塚田拓郎監督が語るTVアニメ『荒ぶる季節の乙女どもよ。』の楽しみ方「5人が抱える恋の葛藤は、観る人もずっと気になると思う」【インタビュー】 | 超!アニメディア

塚田拓郎監督が語るTVアニメ『荒ぶる季節の乙女どもよ。』の楽しみ方「5人が抱える恋の葛藤は、観る人もずっと気になると思う」【インタビュー】

文学部に所属する5人の女子高生たちの、性に振り回される青春を描く岡⽥麿⾥×絵本奈央による新⻘春群像劇『荒ぶる季節の⼄⼥どもよ。』が好評放送中。塚田拓郎監督のインタビューが、「アニメディア8月号」に掲載中。超!アニメディ …

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  • 塚田拓郎監督が語るTVアニメ『荒ぶる季節の乙女どもよ。』の楽しみ方「5人が抱える恋の葛藤は、観る人もずっと気になると思う」【インタビュー】

 文学部に所属する5人の女子高生たちの、性に振り回される青春を描く岡⽥麿⾥×絵本奈央による新⻘春群像劇『荒ぶる季節の⼄⼥どもよ。』が好評放送中。塚田拓郎監督のインタビューが、「アニメディア8月号」に掲載中。超!アニメディアでは、本誌に入りきらなかった部分を含めたロング版をご紹介する。


――原作マンガの魅力を教えてください。

 少年マンガ誌に連載されていますが、少女マンガチック。イケてない5人の少女たちの瑞々しい青春ものですが、恋愛の美しさよりも精いっぱい生きている結果としてのこっけいさやみじめさが魅力的。そこに原作者の岡田さんが生み出したセリフのパワーや強さによって、キャラクターひとりひとりを引き立たせているのがすごく面白いと思いました。話が進むにつれて5人が葛藤し、心の暗部的なところまで入ってくる。大人から見ると些細な問題も多いですが、葛藤する5人が直面する生々しさは大人の僕も共感する部分があります。

――アニメ化で心がけていることは?

 1話でも「セックス」という言葉を使ったり、和紗の幼なじみの男の子・典元泉くんの自慰シーンが登場したりと、性的に際どいところを扱っています。でも、本作で描きたいのはエロスでなく、和紗たちが性的なものに対して右往左往し、じたばたする姿。重苦しく悩んで暗くなるのではなく、ライトに、コミカルに見せようと意識しています。

――では演出面で工夫している部分は?

 映像表現として、原作マンガのアイデアや雰囲気を大事にしたいと考えて、リアルさやディテールを突き詰める絵づくりはしていません。キャラクターデザインはシンプルで少ない線の数に、背景も淡い色使いにしています。そうした部分は少女マンガのイメージに近く少年マンガのアプローチとは違うところです。エロスを描く作品では服のシワなどで肉感を強調する手法もありますが、本作ではそちらの方向には行かない形で見せたい意識があります。男性・女性、両方に観てほしい気持ちもあるので、試行錯誤しながら作っているところです。

――アニメオリジナルのエピソードはあるのですか?

 原作マンガは、岡田麿里さんのシナリオをもとにマンガ家の絵本奈央さんが絵的な部分で自分のアイデアをふくらませて描いたもの。アニメも同じシナリオを使っています。密度が濃いシナリオなので、アニメオリジナルのエピソードを加える隙はありません。むしろ、アニメの物語は、時間的な問題で、エピソードを再編集したり、圧縮したり割愛したりするなどの調整をした形になっています。ただ、1話のラストで「パチンコ・揚げ饅頭・チンアナゴ、電車が和紗の股間に向かって走っていく」などのカットで性的な描写をバカらしく表現するなど、映像演出として、マンガよりも強調した表現になっている部分もあります。あくまで演出でイメージをふくらませているレベルなので、オリジナルエピソードの展開ではありません。基本的には、再編集での調整と、その整合性をとるためにエピソードの入れ違いがあるくらいでしょうか。

――コミックス1巻の半分でアニメの1話分くらい?

