「GUNDAM SONG COVERS 2」はみんなの想いをのせた一枚。森口博子が緊急事態宣言下で感じた繋がり【インタビュー】 | 超!アニメディア

「GUNDAM SONG COVERS 2」はみんなの想いをのせた一枚。森口博子が緊急事態宣言下で感じた繋がり【インタビュー】

森口博子さんによるガンダムソングカバー&セルフカバーアルバム『GUNDAM SONG COVERS 2』がリリース。本アルバムの魅力などに加えて、ガンダムソングへの想いを森口さん本人に聞いた。

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 森口博子さんが2019年にリリースしたガンダムソングカバー&セルフカバーアルバム『GUNDAM SONG COVERS』。デビュー35周年と全ガンダム大投票で1位と3位に森口さんが歌唱したガンダムの楽曲が入った事がきっかけで発売された本CDは、セールスが10万枚を突破し、2019年末には「日本レコード大賞」の企画賞を受賞するなど、記録にも記憶にも残る一枚となった。

 続編のリクエストの声も多い中、『GUNDAM SONG COVERS』の第2弾が2020年9月16日に発売。本作はインターネット上で行われたファン投票の結果、上位10曲にランクインしたガンダムソングを収録したカバーアルバムである。発売されて1週間が経った時点で、オリコン週間アルバムランキングで2位、Billboard JAPAN週間アルバム・セールス・チャートで2位を獲得するなど、数字上からも既に多くの反響があることが明らかとなっている。

 今回は『GUNDAM SONG COVERS 2』のリリースを記念し、森口さんにインタビュー。本アルバムの魅力などに加えて、ガンダムソングへの想いを、森口さんの曲に思い入れのあるライター・M.TOKUが聞いた。

「GUNDAM SONG COVERS 2」通常盤

ファンの方の期待に応えたい


――本日はよろしくお願いします。私、実は最初に買ったのが森口さんのCDだったんです。
 えっ、嬉しい! ありがとうございます!

――私「ガンダム」シリーズが大好きでして……。中でも『機動戦士ガンダムF91』は、主人公・シーブックの言葉、そして鉄仮面の存在に衝撃を受けたんです。こんな思想の親がいたら、自分ならどうするんだろうって。そこから主題歌も好きになって、気が付いたらCDを購入していました。
 作品に衝撃を受けて、CDまで...感激です! 最初に買った「CD」とおっしゃっていたので、「ETERNAL WIND ~ほほえみは光る風の中~」だと思いました。「水の星へ愛をこめて」はレコードですから(笑)。

――なるほど! 私は「ガンダム」をはじめ、自分が感動したり熱くなったりしてきたアニメや音楽を多くの人に知ってもらいたいという想いでこの業界にも入ってきました。なので、本日は感無量です。
 鳥肌が立ちました……! 嬉しい。グッときちゃう。ありがとうございます。

――私と同じように、「ガンダム」へ想いを馳せている人は少なくないと思います。実際、今回の『GUNDAM SONG COVERS 2』で行ったファン投票企画でも、10万票が集まっています。
 本当に「ガンダム」って長年愛されていますよね。世代も国境も越えて何十年と楽曲を大切にしてくれているファンのみなさんに感謝です!

――今回、ファン投票をやろうと思ったきっかけは何だったのでしょうか?
 前作の『GUNDAM SONG COVERS』はNHKの「発表!全ガンダム大投票」でガンダム40年の歴史、361曲以上ある主題歌の中から私のデビュー曲『機動戦士Ζガンダム』のテーマソング「水の星へ愛をこめて」が1位に!劇場版『機動戦士ガンダムF91』の主題歌「ETERNAL WIND~ほほえみは光る風の中~」が3位にランクインされた事からベスト10をカバー&セルフカバーしようという企画でした。そのアルバムがオリコンウィークリーランキング3位に入ったり、「日本レコード大賞」の企画賞を受賞したりと、自分でも驚くくらいの反響をいただきました。
 また、私は毎日エゴサ(エゴサーチ)をするのですが、前作を発売したときに「進化した歌声に震えた」「森口博子を舐めていた」「アーティスト森口博子が一曲・一曲を昇華している」「ガンダムを通ってこなかったけど、いい曲ばかり」「原曲主義だけどこのアルバムは泣ける」と、好意的な言葉をたくさんいただいて。長年のファンの皆さんは勿論、作品を知らなかった方々にもお伝えできて良かったなぁと。イベントでは、ファンの皆さんやスタッフの方々が涙を流してくださいました。その中で続編を望む声もたくさんあったんです。そんな皆様の期待に応えたい、もっともっとガンダムソングの魅力をお届けしたいと。私に歌って欲しいガンダムソングをファンの皆さんに決めていただき、その曲を歌いたいと思ったんです。

