ゾンビとして復活した少女たちが、その正体を隠しながら佐賀県のご当地アイドルとして奮闘するコメディアニメ『ゾンビランドサガ』。
宮野真守さんが演じるプロデューサー「巽 幸太郎」の無駄にテンションが高いキャラクターや、ストーリーの奇抜さ、そしてアイドルとして逆境に立ち向かう「フランシュシュ」のメンバーのけなげさに共感が集まり、2021年4月には続編『ゾンビランドサガ リベンジ』が放送されるなど人気を博した。
そして2021年9月18日から3日間開催されたアニメ総合イベント「あにつく2021」では、セッションのひとつとして、そんな本作の制作裏側を解剖するセミナーを開催。
他のセッションと同様、アニメファンや次世代のクリエイターへ向けて、3DCGやデジタル制作にまつわるテクニックやこだわりを制作スタッフが語ってくれた。
続編の目標は「前作と同じモデルで表現を高める」と「ライブパートのクオリティの平均値を上げる」こと
「『ゾンビランドサガ リベンジ』魅力的なキャラクターとライブ表現を追求した3Dワーク解説 」と題してはじまった本講演では、まずライブシーンのスケジュールについて解説がスタート。
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ライブシーンの作業は放送約半年前からスタート。ダンスの表現は作画の回と3DCG回の2パターンがある。
もっともコストを要したのが最終回となる第12話。
物語後半にあたるBパートの大部分がライブシーンであることに加え、観客が約3万人という、気を失うほどの作業が待ち受けていた。
その点について3DCGディレクターの黒岩あいさんは「続編に取りかかる前にワークフローの見直しと、観客の並べ方を見直す必要がありました」と前作よりもパワーアップした部分について対処方法を語った。
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『ゾンビランドサガ リベンジ』でめざすのは、「前作と同じモデルを使用してどこまで表現を高められるか」と「前作のノウハウを活かしてライブパートのクオリティの平均値を上げること」の2つ。
そのためになるべく破綻した絵を見せないよう心がけた。
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ドラム経験者のスタッフが本領発揮! 興奮度が増したライブシーン
それでは実際にどのような作業が行われたのか、その一例を見ていこう。
まずは線画の設定と、その設定をもとに作られた3Dのキャラクターモデルだ。
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今作では、前作の3Dモデルを使いつつ表現を高めるということで、「リグ」と呼ばれる3Dモデルの可動機構を随所で改修。
まず髪など部分的に動く、いわゆる「揺れもの」はスクリプトの「SpringMagic」を使用する前提でボーン(骨)の量が多くなっている。柔軟性が問われるダンスシーンを想定し、特に腕周りを強化することで可動時の不自然さを軽減した。
またスカート部分も、足の動きに連動して可動するよう「スクリプトコントローラ」でプログラムを組み調整。これによりめり込み修正の手間を減らし、破綻のない動きを実現した。
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ここからは問題の第12話にスポットを当てて解説しよう。
第12話ではダンスシーンを3Dにするということで、背景となる美術も3DBGで作成した。
第12話で使用した3DBGモデルは、早い段階から背景会社で「blender」によるモデリング作業がスタート。 美術設定に色をつけた「美術ボード」が上がった段階で、3Dステージのテクスチャ作業が進められた。
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モーションキャプチャーは、ダンスや演奏の振り付けの時点でキャラクター性が出るよう動きを考慮した。しかしアニメ的な動きを完全に再現できるものではないため、最終的には収録したデータをアニメーターがブラッシュアップすることになる。
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3Dモデル、3DBG、モーションキャプチャーが準備できたら、いよいよ画面づくりのスタートだ。絵コンテが上がったら、そのコンテをもとにどの部分をCGにして、どの部分を作画にするかを、スケジュールと照らし合わせてケースバイケースで判断する。効果的な方法を検討するのだ。
なおモーションキャプチャーはそのままCG動画になるばかりでなく、作画用の動きのガイドとしてアニメーターに提供される。
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「CG打ち合わせ」では、ミニチュア模型やバーチャルカメラを使用。
バーチャルカメラは「広いライブ会場をどう見せるか?」といった打ち合わせで活用され、リモート化された現場において、監督のイメージをスタッフにスムーズに伝えることに役立ったという。
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CG打ち合わせが済むと、いよいよCGアニメーターの出番だ。「レイアウト」「プライマリ」「セカンダリ」の3つの工程で完成度をあげていく。
なお「レイアウト」はおもにカメラ位置を決める作業。「プライマリ」で表情、揺れもの、ポーズ、タイミングを整えて、「セカンダリ」で映像を仕上げていく。
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キャラクターの動きはモーションキャプチャーをもとに作成される。
モーションキャプチャーは生の動きなので、腕の角度を変えて愛らしくしたり、振り付けで顔が隠れてしまうような時は調整して見栄えを良くしたりしないと画面に映えない。プライマリではそういった部分を処理しつつ全体を整えていく。
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もちろんモーションキャプチャーの生の動きをすべて否定するわけではなく、手付けでの再現が難しい細かな仕草をそのまま残す場合もある。
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制作現場がもっとも意識したのはキャラクターの表情だ。モーションキャプチャーで繊細な動きが付けられた分、フェイシャルにも細かく表情付けを行わないとCGっぽさが強まってしまう。そういった部分に気を使いながらキャラクターの魅力を引き出していく。
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表情で重要視したのが「目を細める」というパターンだ。
今作はデザインに近い細目のパターンを追加した。閉じ目の50%と、デザインされた細目では形状が異なるため、このパターンがないと、目を閉じる際の中間の表情や、笑う時の目を細める表情をうまく描くことができない。
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ライブの華やかさは客席にあり!
ライブシーンでステージを彩るのはアイドルだけではない。客席でペンライトを振る観客もライブの一部だ。
しかし本作第12話では約3万人の配置を予定しており、そのひとりひとりを作業するのは現実的ではない。
そこで今回は全体的に自動化機能を整えたり、モーションを増やしたりして、より効率的かつ効果的に作業できる環境を作り上げた。
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観客のモデルはそれぞれ作り込むのではなく、アップに対応したものと、遠景に対応した簡易版の2種類のモデルを用意してデータ量を削減。
また前作ではペンライトの色を手動で切り替えていたが、今作では色をランダムで割り当てるプラグインを使用し、センターに立つキャラクターのイメージカラーに合わせ、使用する色の割合を調整できるようにした。
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このようにして第12話のダイナミックなライブシーンが完成した。
なおavex picturesの公式YouTubeチャンネルでは、本作のライブシーンを公開中なので、メイキングを踏まえてもう一度ご覧になってはいかがだろうか。
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