 そんな感じです。コミックスには4話収録されていて、マンガの1話がアニメ1話のAパート、マンガの2話がアニメ1話のBパートという感じ。コミックス1巻でアニメ2話分くらいになります。


――この作品での新たな試みはありますか?

 シンプルな絵づくりでまとめたいと思ってます。でも、そのシンプルさがスカスカなフィルムと感じられてはいけないので、悪戦苦闘しているところです。淡い色づかいもその延長です。密度が濃い作品の制作は現場が大変です。どうしたらシンプルでも作品として観せられるものになるのかは、個人的にはチャレンジと考えています。

――スタッフにはどのような指示をされているのですか?

 「少女マンガ」というのが一番伝わりやすいかなと思います。淡い感じで、生々しさを中和する。キャラクターの見せ方としてもそうですが、美しさが出るといいなと思います。なにしろセリフが力強いので、それに対して生々しくするよりは、ちょっとライトな感じにしたいなと思います。

――性的な表現が多く登場しますが、配慮している部分はありますか?

 性的なものも含めて、セリフは作品の魅力なので、あまり原作を変えたくないと思っています。例えば「セックス」という単語の使いどころは難しいですが、それに立ち向かう主人公たちの物語なので、避けて通るわけにはいきません。アニメ版も逃げたくないと思っています。

――アニメ版ならではの魅力は?

 音の力は大きいです。そこはマンガとの一番の違いで、アニメの魅力だと思います。1話のラストのカオス(混沌)さを観ていただいた方には、アニメ化する意味やアニメ版の魅力の一端は伝わったのではないでしょうか。

――共同監督の役割分担はどうなっているのでしょう?

 安藤真裕監督は、僕が初めて演出をやらせていただいた監督です。今作も一緒にやらないかと誘っていただきました。そうした経緯で、今回共同監督という形でやらせていただいています。役割的には、絵コンテを安藤さんがメインで描き、僕は各スタッフとのやりとりなど、主に現場を見ていくというのが大きい役割です。

――和紗のキャラクターを紹介してください。

 彼女にはふたつの大きなポイントがあります。ひとつは、メインキャラ5人のなかでは一番成熟度が低い。中学生か小学校高学年くらいの初心さ・おぼこさだと思います。もうひとつは、イケてなさ。一番イケてないように見えてしまう。性として観たときには、イケてなさが際立つかな。たとえ好きな人ができても自分を磨くことはありませんし、意外にわがままなところがあって、そこも子どもなのかな。純粋さとも言えますし、一生懸命にあがく姿がこっけいだったりする代表だと思います。

――彼女は物語のなかでどのように成長しそうですか?

 成長といえるかわかりませんが、変化はあります。性に対する意識が芽生えて、恋することにもつながってきて、そこで右往左往する。本作のタイトルに「季節」とありますが、時間軸としては一瞬の出来事。1か月くらいだと思うんです。濃密な季節で、一瞬のきらめきみたいなことだと思います。そのなかで和紗が何かに達観することはないでしょう。これから先も何度も繰り返す。それがあがくということだと思います。そういう意味では、同じ年齢で、考えが固まりかけている新菜と対になるキャラクターかな。

――その新菜について教えてください。

 はかなげで美人で一目置かれる存在というビジュアル。外見的に洗練されてい最初は何を考えているのかよくわからないクールなキャラクターですが、話が進むにつれて秘められたものが見えてきます。「セックス」というセリフも最初に言い出すし、本作でのセックスシンボルのようなところがあります。作品世界の人たちはそういう目で彼女を見ているし、視聴者も観ると思いますので、5人のなかでは唯一、新菜だけはそこはかとなく色香を感じさせるようにしています。ただ、肉感的というよりは、精神的な、男心に訴える魅力でしょうか。そういう意味では、女性には好かれないかもしれません。好かれるとうれしいですけどね。弱さ、もろさはあるけれど、先に進んでいく覚悟を持っている子なので、すごく魅力があると思います。

――物語を楽しむアドバイスをお願いします。

 メインキャラクター5人が今後それぞれ抱える恋の葛藤は、観る人もずっと気になると思います。僕自身、やきもきしながら読んでいました。「このふたりは結ばれるだろう」という思いを裏切られるなどして、最後まで安心できません。そうしたドキドキ感や不安感をお楽しんでもらえたらと思います。

――彼女たちはどんな夏休みを送りそうですか?