――結果、再び大きな反響を呼んでいます。実際に集まった曲を見て、どう感じましたか?
 またまた名曲揃いだと!これはかなり挑戦的な楽曲だなと思うものもあれば、逆に自分の声質に合っているなぁと思える世界もあったり、バラエティーに富んでいました。ファンの方々から「森口さんの歌声で想像できる」と言ってもらえる曲もありました。「星空のBelieve」は『機動戦士Zガンダム』のエンディングテーマ曲なので、オープニングテーマ曲を歌っていた私にとっては、運命共同体的な存在なんです。
 ワンフレーズ、ワンフレーズがソーシャルディスタンスを保ちながら生きている私たちと、シンクロする歌詞でこのカバーが偶然と思えませんでした。原曲を歌っているのは『フィーバー機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』の楽曲でコラボさせていただいた、姉妹のように仲が良い鮎川麻弥さん。当時から麻弥さんの伸びやかな歌声が耳に残る曲で、私の鼻歌ベスト5に入るくらい好きだったんです。それくらいファミリーソングとして馴染んでいた曲だったので、ランクインしたのは嬉しかったですね。

――ファミリーソングという言葉が素敵です。
 ありがとうございます。そういう意味では、TVシリーズとしてはデビュー曲の作品『機動戦士Zガンダム』の続編にあたる『機動戦士ガンダムZZ』の楽曲が2曲ランクインしたのも感慨深いですし、自分としてもしっくりきました。「月の繭」(『∀ガンダム』エンディングテーマ)はガンダム30周年のメモリアルコンサートで初めて曲を聞いたのですが、「なんて神々しくて美しい曲なんだろう」と感動したのを今でも覚えているので、歌えると分かったときは嬉しかったです。独特のこぶしを入れたり、異次元の雰囲気を出してみたところ、SNSでもかなり好評でした。あとは、「銀色ドレス」(『機動戦士Zガンダム』挿入歌)と「君を見つめて」がランクインしたのが、やっぱり嬉しかったですね。

――どちらもご自身の楽曲、セルフカバーとなります。
 そうなんです。360以上もある「ガンダム」主題歌のなかで、自身が歌った曲を上位に選んでいただけてホッとした気持ちも(笑)。「銀色ドレス」は、デビュー曲のカップリングで『機動戦士Ζガンダム』の20話で一度しか流れないですからね。フォウ・ムラサメが自己犠牲のもと主人公のカミーユ・ビダンを救って宇宙へ飛び立たせる名シーン。それなのに、35年が経った今でもファンの方々が大切にして下さって……。感謝の気持ちでいっぱいです。
「君を見つめて」も思い出深い曲ですね。この曲は元々『F91』のメイン曲になるはずだったんですが、富野(由悠季)監督の一声で、カップリング曲だったはずの「ETERNAL WIND」がリリース直前でメインとなりました。どちらもクオリティが高く、『F91』の世界観を強調する楽曲だったので、このタイミングでまた日の目を見ることとなって、投票してくれたファンのみなさんの笑顔が浮かびます!

