アニメ『MIX』日高のり子が語るあだち充作品が愛される理由「悪い人がいないから、観ていると浄化される」「“タッちゃん”の本音を一番受け止めていたのが、パンチだったんじゃないかな」【インタビュー】 | 超!アニメディア

アニメ『MIX』日高のり子が語るあだち充作品が愛される理由「悪い人がいないから、観ていると浄化される」「“タッちゃん”の本音を一番受け止めていたのが、パンチだったんじゃないかな」【インタビュー】

現在放送中の『MIX』で、ナレーションを務める日高のり子のインタビューが、「アニメディア8月号」に掲載中。同じくあだち充原作漫画をアニメ化した『タッチ』では、伝説のヒロイン・浅倉南を演じた日高が、『MIX』ではナレーシ …

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  • アニメ『MIX』日高のり子が語るあだち充作品が愛される理由「悪い人がいないから、観ていると浄化される」「“タッちゃん”の本音を一番受け止めていたのが、パンチだったんじゃないかな」【インタビュー】

 現在放送中の『MIX』で、ナレーションを務める日高のり子のインタビューが、「アニメディア8月号」に掲載中。同じくあだち充原作漫画をアニメ化した『タッチ』では、伝説のヒロイン・浅倉南を演じた日高が、『MIX』ではナレーションと合わせて、仔犬のパンチ役も担当した。超!アニメディアでは、本誌に掲載し切れなかった部分を含めたロングインタビューをご紹介する。


――『タッチ』に登場した犬のパンチと同じ名前の犬が『MIX』にも登場したことに驚きました。

 あだち先生もサインをなさる際には必ずパンチを描いてくださるんです。ですから、先生ご自身も思い入れがあるキャラクターなのかなと感じています。私から見ると、パンチは人を慰めたり、寄り添って励ましたりする存在だと思うんです。人の言葉を話せないからこそ、人間たちが心を開いて素直に話ができる重要なポジションを担っているのではないかと感じています。

――日髙さんは『タッチ』では浅倉南を演じていました。今回の仔パンチ役はどのように決まったのでしょうか?

 ナレーションをやることが先に決まっていて、仔パンチ役は1話のアフレコ直前に「女性の方でお手すきの方」という感じで決まりました。1話だと、女性が私か音美(役の内田真礼)ちゃんくらいしかいなかったですから、お手すきとなると自然と私になりますね(笑)。じつは、『タッチ』のときも一度、仔パンチを演じたことがあるんです。パンチがもらわれてきたきっかけのエピソードで、自転車のかごに入れられて、ほんの数回鳴くだけだったのですが、私も公に話していませんでしたし、今回キャスティングされた方もご存じなかったと思います。だから、すごい巡り合わせだなと感じました。

 『MIX』のナレーションは、キャラクターにツッコミを入れますし、キャラクターもそれが聞こえているかのようなリアクションをするので、面白くやらせていただいているんですね。でも、仔パンチをやると、みなさんが「かわいい」と褒めてくださるので、それがとてもうれしかったですし、幸せです。今は成犬になっていますが、今でもスタジオで「パンチ」と呼ばれると返事をしそうになってしまうんですよ(笑)。


――2作品のパンチは違う犬なのでしょうか……? 演じるうえで、『タッチ』のパンチは意識されたのですか?

 『タッチ』のときは、成犬パンチを千葉繁さんが演じていらしたので、将来的に千葉さんの声になると想像して演りました『MIX』のパンチは、『タッチ』のときよりも出演シーンが長かったですし、かわいらしさがとても出ていると思うんですね。ですから、かわいらしさを強めに演じました。あと私は、パンチは自分のことを人間だと思っていると感じているので、犬らしからぬアドリブもかなり入れさせていただきました。ただ、仔パンチは仔犬なので、人の気持ちを察して鳴くというよりは、喜んだときは楽しく、不満なときはクレームっぽくと、感情に対して素直に鳴くことを意識しました。

――どちらのパンチにも共通しますが、かなり人間っぽい行動もしますよね。

 『タッチ』のころならタッちゃん(主人公の上杉達也)にツッコミを入れたり、小競り合いをしたりなんてこともありましたね。タッちゃんの本音を一番受け止めていたのが、パンチだったんじゃないかな。

――ナレーションで意識することは?