 基本的に文芸部員たちは、夏休みに予定をぎゅうぎゅうにつめこむイメージがないですね。家や図書館で本を読むことはありそうですが、プールとかに行くことはなさそう。家族旅行には出かけても、友達と出かけるイメージはないですね。本編では触れませんが、高校生ですから勉強してるのかな。記憶に残らない夏休みを過ごしそうですね。

――そんな彼女たちが、性に振り回されないようにするにはどうしたらいいでしょう

  妄想するより、実際に経験する方がいいかなと。彼女たちは人と接することに対して臆病になっていて、文芸部という小さな世界に居続けようとしています。でも、そんな小さな世界は、時間が経てば卒業することで簡単に崩壊していく。そんな世界を続けることにどんな意義があるのかな。そこから出ていかないかぎり、発展性はありません。一歩踏み出すことにより「変化」という「荒ぶる季節」が始まります。そこではいろいろな問題に振りまわされるかもしれませんが、ひととおり振りまわされることで、振りまわされなくなる力を得られるかもしれません。説教くさくなってしまいますが、世界を広げるパワーはあってほしいですね。これは僕自身の荒ぶる季節の反省をこめてです(笑)。でも、荒ぶる季節のまっただなかにいる人たちには、それが世界のすべてに思えるでしょう。振り回されることを恐れずに、荒ぶる季節を精一杯楽しんでみては。

〈『荒ぶる季節の⼄⼥どもよ。』情報〉
2019年7⽉より、MBS/TBS/BS-TBS“アニメイズム”枠ほかにて放送
MBS・TBS︓毎週⾦曜⽇ 深夜2:25〜
BS-TBS︓毎週⼟曜⽇ 深夜1:30〜 
AT-X︓毎週⽉曜⽇22:30〜
(リピート放送︓毎週⽔曜⽇14:30〜、毎週⼟曜⽇6:30〜) 
※放送⽇時は予告なく変更の可能性があります

■ 原作 『荒ぶる季節の⼄⼥どもよ。』 (講談社「別冊少年マガジン」連載) 原作︓岡⽥麿⾥ 漫画︓絵本奈央 
■スタッフ
監督︓安藤真裕、塚⽥拓郎 
脚本︓ 岡⽥麿⾥ 
キャラクターデザイン/総作画監督︓ ⽯井かおり 
⾳楽︓⽇向 萌 
美術監督︓中久⽊孝将、中尾陽⼦ 
⾊彩設計︓⼭崎朋⼦ 
撮影監督︓⻑⽥雄⼀郎 
⾳響監督︓郷 ⽂裕貴 
編集︓髙橋 歩 
プロデュース︓斎藤俊輔 
アニメーションプロデューサー︓⽶内則智 
アニメーション制作︓Lay-duce

■キャスト 
⼩野寺和紗役︓河野ひより 
菅原新菜役︓安済知佳 
須藤百々⼦役︓⿇倉もも 
本郷ひと葉役︓⿊沢ともよ 
曾根崎り⾹役︓上坂すみれ 
典元 泉役︓⼟屋神葉
⼭岸知明役︓福⼭ 潤 
天城 駿役︓広瀬裕也 
三枝 久役︓咲野俊介 
⼗条園絵役︓⼾松 遥 
杉本 悟役︓花江夏樹

■⾳楽
・オープニング主題歌 CHiCO with HoneyWorks「⼄⼥どもよ。」
・エンディング主題歌 ⿇倉もも ・楽曲プロデュース HoneyWorks

©岡田麿里・絵本奈央・講談社/荒乙製作委員会

《超!アニメディア編集部》
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