――「君を見つめて」は、元T-SQUAREでサクソフォーン奏者の本田雅人さんとコラボレーションした編曲で再収録されています。
 本田さんが演奏に参加してくださったことで、クールとパッションが共存する演奏で、大人の世界に仕上がりました! この曲の冒頭のサックスソロは、『F91』の作中でセシリーが漂流して音がなくなる、あのシーンの一連を表現しています。「宇宙の無音をください」と本田さんにリクエストしましたら、見事にカッコよく決めてくださいましたので、ぜひ作品のシーンを思い浮かべながら聴いてください。
 先日公開されたMVもバンドスタイルでかなりオシャレなロックに仕上がっています! 森口博子公式YouTubeチャンネル、是非登録してくださいね(笑)。また、この曲の落ちサビでは、1991年当時の私の20代の歌声に今の50代の歌声を重ねているんですよ。声が重なった瞬間、こんなにも長く歌わせていただいているんだなという喜びを感じて涙が。ファンの皆さんやスタッフの皆さんと歩んできた歴史の証です。

――それだけ長くこの曲が愛されてきた証拠ですもんね。
 そうなんです。聴いてくれた人たちの人生のドラマが詰まっています。29年の刻を経てまさか過去と今の自分がコラボレーションする日がくるなんて……。思ってもいませんでした。

――91年の頃と今の自分の歌声には、どのような違いを感じますか?
 もう全然違いますね。91年の私は「真面目か!」って感じです(笑)。

――真面目(笑)。
 ピュアでひたむきにあの曲に向かっていたんだと思います。ただ、今は当時とは違う感覚で歌っていますね。大人になってから改めて『F91』を見返したとき、素敵なセリフが散りばめられていたことに気が付いて、号泣したんですよ。本作は家族にもスポットを当てています。特に、主人公のシーブックが絶望したときに、希望を導く母親・モニカの言葉は響きました。「目の前の景色に囚われていたら何も見えない。何も感じられないわ」「引き寄せなさい、それができるのも人の命の力なのよ」という金言は、自分の人生ともシンクロしました。
 オリンピック選手の中には、自分がメダルを取ったときの姿を想像するメンタルトレーニングを取り入れている方がいると聞きます。そうやって勝利を引き寄せる。これって、学校・家庭・社会や、芸能界という表現の世界でも大切なことだと思うんですよね。富野監督は29年も前から「ガンダム」を通じてそのことを私たちに教えてくれていたんです。今はそういう想いを乗せて歌っています。

――「ガンダム」って、小さいころに見ていたときと、大人になってから見たときで感じることや共感できる部分が変わる気がします。
 年齢を重ねてきたからこそ新しい発見ができたり、プラスアルファの情感が生まれたりすると私も思います。「ガンダム」は作品のストーリーが複雑で、単純な善悪では語れない。富野監督(井荻麟名義)が作詞された「哀 戦士」でも「名を知らぬ戦士を討ち 生きのびて血へど吐く」と伝えています。戦いや争いごとがあったとき、「犠牲者」という言葉が使われますが、両者ともが「犠牲者」なんですよね。今は、そういう言葉ひとつひとつの意味も噛みしめるようになりました。



原曲へのリスペクトが第一、そこから新しい息吹を吹き込む


――これまでいくつかのカバーソングについてお話いただきましたが、「ガンダム」のカバー曲を歌うとき、特別意識されることはありますか?
 まず、原曲へのリスペクトが第一。ファンの方々が絶対に聞きたいであろう印象的なフレーズは極力残します。そこから森口博子が新しい息吹を吹き込むための挑戦をしていく。その塩梅を調整するのが、カバーの核となっています。

――今回のアルバムは、まさにその塩梅を探って丁寧に作られていると感じました。
 寄せすぎるとただのコピーとなってしまうけども、離れすぎてもいけない。そのバランスを探るため、アレンジの作業に入る前からスタッフとミーティングを重ねました。「この楽器を入れよう」「アコギ(アコースティックギター)のソロを入れよう」「オリジナルとの差別化もいいけど、出だしの雰囲気は変えたくない」など、各楽曲で色々な意見が出ましたね。

