
小熊
なるべく作り込まない演技を心がけています
――初めて『スーパーカブ』という作品に触れたのは、オーディションのときですか?
オーディション前に、コミックスを読みました。私も小熊ちゃんと同じように高校生でバイクに乗り始めたので、バイクに初めて乗った小熊ちゃんの気持ちに共感できましたし、小熊ちゃんを演じたい気持ちも強くなりました。
――オーディション時の小熊への印象を教えてください。
物語冒頭では、学校で友達に話しかけるのにも勇気が必要な子だったので、少し気が弱いのかなと思っていました。でも、コミックスを読み進めていくと、芯のしっかりした部分が出てきたんです。ひとりでスーパーカブに乗って出かけたり、自分で修理をしたり……。小熊なりに信念を持って行動しているんだとわかって、すごく素敵な子だと思うようになりました。
――物語冒頭では「両親も友達も趣味もない」というのが小熊の特徴として描かれていますが、その点について夜道さんはどう感じましたか?
ほかの人から見るとさびしいと思われるかもしれないけれど、小熊にとっては普通のことで、意外と楽しんでいる部分もあるのかなと感じました。
――そんな小熊役に決まった感想は?
すごくうれしかったです。ただ、現実味がなく、だまされていたらどうしようと思っていました(笑)。小熊に決まったと実感できたのは、台本をいただいてスタジオにいき、アフレコしたときでした。
――小熊を演じるときは、どんなことを心がけていますか?
「地声のまま演じてください」というディレクションをいただいたこともあり、なるべく作らずに演じることです。ただ、最初は本当にそのままでいいのか、不安もありました。家でセリフの練習をしているとき、本当に小熊ちゃんの声に聞こえるのか心配になってしまって。でも、アフレコを続けていくうちになじんできましたし、日常の会話でそのまま出る声が小熊の声なんだと自信が持てるようになりました。
――夜道さんが感じている小熊の魅力はどんなところでしょうか?
見た目は素朴ですが、バイクについて話し始めると饒舌になるし、バイクに乗っているときだけは笑顔も多くなるところです。バイクに触れると素直に感情が出るんですね。それから、スーパーカブに乗り始めてどんどん表情が豊かになっていくところもかわいいです。スーパーカブという、女子高生にしては渋いバイクに乗っているところもギャップがあって素敵です。
――小熊と似ているところ、また似ていないところは?
トラブルがあっても自分で解決したいと思っちゃうところは似ていますね。第1話で小熊ちゃんはガソリン切れのトラブルに見舞われるんですが、教習所でガソリンの入れ方は教えてもらえないので、初めてのガソリンスタンドで緊張してしまう気持ちはすごくわかりました。それから、私は釣りやキャンプなどのアウトドアが好きなので、そこは似ていないですね。
――小熊に憧れるところは?
最初のころはクラスメイトに自分から話しかけるようなタイプではなかったのに、物語が進んでいくとだんだん成長して、緊張しながらも、クラスメイトにがんばって話しかけようとするんです。苦手なことを避けずにトライしようとする姿は憧れます。
――小熊は、先々で同級生の礼子&恵庭椎と仲良くなります。夜道さんの2人への印象を教えてください。
礼子は頭もスタイルもよくて完璧に見えるんですが、小熊と関わるようになってかなり子供っぽくて陽気な面が出てきます。ほかのクラスメイトに見せる姿と小熊に見せる姿が違うところは、ギャップがあってかわいいです。椎ちゃんは、見た目は子供っぽく、か弱い部分もありそうに見えますが、実際は3人のなかで誰よりも生活力がある。礼子とは逆のギャップがあるところがおもしろいです。
――礼子や椎と話すときは、自然と声のトーンは変わりますか?
椎ちゃんと出会うのは少し先なので、まず礼子との掛け合いで大きく変わった印象です。礼子といるときの小熊は、自分の気持ちをとても素直に出せていると思いながら演じたので、それが声にも出ていると思います。
――アフレコで印象的だった出来事はありますか?
第1話のアフレコで、緊張しすぎた私の心臓の音をマイクが拾ってしまったんです。スタッフの方から「そこまでドキドキしている人は初めて見ました」といわれましたし、自分でも胸が痛くなるくらいだったのですが、実際に音が入っていたと聞いて驚きました。でも、いまはそれもいい思い出だったなと思えるようになりました。
――夜道さん、礼子役の七瀬彩夏さん、椎役の日岡なつみさんでエンディングテーマ「春への伝言」を担当しています。レコーディングの思い出、聞いてほしいポイントを教えてください。
じつは、レコーディングがアフレコよりも早くて、小熊ちゃんのキャラクター像を完璧に把握できていたわけではなかったんです。でも、藤井俊郎監督から「ストレートに歌うところが小熊らしくていいと思います」といっていただけましたし、実際のレコーディングでも一発でOKがいただけたのですごくうれしかったです。3人のハーモニーはすごくきれいですし、何パターンもコーラスを歌ったので、ぜひハーモニーを聞いていただきたいです。
――原作では、スーパーカブのみならず、さまざまなバイクが登場します。夜道さんもバイクに乗られますが、作品のどんなところにバイク愛を感じましたか?
