがある、千晃くんの画眉丸だと思っています。
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「始まりと終わりで180度違う」死罪人と処刑人の関係性が見どころに
――画眉丸、佐切以外にも魅力的なキャラクターがたくさん登場。演じる役以外で気になっているキャラクターは?
小林:僕は、民谷巌鉄斎(CV:稲田徹さん)の自分の本能のままに生きているところが好きです。亜左弔兵衛(CV:木村良平さん)も本能に従っているのですが、盗賊団の統領ということで頭も切れるし、あえてそうしている部分もあると思います。しかし、巌鉄斎は本当に天然(笑)。稲田さんの声も相まってかっこいいのに、かわいさも持ち合わせている。男性から見ても憧れるし、女性から見ても愛らしいなと思える、本当に魅力的なキャラクターだなと思います。
花守:私は、典坐(CV:小林裕介さん)と士遠(CV:小林親弘さん)の師弟関係が大好き。2人の関係性は本編だと少ししか描かれないのですが、その少しの中でのシーンがとても印象的なんです。
多くは語れませんが、士遠先生のとあるシーンでは親弘さんのお芝居が本当に素晴らしかったので、早く見て、聞いてほしいです。
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――人間ドラマ、迫力のバトルシーン、見どころが詰まっている本作。ズバリ、お2人が思う 本作の注目ポイントは?
小林:色々魅力がある中で、やはり関係性が一番の見どころになると思います。死罪人と処刑人という180度立場が違う2人が、真逆の立場でありながらもペアとなって、どうすれば生き残れるか協力し合う関係性の変化が面白いので、是非注目してください。
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花守:私も関係性が魅力だと思います。始まりと終わりで、180度違うものになっていますからね。2つの相反するものが、どうすれば共に生きていけるのかを模索して歩み寄り、お互いを受け入れていく。受け入れることで、また自分を知っていく…。アニメを見終わった後に、改めて最初から見直してみてほしいです。「こういう関係だったんだ!」と、きっと新たな発見が生まれると思いますよ。
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(C)賀来ゆうじ/集英社・ツインエンジン・MAPPA