――差という点でいえば、各楽曲でストリングスやブラスサウンドが加わっていたり、「君を見つめて」の本田さんのように豪華ミュージシャンの方とコラボしたりしているが本作の醍醐味のひとつだと思います。
 各曲の方向性についても綿密に協議を重ねました。その中で、何曲かは豪華ミュージシャンの方とコラボして贅沢な音作りをしよう、という話が挙がったんです。私のなかで「この曲はこの方にお願いしたい」というイメージもありました。本田さんもそうですし、例えば、「サイレント・ヴォイス」(『機動戦士ガンダムZZ』オープニングテーマ)は、アルバムの1曲目だったので、イントロでジャズヴァイオリニストの寺井尚子さんの情感豊かなソロで始まったら、絶対インパクトあると!! そして間奏にも、尚子さんのドラマチックで情熱的なヴァイオリンソロを入れたかったんです。
 歌と同時レコーディングだったんですが実際、あの尚子さんの魂のソロ演奏は複雑な精神状態や戦いの緊張感が一音・一音に表れていて、痺れました! すごく豪華な幕開けになったと感じました。一方で、イントロの「チャチャチャ!」というブレイクの部分は残したかったんですよね。

――先ほどおっしゃっていた印象的なフレーズを残す、ということですね。
 そうです。「これこれ!」というパートは他の曲も含めて極力残すようにしました。「サイレント・ヴォイス」の先行配信をしたときに「ヴァイオリン、たまりません」「ボーカルがカッコ良くて、新しい博子さん!」という声をいただけたんです。皆さんがリアレンジを受け入れてくれたのがとても嬉しかったですし、シンガーとして成長できた、歩みを認めてもらえたという手ごたえも感じられました。

ーー早く全曲聞いてもらいたい?
 リリースされましたので、まだ聴いていないという方にも届く日が、すごく楽しみです。同じく『ZZ』の楽曲で、エンディングテーマに採用された「一千万年銀河」では、ピアニストの塩谷哲さんに演奏をお願いしました。個人的にこの曲のカバーをするなら、塩谷さんのピアノしかないと! 宇宙の壮大なロマンや、富野監督が詞に込めた地球再生という凛とした哀愁をあの透明感のあるピアノでと。塩谷さんはその期待通り、キラキラした音色で銀河のきらめきや、人間の機微を見事に表現してくださいました。
 この曲は塩谷さんと一緒にレコーディングしたのですが、私の声を聴いて塩谷さんの演奏も変わるという化学反応が起きました。お互いの呼吸を合わせながら音楽を作れたので、すごく楽しかったです。その日がピアノの日だったのも、運命を感じました(笑)。

――なるほど(笑)。
「いつか空に届いて」では、20代の頃にアルバムとシングルでお世話になった武部聡志さんとご一緒しています。この曲は、エバーグリーンの輝きを大切にしたかったので、風を感じるような世界をリクエストしましたが、アイリッシュな世界に仕上げてくださいました。とにかく武部さんのピアノとアレンジが心地良くてもう~流石でした! のびのびと安心して歌うことができました! 再びこうやって音楽をやらせていただく歓びに包まれた幸せな同時レコーディングになりましたね。
 また、「あんなに一緒だったのに」(『機動戦士ガンダムSEED』エンディングテーマ)で演奏に参加してくださった押尾コータローさんとは、前回のカバーアルバムでもご一緒していたんです。ただ、前回は一緒にレコーディングできたのに、今回は同時にはできなくって……。あんなに一緒だったのに。

――森口さん節炸裂ですね(笑)。
 すいません(笑)。一緒にレコーディングできなかったのは残念でしたが、押尾さんのパーカッシブなギターがすごくカッコイイので、あえて1コーラスは音数を少なくして、2コーラス目で変わったらインパクトが出るんじゃないかなと感じて、そのようなアレンジをお願いしましたら見事にハマりました。押尾さんが作り出すスパニッシュな雰囲気のリアレンジ、最高です。
 その後に私もレコーディングしたのですが、何回か歌っているとふと、その場にいないはずの押尾さんの姿が見えて、アイコンタクトができたんです。それがOK TAKEとなりました。

――それはもう、ニュータイプですね。
 そうだ、ニュータイプだ!