 あだち先生の作品らしいゆっくりとしたテンポで話すことです。ただ、ゆっくり話すと意識しなくても自然と南の声に近くなるんです。OP映像が始まる前のナレーションを自分で聴いたときも『タッチ』を思い出すので、私の声って『タッチ』っぽいんだなと。(立花真弓役の)井上喜久子ちゃんからは甘酸っぱい、青春を感じる声だと言われますね(笑)。

――ナレーション、仔パンチ役が決まって、あだち先生とは何か話しましたか?

 「お世話になります」と伝えましたら、「長きご縁になりました。とことんいきましょう」といったようなお返事をいただけました。私としては、あだち先生の作品は『タッチ』以来関わることがなかったので、改めてあだち先生の世界に戻ってこられたのは、感慨もひとしおでしたし、新しい役者の方たちがあだち先生の作品を演じていく姿を見守っていると、『タッチ』のころに戻ったようで、不思議な感覚です。

――『タッチ』と『MIX』という両作品に参加してみて、変わったなぁと思うのはどんなことですか?

 まず、自分の立ち位置が違いますね。『タッチ』では一番の新人だったのに、今は一番の長ですから(笑)。あとは、アフレコの仕方そのものも少し変わっているんです。『タッチ』のころは、アフレコの段階では絵がほぼ出来上がっていたんです。でも、今は線画のことが多いので、役者としては相当想像力を働かせなくてはいけない。ただ、一方で、タイムコードが出るようになったので、セリフを言うタイミングをタイムで測れるようになったのは大きな変化だなとも思います。『タッチ』のころは、絵を見ながらタイミングを考えてセリフを言わなければいけないことも多かったので。当時は個人にリハーサル用の映像をいただける状況ではなかったので、とにかくアフレコに時間がかかっていたのをよく覚えています。大役を任されてご飯も喉を通らないような状態だったのに、タッちゃん役の三ツ矢雄二さんに、無理矢理のようにご飯に連れて行っていただいていたのは、とてもいい思い出です。

――ただ、あだち充先生の作品としてみると、テンポ感といい、キャラクターのやさしさといい、いい意味で変化はないのかなとも感じます。

 それは私も感じています。あだち先生の作品は、テンポ感がとても独特で、かなりゆっくりなんですね。最近の速いテンポの作品に慣れていらっしゃる役者の方々は、戸惑いも大きかったと思います。でも、じつは『タッチ』のときも同じで、アフレコが始まったころは、みなさん、ゆっくりすぎることに戸惑っていたんです。ですから、そういう意味で、あだち先生の作品らしさは、『MIX』になっても失われていないなと感じました。

――もともと原作からしても、吹き出しのなかの文字は多くないんですよね。

 そうそう。セリフひとつにどんな思いを込めるかというのは、私が『タッチ』をやっていた2年間で学んだことでした。単純に書かれている言葉を話すだけなら、テンポは速くてもいいけれど、裏にある思いやりや、秘めた感情を乗せると、自然と言葉ってゆっくりになるんです。私はナレーションとして、みなさんのセリフを聞いていることも多いんですが、改めて先生の作品はこの語りすぎないところがいいんだなと感じました。

――『MIX』には『タッチ』ファンがぐっとくるシーンも多いですよね。

 そうですね。明青学園が優勝したときのナインの姿や、それを見ている南と原田くんのバックショットなど、『タッチ』をとてもリスペクトしてくださっている映像がたくさん登場しますね。両方に携わらせていただけている身としては、喜びもひとしおです。

――先ほど『MIX』と『タッチ』のアフレコの違いをうかがいましたが、作品としてとくに違うなと感じたところは?