バイクに乗ると、見慣れた風景が違って見えるんですが、そういうバイク乗りだけが感じる感情の変化をていねいに描いてくださっていることに強いバイク愛を感じました。それから、スーパーカブのエンジン音にもすごくこだわってくださっているところも、愛があるからこそだなと思っています。
――物語の見どころを教えてください。
スーパーカブと出会ったときの小熊ちゃんの「相棒を見つけた」感じは、バイクに乗ったことのある方なら、きっとわかっていただけると思います。また、バイクに乗らない方でも小熊ちゃんのドキドキやワクワクがていねいに描かれているので、ぜひ注目してください。それから、山梨県北杜市の風景や建物の描写もすごく美しくリアルですので、街や自然の描き方もチェックしてもらえたらうれしいです。

MegamiにQuestion
Q.チャームポイント
A.肌の白さ
周りの方から「肌が白いね」といっていただけることが多いので、強いていうなら肌の白さです。
Q.ニックネーム
A.よみっちゃん
事務所の方からよく呼ばれています。ファンの方でも同じように呼んでくださる方もいますが、「雪ちゃん」といってくださる方もいて、私はどちらでも、もちろんほかの呼び方でも大歓迎です!
Q.自分の声の特徴
A.ハスキーで通る声
学生時代、塾で友達と話していたら、先生に私だけ怒られたことがあるんです。どうして私だけなのかを聞いたら、「声がすごく通るから目立つ」といわれて。でも、飲食店で店員さんを呼ぶときにはすごく役立ちます。
Q.自分の性格
A.全部自分でやりたがる
バイクが故障したときには自分で全部修理したいし、困ったことがあってもあまり話したくないんです。両親からは「もっと相談してほしい」とよく言われちゃって。両親のことは大好きなんですが、困っているところを見せたくないのかな。
Q.いま、ハマっている趣味は?
A.河原などでご飯を食べる
キャンプとまではいかないんですが、外でご飯を食べることにハマっているんです。外食ではなくて、河原などで。自分でお弁当を作ってバイクで河原にいって、そこで食べて帰るというのが最近は好きです。
Q.バイクの魅力とは?
A.ちょっとだけ乗っている自分を好きになれる
バイクってかっこいい乗り物なので、自分に自信がなくても、乗っている自分もかっこよく思えるんですよね。勇気も自信も持てるので、自分を少し好きになれると思います。ひとりなんだけど、バイクという相棒がいるので、ひとりは好きだけど孤独はイヤという人にもピッタリです。
Q.いま、バイクでいってみたいところは?
A.山梨県と北海道一周
作品の舞台になっている山梨県にはまたいきたいです。それから、2020年はバイクで北海道一周を計画していたんですが、新型コロナウイルスの影響などでいけず、今年はお仕事も忙しそうなので、来年以降、近い将来にはバイクで北海道を一周したいです。
Q.本作のキャッチフレーズ
A.スーパーカブは、自分を少しだけ変えてくれる乗り物
バイクって、手がかかるし扱いづらいし、すぐ倒れるし壊れるし、夏は暑くて冬は寒い、すごく面倒な乗り物だと思うんです。夢みたいに世界を変えてくれるわけでもない。だけど、乗るとちょっとだけ幸せをくれるし、ちょっとだけ日常生活を華やかにしてくれる。その“少し”というのを『スーパーカブ』のアニメは表現してくれると思います。
取材・文/野下奈生(アイプランニング)

プロフィール
夜道雪【よみち・ゆき】11月21日生まれ。キャトルステラ所属。主な出演作は、テレビアニメ『その時、カノジョは。』チアキ役、ゲーム『ウチの姫さまがいちばんカワイイ』ピィナ役など。
『スーパーカブ』作品情報
毎週水曜1時35分よりTOKYO MXほかにて放映中
【あらすじ】
山梨県北杜市の高校に通う小熊は、両親も友達も趣味もなく日々を過ごしていた。そんなある日、小熊はふと見かけた中古のバイク・スーパーカブが気になり、ついに買ってしまう。スーパーカブを手に入れたことで、小熊には新鮮な日々が訪れる。
(C)Tone Koken,hiro/ベアモータース