――もう言葉がなくても通じ合えたんです。
「今のよかったよ」とレコーディングで言われたとき、押尾さんがそこにいると本当に感じました。感じたといえば、原曲を歌唱されている石川智晶さん。このカバー曲をレコーディングする3日前に、私は生配信のライブを行っていたんですよ。そのライブを石川さんが観てくださっていて! しかも、SNSで「笑って、歌で泣いた。こんなに面白かったなんて、、」と感想を呟いてくださってたのをエゴサで発見! その感想から、勝手ではありますが、すごくパワーをいただいていました。

――後押ししてもらえているように感じたんですね。
 そうです。こんなタイミングってあるんですね!! そのSNSを眺めながら一人で会話しているような(笑)。

――なるほど(笑)。
 また、本アルバムには、森口博子枠として、「限りなき旅路」と「暁の車」がボーナストラックに収録されています。「限りなき旅路」はレギュラー番組BS11「Anison Days」で以前カバーさせていただいた時に出会って、どうしても今回のアルバムに入れたかったんです!! 家で練習しているとき、説明のつかない涙が出てきました。意識が飛びそうなスペイシーソングの極みだと感じています。
 菅野よう子さんの楽曲はどれもカッコよくて素晴らしい。痛みを伴う希望に満ちた歌詞にも震えました。そんな壮大なこの楽曲、私には大勢で歌う絵が見えたんです。命と命を共鳴しながら歌いたいと思い、ゴスペルコーラスグループのThe Voices of Japan(VOJA)さんとコラボさせていただきました。コーラスのレコーディングを見学させていただいたのですが、キングレコードのスタジオが宇宙になっていましたね。全身から漲るVOJAさんたちの力強い歌声に、感動で涙がこぼれました。

森口博子

夢には締め切りがない


――ここまでのお話を聞いていて、今回のカバーアルバムは、色々な人の想いがのった一枚になっていると感じました。
 本当にその通りだと思います! 今回のカバーアルバムは「私が好きな曲を集めました」というものではありません。ファンのみんなの人生が詰まったバトンを、ファン投票という形で受け取っています。緊急事態宣言が発令されて、今回のレコーディングは3曲を収録した時点で一旦中断となりました。もちろん発売日も延期。ただ、レコーディングが再開するまでの間はモチベーションを保ち、喉の状態もキープしないといけなかったんです。世界が目に見えないものと戦っているなか、私もコンディションを維持しながら、バトンを落とさないように必死でした。自粛のお家時間は音楽の熟成期間だと受け止めながら。
 そんな日々が続いたなかでも、無事にアルバムを発売できたのは、SNSなどで「楽しみが先延ばしになっただけです」「時間が延びた分、ゆっくりと作ってください」といった励ましの声があったから。みんなが待ってくれている、それだけで前向きになれたんです。生命を守るために、みんな一緒に色々なことを失った中で、生き抜きながら制作したアルバムなので、一生忘れられません。

――制作のなかで、SNSやオンラインでの繋がりも感じられたんですね。
 そうですね。新型コロナウイルスの影響で予定していたライブツアーや国際フォーラムでの35周年のコンサートなども中止になりましたが、代わりに生まれて初めての生配信無観客ライブを行いました。最初は成立するのか不安でした。いつものコンサートでは、拍手をいただいたり、音楽でファンの皆さんとエネルギー交換はもちろん、MCでのコミュニケーションも大切にしていたので。「かわいい~」と言われたら「最近は日によりけりね」というやり取りや、しゃがんで靴の紐を結び直すフリをして「あれ、パンツ見えた?」と尋ねて「いえ、見えてないです」と言われ、「えっ、見えてない?」「見えてないです」「見なさいよ!」というお約束があるのですが、無観客ライブだとそれもできない(笑)。だから、「寂しいな」という気持ちもあったのですが、実際にライブをやってみたらチャットなどで反応がきたり、拍手をオンライン上で送ってもらえたので、心細くなかったんですよね。
 失われた環境のなかでみんなが同じベクトルに向かったことで、より深い絆が生まれたと感じました。目指すはいつものようなお客さんのエネルギーを感じる生のライブですが、並行してオンラインライブをするのは、悪くないな、この音楽の応急処置は、むしろありだなと思いました。日頃、コンサート会場へ行きたくても行けない地域の方も、特等席で独り占めできるし。

――オンラインライブは、こういう事態にならないと、やらないことだったかもしれません。
 そうですね。人って、環境が変わったり逆境に立たされたりするときに生き方が問われるんだなと改めて思いました。そこでネガティブに立ち止まるのか、何かを見出すのかによって、差が出るかもしれません。