 『MIX』はメインの登場人物が、基本的に明るいですね。もちろん、親を片方なくして再婚同士というところはありますが、それでも新しい家族の喜びを描いている。『タッチ』は最初にカッちゃん(上杉和也)が亡くなってしまって、それをずっと背負って生きていくので、どこにいても何をしてもカッちゃんの影があったんです。タッちゃんが南に煮え切らない態度を取ってしまうのも、カッちゃんのことがあったからですし、そういう思いを背負ったセリフ回しができないと、当時はOKを出してもらえなかったんです。

――時代を超えてなお、あだち先生の作品が人々から愛されるのはどんな魅力があるからだと感じますか?

 『タッチ』のころもスタッフのみなさんがおっしゃっていましたが、悪い人が出てこないんです。『MIX』でも、めちゃくちゃなことを言っていたとしても、みんな人を気遣っている。投馬のお父さんにしても、一見何も考えていないように見えて、走ちゃん(走一郎)たちのお父さんのことを奥さんに聞けない、みたいな。ヒールっぽく見えても、背負っているものがあったり、複雑に絡み合った何かがあったりして、それが解けるといい方向に向いていくんですね。ですから、つねに心のなかにさわやかさや清々しさが残りますし、観ていると浄化されるような作品だというのが、あだち先生の作品が長く愛される魅力だと思います。いつからか、スタジオで「ザ・あだち先生的な感じ」みたいなワードも飛び交うようになってきているんです。そういう意味では、スタッフ、キャストのみなさんにだんだんとあだち先生の作品が持つ独特の感覚が伝わりつつあるのかなと思っています。

――パンチは成犬になりましたが、もし今後、たとえば回想シーンなどで仔パンチを演じられるとしたら?

 もちろん演じたいです。動物を鳴き声だけで演じるのは初めてで、表現するのは難しいと思いました。でも、仔パンチはいけそうな気がするんです。私もすっかり忘れていたのですが、『タッチ』のころのインタビューで、千葉さんがテストのときにパンチの鳴き声に「ふざけんな」とか「お前がやれ」とか、日本語を当てていたことがあったらしくて。あえてテストのときに日本語を当てることで、パンチの感情をつかもうとしていたんだと気づいて、それ以来、私も「パンチは人間だから」とスタッフとキャストのみなさんを洗脳しました(笑)。ですから、投馬役の梶裕貴くんにも「パンチは投馬のペットではなくて親友だから」と言い続けています。これから先、もし投馬がタッちゃんと同じように劣等感を抱えてしまうようなことがあったとしても、パンチという親友がいることは覚えておいてほしいなと思います。

<プロフィール>
【ひだか・のりこ】5月31日生まれ。東京都出身。コンビネーション所属。8月15日(木)に埼玉・メットライフドームにて開催される「埼玉西武ライオンズ『MIX』コラボイベント」に出演予定。

取材・文/野下奈生(アイプランニング)

TVアニメ『MIX』情報
〈放送情報〉
読売テレビ・日本テレビ系にて毎週土曜17時30分より放送
〈声の出演〉
立花投馬:梶裕貴
立花走一郎:内田雄馬
立花音美:内田真礼
大山春夏:花澤香菜
立花英介:高木渉
立花真弓:井上喜久子
西村勇:中尾隆聖 ほか

〈スタッフ〉
原作:あだち充(小学館「ゲッサン」連載中)
監督:渡部穏寛
シリーズ構成:冨岡淳広
キャラクターデザイン&総作画監督:牧孝雄
プロップデザイン:佐藤和己
色彩設計:林由稀
美術監督:緒続学
美術設定:網頭瑛子
撮影監督:並木智
アクション監督:松田真路
編集:小島俊彦
音響監督:亀山俊樹
音楽:住友紀人
アニメーション制作:オー・エル・エム
制作:読売テレビ・小学館集英社プロダクション

『MIX』番組公式サイト
https://www.ytv.co.jp/mix/

『MIX』番組Twitter
@mix_ytvanime

(c)あだち充・小学館/読売テレビ・ShoPro

《超!アニメディア編集部》
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