――ネガティブにとらえるか立ち止まるか、ポジティブに行動するかで、明らかに生活様式が変わった今の過ごし方が少し変わる気もします。
 そうですよね。もしかしたら、5年後には違う課題にぶちあたっているかもしれない。その頃には「あの時はマスク足りなかったよね」とか、「消毒で手がカサカサだったよね」と言っている私たちがいると、信じています。

――本日は色々とお話いただきありがとうございました。最後に、森口さんが感じる、ガンダムソングの魅力を教えてください。
 “生きる”ということを問いただされるドラマが息づいているスケールの大きさ。壮大だったり、力強かったり、美しかったり。哲学的で普遍的なテーマでの重厚感だと思います! 長い40年の歴史のなかで、色々なアーティストの方やスタッフのみなさんが丁寧に作ってきたガンダムの楽曲たちは、どれもクオリティが高いんです。だからこそ、色褪せない。中には深い世界ゆえに食わず嫌いの方がいらっしゃるかもしれませんが、そういう方にもぜひ聴いていただきたいです。360以上あるテーマソングのなかで、絶対に何かを感じる曲があるはず。そんな曲に出会った時の驚きと感動を味わって欲しいです。

――その出会いのきっかけが、今回のアルバムになるかもしれません。
 そうなれば嬉しいです! 前回のアルバムで、オリコンウィークリーランキング3位に入り、28年と2カ月ぶりにアルバムのベスト10に入りました。女性アーティストのインターバル記録1位だったんです。これは、ゆるぎない思いで作品を大切にしてくれたファンのみんな、そして、いつも厳しい環境のなか一緒に戦い、守ってくれたスタッフのみなさんとの絆があったからこその結果だと思います。心から感謝の気持ちでいっぱいです。
 夢には締め切りがないんだと、カバーアルバムを通じて改めて感じました。そのアルバムの続編ということで、たくさんの人の想いがさらに大きくなってます。デビュー35周年にそんな熱いアルバムを作ることができて、心から幸せです。その想いをぜひ一人でも多くの人に受け取って欲しいですね。

プロフィール
森口博子【もりぐち・ひろこ】1985年テレビアニメ『機動戦士Ζガンダム』の主題歌「水の星へ愛をこめて」でデビュー。音楽活動と並行し、様々なジャンルで活躍。レギュラー12本かかえ、幅広い層に支持される。1991年に映画『機動戦士ガンダムF91』の主題歌「ETERNAL WIND ~ほほえみは光る風の中~」がヒットし、初のベスト10入りを果たす。同年から6年連続でNHK「紅白歌合戦」に出場。透明感に深みとパワーが増した歌声で、ライブ活動でも人々を魅了している。

『GUNDAM SONG COVERS 2』商品概要
発売日:発売中
【通常盤】3,000円(税別) ※初回製造分のみスリーブケース仕様
【収録楽曲】
01.サイレント・ヴォイス / with 寺井尚子 (「機動戦士ガンダムZZ」オープニングテーマ)
02.銀色ドレス(「機動戦士Zガンダム」挿入歌)
03.君を見つめて-The time I‘m seeing you- / with本田雅人(「機動戦士ガンダムF91」イメージソング)
04.いつか空に届いて / with武部聡志(「機動戦士ガンダム0080 ポケットの中の戦争」オープニングテーマ)
05.あんなに一緒だったのに / with押尾コータロー(「機動戦士ガンダムSEED」エンディングテーマ)
06.星空のBelieve(「機動戦士Zガンダム」エンディングテーマ)
07.DREAMS(「機動新世紀ガンダムX」オープニングテーマ)
08.一千万年銀河 / with塩谷哲(「機動戦士ガンダムZZ」エンディングテーマ)
09.月の繭(「∀ガンダム」エンディングテーマ)
10.MEN OF DESTINY(「機動戦士ガンダム0083 STARDUST MEMORY」オープニングテーマ)
-Bonus Track
11.暁の車(「機動戦士ガンダムSEED」挿入歌)
12.限りなき旅路 / with VOJA(「∀ガンダム」最終話エンディングテーマ
《M.TOKU》
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